2013-2014 トップリーグ 2ndステージ第4節 対 近鉄ライナーズ

2013.12.26

近鉄の激しいプレッシャー。我慢の前半

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 13時、快晴の千葉・フクダ電子アリーナで、トップリーグ101試合目の出場となるSO河野好光のキックで試合が始まる。落下地点でこぼれたボールが、寄せていったHO滝澤佳之に入る。滝澤はこの試合がトップリーグ100試合目の出場だった。

リコーは敵陣浅めのエリアで展開。右サイドを走ったWTB長谷川元氣へのパスで突破を図るが惜しくもつながらずタッチを割る。

ボールを得た近鉄がアグレッシブなアタック。リコーも良いディフェンスを見せノックオンを誘うが、スクラムでボールを奪われ左サイドでビッグゲインを許す。

リコー陣内に侵入した近鉄は、22mライン内側のラインアウトからモールで押す。この攻防でペナルティを奪ったリコーのスクラムとなるが、リコーはスクラムでターンオーバーを許す。4分、近鉄はゴール前でラッシュをかけると、8番がトライ。コンバージョンも成功し0-7と先制した。

さらに8分、自陣からキックカウンターを仕掛けた近鉄は中央をリコー陣内10mライン付近まで前進。さらにアタックを継続すると、必死に守ったリコーが相手のパスをはたき落とすインテンショナルノックオン。近鉄は右中間22mライン手前からペナルティゴールに成功し0-10。リードを広げた。

試合の入りでペースを奪われたリコーの反撃は11分。自陣に蹴り込まれたキックの処理で手間取り、プレッシャーをかけられるが、タッチラインぎりぎりの位置でボールに飛びついたSH山本昌太がパスをつなぐと、逆にギャップを突いてCTBリキ フルーティが左中間を突破。さらにHO滝澤、FL武者大輔がボールを前に運び敵陣に侵入。

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 22mライン手前にポイントをつくると少し下げSO河野がライン裏へゴロキック。WTB長谷川、FB星野将利がグラウンディングを狙ったがこれは処理される。しかし直前の攻防で近鉄にオフサイドがあり、ボールを戻したリコーはほぼ正面約40mの位置からペナルティゴールを狙う。これは外れた。

直後リコーは反則で攻め込まれるが、自陣スクラムからCTBフルーティのキックで前進。右サイドハーフウェイライン付近のラインアウトからFL武者、NO.8コリン ボークが中央を突く。激しいアタックに近鉄がホールディングの反則。リコーはタッチキックを蹴り22mライン付近まで前進する。

左サイドのラインアウトから展開すると中央を再びNO.8ボークが縦の突進。さらに右へ展開し走り込んだFB星野がゲインする。ゴール前まで前進すると、リコーが中央でアタック。しかし荒々しいディフェンスに遭い我慢比べに。17分、近鉄にノットロールアウェイが出て、リコーはショットを選択。ほぼ正面からSO河野がペナルティゴールを決めて3-10とした。

リコーは22分、キックを蹴り込むと、自ら攻め上がろうとした相手選手にプレッシャーをかけると、ミスを突いて前進。敵陣左中間22mライン手前でスクラムを得る。ここで負傷したPR柴田和宏が高橋英明と交代した。

広いサイドにボールを出し中央をアタック。ここで守る近鉄が反則を犯すと、すかさず速攻を仕掛ける。今度はノット10メートルバック。リコーはスコアを優先し、ゴール目前ほぼ正面のペナルティゴールを決めて6-10とする。

ここからはハーフウェイライン付近から近鉄陣内でのプレーが続く。うまく攻め込んだリコーは22mラインの内側でスクラムを得てゴールに迫ったがオフサイドでエリアを奪い返された。

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 ペナルティキックを蹴った近鉄は、右サイドゴールまで約30mの位置からラインアウトを入れアタック。中央を破ってゴール前に迫ると右に展開。ここでリコーに痛いタックルミス。ディフェンスラインを突破されると31分、右中間に14番がトライ。コンバージョン成功。攻め込みながら獲りきれずに終わった直後に失点する嫌な展開。6-17と再び点差が開く。

前半終盤、リコーはトライを奪うべくボールをつなぎ攻める。だが、あと一歩のところで決定機とならない。しかし40分、SO河野のライン裏へのゴロキックなどで敵陣に侵入すると、右サイド22mライン付近のラインアウトから展開しゴールに迫る。すると守る近鉄がハイタックル。リコーは正面やや右からペナルティゴールを決めて9-17。トライは奪えなかったが、しぶとくスコアして前半を終えた。

