2013-2014 トップリーグ 1stステージ第3節 対 キヤノンイーグルス

2013.09.18

大観衆が見守るホームゲーム。ディフェンスで勝負したリコーが初勝利

 第1節が同点、第2節が1点差。2試合続けて接戦を戦い抜いたリコーが迎えた第3節の相手はキヤノンイーグルス。東芝ブレイブルーパス、パナソニックワイルドナイツとこちらも接戦を演じ、1stステージプールBの台風の目となっている相手だ。

金曜のナイトゲームに訪れた両チームのファンは約10,000人。残暑の秩父宮ラグビー場は、観衆の熱気でいっそう熱を帯びた。

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 リコーのキックオフで試合が始まる。蹴り返しがタッチを割り、敵陣のラインアウトからリコーがアタック。LOカウヘンガ桜エモシがこの日も果敢にラインに突入していく。連続攻撃を仕掛け、SO河野好光が左中間からライン裏へゴロキック。しかしこれはうまく拾えずリコーのノックオン。

自陣右中間のスクラムから、キヤノンがアタック。勢いのあるアタックでリコー陣内に侵入すると一気にゲイン。22mラインまで達する。だがリコーも冷静にタックルしランナーのスピードを落とすと、ラインを整えてディフェンスしていく。するとキヤノンにノックオン。リコーは最初のピンチをしのいだ。リコーは自陣右中間スクラムから、キックを蹴りエリアを取り戻す。

しかし、ハーフウェイライン付近のラインアウトでリコーにノックオン。左中間のスクラムからキヤノンがショートサイドに出しアタックを仕掛ける。リコーはCTBタマティ エリソンらが出足鋭く前に出てこれを止めると、キヤノンは右に展開。リコーはさらにディフェンスし、右サイドを狙ったランナーをタッチラインの外へ押し出した。

ラインアウトを得るが再びミスでボールはキヤノンへ。22mライン付近の攻防が続く。しかしこれもしのいでリコーのスクラムに。

リコーはキックでハーフウェイライン付近にボールを戻すが、回して攻めるキヤノンに対しハイタックルの反則。11分、キヤノンは左中間ハーフウェイラインを越えたあたりからペナルティゴールを狙ったがこれははずれた。

リコーは自陣からドロップアウトで試合再開する。しかしキヤノンのハーフウェイライン付近からのアタックに今度はホールディング。14分、ほぼ同じ位置からのペナルティゴールが決まり、0-3と先制を許す。

再開後、リコーは相手のキックミスで敵陣のスクラムを得ると、これをフォワードが力強く押しモールに移行。さらに押しオフサイドを誘うと18分、正面やや右22mライン付近からペナルティゴールを狙う。このキックがポストに当たり跳ね返る。リコーサイドにボールが入り、これを回して攻める。だが左サイドタッチラインぎりぎりのラックでキヤノンがターンオーバー。キックを蹴り込まれ、エリアを奪い返された。

それでも22分、SO河野が自陣から蹴ったパントの落下点にWTB星野将利が走り込みタックル。ノックオンを誘い敵陣でチャンスをつくる。スクラムからアタックを仕掛けるとキヤノンにハンド。リコーはタッチキックを蹴り、ゴール前ラインアウトからトライを奪いにいく。

しかし、ラインアウトでボールを奪われチャンスを逃す。さらに戻された場所からのラインアウトをもう一度奪われ、キヤノンに攻め込まれる。

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 だがここもディフェンスでプレッシャーをかけ、キヤノンのハンドリングミスを誘い決定的な場面をつくらせない。28分にリコーはFL森谷和博に替えて赤堀龍秀を送る。赤堀はLOに入り、ロトアヘア ポヒヴァ大和がFLへ。

その後ボールが互いを行き来するめまぐるしい展開が続いたが36分、リコーはキヤノンの連続ペナルティを突いてゴール前ラインアウトのチャンスを迎える。しかし、やや時間をかけて投げ入れたボールはノットストレート。スクラムからのキックでエリアを戻され、さらにラインアウトで再びボールを相手に渡したが、左サイドハーフウェイライン付近でターンオーバーに成功。勢いに乗って攻め込むとキヤノンがレイトチャージ。前半終了直前の39分、正面やや左15m付近からペナルティゴールに成功。

