2011-2012 プレシーズンマッチ 対 サントリーサンゴリアス

2011.10.15

昨季激戦を演じたサントリーとプレシーズンマッチ

 トップリーグ開幕まで3週間となる10月8日(土)、調整を進めるリコーブラックラムズ(リコーラグビ―部)は、サントリーサンゴリアスとプレシーズンマッチを行った。

昨シーズン第2節での対戦では、6点差をつけられホーンを迎えるも、プレーを切らず5分間アタックを継続。ゴール前のラックから縦の突進を繰り返すフォワードの姿と、秩父宮に響くリコーコール――その情景は公式戦全15試合の中でも、特に印象に残るシーンだった。

この日の"チャンピオン"とのプレシーズンマッチは、リコーにとってはトップ4という目標までの距離を計る重要な機会だった。試合前日の練習終了後、山品博嗣監督に少し話を聞く機会があった。

―― 手応えはありますか?

「ありますよ。大きなケガの数も抑えながらここまでこられたのは大きいですよね」

―― 先発するCTB小松大祐、LO山本健太は前週のサテライトリーグ(九州電力キューデンヴォルテクス戦)でも先発出場していました。

「小松は6月にケガをしてから試合に出ていなかったので、出場時間を確保しました。健太は調子がいい。以前よりも動きにスピードを感じます」

すべき準備を一つひとつ重ねていくことに集中できていそうな指揮官の表情には、充実感がうかがえた。

「毎日やることがたくさんあって、ワールドカップもチェックし切れていないんですよ、見ていますか?」

FWとBKがそれぞれ持ち味発揮。2トライでリードするも

photo

 12時、秋晴れのサントリー府中スポーツセンターにホイッスルが鳴る。CTB金澤良のキックで試合が始まった。ボールが左サイドへ飛ぶと、落下地点のボール争奪でサントリーがオブストラクション。リコーはタッチキックを蹴り、左サイドゴール前でラインアウトのチャンスを得る。

これをキープするとリコーはモールをつくって力強く押す。ゴール左にLOカウヘンガ桜エモシがトライ。開始2分、早くもリコーが先制する。コンバージョンもFB河野好光が決め7対0。

次の得点はサントリーに。6分、リコーのノックオンで得たリコー陣内5m付近のスクラムから展開すると、接点でリコーにノットロールアウェイの反則。サントリーは素早いリスタートから左サイドでディフェンスラインを突破。ボールをつなぎ15番が左中間にトライ。コンバージョンも決め、7対7の同点とする。

 トライを返されたが、リコーはペースを失うことなくプレー。10分、ゴール前まで攻め込み、またライアウトモールでトライを狙う。サントリーはこのモールに手を焼き引き落としてペナルティ。リコーにチャンスが続く。

いったんボールを中央付近まで戻されたが、再びサントリーに反則。右中間ハーフウェイライン付近でスクラムを得たリコーは、ボールをバックスに回しアタックを仕掛ける。

2度目のフェイズで、左サイドから中央に戻すと、うちに切れ込む動きで、SOタマティ・エリソンからのパスを受けたCTB小松大祐が、サントリー陣内10mライン付近でゲインラインを突破。ゴール前まで走り抜けるとゴール前でサポートに走っていたFL覺來弦にパスし、ゴール左にトライ。12分、コンバージョンも決まり14対7。フォワードとバックスがともにいい動きを見せ、リコーが再びリードした。

しばらく一進一退が続いたが、20分を過ぎたあたりからサントリーがリズムをつかむ。素早い球出しで、リコーのディフェンスラインが整うよりもはやくアタックを仕掛け、チャンスをつくっていく。

21分、左中間22mライン付近のスクラムから10番がボールを持ち中央を突破。正面にトライを決める(コンバージョン成功)と続く23分、キックオフボールをキャッチしたサントリーがボールを回し攻め上がる。自陣10mライン付近から縦に走りラインを突破、最後列に下がっていたSOエリソンがタックルを決めたが、サポートの選手が駆けつけ、サントリーが攻撃を継続。最後は14番が左サイドから中央に回り込み、トライを決めた。コンバージョンも決まり、14対21とサントリーが勝ち越す。

photo

 さらに26分、サントリーは再びキックオフボールをパスダミーなどを効果的に決めてつなぐ。リコーディフェンスを翻弄し、プレーを切ることなくボールをインゴールエリアまで運びまたもトライ。コンバージョンも決まり14対28。

21、23、26分と、5分の間で3トライ21点を奪われたリコーは33分、FB河野好光が最後列からのハイパントを上げチェイス。河野がプレッシャーをかけるとボールはこぼれ、これをリコーがキープ。ハーフウェイライン付近でボールをつなぎ、タッチを割ったが、右サイドのラインアウトでFL覺來がボールを確保し、ラックに。そのブラインドサイドをWTBロイ・キニキニラウが抜け一気にインゴールエリアへ到達しトライ。コンバージョンは外れたが19対28とリコーが差を詰める。

リコーは37分に22mラインまで攻め込み、バックスにパスを回しラインブレイクを狙ったが、これをインターセプトされ、14番が独走。NO.8マイケル・ブロードハーストがかかとに手を伸ばすが届かず、さらにCTB小松が追いすがったがこれも届かず、トライを奪われた。

