2010-2011 トップリーグ 第6節 対 東芝ブレイブルーパス戦

2010.10.21

王者に迫れるか? チームの成長が問われる一戦

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 前半戦も残り2試合。トップリーグ第6節、リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は昨年の王者、東芝ブレイブルーパス(東芝)に挑んだ。昨シーズンのゲームでは、敗れはしたが(21対36)後半に追い上げを見せた。自分たちの力を出し切れば、強豪とも十分わたりあえる――敗戦の悔しさを味わうとともに、自分たちのラグビーを信じる気持ちを強くした。

あれから1年を経て、リコーラグビー部はさらなる進化を果たしているのか? 王者・東芝戦は言わば今シーズンの"中間試験"と言えた。

13時、秋晴れのニッパツ三ツ沢球技場に試合開始の笛が鳴る。CTB金澤良のキックが、左サイドに蹴り込まれる。ボールはリコーへ。中央で最初のアタックを仕掛ける。ここはノックオンで東芝スクラムに。

キックなどで前進した東芝はリコー陣内へ。リコーのラインアウトから出したボールに出足鋭く東芝の選手が迫り、左サイドでボールを奪われる。しかし東芝もノックオン。リコーはスクラムから出たボールをキックしエリアを奪い合う。これを制し、東芝陣内でのマイボールラインアウトを得る。

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 リコーはマイボールをキープして展開。アタックを繰り返す。東芝はラックに人数をかけず、ディフェンスラインを整えて待ち構える。密集からボールを出してはアタックするリコーと的確に捉える東芝。22mライン付近で攻防戦が続いたが、リコーは焦らず粘り強く当たっていく。すると、東芝はボールを奪うも直後にノックオン。ゴール正面でリコーのスクラムに。ここからSOスティーブン・ラーカム、WTB星野将利、CTB金澤とつないでラインブレイクを狙う。このアタックで東芝がオブストラクション。9分、FB河野好光が左中間よりペナルティゴールを決め、3対0とリコーが先制する。

試合再開のキックを上手く処理したリコーは、SOラーカムが自陣22m付近から右サイドのスペースへロングキックを放ち、敵陣深くで弾みタッチを割る。得点直後のビッグゲインで攻撃のムードが高まる。

22mエリアのラインアウトのこぼれ球にHO滝澤佳之がいち早く反応。拾わずダイレクトでゴール方向へ蹴り込む。このボールに東芝ディフェンスが追いついたところに、チェイスしていた滝澤がタックル。ボールはこぼれタッチを割り、今度はマイボールラインアウトに。これをキープしたリコーはゴール正面でラックをつくり、NO.8ハレ・ティーポレが縦に抜けかけたが惜しくもオフサイド。リコーがチャンスを逃す。

東芝にペース奪われ、3トライ許す

 東芝はペナルティキックを大きく蹴り出し前進。13分、ハーフウェイライン左サイドのラインアウトからアタックし、ディフェンスライン中央付近をブレイク。11番が左サイドから一気にインゴールへ達し、回りこんで中央にトライ。コンバージョンも決まり、3対7とする。リコーは攻守切り替えの隙を突かれるかたちになった。

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 互いに得点を取り合うと、蹴り合う時間帯に。リコーは精度の高いキックを放ち前進するも、その後ミスや反則が出て決定機をつくれない。ただし、ラインアウトには安定感が見られ、相手に得点を許すこともなかった。膠着状態が続く。

試合が動いたのは27分。ハーフウェイライン手前のラインアウトから、リコーはタッチライン際へパント攻撃をかけるが、ダイレクトタッチに。ボールは戻され、今度は東芝がラインアウトから攻撃。これを止めに行ったSOラーカムにハイタックルの判定。

東芝はペナルティキックを左サイドへ蹴り出し、ゴール前のラインアウトとなる。リコーにオフサイドがありやり直しとなった二度目のラインアウトを東芝はキープ。左中間をモールで押し、ラックに移行する。そして選んだのは展開。11番、15番とつないで右隅へトライ。コンバージョンも決まり3対14。リードが拡がった。

この後もリコーは、反則でリズムを崩し、東芝ペースで試合が進む。33分にはゴール前でオフサイドを犯し、そのリスタートから6番にトライを奪われた。コンバージョンも決まって3対21。リコーラグビー部は、20分過ぎから失ったペースを取り戻せないまま前半を終えた。

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ハーフタイムには、リコーブラックラムズのホームグラウンドがある東京都世田谷区内で活動するキッズチア『ピンキーズ』が、 リコーブラックラムズ 対 東芝ブレイブルーパス戦の応援に駆けつけ両チームを応援してくれました。

持ち味見せ、トライ連発! 逆転に成功

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 選手交代は行わず後半へ。リコーは前半と同じように精度の高いキックを見せ、チャンスをうかがっていく。6分、中央付近からWTB小松大祐が突破を図る。22m付近で捕まるが、すぐさまリコーはボールを拾ってつなぐ。FB河野が右サイドのライン裏へキックすると、拾った相手に向かってLO金泳男が突進。東芝は、その場でタッチに出す。ラインアウトからの攻撃ではノットロールアウェイを犯したが、いい形の攻撃だった。

