職団戦優勝記
〜〜〜新生リコーチーム誕生の瞬間〜〜〜
年月日:2006年9月3日
場所:東京体育館
【序章】
入社して早3年半が過ぎようとしている。まさか職団戦が一度も優勝できないとは正直夢にも思わなかった。初めての職団戦は準優勝に終わってしまったがいずれは優勝できるであろうと私も細川さんも正直思っていた。その年に瀬良さん、菊田さんが海外勤務のため離脱。また、NEC、ジュポン、日レスがアマトップクラスの強豪が増えたためにリコーチームもかつての常勝軍団ではなくなっていた。ここから冬の時代を迎えることになり予選通過すらできなくなっていた。3年目は個人的理由から職団戦に参加しなくチームは残留決定戦に参加する寒い思いをさせるなど部に対し多大な迷惑をかけてしまった。いろいろ悩んだ末の決断ではあったが、その間は客観的に将棋部を見たり自分自身を見つめなおしていたりしていた。復帰後の職団戦は1年分返すつもりで気合が入ったがチームは準優勝、個人成績は1−4で情けなさとチームに申し訳ない気持ちでいっぱいであった。今回の職団戦1週間前、山田さんがアマ名人を獲得し主将自らチームの士気をあげてくれた。流れはリコーに来ている。後はみんなでその流れを掴むかだ。
大会当日はみんなで馬上さんのアマ名の将棋を見ていた。「おおー好手だ」「ありえんわ(笑)」などみんなで意見を言っていた。チームの雰囲気が実にいい。他の人は勝ってくれる。あとは自分だけだと言い聞かせて気合を入れた。いよいよ抽選である。
【運命の抽選】
ついにきたかという感じだった。予選リーグでNEC、ジュポン化粧品、日レス、リコーが同一リーグに入ったのだ。以前ならチームの雰囲気が「またも予選落ちか」という空気が流れていたと思う。野山さんもブログで「優勝を狙うにはここで2チームが落ちたほうがかえって良かった」と言っていたように私もプラス思考で考えていた。予選さえ通過すれば準決勝は少なくともライバルチームとの対戦はないし、このブロックを通過できれば自信もつく。初戦は強敵NECだ。いよいよ戦いの火蓋が切って落とされた。
【予選1回戦 NEC(1)3−2】
初戦はNECに決まり当たりをどうするか山田主将中心に考えていた。NECは瀬川現四段が抜けたもの清水上氏・加藤氏の2トップを中心に手強いのは間違いない。2トップにこちらも武田、細川をぶつけほぼ予想通りのオーダーになった。
【リコー】3 − 2 【NEC】 武田 ○ − × 清水上 ・・朝日アマ以来の再戦。 細川 ○ − × 加藤(幸) ・・加藤氏将棋年鑑で宣言した「相右玉」決行か? 野山 × − ○ 長岡 ・・先後関係なく相矢倉か 馬上 ○ − × 林 ・・静岡対決。どちらが主導権を取れるか 山田 × − ○ 加藤(徹) ・・アマ名人獲得後初戦の一局
まずは四将戦から。矢倉模様から後手林氏が趣向を凝らし左美濃+5三銀右急戦を 採用。第1図は仕掛けの局面であるが馬上さんはここから機敏に動く。
(第1図以下の指し手) ▲5八飛 △6四角 ▲4六銀 △4四銀 ▲2六角 △4二金寄 ▲6六銀 △5二飛 ▲5四歩 △7三桂 ▲7七桂 (第2図)
駒を中央に使うのが当然とは言え好着想で、第2図は将来▲3四桂の筋もあり後手収集つかない状態になっている。途中難しいところもあったが結果的には完勝の1局であった。
三将戦は予想通り両者得意の相矢倉。途中、野山さんが良かったらしいが逆転負け。
副将戦は序盤の細かい駆け引きから細川さんの右玉に幸男氏の矢倉で第3図。ここからお互い激しい攻め合いとなる。一進一退の攻防が繰り広げられたが最後は細川さんが得意の入玉を果たし、点数勝ちになった。これで2−1とあと1歩。
大将戦はここ最近の対戦では私が清水上氏得意の藤井システムを受ける展開が多かったが、今回は自信のある戦型の1つの相振り飛車に。私後手で▲7六歩△3四歩▲6六歩△4四歩という出だしから相四間飛車になり第3図。ここでは完全な作戦負けである。
