2010.7.30~8.8 網走合宿総括レポート

2010.08.21

 今年も夏の網走合宿の季節がやってきた。北の大地でトップリーグ(TL)開幕に向け、一体感のあるチームに仕上げるための10日間を、リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は今年も無事終了し帰京しました。10日間で6試合という試合中心となった今回の合宿。選手の声からお伝えします。

6試合を闘ったリコーラグビー部

 今年の網走合宿は、昨年よりも日数はやや減る(12日→10日)ものの試合数は倍(3→6)に。試合を通じて色々な選手を様々なポジションで出場させ、コンビネーションを試す、確認する意図がうかがえる合宿となった。リコーラグビー部は7月30日の昼に網走入り。到着直後は曇り空、雨もちらついたが、その後は晴天に恵まれた。

到着翌日の31日には早くも試合を実施。13時からの三菱重工ダイナボアーズ戦はWTB長谷川元氣の2トライなど7トライを挙げて47対17(前半28対12)で快勝した。

15時からのサントリーサンゴリアス戦は、CTBロイ・キニキニラウのトライで先制するもサントリーが逆転。しかし、リコーラクビー部は後半に4トライを挙げて再度リードを奪い36対33(前半12対21)で昨季TL2位の相手に勝った。春からの好調を維持する2連勝で、チームの充実を感じさせる合宿のスタートとなった。

2日をあけ、8月3日には今季TLに昇格する豊田自動織機シャトルズと対戦。前半3トライを許しリードを奪われ、後半2トライを返すも17対24(前半7対17)で敗れた。

5日にはヤマハ発動機ジュビロと闘った。WTB小松大祐が3トライ、出場した前2試合でもトライを挙げていたCTBタマティ・エリソンが2トライを奪い両者譲らずの展開。一進一退の攻防を繰り広げ31対31(前半19対14)でドロー。手応えを感じさせる試合となった。

最終日前日の7日は、13時からホンダヒートと闘った。まとまりのあるディフェンスで粘り強く守ったが5対21(前半5対14)と敗戦。15時からのトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦は、試合開始直後から勢いよく攻め込み先制するも終盤引き離され惜しくも17対38で敗れ、リコーラグビー部は合宿中の全6試合を2勝3敗1分で終えた。

5人の選手に聞いた、それぞれの合宿

 今回の合宿をいかに過ごし、どんな手応えを感じたか。何人かの選手に聞いた。

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 まず、今季SOを務めることが増えている重見彰洋。
「試合にはトライアルという側面があります。ですが、試合を通じてチーム力を高めていこうという意識のほうがチーム内には強かった。チームスローガンのひとつ、"UNITY"の雰囲気があったと思います。
僕は今季、SOというコミュニケーションが重要なポジションをまかされることが多いですし、合宿では若手の多いチームで試合に出ることもありました。だから、メンバーとの意思疎通を去年にも増して大事にしていました。
トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)はチームは"Family"であるべきとよく話しますが、チームは信頼しあい、かつ厳しいことも言いあい、仲間のために体を張れる関係になっていると思います。この合宿もですが、"Family""UNITY"をすごく感じました」

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 NO.8川上力也は、試合の多い合宿では自己管理の大切さを学ぶべきだと話す。
「試合が多いと練習時間は短くなります。フィールドに立っていない時間が長くなる。その時間をいかに過ごすか。コンディショニングであったり、メンタルであったりをどう試合に向けて整えていくか。具体的な言葉で伝えられたわけではありませんが、タイムスケジュールを見て今回の合宿のテーマはそのあたりかな、と考えたりしました。個人の責任が問われる合宿だったと思います。
自分も身体のメンテナンスは心がけました。試合の前日や当日の朝にマッサージを受けてみて、試合でのパフォーマンスはどう変わるのかを比べてみたりしました。その成果は、連戦が続くTLで活かせればと思います」

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 LO生沼知裕は競争の存在、しかしそれがチーム内に絆を育ててもいると感じたという。
「僕のポジションには選手も大勢いて、競争は激しくなっています。勝ち抜かないと試合には出られません。でも、厳しい練習を一緒にやってきたことで、競争相手との間には強い絆が生まれています。試合までは激しく競い合い、試合では出場した選手を全力でバックアップする。僕のポジションに限らず、チーム全体にそういう関係があると感じます。
個人的には、合宿中の試合数が多かったのでゲーム勘を養うことができました。あと、外国人選手に負けないアグレッシブさが今自分に求められていることだと思うので、そこは意識しました」