前半最終盤でキヤノンは再びアタックを見せたが、これをしっかり止め3-3のまま前半終了。リコーはディフェンスの安定感が光る一方で、ゴール前に攻め込んだ際のセットプレーで精度を欠いた。

後半の入りを守りきり、チャンスを確実に生かしペースをつかむ

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 後半はPR藤原丈宏と柴田和宏が交代してスタート。キヤノンのキックオフボールを回したリコーは自陣でノックオン。いきなり正面22mラインの内側のスクラムというピンチを迎える。ここでキヤノンは左サイドに展開しトライを狙うが、タッチライン際でノックオン。リコーは課題の後半の入りのディフェンスでも集中力を見せる。

だが、ボールを回して攻めるキヤノンは、リコー陣内で繰り返しチャンスをつくっていく。一方のリコーはキックでエリア回復を狙いつつも、ディフェンスでは受けに回らずアグレッシブに止めにいき持ちこたえる。ゲームキャプテンの役割も板についてきたNO.8野口真寛は、鋭く反応しターンオーバーを成功させ観衆を沸かせた。

リコーは10分、SH池田渉がこぼれ球を拾いキックでハーフウェイライン付近までボールを戻し、後半開始直後から続いた激しいキヤノンの攻撃をしのぎきる。

ハーフウェイライン付近のラインアウトからのキヤノンのアタックを、再びディフェンスでプレッシャーをかけノックオンを誘う。12分、HO森雄基に替わり滝澤佳之がピッチへ。

そしてグラウンド中央付近のスクラムから出したボールをCTBリキ フルーティが左サイドへキック。これは相手選手がボールに触れてタッチを割ったためリコーボールのラインアウトになる。

自陣深くのディフェンスの局面から一転、チャンスをつかんだリコー。ゴール前左サイドのラインアウトから展開。激しく攻めたてると、ほぼゴール正面でキヤノンにオフサイド。14分、リコーはペナルティゴールを狙いこれに成功。ワンチャンスを生かし6-3と勝ち越した。
リコーは15分にLO生沼知裕をマイケル ブロードハーストに、CTBエリソンを山藤史也に交代。

さらにキヤノンの蹴り込んだキックオフボールを回し、CTBフルーティが回転をかけたボールを蹴り込む。これが相手のミスを誘いノックオン。リコーは敵陣5m付近、左サイドのスクラムからボールを回すと、右中間から今度はSO河野がキックを蹴り込む。この処理でキヤノンはインゴールにボールを持ち込みグラウンディング。リコーに右中間ゴール前5mスクラムのチャンスが訪れる。

17分、スクラムを力強く押すと、NO.8野口がスクラムのオープンサイドを縦に突く。キヤノンの激しいディフェンスに遭ったが、FLロトアヘア ポヒヴァ大和らのサポートを受け、ゴールラインを突破。右中間に待望のトライが生まれる。ゴール間近のバックスタンドのリコーファンは総立ち状態。歓声に包まれたスタンドは揺れた。コンバージョンははずれたが11-3とリコーがリードを広げた。

キヤノンが意地の反撃。大声援を背にリコーが懸命のディフェンス

 流れはリコーへ。キックオフボールをキャッチしたFLカウヘンガが突進するとキヤノンにオフサイド。キックで敵陣に侵入すると、右サイドのラインアウトから展開、中央を縦へ。すると22mライン付近でキヤノンに再びオフサイド。22分、正面やや左からのペナルティゴールが決まり14-3とする。

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 さらに攻めるリコーは自陣からボールを回して前進。ボールを奪われる場面もあったが、すぐに獲り返し前へ。22mラインのラックから展開、LOカウヘンガのゲインを経て24分、WTB星野が1対1を制しインゴールへ。アシスタントレフリーへの確認の後トライが認められる。コンバージョンははずれたがリコーは19-3とさらにリードを広げる。

