2014-2015 トップリーグ ワイルドカードトーナメント 1回戦 vs NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦

2015.01.28

好調・長谷川元氣のトライで逆転し折り返す

1stステージを終え、グループBで戦うことが決まった時点より、リコーは日本選手権出場をターゲットとして明確に意識してきた。その選手権への2つの出場権を8チームが争うワイルドカードカードトーナメントがついに始まった。

初戦の相手はNTTコミュニケーションズシャイニングアークス。昨シーズンは2ndステージをリコーと同じグループBで戦ったが、今シーズンは1stステージで上位4位に入る躍進を見せ、上位勢がしのぎを削るグループAで戦ってきたチーム。この試合は、リコーが2ndステージで見せた成長がどれほどのものなのかが、グループAの“定規”で試される試合とも言えた。

秩父宮ラグビー場はほぼ無風。リコーのキックで試合が始まった。

先制したのはNTTコム。リコーのキックをキャッチしてハーフウェイライン付近からアタックを仕掛ける。対応したリコーがハイタックル。中央、10mライン付近付近からのPGを決めて0−3とする。(2分)

リコーは再開のキックオフから攻める。22mライン手前から接点の近場を突いてゲインを狙うが、NTTコムも激しくディフェンス。なかなかテンポを上げられない。右サイド、タッチライン際のラックでボールを奪われる。NTTコムは前がかりになったリコーの背後のスペースにボールを蹴り込む。

リコーはCTB小浜和己が戻って22mライン付近でボールを拾うが、チェイスしてきたNTTコムの選手が襲いかかり不利なラックに。リコーはここに横から入ってしまいオフサイド。NTTコムは左中間、22mライン付近からPGを決めて0−6。(7分)

リコーは9分、左サイド、10mライン付近のラインアウトから左中間を突く。ラックから右に展開すると、右サイドをWTB長谷川元氣が鋭く突き、さらにPR大川創太郎が縦に運ぶ。するとラックでNTTコムがノットロールアウェイ。

約40m、タッチライン際という難しい位置だったがリコーはショットを選択。FBピータース・ダニエルがPGを見事に決めて3点を返す。3−6。(11分)負けたらそこでシーズンが終わる試合だけに、互いにスコアにこだわっていく。

14分、リコーは自陣からのキックがダイレクトタッチに。自陣30m付近で相手ボールのラインアウトを迎えるが、これをFLマイケル ブロードハーストが奪い、バックスにつないでライン裏にキックを蹴り込む。さらにラックでターンオーバーし、アタックに移行しようとするが、展開のパスがつながらずノックオン。

さらにこの試合最初のスクラムでリコーにコラプシング。NTTコムは中央、ハーフウェイライン付近からPGを決め3−9。(17分)

20分過ぎ、リコーは相手の連続ペナルティで敵陣ゴール前に攻め込む。しかし、ラインアウトからうまく攻められず、またミスも出てトライチャンスをつくれない。相手のゲインもあり一度エリアを失うが、自陣浅めの位置のラインアウトから、右サイドをモールで前進。敵陣に入ると左に展開し攻める。

これが良いアタックとなり、リコーはワイドに振りながら前進していく。しかし、SOコリン ボークが中央から3人飛ばしたロングパスをタッチライン際に出すが、これが通らずタッチを割る。

NTTコムは自陣22mライン付近のラインアウトからボールを回すが、中央でボールをこぼす。これをFL武者大輔がさらい、SOボーク、CTB小浜とつなぎ、小浜が低く突っ込み縦にゲイン。SH山本が中央ゴール前のラックから素早くボールを出し、右中間のSOボークへ。CTB山藤史也につなぐと、タックルを受けながらもWTB長谷川にボールをつなぎ、長谷川がインゴール右隅に飛び込んだ。

タッチライン際の狭いスペースのプレーだったこともあり、テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)となるが、問題はなくトライが認められた。難しい角度のコンバージョンも、FBピータースが決め、リコーは10−9と逆転に成功する。(27分)

NTTコムはハーフウェイライン付近からアタックを仕掛け10番がドロップゴールを狙うがこれは失敗。(29分)

リコーは前半残り10分を攻め続ける。34分にはペナルティキックで前進すると、左中間ゴール前をフォワードで攻める。LOロトアヘアが低く突いてグラウンディングしたかに見えたが、TMOでわずかに届いておらず、アンプレアブルと判定された。

