2009-2010 春オープン戦 対 東芝ブレイブルーパス

2009.07.10

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 薄暮のグラウンドに両チームの選手が入場する。昨季のトップリーグ(TL)1位、東芝ブレイブルーパス。言わずと知れた強豪を迎え撃つリコーブラックラムズ(リコーラグビー部)の面々は、思いのほか落ち着いて見えた。

「メンバー個々が、一つになろうと努力していると思う。一体感はかなり出てきました。(それを土台に)自分たちがやるべきラグビーの形が共有でき始めているから、崩されかけたとしてもそこに立ち戻ればいいって思える。だから、強い相手であっても冷静に闘えていると思う」。

クラブキャプテンを務めるFB小吹祐介は試合後にそう言った。今思えば、リコーラグビー部が漂わせていた落ち着きは、「自分たちのラグビーへの自信」だったのだろう。

春季最後のオープン戦は、40分×3ハーフの変則マッチで行われた。

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 18:00、1本目がキックオフ。先手を取ったのは東芝。ラインアウトを連続で取りリコー陣内に攻め込む。6分には、ゴール直前右サイドのスクラムから左へ展開し、あわやトライという攻撃を見せた。11分にも、ゴール直前中央で東芝ボールのスクラムを得て、リコーラグビー部を再びピンチに陥れた。

しかし、ここで流れが変わる。ゴールライン上の混戦でボールを奪うと、リコーラグビー部はすかさずカウンター。ボールを受けたWTB星野将利が突破して20m前進し、さらにボールをつなぐと、自陣10mライン付近からグラバーキック。相手がキャッチしようとしたところにCTB小松大祐が猛然と飛び込んで反則を誘い、ピンチを脱した。

このプレーで、リコーラグビー部がペースを取り戻す。SO河野好光らがハイパントを上げると、落下地点に選手が迷いなく走り込む。ブレイクダウンを連取し敵陣へ侵入していく。

勢いづいたリコーラグビー部はプレッシャーをかけ続けると、東芝がボールをこぼす場面も増えだす。そうしたこぼれ球への反応も鋭い。果敢な飛び込みでリコーラグビー部は度々ボールを奪った。しかし、約20分間にわたり主導権を握ったが得点には至らなかった。

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 すると33分、守勢に回っていた東芝は、自陣のスクラムでボールを奪うとキックでリコー陣内22mエリアへ。ゴール間近左サイドのマイボールラインアウトを確実に取って、右へ展開。リコーラグビー部のディフェンスラインをCTBが突破し、右隅へトライを決めた。

先制点こそ許したが、リコーラグビー部はその後もテンポのよい攻撃を仕掛ける。FL相亮太、WTB金澤良らを中心に接点での強さを見せ、攻撃の形を度々つくった。

終了間際、リコーラグビー部は東芝陣内右サイド10mライン付近で得たペナルティキックで、ゴールを狙う。SO河野が決めて3対5。ここで1本目の40分が終わった。

2本目は、1本目終盤の流れを維持したリコーラグビー部が先制する。

8分、センターライン付近中央でボールを持ったNO.8ピーティー・フェレラのアタックで突破口を開くと、ボールの渡ったCTBロッキー・ハビリが、相手ディフェンスをなぎ倒しながら前進。ゴール前で左に走り込んでいたSO河野へパスしそのまま左隅にトライ。コンバージョンも決まって10対5と逆転する。

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 さらに14分、センターラインやや右からモールで押し込んだリコーラグビー部は、再び東芝陣内に侵入。22m付近で相手ボールのスクラムから展開されたボールをLO田沼広之がチェイス、プレッシャーをかける。すると東芝がキックミスし、ダイレクトタッチとなる。左サイド22mライン付近でのラインアウトを確実にキープすると、またもCTBロッキー・ハビリが縦の突進。ゴールやや左にトライを決めた。コンバージョンも決まって17対5。

攻撃を続けたリコーラグビー部だったが、その直後、一時的退出を課され14人でのプレーとなったのを機に東芝のペースになる。残りの約25分は自陣深い位置でディフェンスに追われた。

しかし、雨が降り始める悪コンディションの中でも、集中力は途切れない。31分にはインゴールエリアにボールを持ち込まれるピンチを迎えたが、粘り強く守った。攻めるべき場面で攻めきり、守るべき場面で守りきる。前戦同様の安定感あるラグビーを40分間継続し、2本目を無失点で終えた。

 3本目は開始直後からスピードを上げて東芝が攻め込む。3分、22mエリア内のスクラムから展開するとほぼ中央にトライして先制。コンバージョンも決めた。その後もテンポよく攻撃を仕掛ける東芝だったが、リコーラグビー部はその攻撃に順応。12分、17分、19分とゴール間近まで持ち込まれたが、要所を締め失点を防いだ。気迫と冷静さ、それを下支える強い自信。そのどれもを感じさせるディフェンスを繰り返しながら、リコーラグビー部は徐々にペースを奪う。

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 20分過ぎから、ブレイクダウンに競り勝つ場面が目に見えて増え出す。1本目と同じく精度の高いハイパントと出足鋭く迷いのないボールチェイス。果敢な攻撃に歓声が沸く。

この雰囲気を得点に繋げきれるのが、今のリコーラグビー部だ。33分、センターライン付近から、SH神尾卓志のディフェンスライン裏へのグラバーキックが一閃する。これに反応し右サイドに走り込んだWTB横山健一が押さえ、トライを決める。さらに37分には、東芝陣内10mライン付近でWTB横山伸一がCTB山藤史也からのパスを受け、左サイドを駆ける。相手ディフェンスをワンステップでかわすと、さらに加速して一気にインゴールエリアへ達し、トライ。

2つのトライで締めくくって3本目が終了。合計スコアは27対12。リコーラグビー部は、強豪相手に結果を出し春季最後のオープン戦を終えた。いい形で春季最後のオープン戦を終えた。結果だけではない。「勝敗に関係なく、色々なプレーやコンビネーションを試す期間」という春季オープン戦のテーマもよく意識されていた。

この日は、40分×3ハーフという形式だったこともあり、交代がかなりの回数行われ、さまざまな選手の組み合わせが試されていた。しかしながら、時間帯による大きなパフォーマンスの変化は見られなかった。120分間を通じてグラウンドでは"リコーのラグビー"が展開され、グラウンド内外で声が飛び交う様はまさに一丸。リコーラグビー部は全員で闘っていた。

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 3本目の終盤にトライを決めたWTB横山健一のコメントが印象的だった。

「神尾さんと、あの形(ディフェンスラインの裏スペースへのグラバーキック&フォロー)について、一度も相談したことがなかったんですよ。それなのに、あの瞬間はなぜか来るって感じ取れた」。個々の選手間の信頼が高まり、チームに築かれつつある一体感。それを象徴するトライだったと言えるかもしれない。

トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)に、この日感じた一体感について伝えてみた。

「新メンバーにもリコーのラグビーの文化は伝わったと思います。"TAFU"の"U"。チームの"UNITY(統一、結束する)"は高まってきています。とはいえ、今年の挑戦するのはTL。現在のチーム状態はまだ40%くらいにあると思っています。これからが大切です」。勝ってもカブトの緒を緩めないローデンHCだが、表情はにこやかだ。この日試合後のミーティングでは、選手に「Congratulations!(おめでとう)」と伝え、今季に入って初めてとなる連休をプレゼントしたという。

いい形で春季シーズンを終了し、リコーラグビー部は指揮官が「最も重要」と話してきた7月~8月に突入した。

(文 ・ HP運営担当)

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