(第3図以下の指し手) ▲6四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7七角成 ▲同 桂 △4四角 ▲6六角 △同 角 ▲同 飛 △8八角 ▲4四角 △1二飛 ▲6九飛 △4三金 ▲6六角 △6五歩 ▲同 桂 △6六角成 ▲同 銀 △7八角 ▲6八飛 △5六角成 ▲7四歩 △同 歩 ▲6四角 △6五銀 ▲同 銀 △6七歩 ▲同 金 △6五馬 (第4図)
▲6四歩をやや軽視していた。本譜は1本道だが、△6七歩に▲5六銀とされたら全然自信がなかった。第4図はやや持ち直してきた気がした。その後清水上氏にミスがあり逆転し最終盤の第5図。△5六桂が詰めろでは勝負あった。
途中難しいところもあったが相手が海外研修から一時帰国ということもあり実力が十分にでなかったみたいである。山田新アマ名人は残念ながら相手の玉頭位取りに完敗だったようでチームは清水上氏、加藤幸男氏をとっての3−2勝ち。幸先のよい滑り出しとなった。
【予選2回戦 日本レストランシステムズ(1)4−1】
これに勝てば第1関門の予選通過は見えてくる。日レスも今泉氏、秋山氏、石井氏といった強豪が数多く抜けメンバー選出にも苦労しているようであった。日レスさんには大会を主催していただいており、大変感謝しています。
当たりは以下のように決まった。
【リコー】4 − 1 【日レス】 山田 ○ − × 美海 ・・ここはアマ名人の貫禄を 野山 ○ − × 鰐渕 ・・相性が悪いがどうか 馬上 ○ − × 西山 ・・馬上さんの振り穴対策はいかに? 武田 × − ○ 木村 ・・相性が比較的いいが・・ 細川 ○ − × 野島 ・・序・中盤で差がつけられないか
開始して間もまく山田さんが快勝。次に終わったのが副将戦。
鰐渕さんが陽動振り飛車に誘導し、急戦党の野山さんがミレニアムで第6図。ここから野山さんの積極的な指し回しを見ていただきたい。
(第6図以下の指し手) △8六歩 ▲同 歩 △5五歩 ▲4七銀引 △6五桂 ▲5九角 △3五歩 ▲同 歩 △5六歩 ▲同 歩 △4五歩 ▲同 歩 △4六歩 ▲3六銀 △8六角 ▲8八飛 △5九角成 ▲8二飛成 △5八馬 ▲同 金 △6九角 ▲5九飛 △5七桂成 (第7図)
△8六歩からの仕掛けは野山さんらしい積極的な仕掛けで第1感こう指したいところ。△3五歩から△8六角がまさに急所の攻めで△5七桂成できれいに決まった。四将戦は双方居玉での相居飛車での大乱戦。途中うっかりがあり、淡白な指し手もあったこともあったこともあって負け。
三将戦は西山氏得意の振り穴に馬上さんの対策は明大銀冠ではなく相穴熊の作戦であった。
第8図は▲4八飛と▲1六歩のバランスが悪く、若干作戦負けか。△7二金左が普通だが西山氏は△7五歩と積極的な動いてきたがやや無理攻めか。以下、馬上さんも頑張り第9図。
ここで▲6三とが当然とはいえ決め手。▲7二歩があるため駒得が約束されている。以下、丁寧な指しまわしで快勝。これでチームの勝利が確定。
残る細川―野島戦は相振り飛車から野島氏作戦勝ち→中盤で終了かと思わせたが実戦的にはまだ大変みたいだったようで野島氏のミスもあり細川さんの逆転勝ちであった。これでチームは2連勝。予選通過をほぼ確実なものとしたが・・・
【予選3回戦 ジュポン化粧品(1)1−4】
チームは2連勝で予選通過確率は95%以上。だいたいこういう時が一番危ない。リコーが0−5で負けて、日レスがNECに4−1なら予選敗退である。ジュポンには前回決勝で負けているし、気を引き締めた。
当たりは以下の通り。
【リコー】1 − 4 【ジュポン】 細川 × − ○ 池田 ・・池田氏の攻めを受けきれるか 野山 × − ○ 青柳 ・・矢倉が有力 武田 × − ○ 鈴木 ・・ここがポイントか 馬上 × − ○ 桐山 ・・地獄受けに耐えられるか・・・ 山田 ○ − × 渡辺(健)・・新旧アマ名人対決