1点差に迫り、最終盤まで粘りのラグビー

 後半は互いにメンバーを交代せずにスタート。先にチャンスをつくったのはリコーだった。

近鉄の反則で得たペナルティキックで敵陣に侵入しラインアウトにすると、再び近鉄がオブストラクション。もう一度ラインアウトに。今度はモールでの前進を試みるがうまく組めず、リコーは近鉄にフリーキックを与えエリアを奪い返される。

さらにラインアウトでボールを失ったリコーは自陣侵入を許すと、アグレッシブなアタックに苦しむリコーがハイタックル。ペナルティキックでゴール前ラインアウトのピンチを迎える。この日、近鉄のラインアウトは試合を通じ安定感を保ち、逆にリコーはボールを奪われがちだった。

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 ラインアウトからのアタックをなんとかしのぎボールを奪うと、CTBフルーティが前方に強くボールを蹴り込む。反応したバックスが鋭く飛び出し、敵陣22mライン付近まで攻め上がる。近鉄最終ラインのボールキャリアを捕まえラックにすると、一気にボールを乗り越え鮮やかにターンオーバー。ここからアタックを仕掛けようとすると、近鉄はたまらずホールディングの反則。

ピンチから一転チャンスを迎えたリコーは、右サイドゴール前ラインアウトからモールを組み、斜め前方のポストに向かって前進する。ゴールラインが迫ると、LOロトアヘア・ポヒヴァ大和が飛び出し、密集の中、インゴールに身体をねじ込んだように見えたが、惜しくもグラウンディングならず。

しかし、5mスクラムで再開すると11分、スクラムの左をNO.8ボークが抜けて中央にトライ。コンバージョンも成功し16-17。ピンチをしのいだリコーがスコアに成功。1点差に迫る。

一気に攻勢をかけたいリコーだったが、直後に得たゴール前ラインアウトからの攻撃でスコアを逃すと、試合は均衡状態に。互いに攻め込みチャンスはつくるが、ゴール前で堅いディフェンスを見せ守った。

リコーは18分、自陣でのディフェンスでLOロトアヘアが危険なプレーを行ったとして10分間の一時的退出を科される。21分、FL柳川大樹をマイケル ブロードハースト、CTBフルーティをピータース ダニエルに交代。フレッシュな選手を入れて勝負をかける。

リコーはここで集中力を維持し、数的不利の10分を失点せずに守り抜いた。しかし30分、近鉄はリコー陣内に攻め込むと右中間22mライン内側のスクラムから中央をアタック。激しく攻めたてると右に展開し12番が右隅にトライ。大きな追加点が入り16-22。難しい角度のコンバージョンも決まり16-24となる。残り9分、リコーは1トライ1ゴールでは追いつけない8点差を追う展開に。

リコーはSO河野に替わり高平拓弥が入りFBに。FB星野がWTB、WTB小松大祐がCTB、CTBピータースがSOに入った。32分にはLO馬渕武史に替わり生沼知裕。

ピータースが、低い弾道のキックオフを蹴り込むと、処理に手間取った相手15番が短いタッチキックに逃れる。右サイド22mライン付近のラインアウトから展開。リコーは左サイドを激しく攻め、逆転への強い思いを見せていく。

機を見て右に戻しギャップを狙うも痛恨のノックオン。だが、近鉄はスクラムからタッチキックを蹴ったため、リコーは敵陣のラインアウトというチャンスもう一度得る。

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 ラインアウトをキープし、モールで前進。力強く押していくと近鉄にコラプシング。リコーにアドバンテージが出る。中央でトライを狙うアタックを見せたリコーだったが打開できず、反則のあった右中間にボールが戻る。

時計は37分。リコーはペナルティゴールを狙いほぼラストとなるだろうプレーでトライを狙う判断を下す。SOピータースが右中間22mライン付近からペナルティゴールに成功し3点追加。19-24。

リコーはキックオフのボールをキープしアタック。フェイズを重ね攻めていく。フォワードがギャップに身体をねじ込み、ラックからクイックにボールが出ると、CTB小松やFB高平、WTB星野らがミスマッチを狙っていく。

試合終了間際だが、鋭い反応でサポートが入り「絶対にボールは渡さない」という気迫を感じさせるアタックが続いた。近鉄からは反則を避けようとディシプリン維持の声が飛ぶ。