9分、リコーが動く。CTB守屋篤に替えてタマティ・エリソン、NO.8ティーポレに替えてカウヘンガ桜エモシ、LO金に替えて相亮太。3選手を一度に替え、トライを奪いにいく。

直後の11分、自陣ラインアウトで相手に取られたボールを、入ったばかりのCTBエリソンが奪い返す。密集からこぼれたボールを、SOラーカムが22m付近から前方へキック。これに反応したWTB星野がボールを拾うと快足を飛ばす。ゴールラインそばで相手選手のタックルを浴びながらもインゴールエリアに到達し、右隅にトライ。さらに角度のあるコンバージョンをFB河野が決めた。7点返し、10対21に。

選手交代とトライでリコーは勢いに乗る。15分にはLOに入った桜エモシが、力強い突破で相手ディフェンスを崩し、17分には自陣での東芝スクラムのこぼれ球をSOラーカムが拾い、スクラムサイドをゲイン。東芝陣内に侵入するとWTB星野へパスを通す。さらにフォローについていたCTBエリソンにボールをつなぎ、左隅にトライ。コンバージョンも決まり17対21。リコーは4点差に迫る。

23分には東芝陣内のスクラムから、CTBエリソンがサイドを突くとSH池田渉につなぎゴールに迫る。前半は崩しきれなかった東芝ディフェンスラインを、リコーの選手が鋭く突き破り続ける。

そして27分、SOラーカムが左サイドへの絶妙のタッチキック。このラインアウトで東芝がノットストレートの反則。左中間22mライン上のスクラムが右に回ると、ディフェンスとの駆け引きの中、一瞬生じたスペースを見逃さなかったSH池田が鮮やかに抜け出す。そのまま左隅にトライして22対21。コンバージョンは外れたが、バックスのスピードを生かした3連続トライで逆転に成功する。

集中力見せた王者東芝、意地のモールトライ

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 1点差で残り10分――。ここ数試合、最終盤を競り合い続けてきたリコーラグビー部は、金星を挙げるべく、これまで同様ハードワークを続ける。しかし、東芝も集中力を一気に高め、全力で攻める。29分、ゴール前のディフェンスで反則を繰り返したとしてPR長江有祐が一時的退出処分。リコーは14人で闘う展開に。

33分、東芝は自陣ラインアウトから展開しリコー陣内に侵入。ノックオンがありリコースクラムとなるがボールは東芝へ。リコーは焦ったかこの局面のディフェンスでオフサイド。東芝は迷わずゴールを狙い、これに成功。22対24と逆転する。

さらに35分、東芝はゴール前のラインアウトから展開、右サイドを得意のモールで前進。リコーも必死のディフェンスを試みるが、モールはゴールラインを突破。7番が接地したのを見て、レフェリーの手が上がりトライ。コンバージョンも決まり22対31。点差は9点に拡がった。

リコーは40分経過のホーン後もあきらめず攻める。ゴール前からジリジリ攻め上がり相手陣内に入ったが、突破に懸けたWTB小松が孤立、倒されてダウンボールを奪われた。奪ったボールを東芝が蹴り出したところでノーサイドの笛。リコーラグビー部は22対31で敗れた。

 リコーの持ち味と言えるスピードを生かした攻撃で大逆転。だが東芝の持ち味であるモールによって試合を決められた。

選手たちは「出し切った」のか? CTB金澤良は否定する。
「前半から、後半のようなプレーができていれば。前半はワイド攻撃時のブレイクダウンでバックスが受けてしまっていた。いつでも自分たちのラグビーを貫けないといけない。それができれば、どことだってやれると思う。東芝は僕らが逆転した後、集中力を高めて逆転してきた。そこが今の時点での差」

トライを決めたWTB星野将利も、当然満足はしていない。
「(チームの状態は?)高まっていると思う。でも4トライ奪えていないし、7点差以内でもない。ボーナスポイントを獲れていない。前半からもっと競って行けるチームにならないといけない。(そのために必要なのは?)気持ちだと思います」

王者東芝を後半終盤に逆転しながら、そこに満足感は見えない。今季続く接戦は選手を大きく成長させ、目標を高い位置へと置かせている。だが、混戦の様相を呈してきた今季のトップリーグ。勝ち抜くには、実戦を通じたさらなる成長が必要だ。

前半戦最後のゲームは10月23日(土)12時から、近鉄花園ラグビー場での豊田自動織機シャトルズ戦。成長を示し、後半戦に向け弾みをつける快勝を期待したい。

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試合終了後バックスタンドにてファンとの交流を実施し、選手は多くのファンとの交流を楽しみました。

(文 ・ HP運営担当)

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