Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

神鳥裕之GM兼監督シーズンスタートインタビュー 

2018.05.08

神鳥裕之GM兼監督が6度目のシーズンを迎えます。「トップ4」を目指し挑んだ昨シーズンは、最終成績は7位となったものの、シーズン過去最多の10勝、またリーグ戦の勝ち点では全体で5番目につけるなど着実な前進を果たしました。ここから先、さらなる高みを目指すための挑戦のシーズンを、リコーがいかなる戦いをしようとしているのかを聞きました。

 

2年間やってきたことを貫いたことで結果が出た

――今シーズンのトピックとしては、まず新しいリーダーたちの就任ですね。キャプテンがCTB濱野大輔、バイスキャプテンがNO.8松橋周平に決まりました。ともに3年目と若いリーダーですね。彼らを選んだ理由から聞かせていただけますか?

 

シンプルに言えば、この先リコーがさらに上を目指していくために、最もふさわしいリーダーだと思ったからです。彼らはトップリーグで6位、7位となったこの2年の成績しか知りません。このレベルが出発点になっている「現状に対する満足感」が最も低い2人であると考えました。

                                        キャプテン CTB濱野

当然ながら、濱野や松橋よりも年上の選手たちも、さらに上のレベルを目指す気持ちは持ってくれています。彼らの努力や成長がチームを強くしてきたのも事実です。ただ、成長実感に基づく自信を得る一方で、それは「ここまでこれた」という満足感も生んでいるのではないかと思ったのです。

ちなみに、濱野と松橋のどちらをキャプテンとするかは少し考えました。“共同キャプテン”という形も頭をよぎったのですが、役割を明確にしたほうがいいだろうということでそれはやめました。

結果的には、濱野のグラウンド外も含めた素晴らしい姿勢をチームに浸透させてほしいという思いがあったのと、松橋が日本代表に復帰した場合にチームを離れる可能性があることを考慮して今回の判断になりました。

                                    バイスキャプテン NO.8松橋

――彼らをリーダーにすることを決めたのは、いつ頃だったのですか?

 
決断したのは、前キャプテンのLO馬渕武史らとの話し合いを経てからでしたので、昨シーズンが終わってからです。ただ、次世代を担うリーダーはこの2人だというのは以前から考えていましたね。試合でもしっかりとしたパフォーマンスも見せてくれていましたし。

 

――そのほか、コーチングスタッフなどで体制、役割変更はあったのでしょうか?

僕が監督になる前から、長らくストレングスコーチを務めてくださった岡さんがチームを離れ、後任者を迎えています。また、スタッフそれぞれの役割を少し変えました。具体的には、昨シーズンは分析担当だったクリスをコーチングスタッフに加えアタックを見てもらい、アタックコーチを務めた武川がスキルコーチとなり、より選手と密に関わる立場になります。ブレイクダウンの担当もヘッドコーチのマットからFWコーチの岡崎に変わりました。

 

――役割変更はあれど、戦術に関わるスタッフの入れ替えはありませんでした。成果を生んできたこれまでやり方を踏襲していくスタンスと理解していいのでしょうか?

 

さらに積み上げていこうという方針ではあります。ただ、このままでいいということではないので、フレッシュボイスも必要だという思いはありました。いかに両立させるか。クリスにはそこを期待していますね。彼にはさまざまな経験があります。スーパーラグビーの分析、日本の大学でのヘッドコーチ、社会人ラグビーのコーチ、選手として日本でプレーした経験もあり日本語も堪能です。この特異なキャラクターと発想を、うまくチームに生かしていきたいと思っています。

                  コーチングコーディネーター兼アタックコーチ クリス・ミルステッド

ここから上を目指すためには、コーチングスタッフの成長が必要

――こうした具体的な体制を決定するまでに、チームではどのようなコミュニケーションがあったのでしょうか?