まず最初に副将戦が終了。青柳氏の急戦矢倉模様から先後同型矢倉に落ち着く。お互い経験値が高いせいか指し手は早い。青柳氏の攻めが冴え、野山さんが投了に追い込まれてしまった。
三将は私のゴキゲン中飛車に鈴木氏が急戦。途中で見落としがありどうしようもなくなり、以下情けない完敗。馬上さんも対1手損角換わりに早繰り銀から攻勢をとるが、攻めが細く受けきられチームの敗戦が決定。細川さんも池田氏意表の向かい飛車に糸谷流を採用するが負け。
隣では日レスがNECに3−2で勝っており山田さんが勝てば予選通過決定、負ければポイント(大将の勝ちを5点、以下4点、3点・・・)勝負となる。山田さんが大優勢の将棋を追い込まれるが何とか逃げ切り勝ち。この鬼ブロックはジュポンとリコーが通過。NECが意外な3連敗で残留決定戦に回った。
別ブロックはUFJとNEC(2)が通過。準決勝ではUFJと対戦することになった。
【準決勝 UFJ3−2】
UFJは樋田氏、奥本氏の2枚看板を中心に予選リーグ3連勝で通過してきた。こういった波にのっているチームは手強い。当たりは以下の通り。
【リコー】3 − 2 【UFJ】 野山 ○ − × 井上 ・・本戦で勝ちたいと野山さん 武田 ○ − × 吉田 ・・立命−京大のOB対決 馬上 × − ○ 奥本 ・・ここを勝つとチームの勝ち濃厚 山田 × − ○ 樋田 ・・何度目の対戦か 細川 ○ − × 和田 ・・細川さんの作戦はいかに
まずは細川さんがインチキな石田流で快勝。大将戦は野山さんが相手の急戦矢倉に苦戦し一時期は隣で見ていて大丈夫か?という内容であったが最後は快勝。3将戦は馬上さんが横歩取らせから謎の手順で大作戦負けになるも途中は必勝形に。しかし、団体戦では見たくない「駄馬」をやってしまい逆転負け。
副将戦は世代は違うもの立命―京大対決。相振り飛車から私が細い攻めをつなげることができ結果的には快勝の一局。山田さんは負けてしまったがチームは3−2で決勝進出が確定した。相手は前回と同じジュポン化粧品が勝ちあがってきた。予選1−4で負けているだけに雪辱戦の意味合いが強い。あとは全力を尽くすのみだ。
【決勝戦 ジュポン化粧品(1)4−1】
いよいよ決戦の時が来た。前回春決勝1−4負けで今回予選でも1−4。これ以上負けられないという気持ちが5人にはあったと思う。オーダーはできるだけ相性のいい相手に当てようとしていたが現実はそう甘くなかった。
【リコー】4 − 1 【ジュポン】 馬上 × − ○ 桐山 ・・予選に続き再戦 山田 ○ − × 青柳 ・・理屈抜きの勝負 細川 ○ − × 鈴木 ・・相性が悪いとのことだが・・ 武田 ○ − × 渡辺(健)・・どちらも力強い将棋が持ち味 野山 ○ − × 池田 ・・相矢倉得意の両者
馬上―桐山、細川―鈴木戦は避けたい当たりではあったが・・ここまで来たら勝つしかない。
まず五将戦が終了し、野山さんが相矢倉で20分の持ち時間を余しての快勝であった。野山さんの気迫あふれる踏み込みを見ていただきたい。
(第10図以下の指し手) ▲1三歩 △同 香 ▲2四歩 △同 歩 ▲2五歩 △8六歩 ▲2四歩 △8七歩成 ▲同 金 △8六歩 ▲同 金 △8五歩 ▲8七金 △4四銀 ▲3四馬 (第11図)
▲1三歩は一回やってみたいところで▲1四歩を入れるかどうか野山さんは迷ったみたいだ。しかし△8六歩に手抜きは本格矢倉党でないと指せない手だ。▲3四馬で野山さんは勝てると思ったそうだ。
(第11図以下の指し手) △同 金 ▲同 飛 △3三銀 ▲5四飛 △4五角 ▲5二飛成 △6二飛 ▲2三金 △同 角 ▲同歩成 △同 玉 ▲2四歩 △同 銀 ▲5三龍 △4三歩 ▲2五歩 △3五銀 ▲5一龍 △3一歩 ▲5三角 △3四玉 ▲3六歩 △4四銀 ▲3一角成 △同 金 ▲同 龍 △3三桂 ▲3七桂 (第12図)
△6二飛で△6七角成は▲2三金△同角成▲同歩成△同玉▲1二角以下寄りだろう。▲3七桂が実にぴったりとした手で以下数手で勝ちを決めた。
