イベント・レポート

第12回社会人将棋団体リーグ戦初日

〜〜〜1軍、2軍は共に3勝1敗でスタート、目指せ優勝!〜〜〜

年月:2001年6月10日(日)10時〜5時

場所:港区海岸「東京都立産業貿易センター」

リポータ:西田 文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp

(敬称略させてもらいます)

【竹芝埠頭】

 梅雨の合間、竹芝埠頭の朝は、霞に煙っている。東京湾の海は鈍色にくすんで素っ気ない。うっすらとぼやけるレインボーブリッジに向かって白いあぶくが蛇行している。その向こうにはお台場のフジテレビや観覧車がぼーっと浮かんでいる。

 大きな船のマストの下に立つと、「夏の伊豆大島へ!」という横断幕が目に飛び込む。竹芝客船ターミナルを、回り込むような竹芝埠頭公園の遊歩道は、「強者どもが夢の後」のように人がいなくて貸し切り状態だ。塩っけのある濡れた空気が、伊豆七島に遊んだはるか彼方の昔にまとわりつく。学生の頃、新宿の飲み屋でくさやのにおいに刺激されそのまま、その夜ここから出航した青い夏。その船は神津島に行った。船のデッキからトビウオを見た。

 今日はヴァンテアン号が白く広い船体を横付けにしている。インタコンチネンタルホテルの優雅な曲線が一度は泊まりにおいでよとささやくけれど、おそらく一生その誘いには乗らないだろう。

 5両か6両ほどの濃いブルーのユリカモメが時々走っていく。ゆっくり動くゆりかもめを追っていると、レインボーブリッジが大きくなった。少し陽がでてきた。光を反射している海に小型のボートが進んでいく。


【素晴らしい会場】

 今年から、会場が変わった。浜松町駅から海に向かって歩き、竹芝埠頭にほど近い東京都立産業センターだ。スペースにゆとりがあるため、これまでは通路側の対局しか見ることができなかったが、全対局を見ることができる。もっとも、一部リーグは観戦者のためにもう少しスペースをとってもらえればありがたい。。。

 もう一つ嬉しいことは、トイレが豊富なことだ。昨年までは大行列で、大変だった。

 会場内に簡易飲食屋さんがでているのも、便利だ。地下のレストランもかなり広いからいい。NEC本社ビル前を汗たらたらで、食事に歩いたのも、今は昔。

 この場所を「前例のない」将棋大会のために借りるということで東将連の方々は消防署や貸し主に何度も足を運び、借りることができたという。大いに感謝したい。






【2軍のGMをやる】

 前GMの吉中が少し休憩したいという。ずいぶん長いことやってもらったから、ボーナス休暇をあげなくてはならない。代わりをやるものが居なかったので、最近イベントレポートをさぼっている罪滅ぼしに((^^;なるのか、これが)、勢いで私が引き受けてしまった。したがってレポートは2軍中心になる。

 前GMの贈り物は洗濯をしてきれいになったゼッケンだ。GMの苦労が早忍ばれる。mumumu、名誉ある洗濯係を任命するか。

 将棋の団体戦GMは経験がないのに、勢いというのは恐ろしい。並び順とか、作戦とか何も知らない。そこで軽く、考えてみた。同じ強さの相手に対し、強い順に並べるのを逆にしても4将勝負になるだけでつまらない。一人ずらして並べれば、6勝1敗になるはずだが、二人ずらせば5勝で力の差が二人分でるから確率は上がる、果たしてそうか? 結局その日の調子の良い順に並べることにした。

 調子はやってみないとわからない。だから、初戦が困ってしまう。どうしても過去の実績に左右されがちになる。しかし、時の流れと共に力は移ろう。実績があてにならないことは世の予想屋がなかなか当たらないことで実証済みだろう。パワーシフトを見抜く目がないからだ。会場に着いた順から並べるというのはどうか。案外気合いがはいっている順番のような気がする。何の根拠もないまま、朝会った順をベースに若干実績を加味して並べる。