ここからキヤノンが反撃し、リコーはゴール前でディフェンスが続く。守るリコー、攻めるキヤノンに観衆が大声援を送り、秩父宮は最高潮の盛り上がりを迎える。

28分、LOカウヘンガがディフェンスにおける反則の繰り返しで10分間の一時的退場を科される。キヤノンはここでゴールを狙う判断を下し29分に成功。19-6とし、2トライ2ゴールで逆転可能な点差とした。

直後の31分、キックオフボールを追いかけたWTB渡邊昌紀がキャッチした選手にタックルし倒す。リコーは一気にラインを上げ、ボールを回すキヤノンに激しいプレッシャーをかける。リコーはブレイクダウンで反則を犯しフリーキックを与えたが、リスタートしたランナーを捕まえボールを奪いアタック。

そして、ゴール正面でSO河野からボールを受けたCTBフルーティが、グラウンドにボールを落とし左足を振り抜く。31分、これがポストの間を美しく射抜きドロップゴール成功。スコアは22-6となり、リードは再び16点に。32分にFB高平拓弥に替えてピータースダニエルがピッチへ。

だが簡単には終わらないのがトップリーグ。34分、攻め込まれたリコーはWTB渡邊が反則を犯し10分間の一時的退場。直後の速攻でトライを許し(コンバージョン成功)22-13。9点差はあったが、残り5分のほとんどを13人で戦わねばならない厳しい局面を迎えた。

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 キックオフ直後、攻め上がるリコーに対し、ここでキヤノンがオブストラクション。37分、FBピータースが左中間22mライン手前からペナルティゴールに成功し25-13。リコーはPR長江有祐を高橋英明、SH池田を山本昌太に交代。

大声援を背に、あきらめないキヤノンは全力で攻めてくる。残り3分、リコーはゴール前でディフェンスに追われた。しかし、途中出場のCTB山藤史也らのアグレッシブなタックルでなんとか守りホーンを迎える。ところが最後のマイボールスクラムで反則。フリーキックから攻めたキヤノンのフォワードが意地のトライを奪いコンバージョンも成功。25-20となったところでノーサイドの笛が鳴った。

リコーは今季初勝利。勝ち点4を獲得しプールB4位に浮上。キヤノンは最後のトライで7点差以内に持ち込みボーナスポイント1を獲得した。なお、マンオブザマッチはゲームキャプテン・NO.8野口が選ばれた。

「足が止まってきたとき、どう試合をコントロールしていくか」(SO河野好光)

神鳥裕之監督

「やはり簡単には勝たせてくれませんね。今日は過去2戦の問題を改善できたと思います。(ここまでのディフェンスの問題はタックルのスキルというより、連携の部分?)そうですね。全体のチームとしての統制というのでしょうか。小さな意思の確認のようなところのずれがあって、それがこの2試合の後半で出ていたので。本当に基本の部分ですよね。前を見る。コミュニケーションをとる。自分の立ち位置を相手に知らせる。そういうところの見直しを1週間やったのがよかったのかなと。(練習時間もディフェンスにかなり割いた?)どちらかというと、ディフェンスの練習が通常より多かったですね。
(前半キックを使っていったのはプラン通り?)もっとボールを動かしたいところではあったんですけど、前半の入りはキヤノンの勢いがあったので、河野にゲームメイクを任せながら、危ない部分はしっかりキックを使って戦おうと。後半はお互いに持ち味を出し合うことになると思っていたので、手堅い入りになった感じです。
(東芝戦に向けてひと言―)チャンピオンも経験しているチーム。特に何かするというよりも、自分たちのラグビーをしっかりやります」