次に山田―青柳戦が終了。山田さん得意の阪田流向かい飛車+筋違い角の力戦から第13図を迎えた。先手の▲5八金のバランスが悪く山田さんのほうが指せそうな局面である。
(第13図以下の指し手) ▲6六角 △2四歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲同 飛 △同 金 ▲2八飛 △2五歩 ▲4四角 △3三桂 ▲6六角 △1四歩 ▲4七銀 △1五歩 ▲9五歩 △5四角 ▲5五歩 △3二角 ▲8六銀 △3四金 ▲7七桂 △7一銀 ▲5七角 △4四金 ▲6六歩 △2三角 (第14図)
▲6六角に飛車交換を迫ったのが▲6六角を咎めた機敏な一手であったと思う。▲2八飛ではかなり辛い。じっと△1四歩や△5四角など山田さんの持ち味が随所に出ている。第14図は△2三角の効きが素晴らしく必勝といってもいい局面であろう。以下も素早く寄せた。アマ名人の実力を遺憾なく発揮した一局であろう。
これで2−0。あと1勝である。優勝を決める美味しいところをもっていったのはやはり細川さんであった(笑)苦手と言っていた鈴木貴幸氏との一局は▲7六歩△3四歩に▲2二角成と角交換から右玉。細川さん十八番の戦型で「細川流ゲリラ殺法」である。
(第15図以下の指し手) △7五歩 ▲同 歩 △4三角 ▲6五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲5五角 △6二金 ▲4五歩 △5四銀 ▲4四歩 △5二角 ▲4六角 △6六歩 ▲7六銀 △4五歩 ▲5七角 △3五歩 ▲同 歩 △8六歩 ▲2三歩 △同 金 ▲2五歩 (第16図)
△7五歩は動いてみたいところだが、細川さんは手に乗ってカウンター攻撃を開始。△5二角とするようでは後手辛い。△8六歩に手抜きで▲2五歩とした局面は角の効きの差ではっきり先手優勢。その後も緩むことなく第17図を迎えここで決め手が出た。
(第17図以下の指し手) ▲2三銀 △4二玉 ▲3四銀成 △同 歩 ▲8三歩 △9二飛 ▲8一角 △9三飛 ▲4三歩 △同 玉 ▲4五角成 △4六歩 ▲同 銀 △4四歩 ▲同 角 △3六桂 ▲同 馬 △4四玉 ▲5五桂 △3一桂 ▲3二歩 △3三玉 ▲3一歩成 △4二玉 ▲4三歩 △3一玉 ▲3三歩 まで細川さんの勝ち(投了図略)
▲2三銀が一番早い寄せ方。以下▲8三歩も緩みない。これでチームの勝ちが決まり5年振りに優勝することができた。大将戦の馬上―桐山戦は馬上さんが相居飛車3手角から作戦勝ちになるものの、桐山氏の受けにまたもやられてしまった。馬上さんは後半ダメだったが、予選1、2回戦快勝でチームの士気を上げてくれたので心強かった。
最後の武田―渡辺(健)戦。ここ一番はゴキゲン中飛車にしようと思っていた。そういえば、決勝戦は5人とも得意戦法でできたことも勝因の一つなのかもしれない。持ち時間20分では慣れているか慣れていないかで時間を使うのでその面では非常に大きい。私の将棋は第18図を迎えた。渡辺氏の右辺の金銀が力強い。
(第18図以下の指し手) △4五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲4六銀 △同 銀 ▲同 金 △1五角 ▲2六銀 △3三角 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 角 ▲4四歩 △3六歩 ▲同 金 △5六歩 ▲同 歩 △4七銀 (第19図)
▲4六銀が予定の手順だったと思うが、△1五角が強烈な飛び出し。▲2六銀は辛いとは言え仕方ないか。△4七銀で攻めがつながった。以下は決勝戦の重圧で負けないように指していて手数こそかかったが、勝つことができた。
【総評】
