2010-2011 トップリーグ 第8節 対 トヨタ自動車ヴェルブリッツ

2010.12.02

「シンプル」を心がけて臨むトップリーグ再開初戦

 1ヵ月の休止期間を経て再開したトップリーグ。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は、期間中にサテライトリーグ2試合を闘うなどして、試合感覚を保ちながら調整を続けてきた。この期間、チームで話し合われたことについて、HO滝澤佳之は言う。「シンプルなところに戻ろうっていう話をしましたね。難しいことするんじゃなくて」。

再開後初戦の相手はトヨタ自動車ヴェルブリッツ(トヨタ)。昨シーズンは0対52というスコア差で敗れている。
「個人としてはすごく楽しみなんですよ。昨年の点差が点差なので、今の時点でどれだけ近づけているかを計るいい機会。思い切りチャレンジしたい。ディフェンスですね。トヨタは大きいチームなので、受けに回らず前へ、前へ。そうやって止めて行ければ、チャンスは生まれる。リコーらしい試合ができるはずです」(HO滝澤佳之)。

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 12時、青空の秩父宮ラグビー場に試合開始のホイッスルが響く。トヨタのキックで試合が始まる。左中間10mライン上落ちたボールを、トヨタがノックオン。リコーボールのスクラムで試合が動き出す。SO河野好光がハイパントを上げるとFL川上力也が飛び込んでセーブ。ラックから出たボールを河野が再び敵陣右サイド深くに蹴り込むと、トヨタが拾って蹴り返す。

ハーフウェイライン付近のラインアウトをトヨタが奪う。リコーは攻撃を受けるが、こぼれ球をLO相亮太が拾ってターンオーバー。NO8ハレ・ティーポレとFLマイケル・ブロードハーストがボールを力強く運び押し戻す。蹴り合いの後、自陣のラックから出たボールをつなぐと、今度はCTB金澤良がうまいコース取りで走りラインブレイク。開始直後から、鋭いアタックを繰り返すリコー。コンディションの良さを印象づける。

しかし最初の得点はトヨタに入る。自陣からFBタマティ・エリソンが上げたパントをキャッチした相手にWTB小松大祐がタックル。CTB山藤史也がこぼれたボールをセーブしラックにする。しかしここでLO相が倒れ込みの反則。トヨタはタッチキックを蹴り、リコー陣内に侵入。

12分、トヨタは右サイド10mラインを超えたあたりのラインアウトから展開。中央で縦への突破を図った10番をリコーのディフェンスが捕まえたが、リリースしたボールを13番が拾いすかさずつなぐ。左サイドに走り込んでいた11番にパスを出すとそのまま抜け出し、回り込んで中央にトライ。コンバージョンも決まり0対7となる。

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 さらに15分、トヨタはリコー陣内左中間をドライビングモールで前進。22mライン手前でボールを出すが、通ればラインブレイクかと思われたパスにCTB山藤が反応するがノックオンに。トヨタがスクラムからアタックを仕掛けるところのディフェンスでリコーは痛いオフサイド。17分、トヨタは右サイドゴール前にタッチキックを蹴るとラインアウトモールで押す。リコーは競らずにゴール前のモールディフェンスに備えたが一気に押し込まれ2番がトライ。コンバージョンも決まり0対14。

2トライで勢いに乗るトヨタはリコー陣内に侵入を繰り返す。しかしリコーも冷静に対処する。FBエリソンがキックを敵陣に蹴り込むとキックカウンターを狙うトヨタのバックスに出足よく迫り捕まえるとトヨタが反則。NO8ティーポレがタップキックしすかさずリスタート。縦への突破を図ると、ノットテンメーターバックで再びトヨタにペナルティ。SO河野が左サイドに蹴り出し、22mライン内側でのラインアウトというチャンスを得る。

これをキープしたリコーはアタックをしかけるべくSH池田渉がボールを拾う。この池田へタックルしたトヨタにノットロールアウェイの反則。25分、ほぼ正面の位置からのペナルティゴールを河野が決め3対14とする。

再開後数分はトヨタが激しく攻めたてる。リコーはこれを阻んでクイックなアタックをしかけるべく30分、PR高橋英明に替えて伊藤雄大、LO金泳男に替えて金栄釱を送る。リコーゴール前の攻防が続くが、しつこいディフェンスに焦れたトヨタがノックオン。

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 リコーはスクラムからSO河野の大きなタッチキックで一気に敵陣へ。トヨタはこれをクイックスタートしたが、リコーはタックルで倒しカウンターアタックを許さずLOに入ったブロードハーストがボールを奪う。このボールを展開しFBエリソン、CTB金澤、WTB小松大祐とつなぎ左サイドをゲインすると22mライン付近にできたラックでトヨタがオフサイド。32分、SO河野がペナルティゴールに成功。6対14と点差を縮めた。

その後トヨタはさらに攻めたがハンドリングエラーが相次ぎ、前半の終盤はリコーがペースをつかむ。WTB星野将利、CTB山藤らバックスが鋭いアタックを繰り返し相手ゴールに迫るも惜しくもトライはならず。しかし、後半への期待を抱かせるアタックが多々見られた。

脅威与えるアタック繰り返し、逆転に成功

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 後半も互いに長所を示し攻め合う序盤になったが、先に得点を奪ったのはリコー。6分、中央22mライン手前付近まで持ち込んだトヨタの選手にCTB山藤がタックル。倒したところにFBエリソンが来てボールを奪い去る。ランでゲインしたエリソンは自陣10mライン付近でグラバーキックを放ち、ボールは誰もいない敵陣右中間深くに転がる。蹴ったエリソンはそのまま一直線にボールを追うと、22mライン付近で戻るトヨタディフェンスを追い抜きボールに飛びつきマイボールとする。