ゲームキャプテン・NO.8野口真寛

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「終始ディフェンスがしっかりしていたこと。キヤノンを意識するのではなくとにかく自分たちがやってきたことをやりきろうとしたこと、あとはゴール前のチャンスで獲りきれたことが、今日勝てた理由になると思います。(キヤノンのSOアイザイア トエアバへの対処を意識しているように見えた。対戦しての感想は?)意識していたのは事実です。ただ、前節のパナソニック戦のようには来なかったというのが正直な印象。
あとはセットプレーでプレッシャーをかけたかったが、ラインアウトについては、かけられる形になってしまった。でもスクラムではプレッシャーをかけられたと思う」

LO生沼知裕

「ここ2戦自分たちのやろうとしていたプレーの精度が低く勝ち試合を逃していたので、相手がどうこうというより、自分たちのプレーをして監督はじめ、チーム一丸となろうと。今日の前半もそういう感じで臨みました。ディフェンスは修正しました。いいディフェンスをすればいいラインが引けて、いいタックルの準備ができるということを意識しました」

SO河野好光

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「後半の立ち上がりを守りきったのは今週やってきたことが出せたのでよかった。最初は危なかったんですけど。(今シーズン初のスタンドオフとしてのスタートだったが?)タマティとリキを両センターで使うというプランがまずあると事前に聞いていました。夏合宿はスタンドオフだったので、特に気にはならなかったです。キックでエリアをマネジメントすることと、相手の11番にロッキー(ハビリ)がいたので、近場のディフェンスを頑張ろうと。大きなゲインを切られることもなく守れました。それはよかったと思います。
今シーズンは春の試合では、ディフェンスからターンオーバーしてのトライというのが多かったんです。でも開幕から2試合はディフェンスの強みを生かせていなかった。今週は『ディフェンスから』を意識して練習してきて、まだ課題はいっぱいありますけど、それなりの合格点はもらえるんじゃないかと。
今日の試合でうちのフォワードの運動量は、他チームに負けていないと感じました。それでも今年はフォワードが走ってなんぼのラグビーをしているので、後半足が止まってきたときにどう試合をコントロールしていくかは、これからのポイント。次の東芝戦でも大事になってくると思います」

CTBリキ フルーティ

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「監督から求められていたのは、チームとしてのフィールドポジション(エリア)のコントロール。ちょっと前半は苦戦しましたが、後半は少しスペースを見つけることができました。前半苦しかったのは相手のプレッシャーもあるし、風が少しあったというのも影響しました。
(ドロップゴールは狙っていたのか?)少し試合を落ち着かせる必要がありました。スコアも割と近かったので、3点獲れば相手をきつい状態にできると思いました。リードしている間は、あらゆる方法で得点を重ねる可能性を考えています。
(この勝利でチームもこれで盛り上がると思うが?)盛り上がります。でもやらなければいけないことはまだあります。イエローカードも2枚出してしまったし、その結果最後は接戦になってしまった。接戦の中であのペナルティを犯していたらかなり厳しいことになっていたはずなので」

CTB山藤史也

「監督からは『嫌な流れのときがあるかもしれない。そういうときに入っても流れを変える役割を果たしてほしい』と言われていました。ちょっと空回りして、ディフェンスが余っているときに一人だけ詰めて抜かれたりして、そういう部分は気持ちのコントロールをしなきゃなと。CTBにタマティとリキがいて、マイケル(ブロードハースト)がリザーブにいたので、後半出番はくるだろうと思っていました。気持ちの準備はしやすかったです。
今日はチームが前向きになれるような結果が出たと思います。みんなハードワークはしてきたので結果が出てよかった。声援は本当にすごかった。こういうところでプレーできるのは特別なこと。ありがたかったです。いい経験になりました」

 3試合を終え、3位から7位までが勝ち点差2点以内にひしめく接戦のプールB。星勘定する余裕があるチームはなく、1stステージ後半は、これまで以上に全力でぶつかりあう熱戦が予想される。

リコーの次戦は2週空いて9月27日、今節と同じく金曜日の19時から秩父宮ラグビー場で行われる東芝ブレイブルーパス戦。昨シーズンの勝利を大観衆の前で再現すべく、リコーは躍動するはずだ。


(文 ・ HP運営担当)

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