再開の左中間ゴール前のリコースクラムから、中央をSOボークが突く。ラックサイドをまたもLOロトアヘア突いてインゴールに持ち込むが、これもグラウンディングできず。(36分)

前半終了直前には、SOボークが左中間から左隅にキック。飛び出したWTB高平拓弥がバウンドしたボールを獲れればトライいうチャンスを迎えたが、大きく弾み高平の背後に落ちた。点差を広げて後半に向かいたいリコーだったが、チャンスをスコアにつなげられない。1点差のままで前半終了。

“Change”へ―。日本選手権まであと1勝

後半は選手入替なしでスタート。リコーは自陣浅めのラインアウトから攻め前進。敵陣に入っていく。30m付近でノックオンを喫するが、スクラムでNTTコムに反則。右中間からのPGに成功し13−9。(6分)

再開後、キックの蹴り合いを制してリコーが前進。しかしラインアウトでノットストレート。ボールをNTTコムに渡してしまう。PR大川創太郎に替えて柴田和宏。(10分)
スクラムで押し勝ち反則でボールを奪い返すと、再度スクラムを組み、ワイドに展開。ボールを回して攻めていく。フェイズを重ね22mラインを越えかけたが、フラットなパスをもらってラックサイドを突こうとしたPR藤原丈宏に激しいタックルが入り、直後の不利なラックでリコーにハンド。

NTTコムはこの反則から攻めに転じる。エリアを獲って前進し、リコーのハイパントをキャッチしてアタック。リコー陣内に入ると10番がハイパントを上げて自らチェイス。直後、前方にいたリコーの選手とぶつかりオブストラクション。右中間、10mライン付近からのPGを決めて13−12。(18分)

またも1点差になり、試合の行方がわからなくなる。リコーはLO馬渕武史に替えてカウヘンガ桜エモシ。(18分)

20分、リコーが蹴り込んだライン裏へのゴロキックを、NTTコム最終ラインが処理。そこにWTB長谷川が駆け込みキックをチャージ。ビッグチャンスかと思われたが、ボールがつながらず惜しくもノックオン。

しかし、NTTコムは自陣のスクラムからタッチキック。リコーはラインアウトを得て、これを起点にワイドにアタック。左サイドをフォワードで攻めると、ボールを戻し、FBピータースのランからWTB長谷川につなぎ右サイドを攻める。

さらにフェイズを重ね左中間を突くが、ラックからSH山本が持ち出し仕掛ける。だが、惜しくもリコーの選手が相手選手に接触しオブストラクション。(23分)

タッチキックでエリアを戻したNTTコムは、ラインアウトから攻めようとしたが、ディフェンスにいったFLマイケル ブロードハーストをボールを持っていない選手が妨害。今度はNTTコムのオブストラクションでリコーがペナルティキックを得る。

貴重なスコアのチャンスだったが、左中間10mライン付近からのPGは惜しくも右にそれる。リコーはHO滝澤佳之に替えて森雄基。(26分)

28分、右中間ハーフウェイライン付近からSOボークがドロップゴールを狙う。しかしヒットせず低い弾道で敵陣左サイドへ転がる。処理にいった相手SOに対し、長い距離を走りチェイスしたFBピータースがタックル。相手を倒すと2人目、3人目が駆けつけたところでオーバーザトップ。左中間、22mライン付近からリコーはPGを狙い成功。16−12と再び4点差にした。(29分)

PGの直後、リコーはSH山本に替えて中村正寿、SOボークに替えてタマティ エリソン、CTB小浜に替えて牧田旦と同時に3人を入替。残り10分、フレッシュな選手を入れて、この決戦を勝ちきる態勢を敷く。

再開のキックオフボールの競り合いでリコーがハイタックルを犯す。タッチキックからゴール前ラインアウトのピンチを迎える。オーバーしたボールをリコーが確保するが、自陣から回したボールを落としノックオン。NTTコムスクラムとなり、まだピンチが続く。PR藤原丈宏に替えて髙橋英明。(32分)

このスクラムでリコーに反則。NTTコムはペナルティキックからゴール前ラインアウトを狙ったが、キックがタッチを割らずリコーがキャッチ。

ミスに救われたリコーはキックを蹴り返して押し戻す。自陣10mライン付近からNTTコムがアタック。ここからキッキングゲームになるが、リコーが優勢に進め、NTTコムがダイレクトタッチ。ハーフウェイライン付近のラインアウトをキープすると、FLブロードハーストが突破。一気に22mラインの内側に攻め込む。残り時間を考えれば、スコアすればほぼ勝利が決まる場面。リコーは猛然と攻める。スタンドのリコーファンも、この日一番の声援を送る。