 今年の2軍は優勝を狙うと同時に1軍への登竜門としたい。成績上位者と1軍の下位の何人かと入れ替えのためのリーグ戦を提案してみたい。さしずめ冬合宿の2日目なんかどうだろう。ついでに2軍と3軍との入れ替え戦もやらないと不公平かもしれない。

 

【第1試合:小岩南口棋まぐれ会】

 リコー2は3部リーグ青の順位5番だ。相手は順位12番だから、負けるわけにはいかない。吉中の記憶によれば、去年負けている。ライエルが九州に行ってしまった為出場できないが、新人の平田聡が入ったので、戦力的にはほぼ去年と同じだ。藤原、宮田、岡田、平田、庭野、吉中、田中。結果的には、この並びはGMのミスとなった。吉中の位置が低すぎた。平田は、新人で初めての大会だから、もっと下で気楽に指させるべきだった。

 相手の大将が振って、と金3枚は「リコー奇数先」。30分、30秒のドラマが始まった。

 

 大将戦:▲藤原対△坂内。棋譜あり。横歩取り角交換で、▲77銀型のもっとも変化の多い定跡へ進んだ。先手が飛車交換を拒否して▲36飛と引いたため、持久戦模様になった。後手側は▲22歩の筋を警戒しなくてはならない。△22歩が穏やかな定跡で藤原はこうなると予想していた。△42玉や△41玉もある。本譜は△33桂と跳ねたため、急に後手苦しくなって、形勢は大きく先手有利となった。最後は藤原の堅実な寄せを見るばかりとなってしまった。と書いてはみたが、あの寄せはあんなものなか、棋譜を見て教えてもらいたい。もっとすぱっと切れないものか。

 副将戦:△宮田対▲江口。宮田の中飛車美濃囲いに先手は左美濃。飛車角をさばいて、分かれは宮田優勢と見えたが、馬を自陣に引いた手が一手パスのような緩手で、逆に厳しく攻められた。しかし辛抱して平然とこらえる宮田は、いつの間にか逆転していた。去年の社団戦あたりから、音が聞こえない秒読みを克服し、大局観も図太くなっている。我々は、隣で秒を知らせてやろうかと言っていたが、野山が自分で克服しなければ駄目だといった。素晴らしいアドバイスだった。

 三将戦:▲岡田対△竹内。岡田向かい飛車で、後手は三間飛車の相振り飛車。岡田の駒がバラバラで作戦負け、途中でかなりきわどい勝負にはなったが、やや足りない感じだった。岡田は勝ちがあったという。本当に勝ちがあったのか負け惜しみなのか。並ぶものなら棋譜を並べてほしいものだ。

 四将戦:△平田対▲小見山。平田四間飛車高美濃に対し先手は▲57銀右。中央での小競り合いから飛車角総交換で分かれは振り飛車満足。その後も押し気味だったが、終盤攻め急いで逆転された。筋はいいが秒読みにややブランクを感じた。

 五将戦:▲庭野対△池田。後手の四間美濃に対し、庭野居飛車穴熊、組み上がりを見ると形はできたが、作戦負けになっていて、どうしようもない。ずるずると、駒損が膨らみ力を発揮するまもなく寄り切られた。いつものように穴熊の悪いパターンがでてしまった。

 六将戦:△吉中対▲亀井。角換わり棒銀で、吉中の銀がさばけ、敵の左翼を食い破って優勢になった。そのあともたもたしながらも押し切った。吉中、GMの荷を下ろして快調と見た。

 七将戦:▲田中対△臼井。田中棒銀で、その銀が角と交換になって駒得。しかし形勢はそれほど良くない。もっとも本人は悪くないと思っていた。後手陣は居玉で金開き。終盤は田中の勝ちになっていたが、五手詰めを珍しく長考して寄せ損なった。いつもはぽんぽん指すのに、あの長考が敗因ともっぱらの評判だった。

