イベント・レポート

リコー‘99冬合宿

〜〜〜トップクラスに教えてもらう幸運〜〜〜

年月日:'99年12月11日(土)〜12日(日)

場所:神奈川県箱根 ホテル花月園

リポータ:西田 文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


【彩り豊かに】

 数年前までは、合宿に女性の姿はなかった。私が初めて書いたレポートが「ほおじろ冬景色」であり、95年の冬合宿だった。それまでの私は、不熱心な将棋部員で、合宿も出たりでなかったりだった。だから、その時が初めてかどうか定かではないが、中倉姉妹と大庭姉妹が参加してくれていたと思う。

あれから、早4年、「将棋を女性に広める会」の無節操かつ恥じらいを知らない地道な活動のお陰で、リコーの合宿に参加してくれる女性もかなり増えてきた。今回も、41人参加のうち6人が女性であり、無軌道な会員としては、何はともあれ定着してきたのかなあと感慨深いものが有る。

 しかし一方で、部内では、正規の将棋部員でない人を呼ぶ事への疑問がなげられ、アンケートの項目にもなって、その是非が問われた。

 結論として、さあっと眺めた限り、私は、おおむね賛成と受け取った。間もなく正確な結果が出る事と思う。

それ以前に、「合宿に何を期待するのか」という原点に戻る項目が入っており、こういう趣味の世界でも、諸行無常の鐘の音が、絶え間無く聞こえてくる。

 男ばかりで成り立っていた社会に、女性が進出してくると、男性側も女性側も何かと戸惑う事が多い。それは、過去の習慣が混乱させるだけの事であり、今ここに集ってきているものは、この一瞬に技術を磨き、同じ趣味の友として楽しみを分かち合えればいいのではないだろうか。私には、迷っている時間はない。闇雲に前に突き進むだけだ。

 お互いに慣れない事から来る不満や不便も有るだろう。はやりのセクハラモドキも出てくるだろう。恋愛もどきもでてくるかもしれない。だけど、将棋の合宿でだけ起こる問題ではないので、一つ一つクリアしていけばいいと思う。

 ここまで女性の参加を定着させた「将棋を女性に広める会」の谷川会長に”乾杯、そして祝福あれ”だ。

【花月園】

今年も我が家の愛車ミスター・ビーンは、環八から、東名、厚木・小田原道路を走る。丹沢の山は遠く墨色に煙り、道路沿いの紅葉は、やや時期遅れで、木枯らし色をした落葉樹が次の春を待っている。

豪華特製の車内コンサートは、大黒摩季に熱くなり、宇多田ひかるにぐにゃぐにゃにされ、箱根のお山はZARDで登りつめる。

花月園は、対局場は椅子でなので苦痛が少なく、部屋はツインが多いのでゆっくりくつろげ、温泉も有り、食事も貸しきり状態になるので、なかなか良いと思う。接客もさすがはタイトル戦がしばしば行われるだけあって心地よい。ただ難点は、小田原駅からマイクロバスで45分とやや遠く、山道なのでバスに酔う人が気の毒なことだ。秘策は、しゃきしゃきのマドンナの横に座り、一緒にオシャベリをする事だろう。

【恒例の部会】

 定刻をやや過ぎて、野山主将が恒例の部会をはじめる。

 先ずは内定者の案内で、桑山尚司君と亀岡奈保美さん。桑山君が夏合宿に続いて参加している。

 団体戦は、社団戦一軍が一部で6位、2軍も四部で6位、3軍が四部で14位だった。職団戦は、一軍がS級で優勝し、初の3連覇を達成した。

 個人戦では9月にアマ名人戦、前回優勝の田尻隆司が決勝で惜敗、山田洋次は予選を楽しみ過ぎて本選へのチケットをもらい損ねた。

 ここで、熊本から特別参加のアマ準名人田尻が挨拶、ますます男に磨きがかかってきた。明日は、羽生四冠と角落を戦うという。ミレニアム元旦に放映された。嘘のようだが、羽生四冠は、瀬川、田尻との2面角落を撃破してしまう。羽生おそるべし。

 アマ王将戦には、野山が関西、菊田が東京地区の代表になり、全国大会は11月に行われ、菊田がベスト8になった。野山は同士討ちで、後輩に花束を。なんてやさしいキャプテンだろう。