ホーンが鳴り40分経過。リコーはなおもボールをつなぎ、ハーフウェイラインを越え、10mライン付近で両サイドをボールが行き来する。

近鉄もプレッシャーを浴びながらもディフェンスを固める。トライで同点、コンバージョンで逆転。勝敗のかかったラストプレーに観衆は声援を送った。

しかし、42分過ぎ、リコーは左中間でボールをこぼす。これが近鉄に渡り、蹴り出してノーサイド。リコーはあと一歩にまで迫るも5点差で敗戦。ボーナスポイントはかろうじて得たが、1stステージのリベンジは果たせなかった。

なお試合終了後には、HO滝澤のトップリーグ100試合目の出場を記念するセレモニーが行われた。

「今、リコーは先を見て戦えるチームではない。次の九州電力戦をしっかり戦うだけ」(WTB小松大祐)

神鳥裕之監督

「1stステージでも対戦した近鉄さんを相手に、悔しい敗戦のリベンジをして、いい年明けを迎えたいと思っていました。前半から厳しいプレッシャーを少し受けるような形になって、リズムをつくれなくて、最終的にリードを奪うことができず、残念な結果になってしまいました。試合は続きますので、最後にボーナスポイントを1ポイント獲れましたし、しっかりと準備していきたいと思います。ありがとうございました」(以上記者会見)

「どうしても勝ちたかったがこういう結果になってしまった。切り替えていくしかない。前半の入りのところ、受けてしまった。マイボールスクラムで相手にボールが渡ってしまったり、セットプレーの悪さとか、ミスが少しありリズムがつくれなかったのが悔やまれるところ。
(2ndステージに入り、気持ちの入った試合が続くが?)負けられないという意地みたいなのはあって、前半からお互いの思惑がぶつかる。そこで我々が受けてしまったのかなと。
ただ、前半の終わりくらいから、トライは獲れなかったんですけど、相手の反則の多さを得点につなげて差を詰めて、後半に1点差にまで持っていったのはチームの自力だと思います。
でも、1点差にまでいった後のプレーでどうしても獲りきれない。敵陣ラインアウトのチャンスがいくつかありましたが、そこでモールが押し切れなかったり、反則を獲られてしまったり。今悔やんでいてもしょうがないのですが、しっかり獲り切れていれば試合の流れは変わった可能性もある。そこはしっかり次に向けて反省していきたい。
(フォワードはカウヘンガ桜エモシがケガ。馬渕武史、柳川大樹、武者大輔らが仕事量で勝負していたが?)彼らにも奮起を促す声を掛けましたが、よく応えてくれました。ただもっと上位にいくにはフォワード全体のパックとして努力していかないと。
(最後のアタックについて?)あそこに至ってはキープザボールして、フェイズを重ねて、チャンスを見つけて突いていくしかない。でも、反則せずディシプリン高いディフェンスをされたので、そこのところは向こうが上回っていた。我々もフェイズ重ねて頑張ったのですが。
なんとか、次の九州電力戦を勝ちたい。豊田自動織機、クボタと残っているので、ポジティブに考えれば今上位にいるチームと直接戦えるチャンスがあり、順位をジャンプアップさせられる可能性もあるということ。今日の結果に下を向くことなくやっていきます」

WTB小松大祐キャプテン

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「リコーはここ最近近鉄さんには勝てていなかったので、リベンジするということと、タフな試合になるのはわかっていたので、そういう試合を勝ちきろうというテーマで臨みました。特に前半のタックルミスというのが痛くて、僕たちがポイントを獲りたいところで、獲られてしまって、点差でプレッシャーかけられてしまったのかなと。
リコーは先を見て戦えるようなチームではないので、まずは次の福岡での九州電力戦をしっかり戦いたい。今日はありがとうございました。
(近鉄とは2度目の対戦だったが、何か違いは感じたか?)僕は前の試合には出ていなかったのですが、みていた印象だと、もう少しボールを回してくるのかなと思っていた。でも今日は、ダイレクトに、強い選手が真っ直ぐ当たってきました。僕らと似たようなアタックだと感じ、ボールキャリーの強さなどは僕らも見習わなければならないと思いました。
(その違いにチームが戸惑ったわけではない?)そうですね。準備はしてきたので、焦りや混乱があったわけではないです。ただ、1対1のタックルミスが出てしまった」(以上記者会見)

