イベント・レポート

レーティング選手権優勝記

年月日:2005年5月3日〜5日

レポーター:野山 知敬

【股関節の異常】

 一昨年の8月終わりごろ、急に足腰が猛烈に痛み出し、まともに歩けない状態になった。整形外科医でレントゲンを撮ってもらうと股関節が変形して骨盤との隙間が少なくなっているのが痛みの原因だという。
 だが、治療法は何もなく、痛み止めの薬をもらっただけ。「あと10年ぐらい持ちますよ。なるべく無理して歩かず、階段などは避けてください。人工関節の手術はそれからです。」「そろそろ杖をついて歩かれたらどうですか。いいのがありますよ。」と、お医者さんはまったく気楽に言ってくれる。「治療方法は無いのですか?」と聞いても「無いですねえ。。。。痛み止めで多少治まりますから、大事にしてください。」
 医者には5人ほど、股関節の権威とかいう人にも診てもらったがいずれも回答は大同小異。当然のように将棋の成績はがた落ち。将棋だけでなく、人生も終わりかとさえ思った。なにせ、数分歩けばもうびっこを引いており、右の靴下を履くときは大変、右足のつめを切るのも大変、正座はほんの数分間しかできない、あぐらにするのはもっと辛い(従い、和室の宴会や対局はできない)、自転車もこげない、和式トイレにも。。座れない!。。。
 軟骨生成とかいう薬を飲んだりもしたが効果なし。そうこうしているうち、会社のある人から薬や手術など一切行わず、矯正運動などで治療する方法があるとお聞きし、その治療院へ通い始めたのが昨年の3月。
 マンションの一室にて先生がまず患部を見て「気の流れ」を観察し、その程度によって腰にまくらを引いて数分間耐えたり、屈伸運動をしたり、足を縛ったり、正座したりという「礒谷(いそがい)式」という治療方法だ。なんだか怪しげな内容だが、実際、この治療法で何人も、治らないと言われたヘルニアや腰痛、股関節炎ほかさまざまな病気が治っており、「奇跡の療法」と呼ばれているらしい。
 半信半疑で通院し、矯正治療を行っているうちになんとなく良くなっていくのが感じられた。先生によるとこの矯正は脊椎をまっすぐにすることが狙いで、万病に効果があるという。また、気の持ちようも健康には大いに影響するとのこと。先は長いが、前向きな気持ちを持つことが一番だと言われた。

【一年間の休場】

 光が見えてきたとはいえ、昨年の状態は悲惨だった。和室で座れないことにより、大阪のアマ竜王戦、アマ名人戦、アマ王将戦は涙を飲んで休場した。希望すれば一人だけいす席でも対局できただろうが、そのような特別扱いはいやだし、なによりもそこまでしようという意欲が湧かない。
 また、遠出も不安だったのでレーティング選手権は不参加、社団戦も中盤まで出なかった。しかもリコー将棋部の運営や正棋会などで気苦労も多く、夏のころはかなりノイローゼ状態に近かった。
 平成最強戦も今年は辞退させてほしいとアマレン、及び正棋会幹部にも提言したが、説得されてようやく出場したほどだった。この一年、優勝はもちろんのこと、一日将棋を指して全勝という日さえ無かった。