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 新人としてリコーラグビー部の合宿に初参加したFB徳永亮は、この夏をチャンスと見なした。
「ケガのリハビリが長引いて、春シーズンは試合に出場できませんでした。試合中心の合宿と聞き、今年入ることの多いFBというポジションや、チームのフォーカスポイントを深く理解するチャンスだと思いました。
グラウンド外でも、試合前日と試合当日の夜には試合にフォーカスしたミーティングが行われ、ひとつの試合について考える時間がたくさんあったので、理解を深める助けになりました。
試合に出場した感想としては、TLの選手とは大学時代も対戦したことがあったので、そこまでの驚きはなかったのですが、やはり、ケガをする前の自分の動きと比べるとまだ物足りません。チームにフィットするためには、さらに調整が必要だと痛感しました」

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 出場する試合ごとに激しい当たりを見せ続けるCTB山藤史也は、チームファーストの意識をよりいっそう高めた。
「例えば、7日の13時と15時からの2試合、僕はどちらもメンバーに入っていました。どちらか1試合に集中できたほうがプレーしやすいのは当然です。かつての自分なら、多少は『その方がいいのにな』と思っていました。
でも今は、『対応できると思われたから役割をまかされたんだ』と心から思える。その状況下でいかに良いパフォーマンスを見せるかに自然と集中できています。チームファーストというテーマは常に意識してきたけれど、そう思えるようになったのは、自分の中に根付いてきたからかな、とは思います」

新人選手たちの声

 リコーラグビー部に入部し初の合宿となった若手選手たちも、それぞれ充実感や今後に向けた課題を口にする。

「練習につぐ練習というのがこれまでの合宿のイメージだったけれど、イメージが変わりました。社会人になって始めたPRというポジションにも慣れてきました」(PR松本友介)

「試合に出られた時間の中で、全て出し切れたかと言うとそうではありませんでした。次のチャンスでは出し切れるよう努力したいです」(PR井上雄介)
「このチームのメンバーとして、TLのチームとの試合に初めて出場して、コンタクトでも、テクニックでも、改めてレベルの違いを体験しました。リコーのやりかたにも慣れてきました。先輩たちにも親切にしてもらっています」(HO野口真寛)

「試合に慣れることができました。チームの外国人選手との生活から、プロ意識を学ばせてもらいました」(HO川口顕義)

「シーズン入る間際の頑張りどきだと思って臨み、チャンスをもらえたら活かすことを考えていました。試合が多く、これまでのキャンプとは違う感覚でした」(LO大山大地)

「試合に集中できました。毎日のミーティングで浮上したテーマを試合で試せたし、TLのチームと闘う中で自信もつきました」(SO岩田 光)

「試合中心の合宿は初めて。リカバリーの仕方や試合に向けた準備などで、学ぶことが多かったです」(CTB小浜和己)

「春の途中にしたケガから復帰して迎えた合宿でしたが、チームが何をしようとしているかを知り、それに合わせていく日々でした。ブランクを埋める上でいい期間になりました。TLの当たりを体感できたのも大きかったです」(WTB長谷川元氣)

 それぞれの選手が、それぞれの思いを抱えながら過ごした夏合宿。一本背骨のように通っていると感じられたのが「チームファースト」の意識だ。

チームを第一に想う気持ち、というテーマからは、組織に秩序や規律をつくりあげ、チーム全体に同方向を向かせる、という"大きな"目的をまず想像する。

だが、そうした想いが高め続けられると、グラウンド上でのパフォーマンスと直接的に結びつきはじめ、ボールの置き方ひとつといった"細やかな"プレーにも変化が生まれはじめる。

「去年、ローデンHCは、選手それぞれがあと1%ずつレベルアップすれば、チームはもっと上に行けると話しました。チームファーストの意識は、そこを補う重要な意識だと思う」(NO.8川上力也)

チームのために、で始まったリコーラグビー部の2010-11シーズン。その意識は深く選手の心に根付き、プレーのディテールを変えつつある。

(文 ・ HP運営担当)

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