しかし、NTTコムがラックでターンオーバー。リコーはこのラックでオフサイドを犯す。キックでエリアを戻したNTTコムはラインアウトからアタック。一度ミスでタッチを割ったが、リコーのラインアウトを奪い再度攻める。リコーはひたすらプレッシャーをかけ続ける。
残り時間はあとわずか。NTTコムがライン裏に蹴ったボールをリコーがキャッチ。これをあと数十秒キープし蹴り出せばノーサイドかと思われたが、CTB山藤にNTTコムが襲いかかりノットリリースザボール。

タッチを狙った長いペナルティキックを蹴り、NTTコムは右サイドゴール前へ。ここでホーンが鳴る。リコーは最後のディフェンスに向かう。

ラインアウトからモールへ。LOロトアヘアが相手をしっかり捕まえる。フォワードが一丸となり前進を阻む。モールをあきらめたNTTコムはボールを持ち出し左へ。

これにはバックスが即座に反応、ランナーを捕まえに走る。CTB牧田、山藤が加速。中央からタッチラインに向けてスライドしながら距離を詰めると、最後は山藤が渾身のタックル。こぼれたボールがタッチを割り、ここでノーサイド−−。

 試合をコントロールしながらも、スコアを広げられず苦しんだ。しかし、2ndステージで接戦を戦い抜いた経験を生かし、見事リードを守って試合を終えた。

次戦、サントリーサンゴリアスとのワイルドカードトーナメント2回戦に勝利すれば、日本選手権出場が決まる。“Change”を掲げて戦ってきた今シーズン、誰もが感じている手応えを、目に見える結果へと昇華できるか。リコーの未来を懸けた一戦となる。

「コンタクトへの自信が、落ち着きにつながっている」(WTB長谷川元氣)

神鳥裕之監督

今日はBリーグの1位チームとしてのプライド、責任をもって戦いました。Bリーグ全体の価値も問われるような試合になると思ってチャレンジだと考えました。結果的に、上位グループで戦っていた相手に対し接戦で勝利できたことは嬉しく思っています。負けたら終わりの試合が続くので、しっかり準備をして、全員で次の試合に挑んでいきたいと思っています。
(開幕当初と比べ、スクラムが改善されているようだが)若い2人が1番、3番ですが、経験の浅い選手がゲームタイムを重ねていく中で、安定したスクラムを組めるようになっているのは確かだと思います。それ以外には、パックとして、春からやってきたことが、結果に結びついていることが要因ではないかと思います。
(トライを獲れない時間が続いて苦しい試合だったと思う。それでも接戦を勝てた要因はどこにあると思うか)負ければ終わりの試合では、なかなかトライは獲れないだろうと。スコアを重ねて勝利しなきゃいけない試合になると想定していました。今日は我慢強くディフェンスの精度を高く保てたと思います。ワイドに攻めてくる相手に対し、ファーストタックルで止められた。アタックではキープザボールができ、密集の近場の戦いでも有利にやれたことが勝因だと思います。【以上共同記者会見にて】

ワイドスペースを突いてくるようなラグビーを彼らはシーズン通してやってきていたので。想定はしていました。試合の入りのところでペナルティを重ねて、スコアにつなげられていたので嫌な立ち上がりだったんですけど、1人ひとりしっかりタックルに入るというメッセージに対しては実行してくれていたので、前半の終盤あたりからは安定してきたかと思います。
(それでもグループAでやってきた相手だけあり、接点では前に出られることも)トップチームとやってきた経験を生かしていると思いました。ただ、自分たちがやろうとしていることを実行していけば、十分通用するとも思っていました。ディフェンスだけではなくアタックでも。トライや、トライにはなりませんでしたけど攻めきれたシーンはありましたので。厳しかったですが自信となる試合だったと思います。
(ハーフタイムはどんな指示を)ファーストタックルの大切さをもう一度念押ししました。ワイドワイドでスペースを見つけて突いてくるラグビーだったので、ファーストタックルをはずされると、どんどん勢いがついてくる危険がありましたので。そこを再認識させるように
(難しい角度のPGなどもあったが、決断し、かつ成功したのが印象的だった)リスクのある角度のものもありました。ただダン(FBピータース)の力からすれば十分決められる。彼も連戦の疲れはあったと思いますが、この2週間でうまくリフレッシュできたようです。ディフェンスでも頑張ってくれましたし。
(セットプレーの評価は?)映像を見るとNTTコムはグループAの相手に対し、セットプレーでかなり苦しんでいました。ただ、自分たちはそこまでのプレッシャーをかけられなかったので、そこは真摯に受け止める必要があると思います。
(僅差であり、選手の入替も気を遣う試合だったのでは)後半30分に3人を入れた場面は正直迷いました。SOのタマティ(エリソン)とコリン(ボーク)の入替は予定通りでしたが、中村、牧田を一緒に入れていいかどうか。1人ケガすればバックスがいなくなってしまうので。でも、トライを獲りにいきたかったのでフレッシュな彼らを入れました。よく流れを変えてくれたと思う。
(来週は大きな試合になる)ここまできたら、どの相手が来てもチャレンジャーなので、のまれずに自分たちのラグビーをやるだけ。東京の多くのファンの皆さんの前でまた試合ができるように。必ず秩父宮に戻って来ます。