【マイナスをプラスに】

 毎日、朝起きてから腰枕(腰にざぶとんを二つ折りにして置き、10分間耐える)、屈伸、正座、ひざ抱え(寝ている姿勢でひざをかかえて屈伸)を途中休憩を含めて合計約40分、寝る前にも同じことを約40分、それ以外のときは屈伸を約10分、3時間おきぐらい。この治療法を続けていくうち、半年ぐらいで効果が見え始めた。和室にも2時間ぐらいは正座やあぐらで姿勢を変えながら座れるようになってきたし、歩いてもびっこをひかなくなってきた。相変わらず半信半疑ながらこの治療法しかなく、効果もあるから続けた。
 だが、いつも朝晩時間をとられ、将棋の研究をしている暇が無い。ああ、なんという状況だ、将棋は弱くなるばっかりだし、精神的にも苦痛、もう引退しかないか。。。
 そこで考え直した。その40分間、なにもせずにいるだけ。この時間を利用できないか。そうだ、大好きな詰将棋をやればいいじゃないか!失意の中、単純なこの考えに気づいたのが昨年の11月終わりころだったと思う。
 正座や屈伸の場合は詰将棋の本を見ながらやればいい。腰枕のような姿勢のときはまず詰将棋の配置を覚え、目を閉じながら考えた。このようにして朝晩合わせて1時間以上も詰将棋を、しかも毎日することができた。そして、正月休みのときにはすっかりやる気も出てきて、その1週間で詰将棋を約200題解き、大山全集を約200局、他、プロ棋戦、アマ強豪の棋譜も100局以上並べた。
 年明けには復活宣言し、精神面の復調も加えて効果覿面、年が明けてからまずは正棋会王将戦で通算7度目の優勝。4月には正棋会通算1000対局、勝率8割6厘という記録も作った。まさにマイナスをプラスに変えたわけだ。
 そして今、矯正の効果により8割以上元通りに直ってきたと確信している。感謝。。。!

【レーティング選手権】

 さて、昨年は休場したこのレーティング選手権だが、今年はもちろん意欲満々で出場。最近3年間はいずれもベスト8止まりだったが、一度優勝もしているし、結構相性の良い棋戦である。なによりも規定点数さえあれば殆ど自由参加という気楽な雰囲気が好きだ。

【予選第1局 稲葉聡さん(兵庫)】

 いきなり学生名人の稲葉君と。彼とは正棋会や研究会で何局も戦っており、手厚い将棋と認識している。

予選1局目 稲葉聡さん(兵庫)

 図以下▲8二竜△8六歩▲8七歩△6六歩▲同銀左△7六金▲4一銀△4二金寄▲7六銀△6六角成以下後手勝勢となったが、図では▲6六歩で先手良かった。

【予選第2局 真田正さん(和歌山)】

 真田さんは和歌山の強豪。銀交換後、先手がその銀を打ってきたところ。中央を制圧されてはたまらない。

予選第2局 真田正さん(和歌山)

 図以下△6五銀▲6六歩△7六銀▲6八角△4五歩▲7七歩△8七銀成▲同金△8六歩▲7六金△8七歩成と飛車先を突破し、優勢となった。

【予選第3局 大木和博さん(東京)】

 私が入社時東京に居たころ大木さんは活躍の絶頂期で、あのころが懐かしいね、と談笑しながら対局開始。ひねり飛車側が角得ながら竜を作り、後手陣はかべ形なので苦戦。

予選第3局 大木和博さん(東京)

 図以下△7三歩成▲7七桂成△5九香▲5五角△8六竜▲7六歩△5七香▲3六桂△1八玉▲1五歩でどうやら逆転したようだ。図でもその手前でも▲5九香と打てば馬が逃げるしかなく、先手優勢だった。△3六桂が入っては逆転。

【予選第4局 浅田拓史さん(大阪)】

 浅田さんは京大生とのこと。若手はすぐ全国クラスになるから要注意である。後手番の矢倉で先攻したが、攻めが薄くて大変な局面。

予選第4局 浅田拓史さん(大阪)

 図以下△8六角成▲同歩△7五角▲7一成香△8六角▲8二飛△7七銀以下寄せ切った。図では飛車を取るのではなく△8六角成が真の狙い。

【一日目終了】

 さて、一日目はこの4局で終了。この時点で4戦全勝は竹内俊弘、吉田正和、藤本裕之、そして私の4名に絞られた。明日、更に2局指して6局中4勝以上がトーナメントに進出となる。
 会場には先日一緒に知多半島で旅行した天野朝日アマ名人、関口康雄さん、足立由美さんなどが観戦に来ており、北海道勢と合流してお楽しみの交流会。この大会の楽しみのひとつでもあるんですね。まあ、翌日に差し支えない程度にしておいてほどほどで切り上げる。宿泊先に帰ってからは俊平と一緒にラーメン屋で将棋部のことなどを話し込む。彼は数日前に支部名人になったばかりだったが、このときは更に私もタイトルを取るなどとは思ってもいなかった。

