全日本選手権自戦記 2000.2.5 野山 知敬 <棋譜>

 いつもこの時期は全日本選手権、と言っていられる内
は幸せなのだろう。職団戦で勝ち抜かねばこの団体戦を
戦うことはできないのだから。


 さて、今回の相手の学生さんは慶応大学。リコーとし
ては初めての対戦であるが、関東リーグ、王座戦と圧倒
してきたのだから好勝負が期待できる。リコーオーダー
は洋次を大将、菊田を副将に。これは言うまでもなく新
陳代謝をはかるためである。いつまでもおじさん達が上
位で威張っていては進歩がない。


 というわけで私は今回は四将に引っ込んだ。とは言っ
ても現在の調子から見ればこんなものであろう。あまり
ぱっとしない話で恐縮だが、どうも最近将棋に熱が入ら
ない。最新定跡にはまったくついていけない私であるが
最近のプロは誰も同じような将棋ばかりで、誰が指して
いるのかわからない。古い人間の悪い癖であるが「昔は
こんなんじゃなかったのに」と思うこのごろである。
序盤から80手めぐらに龍を成り込んで攻め合う局面ま
で同一、なんていうのを見ると気分が悪くなる。もっと
個性のある将棋指しはいないのか・・・と言ってみても
はじまらない。それが技術の進歩というものなのだろう。


  前日は横浜を観光し、目黒のホテルでフランス料理と
ワインを多少・・・。我ながら、いつからこんなぜいた
くをするようになってしまったのか。
当日朝は時間があったので映画「ジャンヌダルク」を見
る。16歳の少女が神のお告げによりフランス軍を導い
てイギリス軍を壊滅させる物語。最後は悪魔の署名にサ
インすることができず火あぶりの刑に処せられてしまっ
たが、とにかく感動した。信念さえあれば岩をも動かす
ことができるのだ。


さて、慶応の私の相手は古田さん。事前情報では本格的
な将棋のようだ。指してみると個性的な序盤戦術をお持
ちのようで、しかもベンツを乗り回してのまさに慶応ボ
−イそのもの。どうもこの辺が早稲田や東大とは違う?
(誤解なく?(^^;;;;;;))


 序盤は最近のくせで早指ししてしまったが、仕掛けの
時点では既に作戦負け。△7三銀と△7二飛に働きの無
いのが痛いのだ。▲2六角はわかっているのだから早め
に△2四銀と牽制しなければならなかった。

 中盤は角切りから▲5三銀が単純なようで厳しい。こ
こでも3筋の働きの無い飛車銀が攻撃目標になってしま
っている。悪いのでしかたなく駒損しながら端攻めで勝
負。だが▲4四飛が好手でしびれた。

 終盤▲6五歩が急所。以下▲6六角を食らっては敗勢
であり、どうしても勝てない形勢となっている。実にう
まく指されて完敗だった。


  いかん、いかん、こんな具合では・・・やはり今回の
リコ−メンバ−で私が一番危なかった。一時的なスラン
プなのだろうが、こんなことはしょっちゅうなので気に
しないでおこう。今年のテ−マは「復活」ということを
期待して。

(了)


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