イベント・レポート

2001年度リコー将棋部冬合宿

〜〜〜渡辺顧問お疲れさま、うま君歓迎〜〜〜

年月日:2001年12月15日〜16日(土・日曜)13時〜翌11時

場所:神奈川県箱根「花月園」

リポータ:西田 文太郎 e-mail : buntaro.nishida@nts.ricoh.co.jp

【箱根の山】

 お気に入りの黒のセーターを着こんでジャンパーを手に持って外に出る。頬にあたる空気が冷たく、ピリッと身が引きしまる。12月15日の朝、空が青く晴れている。ポッカリ無くなった工場跡地の広い空間はどこまでも遠く澄んでいる。

 環八は夏に比べれば流れているけれど自分の予想よりは混んでいる。やはり車は増え続けているのだろう。芦花公園のガソリンスタンドで、給油して久しぶりに洗車もする。洗車機の中で、車のエンジンを止め大粒の水球をガラス窓に浴びながらじわっと前に進む。NHKの海外ドラマ「アリー・マイラブ」では主人公の女性弁護士アリー・マクビールが洗車機の中でことを起こしていたが、作者はこんな短時間の密室をうまく利用したものだと妙なことに感心する。

 東名は、さすがにすいている。高速道路はこうでなくっちゃ。そのうえ宇多田ヒカルのMDコンサートがごきげんなドライブにしてくれる。大和トンネルを過ぎたあたりからだろうか、丹沢の峰がきれいに雪化粧をして迎えてくれた。しばらく進むとその向こうに箱根の山々が見え、富士山も雄大な雪景色を現す。

 小田原からは国道1号線を走る。右に左にくねくねと登る。紅葉は終わってしまったけれど箱根の山道は木漏れ日に巡り会ったり、深い緑をくぐったり、味がある。

【花月園で部会から】

 今年は参加者51名となった。ほぼ平年並みだろうか。12月は何かと気ぜわしいし、いろいろ行事もあるようなのでまずまずの参加者数だろう。屋敷師範と早水女流プロの参加が嬉しい。また、外部からも来てもらえたし、リコーの中でも将棋部外からも参加してもらえたので、バラエティーに富んだメンバーとなった。私は2割くらいの外部参加がちょうど良いと思っている。合宿が閉鎖的にならず、他の文化も消化しながら取り込むことができる。S、A、Bと3クラスとも16人ずつと理想的なクラス分けも、16室への部屋割りも事前にフォーラムに載っていて、合宿委員の手際の良さが目立つ。

 地下の対局室は我々専用なので他の客を気にしなくて良い。禁煙とし、部屋の外のソファーが喫煙席となる。すべて椅子席なのも私には良い。なにしろ椅子の生活になれてしまって、畳に座ると不自由でならない。プロ将棋界のタイトル戦は和室で畳に座り、羽織袴が主流となっている。しかし、頭脳の最適化を図るためには個人の好みを優先させた方がよりよい棋譜が見られると思う。伝統・様式美・格式を尊ぶということもそれなりに意味はあるが、プライオリティナンバーワンは内容だろう。

 恒例の部会は主将野山の挨拶で始まった。今回は屋敷師範の弟子で奨励会の伊藤康了君の妹、沙恵ちゃんが初参加だ。まだ8歳というから将来が楽しみだ。来年リコー入社が決まっている明治大学の強豪馬上(もうえ)君も駆けつけてくれた。来年からのリコーに楽しみが増えた。

 9月のアマ名人戦では野山知敬3位、山田洋次ベスト8、菊田裕司ベスト16と全国大会に3人も出場した。社団戦では2軍が3部から2部へ昇格した。秋の職団戦でS級優勝という2年ぶりの快挙の報告に主将の顔がほころび、歓声が上がった。また、山田洋次が文化・スポーツ部門でみのり賞を受賞した。関西将棋の日の席上対局イベントで、野山が矢倉五段を破った。

 今回の目玉は、渡辺新平将棋部顧問のお疲れさま会、これについては夕食の時に改めてふれよう。

【公式戦開始・・・第1局】

 部の公式戦が始まった。合宿委員の桑山君が父上の急病で、実家に戻った。徳森さんからは遅れるという連絡が入った。もう一人、今回初参加の人からは、連絡がない。

 急遽Aクラスを14人に編成して始めた。私は、ここのところレーテイングを下げていて、1936点スタートで、Aクラスの9位スタート。初戦は、徳森サンだったので、不戦勝になった。平田聡君が168点差の五味正臣さんに勝っている。伊藤沙恵ちゃんは吉中勝則相手に、ばんばん飛ばしている。吉中の「ほんとに8歳なの?」という悲鳴が聞こえる。しかし、最後は老獪に逆っていた。