【予選第5局 藤本裕之さん(兵庫)】

 藤本さんは元奨励会二段の実力者。同じ関西だが今まで2局しか当たっておらず、いずれも彼の振飛車だったから、今回の初手▲2六歩には意表をつかれた。後手番ながら激しく攻めたが図ではこの瞬間反撃されるのが目に見えており、自信は無かった。

予選第5局 藤本裕之さん(兵庫)

 図以下▲2四歩△7七歩▲同桂△8六金▲2三歩成△7七金▲3二と△同玉▲5二銀△8九飛成まで。なんと一直線に終わってしまった。図では▲8五歩△同飛を入れておけば▲7七同桂が飛車に当たるので大違いだった。

【予選第6局 竹内俊弘さん(福島)】

 予選5連勝はついに私と彼の二人に絞られた。これに勝つと今日はもう終わり、ベスト8確定となる。とはいえベスト16進出は確定であり、しかも前日一緒に飲んだ仲。彼が関西(京大)に居たころからの知己でもあるので、序盤は談笑しながら指し手が進んだ。さて、図は中盤、玉をどこに逃げる?

予選第6局 竹内俊弘さん(福島)

 図以下△3三玉▲5五銀△8六歩▲7七玉△8七歩成▲同金△6九角以下勝勢となったが、もたもたしているうちに頓死寸前まで迫られてしまった。ひやりとしたが辛勝。

【二度目の6−0通過】

 さて、これで予選は唯一の6連勝通過。以前にも一度これを達成しており、そのときはベスト8ですぐ敗れてしまったが、今回は雰囲気もいい。天野名人からは「野山さん、往年の頃を思い出しますね、冴えてますよ。」とほめてもらった。この日も先述の旅行メンバに加え、加藤幸男君や篠田正人氏などが観戦に来てくれていたが、相当疲れていたのでしばらく観戦したのちすぐホテルへ戻る。とにかくすぐにごろんと横になりたかったのである。
 今回の予選では上位陣の4番から9番まで(武田俊平、遠藤正樹、北村公一など)、ほか関東勢や学生の有力どころが総崩れで、彼らは遅くまで飲んでいたらしい。
 夜、寝る前になんとなく優勝できるかもという予感がよぎる。チャンスだ、実に雰囲気がいい。冴えている。こうなったら強気で行こう。明日、決勝戦を快勝して表彰される自分の姿をイメージしながら床につく。だが、神経が張り詰めていてなかなか寝付けない。うとうとしていたら夜中2時頃、そして4時半頃また目がさめる。もう眠れなかった。

【最終日:ベスト8 竹内俊弘さん(福島)】

 くじ運のいたずらか、再度竹内君と当たる。前局と違って今度は一言も会話なし。実は予選6局すべて後手番だったので、初めて先手番ということになる。
 本局は角交換型向飛車だったが、交換した角を打ち合って変則的な早仕掛けの変化となった。図は5五の歩を突き出したところだが、この手で▲4五桂△4四角▲2四飛△2二歩は意外なほど後が続かない。

ベスト8 竹内俊弘さん(福島)

 図以下△3六歩▲5三歩成△3七歩成!▲5二と△同飛▲3七銀△7七角成▲同銀△5六歩▲4四歩△同銀▲3四角で優勢となった。本譜の順(特に△3七歩成)には驚いたが、▲5二とが大きな一手。

【ベスト4 宮崎一郎さん(高知)】

 宮崎さんとは初手合いだが、将棋を拝見していると手厚い棋風で、矢倉系統を好まれるように思った。この将棋は銀矢倉+飛車先不突四手角に対し、先攻されてはたまらないから角頭を狙って▲8六銀から▲8五桂とぶつけた。さて、大捌きとなったが次の一手は?