「実はポジティブにとらえていて。後半立て直すことができるとわかったので。それだけに、前半が課題だとみんな実感できたと思う。自分たちのラグビーを意識して、前半の早い時間帯で3点でもポイントを獲って、点差でプレッシャーをかけていければ、自分たちのプレーも落ち着いてくるはず。今日は先に獲られて追いつけないままだった。前半我慢できなかったと感じています。
ただ、前半のうちにディフェンスで修正できた部分もありました。(2ndステージ第2節の)NTTコム戦で勝ってから大崩れしなくなった。そういう中でも、最後勝ちきれないというのが今の力なのかなと、悔しいですけれど思います。点差も僅差でしたが、それ以上に、勝てるのにな、という思いが強い。
最後のアタックでは、ミスマッチを狙っていて、実際それもできていた。あと前に出る勢いが必要だと思ったので、僕なんかはSOの位置に入って、ボールをもらって前に出るというイメージを持っていました。相手からすれば、バックスのスピードのある選手は怖いはずだという思いもあり、ボールを触ってディフェンスをかき乱せればと考えていたのですが。ただ、あの時間ボールをキープして、アタックしていったチームは、あきらめない姿勢を見せていたと思う。
振り返るとすれば、前のプレーでアドバンテージが出た後も攻めたけれど、レフェリーとコミュニケーションをとって、もう少し早くペナルティをもらっておけばよかったのかなとは思う。
残り3分で5点差…。追いかけるチームが逆転するシナリオには乗せられた。勝ちきれませんでしたけど、そういう部分では粘りは出せるようになってきたと思う。
よく粘ったので、これを次の試合につなげたい。2週間空くのはポジティブに切り替える上でもいいこと」

HO滝澤佳之

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「入りが悪かったですね。前半のセットプレーが良くなかった。アグレッシブさも足りなかった。向こうのほうがあった。(100試合出場達成について?)自分はあまり意識していなかったんですけど、周りの人が声をかけてくれて。ただ、まだ満足はしていないですね。結果が出ていないと思うんで。最終的な結果を出したいです」

LOロトアヘア ポヒヴァ大和

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「あまり動きがよくなかった。今日の試合、どうすればよりよい結果につながったのか、まだ判断がついていない。走り足りなかったのか…。2ndステージに入ると、互いに気持ちがより入った試合になると感じました。もう負けられない。さらにワークレートを上げてチームのために多くの仕事をしたい」

SH山本昌太

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「アタックでもディフェンスでも、我慢しきれなかったところはあった。敵陣に攻め込んでも獲りきれなかった。近鉄さんはゴール前に来たときは確実にスコアしていました。あまり自分たちの形がつくれず、中盤でのアタックなどいつも練習でやっていることができなかった。なかなか前に進めなくて。
まずは相手のエリアに入るというのは意識していた。個人的にはクイックスタートなども思いきっていくようにしました。今日のような拮抗した試合では、そういう持ち味をもっと出していかないといけないなと感じました。
もう勝つしかないので。2週間しっかり練習します」

CTB・SOピータース ダニエル

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「(最後はSOに入って、アタックの起点になった?)リコーのアタックの形で、トライを獲ろうと声を掛け合って攻めた。滝さん(滝澤佳之)の100試合目を勝って祝いたいと、アタックの強い選手が足の止まった相手のところを狙っていたけど崩せなかった。
ここ数試合はいい感じで戦えている。試合のスタートに相手に獲らせすぎなければ勝てるはず」

WTB長谷川元氣

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「グラウンド上では『ディフェンスから』と声をかけ合っていた。前に出て、身体を当てていこうと。でも、前半自分のディフェンスミスでピンチを招いた場面もあって…。(プレッシャーを受けながらも競り合いに持ち込んだ?)チームが後ろ後ろへ下がってしまうのはだめだと思って、切り替えてディフェンスすれば相手もミスを犯して、こっちに流れがくると信じてプレーしていました。
ただうまく波をつくれなかった。敵陣まで攻め込んでもトライが獲れなくて。最後の獲りきる形ができなかった。そういうところが課題なのかなと思います」

FB高平拓弥

「(最後のアタックでは、数回のボールタッチながら突破を図っていった?)アタックは落ち着いてできました。スペースが僕のところにあって、近鉄さんのフォワードが前に出てきたので、狙いどころだと感じていました」

 次節は年明け1月5日(日)、14時15分キックオフの九州電力キューデンヴォルテクス戦(福岡・レベルファイブスタジアム)。我慢のシーズンではある。だが、リコーが何かをつかみかけているのは間違いない。日本選手権出場に向かって戦い抜く2ndステージ残り3試合、さらなるご声援をよろしくお願いいたします。


(文 ・ HP運営担当)

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