朝日アマ名人戦では、菊田が南関東代表、豊島英が北海道代表になった。これは来春全国大会が有る。

 11月の金沢、全日本選抜選手権では、山田洋次が決勝で惜敗、それでも50万獲得で赤飯。

【参加者】

 女性陣は、単騎突進のマドンナ早水千紗女流プロ、女流アマ女王のしゃきしゃきのマドンナ小野三枝子さん、フェアリー主催のペア将棋で2年連続優勝のクルミ割のマドンナ足立由美さん、元アマ女流名人のおしとやかのマドンナ是安真理子さん、シャンチー日本一の豊饒のマドンナ柴崎順子さん、そして、紅一点のマドンナ西川晶。

 屋敷師範もばい菌が入ったと足を引きずりながら来てくれた。何しろばい菌のため、本当に何日間かは前代未聞の禁酒をしたらしい。

リコー将棋部のアイドル師範中倉彰子女流プロと中倉宏美女流プロは、将棋の仕事がかち合って、残念でした。又、とっておきの切り札も、いま一歩のところで寄せそこなってしまった。又のお楽しみとして、名前は伏せておこう。

Sクラスでは、平成最強戦にでるという菊田と洋次が、そして佐々木が不参加だった。

 Sクラス16人、Aクラス12人、Bクラス12人全部で52人となった。

【Bクラス優勝岡田進】

 新婚につき棋戦不参加の晶ちゃんを除き、40人が最新のリコーレーテイング順にS、A、Bクラスと分かれてスイス式リーグ戦を各々4局行う。勝ち同士、負け同士で対局していくので4連勝すればほぼ優勝だ。持ち時間は20分、そのあと30秒の秒読みだ。

 Bクラスでは、柴崎さんが3勝1敗と好成績で4位につけた。3位が見るからに重厚な須田さん、2位が宇多田ならぬ、矢倉党の宇田津さん。

優勝は、この辺にうろうろしていてはいけない一風変わった岡田進。おめでとう。是安さんが2連勝と出足好調だったが、伏兵高田厚志に足をすくわれ、惜しくも5分の星となった。

【Aクラス優勝庭野和郎】

リコー将棋部の長老槙伸一が、得意の穴熊で、3勝1敗と健在ぶりを示した。順位最下位の宮崎裕之が、3勝1敗で2位に食い込んだ。優勝は、4連勝の庭野さん。

足立さんは、曲者ばかりと当たり、1勝3敗となった。リコーの将棋部には、弛めるとか育てるとかいう気高い志を持ったものは、いないようだ。

【Sクラス優賞屋敷師範】

 私は、少しばかりレーテイングが上がり、強豪連がお留守のために、Sクラス初参加となった。リコーの将棋部で頑張っていて良かったと至福を感じる田尻戦。公式戦はもちろん非公式でも初手合。わがまま言って先手をもらい▲7六歩△8四歩に▲6八銀から矢倉3七銀戦法に進む。

 形と手順はほぼ覚えてはいるものの、所々疑問の変化が頭をもたげ、基礎知識の欠如に時間を使う。田尻は、△95歩から△93桂の森内流ではなく、△95歩から△85歩と伸ばしてきた。

 こちらは、香車が上がり、飛車が3筋に回り、いよいよ総攻撃の時が来た。ここは、5筋、1筋の歩をぽんぽんと突き捨てて▲35歩と行くところだ。ところが、悲しいかな、▲17香型のため、▲15歩△同歩のあと、どこかで△16歩と突かれたら困るなあと、考えてしまった。そこで、1筋の突き捨てを入れずに、攻めたので案の定切れ筋になってしまった。

 後で聞いたところ、△16歩には▲同香△同香として逆にその一歩が攻めに活用できるので、問題ないそうだ。なるほど。それにしても、この程度の疑問が、普段はでてこないのだ。やはり相手が大豪なので、その棋力に誘引されて、いつもより深く読むことができるようだ。