ベスト4 宮崎一郎さん(高知)

 図以下▲5五角!△1二玉▲2五歩△3三銀▲4五桂打△2二銀▲4三歩成△同金右▲5三歩成で先手勝勢となった。
 これで決勝進出。3位決定戦なんかいやだ、と思っていただけにここで初めてほっとした。昼食は軽い定食で済ませたが、なんとおいしかったこと。。

【決勝 小牧毅さん(埼玉)】

 ここまで来てはさすがに緊張したが、盤に向かえばもう将棋以外は何も目に入らない。優勝とかなんとか意識せず、ただただ自分の将棋を楽しく指したいと思っていた。
 決勝の相手の小牧さんとは、氏が現役奨励会三段のとき、将棋ジャーナルの企画「リコー対奨励会」で指したのが初手合い、以降アマ大会でも二度当たっており、定跡形であっても力を尽くしたねじり合いになる。

決勝:▲小牧 毅(埼玉)△野山 知敬(大阪)(持ち時間35分、秒読み30秒)
▲7六歩    △8四歩    ▲7八金    △3四歩    ▲2六歩    △4四歩
▲2五歩    △3三角    ▲4八銀    △3二金    ▲5六歩    △8五歩
▲7七角    △2二銀    ▲8八銀    △5二金    ▲6八角    △4二角(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 角道を止めて力戦矢倉。オリジナルの序盤なので、とにかく指していて楽しいのである。

▲2四歩    △同 歩    ▲同 角    △8六歩    ▲6八角    △8七歩成
▲同 銀    △5四歩    ▲8六歩    △6二銀    ▲9六歩    △9四歩
▲6九玉    △4一玉    ▲5八金    △2三歩    ▲6六歩    △7四歩(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 互いに一歩を持ち合う。プロの目から見れば銀冠に組んだ先手が作戦勝ち、なのであろうか?まあ、いいや。これはこれで私としては満足な序盤だから。

▲6七金右  △4三金右  ▲7九玉    △3三銀    ▲5七銀    △3一玉
▲7七桂    △7三桂    ▲6五歩    △6四歩    ▲同 歩    △同 角
▲6六銀    △2二玉    ▲6五歩    △4二角    ▲7五歩    △6三銀(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 先手は厚みを生かして反発。私としては互いの攻め駒である桂の働きの差を示したいところ。図以下、だんだん激しくなってくる。

▲4六角    △5五歩    ▲7四歩    △同 銀    ▲7五歩    △同 銀
▲同 銀    △同 角    ▲6六銀    △8四角    ▲7四歩    △6五桂
▲同 桂    △6四歩    ▲7三桂成  △6五歩    ▲8二成桂  △6六歩(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 ▲7五歩に対し長考。△6三銀では勢いが無く勝てないと見て読みを打ち切り、後のことはともかく、強気に攻める一手と判断した。

▲7七金寄  △6七歩成  ▲同金寄    △3九角成  ▲2六飛    △6六歩
▲6八金引  △7七歩    ▲同金右    △4五歩    ▲5五角    △5七馬
▲6八歩    △7六歩    ▲同 銀    △7五歩    ▲8七銀    △7六銀(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 ▲2六飛の局面でまた長考。直感は△3五銀だが▲同角△同歩▲4一銀がいやだった。本譜は考えすぎて最悪の順を選んでしまったかも。だが、小牧さんがこのあたりで秒読みになったのがつけ目。私はまだ数分残していた。

▲6一飛    △7七銀成  ▲同 金    △6七金    ▲同 金    △同歩成
▲同飛成    △同 馬    ▲同 歩    △4九飛    ▲6九桂    △5八銀
▲8八玉    △6七銀成  ▲7八銀打  △4八飛成  ▲2四歩    △同 歩(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 ▲6一飛では▲7六同金△同歩▲同銀、また次の△6七金には▲2四歩△同歩▲2三歩の攻め合いで先手一手勝ちだったが、本譜は△4九飛以下優勢になったと思った。だが、このあたりで私も秒読みに。

▲2三歩    △同 金    ▲6八歩    △同 龍    ▲7九金    △7八成銀
▲同 金    △6九龍    ▲2五歩    △同 歩    ▲2八飛    △7六銀
▲4一角    △8七銀成  ▲同 金    △3二銀    ▲5二角成  △7六金(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 △3二銀と打って固くなったが、攻め駒が少ないので指し切りに注意しないといけない。▲4一銀のような手が回っては大変になる。