 

昨シーズンが終わってすぐ、1、2週間かけてコーチ陣でみっちりディスカッションを行いました。1対1、全員でのもの、両方ですね。主に各試合を迎える際に立てたプランが正しかったかどうかの振り返りを行いました。その中で出てきた課題に対し、この取り組みをスタートするべきだ、あの取り組みはストップすべきだ、キープすべきだといった意見を出し合っていきました。

そうした中で見えてきたのは、トップ4以上を目指すためには、選手だけではなく、僕ら自身、コーチングスタッフのさらなる成長が必要だということでした。

今シーズンは予定したトレーニングの時間を守ることや、コーチの説明を短くとどめ選手がテンポよくセッションに入り込めるような準備をするといった改善点を挙げています。セッション前だけではなく、終了後にもスタッフミーティングを行い、自分たちの指導について再確認を行うことにもなっています。

 

――改めてコーチングスキルのレベルアップを図ると。

 

そのほかには、若手などで構成されるBチームのモチベーション向上を意識したプランニングを行っていきます。今のリコーは、SO木上やFB中澤といった可能性を感じさせる若い選手がチャンスをつかみ、選手の育成という観点からはうまくいっているほうだと思います。僕自身もそういう成果を見てしまって、生きのいい選手をピックアップしていこう、チャンスを与えていこうという意識がやや希薄になっていたように思うんです。

僕が監督になった直後などは、実績などにとらわれず、目の前で起きている事実だけを見て、今よりも大胆に選手をピックアップすることができていました。僕の目が今よりもフレッシュだった。

それが年々選手のこと深く知るようになるにつれ先入観がつくられてきています。成績が残せるようになってきたこともあり、リスキーな選手起用を避けてしまっている部分もありました。それがチーム全体の活性化においてよくない影響を与えていると、選手たちのフィードバックから見えてきたんですね。

いい選手が出てきているからといってそれに満足しないで、しっかりと選手たちのパフォーマンスを観察して、成長が見られた選手は果敢にピックアップしていく。そうすることで、Bチームの選手も高いモチベーションで日々のトレーニングに臨める空気をつくっていければと思っています。

 

――コミュニケーションを重ね、修正すべき点は修正し、皆で成長していくシーズンを目指すということですね。

 

チームの強化にはいろいろなかたちがあると思います。インターナショナルレベルのコーチを招き、その戦い方を理解した選手を呼んで戦うといったものもある。それがトップリーグのトレンドかもしれません。

でもリコーが目指しているのはそういうスタイルとは少し違って、ハードワークを通じて今の戦力を最大化させることで勝利を勝ち獲ろうというものです。このメンバーの力を信じて、このメンバーで優勝することに価値を置く。

でも、だからこそ、同じやり方していたらいけないんです。常にアップデートしていく。選手に変化を求めていく。それを可能にするために、コーチ陣も成長を続けていく必要があるという考え方です。

この方針に対して、外国人コーチも前向きに取り組んでいるのはありがたいです。外国人指導者というとプライドが高い印象があるかもしれませんが、リコーのコーチたちはみなオープンマインドです。いろいろな声に耳を傾け、改善策を検討してくれます。

 

――一般的に、指導する側に変化を求める際は、スタッフの入れ替えを行うことが多いように思います。そうではなく、今いるスタッフが変化することで対応していく。

 

やるべきことをすべてやったのか。互いに触れたくない部分だからといって話し合うのを避けていないか。それらをやりきっていない限り、自分たちには変わったり、成長したりするための余地があるということだと思います。

目標は「優勝」。スローガンは“ACTION ~PRIDE OF RICOH~”で継続

――今シーズンの目標はどこに置くのでしょうか?

 

優勝。チャンピオンですね。濱野、松橋と相談して決めました。客観的にみると、達成できていないトップ4が妥当なところだと思います。僕もそこにもう一度チャレンジしようと考えていました。

でもリーダーたちの思いが強かったですね。彼らからチャンピオンという目標に向かってチームをつくりたいという言葉があった。そうした高い志は彼らに求めたことでもあったので、心を動かされました。イメージに対し一石を投じる強いメッセージになるかなと。

逆にスローガンは変えずに“ACTION ~PRIDE OF RICOH~”でいきます。アクションという言葉は、我々のアイデンティティなので。

 

――変化には挑む。でも、これまでと同じ方向をまっすぐ歩もうと。

 

ドラスティックな改革をするわけではありません。外国人選手の在籍年数も比較的長く、退団時には涙を流してくれるような、リコーとはそんなチームです。選手とスタッフがチームへの強い愛着を糧に努力し価値を高めていく。そんなやり方が、リコーが優勝という目標を達成するために大事な部分。それは最終的にカルチャーになっていくとも思います。

 

何かをがらりと変える。そういう思い切った判断は、時に称賛されることもあります。でもそれって、今いる選手たちの可能性をあきらめることでもある。リコーでは簡単にそれはやらない。選手とスタッフが互いを信じ、描いたラグビーの実現を愚直にして目指していきます。ラグビー界的にも、そういうチームが優勝したら面白いと思います。

 

――具体的なラグビーについて。昨シーズンは少し得点が減りました。コーチングスタッフでも役割の変更があった部分とのことですが、アタックへのフォーカスを行うのでしょうか?