 Sクラスでは、いきなり山田洋次対馬上勇人戦。公式戦では過去馬君が2勝している。今回は、洋次が貫禄を見せつけた。

【第2局】

 私は庭野さんとの対戦となった。どうやらこの二人は現役最年長組で、若手の棋力に付いていくのがイッパイイッパイといったところ。対戦成績は、練習では五分だが、公式戦ではあまり勝った記憶かない。後手番を引き藤井システムを試すことになった。棋譜ではよく見かけるし、逆を持って指すことは多いが自分で指すのはそれほど経験がない。案の定、駒組みでは、リードされてしまった。ところが、今日の庭野さんは慎重で、仕掛けのチャンスを何度か見送ってくれたので、こちらから仕掛ける展開となった。居飛車左美濃に対し中央付近でごちゃごちゃやっているうちに優勢になった。どこかで間違えたのだろう、そのまま押し切ってしまった。

 Sクラスの藤森保対星出明戦は、星出が勝ち、馬上勇人対伊藤康了戦は、うま君が勝った。野山知敬対藤森哲也戦は野山の勝ち。

【第3局】

 徳森さんがやっと到着。ホテルの迎えのバスを逃すと、交通の便が急に悪くなる。

 私は木村健二さんと。過去は五分くらいだろう。でも何となく勝ちにくい相手という印象があるのは、もしかしたらあまり勝っていないのかもしれない。我ながら、自分の記録をどこかにとっていないものかと思ってしまうが、ほとんど自分の記録が残っていない。それもあまり勝っていないからかもしれない。今度から、記録をつけようか。野山は全部棋譜まで取ってある。すごい。

 木村さんとの横歩取りは、木村さんに錯覚があったようで、がちゃんと一戦交えたら、急に良くなった。たまには温泉気分で指すのも良いものだ。不戦勝混じりながら一人3連勝となった。

 Sクラスでは洋次と屋敷先生が3連勝となった。

 Bクラスでは、初参加の勝又さんが渡辺顧問を破って初白星をあげた。是安真理子さんと安宅邦夫さんが3連勝だ。

【第4局】

 最後は、五味さんとの対戦になった。この辺りから、手合い違いを感じる。将棋は、人によって、手合い違いの相手にでも勝てるタイプと、手合い違いだと全く勝てないタイプの人がいる。私は、後者で、パンチのなさを痛感する。その代わり、階段を自力で上れば、そこから下には、あまり取りこぼしをしない。

 手合い違いの場合、勝てるチャンスがあるとすれば、矢倉しかないと思う。矢倉の場合、たいてい攻め合いになるので、上手でも間違える可能性は出てくる。しかし、五味戦は、序盤の隙をつかれて、圧倒的な寄り倒しという負け方だった。

 結局、3勝1敗が5人となり、ソルコフで、木村さんが優勝、私が2位、3位が和泉孝則君となった。五味さんが4位で、初参加の伊藤沙恵ちゃんが5位に入った。

 Sクラスは屋敷師範に山田洋次が初挑戦となったが、師範が貫禄を見せつけた。3位に野山、4位が藤森哲也、5位が藤森保となった。

 Bクラスは是安さんが4連勝で優勝、以下、安宅、鈴木、滝山、土肥となった。

【夕食】

 夕食の前に渡辺顧問の挨拶があった。渡辺顧問はリコーの副社長から(株)三愛の社長を長く務めて、この8月に退任された。渡辺さんは、10年も前になるだろうか、羽生現五冠に2枚落ちで対局し、見事勝たれている。

 今回は日にちを間違えて、一日早く新幹線に乗ってしまったそうだが、新横浜で引き返すことができたそうだ。日にちを間違えるのはよくあることで、私も経験があるし、作家の渡辺淳一氏も講演の日にちを間違えたとエッセイに書いている。

 現将棋部部長の柳川さんも駆けつけてきてくれて、渡辺さんにねぎらいの挨拶をしてくれた。これからは、将棋のイベントにも顔を出してくれそうだ。

 夕食は、いくつかのテーブルに分かれて鍋をつついて楽しい。徳森夫妻と同じテーブルで、わいわい言いながら、食べた。そろそろご主人も将棋でも参加しても良さそうだ。

【指導対局】

 食後はSクラス対A,Bクラスの2面指しの指導対局。前回も指導対局だったので、今回はリレー将棋とかにしてくれた方がいいなと思った。

 その後は、好き勝手な対局が始まる。私は今回、有志参加の研究会をやろうとしていたのだが、なかなか突破口が見いだせなくて、ずるずるとチャンスを失い、ついに、実現できなかった。期待していた方、ごめんなさい。

 どうも運営は苦手なのだ。でも、この次は、何とかやりたいと思うので、我とおもわんかたは運営を手伝ってください。

 今回は、大きな問題もなく無事に楽しく終わった。合宿委員の桑山、星出、臨時合宿委員?をやってくれた小林君、うまくまとめた野山さんご苦労様でした。そして、参加してくれたみなさん有難うございました。またのお越しをお待ちしています。

(完:記02年1月5日)


【前のレポート】 【次のレポート】 【イベント・レポート】

【Photo Gallery】 【棋譜鑑賞】 【前回合宿】 【次回合宿】

Copyright (C) 1999-2003 Ricoh Co.,Ltd. All Rights Reserved.