▲7八銀    △8七金    ▲同 銀    △7六金    ▲7八銀打  △8七金
▲同 玉    △7六銀    ▲9七玉    △3九龍    ▲6八飛    △9五歩
▲9一成桂  △6七歩    ▲同 銀    △7九龍    ▲7八金    △6八龍(図)
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 千日手模様のようだが、もちろんその気は無い。どこかで△6六歩を狙っていた。そして、ついにはっきりと寄せが見えてきた。

▲同 金    △8七飛    ▲9八玉    △6七飛成  ▲同 金    △8七銀打
▲8九玉    △6七銀成  ▲3三角成  △同金右(投了図)
まで154手で後手の勝ち
決勝 小牧毅さん(埼玉)

 投了図以下▲3一銀には△1二玉で、いわゆる「ナナメゼット」になる。小牧さんが投了された瞬間「おお、やったか!」と開放感に包まれた。

【10年ぶりの全国制覇】

 表彰式で拍手を浴び、早速周りからお祝いの言葉、お祝いメールも来てその場で優勝を実感。アマレンからは近代将棋の締め切りに間に合うようにと要請され、すぐパソコンを取り出して原稿を作成。熱気が残ったままだから30分ぐらいで書き上げた。
 帰りは北村公一さんから誘いがあり、鈴木英春さんの車で大阪まで乗せていただくことになった。翌々日には九州の大会に参加されるそうで、帰り道だからとのこと。ここでも地域を越えた友情を感じ、うれしくてたまらなかった。ありがとう!いやあ、お元気ですねえ。。。車中ではお祝いメールが次々とやってきて、途中の休憩所で祝杯。
 10年ぶり、47歳の優勝は多くの人に希望と勇気を与えたものと思う。このR選手権では最年長優勝記録かも?
 この大会期間中、そして大会終了後も正棋会、リコー将棋部をはじめ、多くの人の思いやりと友情を感じた。仲間というのはありがたいものである。今後も大切にしたい。

【勝因は?】

 それにしても、昨年の落ち込みようから考えると信じられないような結果である。私は正月にいつも毎年の目標をたてており、全国優勝をあげていたときもあったがもう無理じゃないかと思ってそんな大それた目標は立てなかったのだが、なんと実現してしまった。
自分なりに分析してみるとなんらかの勝因として、以下のことがあげられるかも知れない。私なりのアマ将棋・サバイバル戦術である。
(1) 毎日、詰将棋、棋譜並べを行う。:詰将棋の効用は数手先の局面を正確に頭に残すことで、終盤だけの効用に留まらないと私は思っている。棋譜並べは指し手を覚えるのではなく、感覚をつかむものだと思っている。
(2) 奨励会員など、若い相手と実戦で腕を磨く。:現代将棋とその考え方に接し、何よりも刺激がある。
(3) 自分なりの序盤戦術で戦う。(力戦矢倉、対振飛車の棒銀、早仕掛け、対穴熊4四角など):人まねではないオリジナルだから、楽しくてたまらない。
(4) 持ち時間の使い方を工夫し、終盤に時間を残す。:序盤、中盤は決断して早指しを心がける。終盤で意表をつかれてもそこで数分残っているのは大きい。秒読みだとどんな強い人でも間違えるものだ。
(5) 持時間を倍使う。:相手の考慮中も予想手に集中し、なるべくいやな手を中心に読む。持ち時間30分の将棋でも、60分あるということになる。
 上記のどれも大きいと思うが、とりわけ強調したいのは(3)であろうか。私は今、将棋を指すことが楽しくてたまらない。将棋には限りない可能性があると思う。私の序盤戦術はあまり多くの人には指されていないはずと自負している、自分の世界である。この探求が楽しくてたまらないのだ。
 この優勝を契機になんやらおかしな自信もついてしまったし、更にまた「さまざまな大会で最年長記録を塗り替えてやろう!」という楽しみもできた。何事にも前向きな気持ちを忘れず、またすがすがしい夢を見たいと思っている。

(了)


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