 

得点については、スクラムやラインアウトの獲得率などが影響もするので、アタックそのもの出来だけで説明できるものではないのですが、アタックの何かしらに着手したいというのはありました。

言ってしまえばブレイクダウンのところですよね。クイックボールを出し、相手のディフェンスが揃う前にたくさんのフェイズでアタックをかけられればチャンスは生まれますから。アタックのバリエーションを増やすという方向ではないですが、新しい担当者のフレッシュボイスで手を加えていきたいと思います。

                                              SH山本

――選手たちからは、強みのディフェンスをいっそう磨き、ターンオーバーからのアタックなども武器にしたいという声も聞こえてきました。

 

アタックチャンスがストラクチャーとアンストラクチャー、どちらで訪れるかというというと、だいたい3対7ぐらいでアンストラクチャーだと言われています。昨シーズンの自分たちは、それを生かして攻めることがあまり上手じゃなかったんですね。にもかかわらず、ストラクチャーからのアタックのトレーニングが多めになってしまっている問題もありました。

これまで以上にぐちゃぐちゃな状態をつくって、ディフェンスからアタックに転じてチャンスを広げていくためのトレーニングを増やしていこうと思っています。これは昨シーズン、分析の立場からクリスが指摘していたことでもあるので、今シーズンは実際のコーチングを通じて変えていってもらえればと思っています。

期待したいのは小池と大西。HOの年長者たちにプレッシャーを与えてほしい

――大会フォーマットに目を向けると、短期決戦という形になります。

 

(入替戦に出場することになった)2015年と同じフォーマットで少し嫌ですが、経験を生かさないといけませんね。流れ次第ではああいう事態に陥る危険をはらんでいると。最初の試合で爆発的な試合をしてチームに勢いをつける必要があります。開幕戦の相手は昇格チームのHondaですが、下部リーグとはいえ圧倒的な強さでトップリーグに戻ってきたチームですから注意が必要です。ホームの秩父宮で戦えるアドバンテージも生かして、いい戦いをしたいと思います。

 

――選手を見ていくと、長くリコーに貢献してくれたCTBタマティ エリソンが退団しました。対応が必要な部分に映ります。

 

補強は手を打っているところですが、ほぼ決定しています。タマティのメインのポジションだった13番ができて、彼と同じようにリーダーシップやアティテュードの部分でもチームに好影響を与えてくれるであろう選手を獲得する予定です。加えて、今シーズンは外国人枠が広がることもあるので、SOの外国人選手も獲得します。来日のタイミングは少し遅くなりそうなので、フィットするまでの時間を考慮し、木上、ロビーとの併用になる可能性が高そうです。

 

――成長を期待する選手はいますか?

 

小池と大西ですね。HOのポジションは森とジョシュア、そこに芳野が挑む構図になっていますが、レギュラー、リザーブクラスの年齢が高くなってきているので、若手2人からの突き上げを求めたいですね。

                                              HO小池

小池は身体能力を、大西は頭脳を使った、ともにフィールドプレーの上手さが武器。ボールキャリー、ディフェンスなどではいいセンスを見せてくれています。慣れない局面で気持ちの弱さが出ることがあり、スクラムやラインアウトのスローイングでの評価もまだ得られていないのですが、本気で成功したいという覚悟さえ持てれば、大きく成長してくれると信じています。今のリコーの宝ですね。

                                              HO大西

――最後に、日本でのラグビーワールドカップも迫っています。今シーズンのパフォーマンスでアピールして、日本代表に選出されるような選手が出てくることも期待したいですね。

 

そうですね。松橋はもちろん、CTBはポジション的に激戦区ではありますが、濱野は十分に代表を狙えるレベルにあると思っています。PR大川なんかも本当は見てほしいんですけどね。それからFL武者、一発一発のタックルでインパクトを与えながら、ワークレートで少し評価を下げている部分がありましたが、ここ数年は改善されました。

チームが好成績を残せば自然と注目度は上がっていくはずなので、まずはトップリーグでいい戦いを見せることだと思います。

 

――ありがとうございました。

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