 エリソンに続いてよく走っていたHO滝澤、NO8ティーポレがサポート。相手をブロックしボールを奪われるのを防ぐとSH池田がボールを素早く拾い出し、SO河野、WTB小松、その外側にオーバーラップしていたCTB金澤と順目に丁寧につないでタッチライン際を突破し9分、左隅にトライ。コンバージョンも決まった。FBエリソンの個人技とそれに反応し、連動した他メンバーによる鮮やかなトライで、リコーは13対14と1点差に詰め寄った。

一気に逆転したいリコーだったが、激しさを増すトヨタの攻撃に自陣に押し込まれる。よく守ってノックオンを誘いマイボールのスクラムにするも、FBエリソンのタッチキックがやや短めになると、自陣10mライン付近のラインアウトでオフサイド。タッチキック後のトヨタのラインアウトからの攻撃で再び反則。そして14分、ゴール前のラインアウトモールを押し込まれトライを許す。ミスと反則2つを重ねて失点。避けたい形でトライを奪われ再び点差を広げられた。コンバージョンははずれ13対19。

しかし今度はトヨタが反則を繰り返す。ハイタックルによるペナルティキックで敵陣深くに侵入したリコーはラインアウトからアタック。トヨタはタックルを決めボールを超えた選手が、戻り切らずに再び密集に加わりオフサイド。リコーはショットを選ぶ。18分、22mラインの内側ほぼ正面の位置からのペナルティゴールを決め16対19。

食らいついていくリコーだったが、直後の20分に自陣ゴール前でラックに横から入る反則。今度はトヨタがペナルティゴールに成功し16対22。再び差が広がると、リコーはNO8ティーポレに替えて覺來弦、CTB山藤に替えてロイ・キニキニラウを送る。

キックオフで試合が再開されると、リコーは自陣で相手のアタックをターンオーバー。CTB金澤が右サイド深くへキックを蹴り込む。そのボールをCTBキニキニラウがチェイス。トヨタのディフェンダーはゴール前での1対1の状況で危険を冒さず、短く蹴りタッチに逃れる。

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 敵陣ゴール前でのラインアウトをFL金栄釱がキャッチ、SH池田からSO河野へのロングパスが通る。そして中央を縦に走り込んだCTBキニキニラウにボールが渡ると相手タックラーを2人なぎ倒し、ゴールに向かって一直線に抜けトライ。コンバージョンも決まり23対22。リコーはついに逆転に成功する。さらに26分には、敵陣中央で突破を図ったSO河野にトヨタがハイタックル。河野は自ら確実にペナルティゴールを決め26対22。逆転、そして加点――近づく勝利の気配にスタンドのファンの声援も大きくなる。

勝負所での決定力――意地見せたトヨタにわずかに及ばず

 だが、ここからトヨタが意地を見せる。30分、キックの蹴り合いを経て、ボールを回しアタックを仕掛ける。FL覺來がこぼれ球に鋭く反応したが、わずかにオフサイドの判定、覺來が天を仰ぐ。

ここでスクラムを選んだトヨタは左に展開。ラック戦となり、リコーが人数をかける状況ができるとすかさず右に展開。31分、わずかにずれたCTBキニキニラウとWTB小松の間のギャップを抜けた13番がトライを奪う。コンバージョンも決まり26対29と再逆転。チャンスをものにする勝負強さを発揮する。

リコーもあきらめず、37分にはCTBキニキニラウが自陣から縦に抜けビッグゲインすると、ボールをつなぎFBエリソンがディフェンスをかわし左サイドを走る小松へパス。抜ければトライと思わせたがわずかにタイミングがずれ小松が減速。スペースを消され前進できずトライは奪えなかった。さらにボールをつなぐが中央付近で痛恨のノックオン、相手ボールに。結局26対29のままノーサイドの笛。リコーは80分間相手を上回る高いフィットネスを維持して見せたが、トヨタも集中力を切らさず守り切った。

 昨シーズンに比べれば大きく点差を詰め、7点差以内の敗戦で得られるボーナスポイント1を確保した。トッド・ローデン監督兼ヘッドコーチ(HC)も「やらなければいけないことはたくさんあるが、成長を感じている」と評価した。

「アタックについては、もう少し精度を高めたいけれど、前半戦よりはよい仕掛けができていると思う。ディフェンスは、相手はバックスが縦に来て、そのあと大きなフォワードが順目に走って来るっていうのは想像していた通り。でも前半はバックスのところで差し込まれてしまい、フォワードにいいタイミングで走られてしまった。勝負所のペナルティ? (オフサイドは)一歩でも前で止めようという気持ちから来ている。でも、点差や時間帯を考えるスマートさはもう少し必要かもしれない」(CTB金澤良)

「ウインドウマンス明けは、どのチームも強化してくる。前半戦の最後の試合(豊田自動織機シャトルズ戦)を最低限のレベルと考え、さらにそのもう一歩上のレベルで闘いたいというのはあった。そこはできたのかなと。今日もそうですが、強いチームにも後半は勝っている。フィットネスはあるので、後半もボールを回せばいい形で出すことができるという自信はついている。それを前提に、前半をどう闘うかゲームマネジメントについてみんなで考えたい」(SH池田渉)

後半の反撃とラインアウトモールでの失点。チームの長所と短所が再度見えた今節の試合。得た自信で明確になった課題の解決にいかに臨むか――。すべきことを深く理解しているからか、敗戦にも選手達の表情に迷いは無い。次なるチャレンジは12月5日(日)13時より高知・春野総合運動公園陸上競技場で行われる神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦。リコーラグビー部は今シーズン貫いてきた自分たちのラグビーをぶつけるだけだ。

(文 ・ HP運営担当)

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