【VS野山主将】

 小林が一局目で金星をあげたおかげで、二局目は野山戦となった。公式戦は、初めてである。リレー将棋では勝ったこともあるのだが・・・

 やはり矢倉模様に進む。しかし、早めに△75歩▲同歩△同角となって、主導権をとられてしまった。全く油断も隙もない。

 それにしても、田尻、野山と公式戦で指せるなんて、今回の合宿は、これだけで、お釣りが来るとしたものだ。

【出た!西田スペシャル】

 三局目は、宿命のライバル吉中戦。公式戦でよく当たるのだ。研究中の西田スペシャルの出番だ。「近代将棋」に連載中の「インターネットの輝く星」のなかで、「だにいさんのぺーじ」を取り上げたばかりで、だにいさんが長年研究開発中の対藤井システム対策の秘策である。わずか一ページの記事でもしっかり書きたいと思い、私も、即席西田スペシャルの使い手となったのだ。

 駒組は上手くいった。そして、敵がやや手づまり気味の時に、つまらない仕掛けをして、だにいさんのせっかくの研究を台無しにしてしまった。だにいさん、すまねえ。そうか、あそこは、あれはやってはいけないのだ・・・何のこっちゃ? ちょっとだけ企業秘密ということで。ははは、冗談です。単に棋譜を忘れただけなのだ。

【VS女流アマ名人】

 何故か小野三枝子さんともよく当たるんだ。そしていつもあり地獄のような罠にはまり、もがくのだ。今回も懲りずに罠に落ちてしまった。

 一歩を手にしようとして、飛車を閉じこめられて、苦しいの何の。今までの経験から、必ず一度はチャンスが来ると信じて、念力をかける。できるだけ、複雑に指す。

 そして、土壇場で念力がかかった。

【豪華夕食】

 私が座ったのは、自称「湯煙三姉妹」のテーブル。小野さんはお茶の教授になられたとかで、将棋をする暇もないほど、ずいぶん忙しいらしい。千紗ちゃんによれば、小野さんのお茶は、格別美味しいという。

 足立さんは、普段家庭が忙しいので、今日は存分に将棋を指すぞと張り切っている。子供に手の掛かる時期の主婦は、本当に大変ですよね。遠く離れていても、ちゃんと携帯電話のメールを使って、子供達とコミニュケーションを取っている。





 千紗ちゃんは、そろそろ進路の方向性を決めないといけない時期で、大学に進学したいようだ。若いということは、まだまだいろいろな可能性があるわけで、思うようにチャレンジするって、いいなあと思う。

 ひっきりなしにおしゃべりしていた小野さんが、さっきから静かになった。大きな蟹が出てきたのだ。

【リレー将棋・予想屋出没】

 今回はアンケートの結果も加味して、テスト的に、希望者だけの参加となった。3人1組みで、8チームができた。以下は合宿委員の伊藤コメント。

 1枠「根性あり」の牧野・足立・大室

 2枠「力あり」の野山・槇・柴崎 

 3枠「血統良し」の西田・桑山・小野崎

 4枠「気品あり」の浜下・鈴木・是安

 5枠「調教抜群」の宮田・庭野・宇多津

 6枠「穴なし」の椋木・伊藤・徳増

 7枠「追い込み勝負」の谷川・土肥・須田

 8枠「くせもの」の小野・小林・宮本

 早速、伊藤、吉中、西田でちびた赤鉛筆を耳に、予想を立てる。

 伊藤は、2・6で7が穴。

 吉中は、7・2で4が穴。

 西田は、1・5で3が穴。

【リレー将棋・結果】

 1枠対2枠というようにトーナメントが進み、2,4,6,7枠が勝ち上がる。ここで、西田予想は全てはずれてしまった。伊藤、吉中予想は全て残っている。

 準決勝は、2枠6枠が抜けて、伊藤はさすが合宿委員数年の眼力を見せつけた。

 決勝は、2枠の野山・槇・柴崎が見事に勝ちきった。柴崎さんの筋のいい指し手が印象的だった。

 





【自由対局】

 どこかで1メンツができあがっていたようだ。一度取材しなくては思いながらも、なかなか実現しない。それは、へぼ将棋に夢中になっているからだ。小野さんには、昼のリベンジをされるし、足立さんには温泉気分に雪をかけられてしまった。その上、柴崎さんには、2回やって、2回とも素晴らしい寄せを見せてもらってしまった。

 温泉のレポートがないことをお詫びしながら、楽しかった冬合宿レポートの筆を置きたい。屋敷先生、早水さん有り難うございました。一緒に盛り上げてくれたマドンナの皆さんありがとう。合宿委員の伊藤、西川お二人に、改めて、ありがとう。なかなかいい合宿でした。





(記:‘00年1月1日)


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