さらに、前半終了直前の41分にも攻め込んでつくったラックでボールを失うと、攻守切替の隙を突かれ突破され、7番にトライを許した。

前半を終えて19対42と、大きくリードを奪われる恰好になった。

クイックな球出しに翻弄された前半の修正目指す

photo

 ハーフタイム、主にディフェンスに関する意見が飛び交う。
「クイックボールをサントリーが出すか、うちが出させないか。それがこの試合の決め手。密集に食い込みボールを簡単に出せないようにしよう。現にそれができているときには、相手は思い通り攻撃できていない。点差はあるが、またここから始める気持ちで」。山品監督は選手にそう伝え、後半のピッチに送り出した。CTB金澤良に替わり山藤史也が入った。

しかし後半最初の得点をサントリーが奪う。キックオフボールの処理でリコーに反則。サントリーはスクラムから攻撃を仕掛ける。リコーはさらに反則を重ね、ゴール間近の右サイドでスクラムを与えると、サントリーはラックに移行し、左に出したパスを受けた2番が縦に抜けトライ。コンバージョンも決まり19対49とする。

点差は開いたが、リコーは粘り強くボールをつなぎフェイズを重ねて、サントリー陣内に攻め込もうとする。すると12分、サントリーが倒れ込みの反則。タッチキックを蹴ったリコーは、ゴール前ラインアウトのチャンスを迎えるが、ここで再びサントリーに反則。

左サイドタッチライン際、ゴール前のスクラムを得ると、SH池田渉からSOエリソン、FB河野とボールを回し、河野が俊敏性を生かし、逆サイドを突く。右サイドタッチライン際でディフェンスにつかまったが、倒れずに粘り、内側をサポートしたWTBキニキニラウにパス。キニキニラウがゴールラインを越えてトライ。コンバージョンは外れるも、バックス陣の好判断が光るトライで24対49とする。

さらにチャンスは続く。相手キックオフボールを確保し、SH池田が相手ディフェンスラインのギャップを抜けゲイン。サポートしたHO滝澤佳之がボールを受けるとディフェンスに突っ込み粘る。ラックを経てWTBキニキニラウ、FB河野とバックスのランで前進し22mラインの内側に侵入。ここでサントリーにオフサイド。リコーはタッチに蹴り、ゴール前のラインアウトからトライを狙う。しかしボールを奪われ、このチャンスを逸した。

その後、22分にボールをつないで攻撃を継続、リコー陣内に攻め込んだサントリーが22mライン内側左中間にラックをつくると外にボールを出し、左隅に14番がトライ(コンバージョン失敗)。

さらに31分には、リコーが攻め込むも、反則を重ねて自陣中盤まで後退。そこからアタックを継続されゴール前のラックから再び外に展開され、再び左隅にトライ。コンバージョンも決まり24対62。

リコーは終盤交代出場したHO野口真寛やWTB横山伸一らフレッシュな選手が果敢なプレーを見せたが、前半に比べ反則、またラインアウトを失うケースが増え、ゴール前まではボールを運びながらもトライは奪えず、結局このままのスコアでノーサイドを迎えた。

「乗り越えられるという自信はある」

photo

 キャプテン・滝澤佳之は試合終了後、最後までグラウンドに残り、メンバーやコーチ、関係者らと最後までコミュニケーションを図り、この試合を振り返っていた。
「完敗っすね。一つひとつの精度が高い。
接点の激しさでは負けてはいなかったと思うんですけどね。でも、その一歩先にいかなきゃいけないのかな、と思いましたね。激しさはみんな持っているので、リロード(守備陣形の整備)のはやさも…」
滝澤は悔しそうな表情を隠そうともしない。
「合宿もいい感じで仕上がって、チームは順調に仕上がっていると感じながら自信を持って臨んだ一戦で、これだけ点差をつけられたのはすごく悔しいです。
でも、自分たちがやろうとしているのは、そんな簡単なことじゃないということを再確認できたと思います。今日、よかったです。自分たちの位置が確認できて。
今日の負けは、選手個人個人がしっかり受けとめて、その答えをグラウンドで表現してほしい。精神的なショックは大きいけれど、絶対にチームとして成長して、乗り越えられるという自信はある。接点でのファイトもそうだし、アタックではいい形でトライも獲れていたし。またこれをいいスタートにできれば」

接点での激しさで言えば、前週から続けて先発出場の機会を得たLO山本健太もよく目立っていた。密集に身体をねじ込みボール争奪に絡んでいく姿を繰り返し見せた。
「システムであったり、テンポのよさであったり、そういうところでチャンピオンチームとの間に経験の差はあったかと思います。でも、個人的には1対1のコンタクトの部分、体を当ててボールを遅らせるのは、できていた面もあった。修正する部分は修正しなければいけないけれど、手応えも感じてはいます」
乗り越えようとしている壁の高さを実感せざるを得ない結果を、正面から受けとめつつも「絶対に乗り越えられる」とキャプテン・滝澤は信じる。この試合の悔しさを晴らす機会は間もなくやってくる。"38点"の差を。

(文 ・ HP運営担当)

PAGE TOP