2009-2010 春オープン戦 対 九州電力キューデンヴォルテクス

2009.06.11

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 リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)の今シーズン3試合目。トップリーグ(TL)チームを相手とするオープン戦としては2試合目となる、九州電力キューデンヴォルテクスとの伝統の定期戦。今回で37回目となる。この日は、その14:00からの『第37回FBS杯』に先立ち、12:00からトライアルマッチも組まれた。午前中からあいにくの雨模様のコンディションだったが昼にはあがり、絶好のラグビー日和に。東京世田谷の砧グラウンド(リコー総合グラウンド)には、伝統の試合をひと目観ようと多くのファンが訪れた。今季のリコーラグビーへの注目度の高さが感じられた。

12:00。リコーのキックでトライアルマッチが始まる。序盤からリコーラグビー部が主導権を奪い、九州電力陣内に攻め込むと、活力あるアタックを繰り返す。飛び交う「コミュニケーション! リコー!」の声。なかでもセットプレーでは、メンバーたちは我先にとポジションチェックの声を出す。フィールドに、一つでも多くの意思を疎通させようと必死だ。

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 そんな高い意識は12分に最初のトライを生む。その後、17分に1トライを返されたがペースを失うことはなく、精力的なアタックは続いた。23分には敵陣の22mライン手前で相手のボールを奪った新加入のSH神尾卓志が、そのままゴール前まで前進。混戦の中ボールが渡ったFL末永敬一朗がトライを決めて勝ち越す。"当たり勝つ"ことに成功していたリコーラグビー部。この後も攻め続け、多くの時間を九州電力陣内でプレー。31分、モールで押し込みトライ、43分には新加入のCTB重見彰洋の突破からつないで神尾がトライ。24対5で前半を終えた。

「点差は開いているが、高い意識を保とう」。そんな選手同士の声が響く中、後半がスタート。九州電力も意地を見せ20分ほどは一進一退の膠着状態となった。試合が動いたのは24分。リコーラグビー部がモールを押し込み、一度はインゴールエリアでグラウンディングに成功したが、反則があったとしてトライは取り消しに。一時的退出を課され14人となったリコーラグビー部。すこしの間攻め込まれたが、前半同様の集中力を維持し続けた。この日のテーマの1つだったという、肩で当たるディフェンスで守りきり、反転攻勢に出る。

再び敵陣内に攻め込むと、BK陣が存在感を示す。巧みなステップを刻んで相手ディフェンスを翻弄していく。33分、後半度々突破を見せていたCTB山藤史也が中央付近へトライ。37分には今度は山藤からパスを受けたWTB横山伸一が左サイドラインぎりぎりを駆け抜けてトライを奪った。結局後半は完封。36対5でリコーが勝利した。

好ゲームを終えた選手たちは、グラウンドを出るやいなや熱心な意見交換を始めた。生まれた疑問はすぐつぶす。深いコミュニケーションを渇望する姿が印象に残った。

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 14:00を前にして、ブラックのジャージーの『第37回FBS杯』出場メンバーがアップを開始。1試合目の好結果に続こうとゲームに臨んだ。しかし、リコーラグビー部はペースをつかめない。立ち上りから自陣でのディフェンスに追われた。7分には22mライン付近でのラインアウトから出たボールを、相手FWにトライされ失点。コンバージョンゴールも決まり0対7。その後も状況は変わらずリコーラグビー部は防戦一方だ。相手のアタックがディフェンスを上回る。リコーラグビー部のアタックは何度もターンオーバーされた。苦しい展開。フィールドから声が失われがちになる場面も。

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 九州電力は攻め込まれても確実なロングキックで逃れ、ピンチの芽を摘んでは攻勢に転じていく。17分、24分にもトライとコンバージョンゴールを決め、一気に0対21と点差が開いた。

リコーラグビー部は27分にSO河野好光の突破などで相手陣内に深く攻め込むと、ゴールライン間際右サイドでSH池田渉からWTB星野将利へのパスが通り、そのまま持ち込んで右隅へトライ。「ここからだ!」。リコーラグビー部に声が戻り出す。しかし、その後は得点を返すことができず、5対21のまま前半を折り返す。

後半も九州電力がコンタクトの強さで上回る状況は変わらない。しかし、リコーラグビー部は粘り強くディフェンスを繰り返す。しかし、流れを変えよう、雰囲気を変えようという意識が見え始めた矢先にミスが出る。11分、センターライン付近中央から攻め込むべく右へと展開したパスを、相手センター(12番)に奪われ独走を許してしまう。4つ目のトライを挙げた九州電力は、コンバージョンゴールも決めて5対28。点差はさらに開いた。

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 このままでは終われない。選手の強い気持ちが状況を動かす。20分過ぎから、リコーラグビー部の攻撃が機能しだしたのだ。敵陣に攻め込みアタックを繰り返し、ゴール前で混戦が相次ぐ。もう少しのところでディフェンスに阻まれていたが29分、WTB星野が22mライン手前中央付近から抜け出しトライ。その後の10分もリコーラグビー部は反撃を試みたが、トライは奪えなかった。逆に終了間際までモチベーションを維持する九州電力の攻撃に耐えきれず、38分にトライを献上。12対35でノーサイド。

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 トライアルの意味合いの強い6月のオープン戦。勝った負けたで一喜一憂すべき段階ではない。トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)も、「チーム全体の土台づくり」と「コンビネーションの確認と精度をあげること」をこの時期の試合のテーマに掲げている。前後半を通じ大きな声が飛び、コミュニケーションへの意識を高く保った第1試合は、しっかりとテーマに沿っていた。第2試合は、ペースをつかめず苦しんだ。しかし、選手は活路を見出そうと最善を尽くした。終盤に反撃の場面がつくれたことは、次戦への明るい材料だ。チームの絆が深まり、コンビネーションの質が高まれば、結果は必ずついてくる。

ポイントは、互いを信じる深い絆を、限られた時間の中でいかに築くかーー。LO田沼広之の言葉に大きなヒントがあった。

「チームがこの体制になった昨年、最初は不安がいくつかありました。今年入った新メンバーも、まだそういう気持ちは多少あると思います。でも自分たちは、このやり方を信じてやり抜けば結果が出ることを知っている。それをしっかり伝えて前進していきたい。そうすれば、変わってくる」コミュニケーションは変革を生む。すべては自分を、そしてチームを信じること。リコーラグビー部の成功は、その先にあるのだ。

トップリーグ開幕まで、あと91日。

(文 ・ HP運営担当)

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