 結果は三勝四敗。まずい。早速転んでしまった。しかもオーダーの組み方に失敗があった。GMの敗着だった。ポイントゲッターなのにこない奴にも多少の責任はあるが、強いものばかり並べて勝っても面白くないだろう、長島さん。

 

【第二試合:NIFTY FSHOGI 選抜2】

 ニフティの将棋フォーラムのメンバーで、順位は16番だから、負けられない。なんと柿木将棋の作者本人がいる。私の密かな自慢は柿木さんにお願いして「分岐モード」を作ってもらったこと。えっへん。柿木さんも活用しているらしい。久しぶりの社団戦は、いろんな方に逢えて嬉しい。女流棋士のレーテイングをホームページに載せているアヒルさんにも会えた。慶応を悲願の学生王座に導いた任田君にも会えた。彼は新日鉄に行った。なんと同じリーグで、第3日に当たることになっている。

 大将戦:△藤原対▲大村。敵の三間飛車に対し、後手は右四間で攻めていく。きっちり勝って大将の貫禄を見せた。

 副将戦:▲宮田対△梅沢。棋譜あり。矢倉模様から中央で小競り合いがあり銀交換、返す刀で攻めゴマの桂頭を攻めて優勢になった。

 三将戦:△小林対▲柿木。先手の居飛車穴熊に後手石田流。銀損の攻めを得意とする小林が、例によって作戦負けになる寸前に、先手に悪手がでた。後手桂得が確定し飛車がさばけそのまま押し切った。

 四将戦:▲吉中対△片尾。後手の石田流に先手は石田流という相振り。気がつけば、負けていた。

 五将戦:△岡田対▲嶋本。後手の石田流に対し先手は六筋位取り。いつの間にかさばいて優勢に。

 六将戦:▲平田対△青松。先手四間飛車に、後手は向かい飛車。ここもほとんど見ていないうちに負けてしまった。

 七将戦:△田中対▲湯浅。先手の四間飛車穴熊に対し、棒銀戦法。ちょっと失敗。

 結局4勝3敗ときわどい勝ち点をあげた。上位3人が手厚いから勝ちやすいい。


【第三試合:埼玉大OB】

 ここは順位四位と、目の上のたんこぶ。気合いを入れて、望む。

 大将戦:▲藤原対△工藤。藤原得意の南流右玉戦法。中盤、リードしていたが、温泉気分からか受けすぎて詰まされてしまった。終盤で田中指摘の馬がでる手に一票。ちょっと哀しい負け方だった。

 副将戦:△宮田対▲北村。四間穴熊に対し、宮田は銀冠で対抗。しっかり勝ちきる。

 三将戦:▲小林対△大石。棋譜はあるが、本人希望で掲載せず。藤井システムの過激版。足を止めて打ち合い、ノックアウト勝ち。秘密兵器につき、これ以上書かない。

 四将戦:△岡田対▲小町。岡田向かい飛車、相手は3間飛車。知らぬ間に勝っている。

 五将戦:▲吉中対△高橋。吉中の石田流穴熊対居飛車穴熊。吉中大優勢になり、相手が打った角筋に堂々と銀を放り込んでただ取られ、絶叫をあげる。それでも大差だったので吉中勝ち。

 六将戦:△庭野対▲岡本。先手四間飛車に対し、玉頭位取り。庭野勝ち。

 七将戦:▲田中対△初田。後手の四間飛車美濃囲いに棒銀で襲いかかり、田中勝ち。

 合計6勝1敗と大将一人蚊帳の外。ショックをいやすため、クリーンアップに据えてやろう。


【第四試合:北千住猛爆隊】

 リーグ順位は八番手。このチームとはよく当たる。これまで一勝一敗とか。油断なく行こう。相手はライエルを覚えていて、あの外人はどうしたという。あの外人に勝たなくてはといって笑う。ライエルは、去年大熱戦をやっていた。