PR大川創太郎

スクラムは前半の最初のほう、ヒットの部分で負けていて、なかなか前に出られませんでした。ヒットが互角以上になったら、こっちの組み方ができるようになったと思います。(ブレイクダウンなどは?)最初はグループAで戦っていた相手だけあって、ボールを獲られたりもしていたんですけど、慣れてきたら対応できたと思います。スクラムもそうですが、落ち着いて試合の中で改善できた試合でした。(今までの試合とは違う雰囲気はあったか?)負けたら終わりなので、いつもの試合以上に集中していたと思います。試合の最初は少し堅かったかもしれない。

LOロトアヘア ポヒヴァ大和

負けたら終わりというプレッシャーの中で、勝ててよかったです.途中まではうまくいかない試合になるのかな、と思っていました。リコーのラグビーの形がつくれなかったので。相手のペナルティでチャンスをもらうことが多かったし、こっちからの仕掛けがうまくできていなかった。負けたら終わりなのは相手も同じ。そういう気持ちがブレイクダウンの激しさに出ていた。試合の途中からは、空いているスペースにボールを運べるようになって、よくなっていきました。
(ゴール前では惜しいシーンがあった)自分としてはライン上に置いたつもりだったけど、しょうがない。でもあの場面がつくれたのは、リコーのアタックができていたから。ああいうアタックを続けていけば、次の試合も勝つチャンスが出てくると思う。大きなチャレンジ。負けたら終わりというプレッシャーの中でも1つになって、リコーのラグビーをできるかがポイントになると思う。

FBピータース ダニエル

勝てて嬉しいけれど、まだまだ。日本選手権を目指しているからあと1試合。いい試合だったけどね。来週が大事。(次の試合に向けて課題をあげるなら?)もう少しボールキープしたい。今日はチャンスはあったけどスコアできなかった。試合でチャンスはそんなにこないので、獲りきらないと。グループAで戦ってきた相手はやっぱり強いし、次はもっと上の順位のチームが来るので、チャンスで獲りきらないと勝てない。(前半の最初ペースをつかめなかったが)相手の勢いと、自分たちがレフリングをつかんだりしていたのもあったと思う。緊張はあまりしなかった。負けたら終わりだけど、楽しんで戦おうという雰囲気がありました。ディフェンスはすごくよかった。危ない場面もそんなになかったと思う。(リコーのラグビーには近かった?)はい。今日はよかったと思う。

WTB長谷川元氣

(トライの場面について)CTB山藤さんの前のスペースが空いていたので、声をかけてキャリーしてもらって。山藤さんはタックルを受けた後も立っていたので、サポートに入ろうかと思った瞬間ボールが来ました。(狭いスペースで、ディフェンスをかいくぐってのトライが続いているが)コンタクトについて自信が持てているので、落ち着いてプレーできていると思う。
(キックチャージも決めた)自分でもびっくりしています(笑)。モーションが遅かったので狙いにいったら、たまたま当たったという感じです。(次戦に向けて)今日も焦って少し混乱した場面があったので、そこを整理したいですね。敵陣までいってもミスや、ターンオーバーでやられていたので、最後まで獲りきらないと、この先の相手には勝てない。選手1人ひとりが自分の役割をもう一度確認して、誰が出ても同じパフォーマンスが出せる状態にして迎えたいです。

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