優勝を決め、メンバーと堅い握手を交わす。一人一人が力を出し切った優勝であり、誰か一人でも力が出なかったら逆にありえない優勝であった。全員が今回は優勝できると思っていたのも良かったのかもしれない。新生リコーチーム誕生の瞬間である。
これも先述の山田さんのアマ名人戦優勝への軌跡を作ったのだと思う。また、将棋部の方の応援が心強かった。吉中さん、星出さんには飲み物の差し入れをしていただき感謝します。
最後にメンバーの優勝コメントを載せたいと思います。
細川さんコメント
学生時代、自分は団体戦に対する意識が高かった。早稲田大学将棋部で新入生の1年の時と主将としての3年の時に全国優勝を2回経験した。しかし、その後メンバーの弱体化もあり全国大会すら出れない状況を4年間味わった。そういった経緯から社会人になっての初めての職団戦は気合を入れて望んだが、結果は決勝でNECに無念の2-3負け。
「まわりも強いがうちも強い。まあそのうち優勝できるだろう。」この時はそう思っていたが、現実は予想もしない方向へと進んだ。瀬良さんの海外行き、内部での問題などいろいろあり、自分の入社する以前に見ていた『常勝リコー』の姿は影も形もなくなっていた。一緒に戦っていたメンバーには申し訳ないが、やはり優勝を狙える気がしないということから職団戦に対するモチベージョンは上がらず、結果徹マン明けで行って3連敗したり、読みを入れずに感覚だけで指して敗戦するなど、チームと共に自分自身の状態もぼろぼろだった。
すっかり予選落ちの常連みたいになってしまっていた去年の秋の職団戦。この時はチームがいつもの重い感じではなく、何故か全体の雰囲気が良かった。自分もリラックスして楽しむ気持ちで指すことができ、星もかみ合って望外の準優勝。「まだまだこのチームはいける」そう確信した。
今年に入り状況は一変した。一時的に部を離れていた武田君が復帰、また常勝軍団NECからの瀬川さんのプロ入りによる離脱や日レスの大量離職によるメンバーの弱体化等もあり、S級上位は均衡が取れ混戦となった。春の職団戦では入社以来始めてNECに勝利、決勝でジュポンに1-4で敗れはしたが前回の秋に勝っている事もあり勝てない相手とは思わなかった。
そして、春は大阪のアマ竜王戦と日程が重なってやむを得ず不参加だった野山さんを加えて迎えた秋の職団戦。直前のアマ名人戦で山田主将が優勝、初出場の馬上君がベスト16という結果を出しメンバーのモチベーションは最高潮達していた。
「今回こそは優勝」みんなから思いが伝わって来た。
他で何度も触れられているので職団戦の状況については省くが、自分は「絶対負けない」という強い気持ちで指していた。こういった気持ちで指すのは何時以来だろう。結果4-1と全勝を逃してしまったがジュポン戦はほぼ予選通過をした事により一瞬気持ちが緩んでしまった。決勝はこのチームで戦っていて負ける気がしなかった。その前の連続準優勝の時は正直負ける気しかしなかった(すいません 笑)。
何はともあれ入社以来初優勝! とても嬉しかった。後は社会人側として初出場する日本選手権を優勝して今年を締めくくりたい。最後に応援して頂いたリコー将棋部の皆様ありがとうございました。
馬上さんコメント
今回の職団戦15−10という総合成績で優勝できたのはチームワークがどのチームよりよかったのが勝因だったと思う。個人的には負け越しで残念ですが初戦のNEC戦でチームの勝利に貢献できたのは良かった。日本選手権でも頑張りたい。
武田コメント
私がリコー将棋部に入って3年間いろいろありましたが今日がいつか絶対にやってくると思っていました。前回復帰して1−4と情けない成績でチームに大変申し訳なく今回は絶対に勝とうと気合を入れた。チームの皆さんが初戦NEC戦で清水上氏に勝てると見込んであえて大将にしていただいたき、結果を残せたのは大変嬉しかった。
決勝戦必勝になってからの時間が非常に長く4年前の学生王座戦を思い出した。最後の瞬間数々のことが走馬灯のように浮かび、涙が出そうになった。このチームでよかったとあらためて思った。これから日本選手権、春の職団戦が続くがみんなで勝利を掴みたいと思う。