 大将戦:▲宮田対△大室。棋譜あり。今日いずれも全勝同士の対決。後手は四間飛車で藤井システム。先手は、西田スペシャル。フェアリープリンセスの宿敵小野三枝子さんがこの戦法を編み出したのが私だと勘違いしていた。期待してくれて有難う。あれは三重県にお住まいの西田直樹さんという方です。中盤の中央での駒の激突で、後手が銀を引いたのがまずく、先手気持ちの良い攻めが続く。最後、歩頭にごっつい金打ちを浴びせ、寄り倒した。宮田、強腕になったか。初の大将を見事白星で飾った。大室さんも全勝同士の対決ということで、勝ちたかったと悔しがっていた。

 副将戦:△小林対▲渡辺。先手の3間飛車二枚金の構えにに対し、小林は四間飛車、居玉。途中で飛車を振り戻させられ、無理矢理陽動居飛車へ。とたんに、うわずった陣形に手筋の歩を垂らされ、参っている。しかし、と金への合わせ歩などを打って、次第に怪しい局面になった。最後は、入玉模様になって逃げ切ってしまった。

 三将戦:▲藤原対△富川。四間飛車美濃囲いに対し、藤原は左美濃に。悠然と指して勝ち。藤原はやはり二軍では大将格だ。紳士的でゆとりある対局態度はなかなか良いが、迫力に欠ける。対局態度は個人的には菊田のピシイーと指す指し方が模範だ。きれいで迫力があるから。

 四将戦:△岡田対▲今成。右四間に対し、居飛車で戦っている。見ないうちに岡田勝ちで終わっていた。

 五将戦:▲吉中対△中村。棋譜があるかも。先手石田流、美濃囲い。後手は左美濃。飛車損からの大逆転勝ち。

 六将戦:△庭野対▲木島。先手石田流に居飛車穴熊。一番先に決着が付いていた。おかしい、六将なら負けないはずなのに。

 七将戦:▲平田対△林平田四間飛車美濃囲い、後手は居飛車穴熊右四間。平田の手にあるのは、林葉直子の扇子だああああ。初白星を挙げた。

 結果は6勝1敗で、初日を勝ち点3で通過した。まずまずの出来。この調子で優勝を狙いたい。

 2軍には県代表実績者は藤原一人。あくの強さの大会があれば県代表にもなれるくせ者が複数。筋のいいのが数人。バラエテイーに飛んだ魅力あるチームだ。宮田4連勝、小林3連勝、藤原、岡田、吉中が3勝1敗と好調だ。

 対局者を離れてGMとして見ていると、つまらないことが気になってくる。対局姿勢とか対局態度がいかがなものかと思った。前屈みになり両肘をついて、貧乏揺すりと賑やかだ。菓子をプリポリ食べては指し、指しては食べる。対局中なのに隣の感想戦に参加する奴。趣味のゲームだから、好きにさせろよという意見もあるかもしれない。むしろ私はそれに近い。しかし、優勝を争うようになると、やはり対局態度の品性もほしくなる。くせ者軍団としては欲張りすぎなのだろうか。


【一軍】

 今年は、蒲田チームがでていないので、藤森が戻り、太田が加わった。エース山田が他のチームからでたいということで、主将野山がOKの決断をした。社団戦はどういうチーム構成でも可能だから選択肢が多いだけに悩ましいこともある。旅も得るところが大きいだろう。

 菊田が4連勝、牧野が3連勝と好調だ。新加入の太田が3勝1敗と大活躍をした為、チームも3勝1敗とまずまずの結果。これからが楽しみになってきた。


【三軍】

 GMは、今年も伊藤がやることになった。来年は竹中がやってくれそうだ。去年の成績がぱっとしなかったので、4部リーグだと思っていたら三部リーグ赤の順位15番になっていた。さすがに、きつく出だし4連敗してしまったが、徐々に盛り返していくだろう。ガンバレ3軍。

 (完:記01年6月13日、改6月16日)


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