全日本選手権自戦記 牧野 正紀 00.2.5 <棋譜>

北川氏は、関東学生名人ということで、強敵と対戦することになった。
戦型は、私の四間飛車に、北川氏の居飛車となった。北川氏の、角道を
なかなかあけないところといい、26手目の比較的早い73桂跳ねといい、
なんとなく北川氏の殺気を感じていた。27手目の46歩は、決断の1手。
この歩を突くと、多分65桂と跳ねてくると思い、長考になったが、他に
適当な手が見当たらない。96歩も考えた。これだと、65桂とは跳ねて
来ないと思ったが、42金直と上部を固められて損だと思った。



以下、35手目66角までは読み筋であるが、北川氏の44銀は、対局中は意外
だった。(私は、44角を予想していたが、局後の北川氏の感想では、この
手は、以下、同角に、(1)同歩は再度66角で自身なし。(2)同銀は45歩で
自身なし。ということであった。私は、もし、北川氏が44角と指した場合
には、55歩と指す予定だった。このあたりは、北川氏の読みの方が、私を
上回っているようであったが、私の読んでいないてまで読んでもらって、
私のいやな手を避けてもらったため、かえって、この後の展開は幸いした。


43手目57金から、45手目48飛と回ったあたりでは、形勢が良くなったと
思った。また、北川氏の97龍にはびっくりしてしまった。ここでは、何か
形勢を引き離す手があると思い、長考したが、この後が、どう指したらよ
いのか今でも良くわからない。
58銀は、対局中は、このぐらいしか浮かばなかった。しかし、今考える
と、変な手だが、46桂もあったように思う。以下は、36歩〜37桂〜25桂
とうような形をめざす指し方である。


対局中は、51手目36桂と打ったあたりでは、手応えを感じていたのだが、
今みてみると、見た目以上に難解のようである。

53手目46金は、44桂とどちらがよいか良くわからなかったが、将来の攻め駒
不足になるのを恐れて46金を着手した。

56手目北川氏の42香がしぶとい受けで形勢は見た目ほど差がないようである。

65手目44銀は危ない手だったかもしれない。66角や、55角の方が良かったと
思う。66角と打たれて、自陣も結構危ない。北川氏の99龍では、45飛で私
が負けていたように思う。対局中は、45飛ならば何とかなると思っていたの
だが、後で検討してみるとうまい手が見当たらない。


75手目53歩から77手目54歩と連打し、再び優勢になったと思った。

83手目52金が悪手だったと思う。この手では、43銀、同金、41角で私の勝ち筋
だったと思う。この手は見えていたのだが、駒を一杯渡すため、万一頓死した
と要らぬ心配をし、秒読みの中決断しきれなかった。ここが、本局で一番悔い
の残る局面であった。これを逃し、以下、わけのわからない混戦になっていった。

95手目47銀左が大悪手。実戦では、これがつめろ逃れの詰めろで勝ちと錯覚し、
駒音高く指したのだからあきれる。57角成で、逆に私の王様の詰めろがかかり、
北川氏の王様の詰めろが消えて負けになった。47銀左では、47銀右と指すべき
ところである。これで、もし、37桂成で詰まされれば、この局面はもともと負
けになっていることで仕方がない。最後の勝負手を逃してしまった。


本局を振り返ってみるに、私の、優勢になった後の指し方に、私の実力がいか
んなく発揮されている(弱いところが出ている)ように思う。リコーチームも
3-4で負けてしまい、非常に残念な敗戦であったが、私の将棋も、まだまだ努力
次第でいっぱい強くなる余地が残されていると感じることのできる1局だった。




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