野山さんコメント
今回の職団戦は以前にも増して一軍メンバーの気持ちが優勝に向かっていたことと思う。理由は職団戦優勝未経験者が3人(馬上、武田、細川)であること、5年間優勝から遠ざかっていること、そしてなんと言っても直前に洋次がアマ名人戦で優勝を飾り、祝勝ムードで皆の気分が最高潮に盛り上がっていたことがあげられる。
予選はNEC、ジュポン化粧品、日レスという鬼ブロックであったが優勝のためにはむしろ有り難いというような気持ちだった。案の定、乗りに乗った勢いで予選を通過し、本戦へ。個人的には今まで予選で勝ち越しても本戦で勝てないということが続いていたので気合いが入った。準決勝のUFJ戦は自分自身も危なかったが、全体的にも3−2の辛勝。ふう、ついに決勝まで来たか。だが、いつもならここまで来ても勝つのは大変だなという雰囲気が漂い、ずるずると大差で敗れることが多かったのだが今回は違った。メンバーの目の色が違っていた。私もかなり気合いが入っており、今年の東京平成最強である池田将さんに相矢倉で快勝。持ち時間の20分も使い切らないという気の入りようだった。
そして高見の見物側にまわるとどうやらチームとして勝ちそうな雰囲気。そのうち洋次が、細川が勝ち星をあげ5年ぶりの優勝が決定した。
おお、ついにやったか!このとき私は思わず目頭が熱くなり、そっとその場を離れた。
俊平、細川、馬上には自分が主将時代に何も良い思いをさせてやっていないし、洋次にも主将を譲ってから苦労させてばかり。このような思いと、彼らに職団戦優勝を味合わせてやることに自身が貢献できたこと、そしてまさに全員が一枚岩となって戦っている姿を見てこみ上げてくるものがあり、とてもその場にいられなくなったのである。
数分後、その場に戻って来ると最後には4−1で勝っていた。素晴らしい、やはりこのメンバーならできることなんだ。打ち上げでは大いに飲み、はしゃぎ合った。良かった、これで良かったのだ。素晴らしい将棋部であり、誇りの持てるチームだと思う。
今後もこのような感動の場を目指し、リコー将棋部の更なる伝統を築き上げて行ってほしい。私には今後の若い人達にその思いを託すことぐらいしかできないが。
山田主将コメント
大会前、今回は優勝できるのではないかと思った。いや思い込むような雰囲気にさえなっていた。メンバーの中から優勝できるという思いに満ち溢れていた。アマ名人を獲得してから日も浅く、冷静な将棋を指せないかもという不安を周りの雰囲気が取り除いてくれた。
近年のリコー(1)の成績は、9大会連続で優勝から離れていた。その中には決勝という舞台は5回踏んでいたので、5年というと信じられない気持ちもあった。今までの決勝では、試合前にここまで良く頑張ってきたなという変な満足感があり、負ける事になれてしまっていた。このままずっと勝てないのではと思う時期もあったので、今回の優勝は、素直にほっとした。
主将として初めて。うまくん達3人が入部してからは初めて。振り返ってみて要因は、他チームに比べて、モチベーションが高かったという事ではないか。近年の中で指していながらこんなに頼もしいチームは無かった。個人成績でも、4-1が1人。3-2が3人。2-3が1人。チーム戦らしい成績だったと思う。
常勝軍団リコー。今後、この看板に少しでも近づきたい。
部長の柳川さんも祝勝会の席で「ぜひとも私が部長の間3連覇を達成してほしい」と力強くおっしゃられた。ベテランと若手がうまくかみ合い新生リコー将棋部へ生まれ変わった現在、これからも山田主将を中心に部員一同で大会、合宿等頑張っていき、主将が挙げた「強いリコー」「対外的に認められるリコー」「仲がいいリコー」であり続けていきたい。
最後に応援したいただいた皆さんやっと優勝できました。ありがとうございました。
また、これからもリコー将棋部をよろしくお願いします。(完)