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イベント・レポート

女流棋士発足25周年記念親睦将棋会

   〜〜〜中倉姉妹の追っかけ〜〜〜

年月:1999年3月20日(土)

場所:日本青年館中ホール、503、宴会場

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


 

【ハッピーは土砂降りの雨の中で】

 朝起きてせわしなく会社に出かけ、何とかその日を終えて帰ってバタンキューというウイークデーを過ごし待ちに待った休日。朝から風が強く雨が横殴りに激しく降り、傘をさしても冷たく濡れるバス停。軽い春の嵐にときめきの予感がする。はたしてそのバス停にはご近所で評判のうら若くも美しいザードママが雨をよけて立っている。その美しさに満足に口もきけずに、雨を楽しんでしまう。どきどきポッポッ…

 髪型といい、目鼻立ちといい、ザードの坂井泉水様によく似ているので我が家では「今日ザードママに会ったよ」などと会話される。声もハスキーで、ザードがやらないなら、彼女にコンサートを開いて貰いたいぐらいな素敵な人なのだ。

 

【雨がからうちする明治公園】

 千駄ヶ谷の駅から東京都体育館の脇をすり抜けて青年館を目指す。時雨れる雨を傘と全身で受けながら、進んでいると、ふと20メーターばかし前をブルージーンズの若い女性が先を急いでいる。同じ信号をわたり、同じ角を曲がるので、もしや同じ所に行くのではないかと思いながら、歩いていると、すーと国立競技場に消えてしまった。こんな雨の日にもかかわらず、何かやっているらしい。

 その点、こちらは、雨が降ればふったで、将棋日和だから気楽なもの。フリーマーケットのメッカ明治公園も、からっぽで、雨が空しく地面に突き刺さって、所々に大きな水たまりができている。

 

【オープニング】

 会場に着いたのが開演時間ぎりぎりの2時半だった。席はほとんど埋め尽くされて、後ろの方に少しだけ空席があるばかり。かなり前の方に谷川俊昭さんの顔を見つけた。ほかには見知った顔は見つけられない。適当に座ると、すぐに始まった。おなじみの山田久美ちゃんの司会で女流棋士の紹介が始まる。久美ちゃんは、ベージュのタイトスーツで、きまっている。

 女流棋士が次々に紹介されるが、人の頭でよく見えない。おまけに、眼鏡の度がだいぶぬるくなったのか、遠いせいか、顔がよくわからない。入り口でおみやげに貰った、テレカの似顔絵も判別しにくいが。まあ、いっか。

 

【指導対局】

 オープニングの後は、2コースに分かれる。一つは、地下の中ホールで、「20秒将棋・女王対決」と題する席上対局で斎田三段対碓井二段とクイズ形式の「女流棋士なんでもカルトQ」というコース。

 もう一つは503室で、指導対局。女流棋士の3面指しだ。小考の後、中倉姉妹の追っかけをすることに決めて、指導対局に行く。しかし、指導券はどこで手に入れたらいいのかわからないが、とっくに売り切れているらしい。

 中倉姉妹は横に並んで指している。宏美ちゃんは、ラメ入りのグレーのミニスカスーツで、ブロンド風のアップにした髪型のせいか、大人びて美しい。1局が平手で、2局は駒落ちだ。





 彰子ちゃんは、シルバーシルクのブラウスに白のロングドレスで、白のトップをはおり相変わらずほれぼれする美しさ。3局とも駒落ちだ。

 ちなみに、バンド仲間の本田小百合ちゃんは黄色のタイトスーツで、かわいらしい。船戸陽子さんはブルーのシャツの襟元を大胆にあけて白のパンタロンスーツが色っぽい。

 女流棋士は不思議な商売だ。本来、勝負の世界だから強いだけでいいのだけれど、聞き手や司会といったタレント的な仕事もあるから人気にも気を使うわないといけないのだろう。ただ、“女流棋士”という特技があるから“タレント”としても認められるという部分もかなり大きいのだろう。

 

【姉妹対決】

 4時からは地下の中ホールに戻り、「姉妹対決!私たちの方が強いのよ!!」をみる。大庭姉妹対中倉姉妹。棋譜読み上げに島井2級としゃれている。解説は藤森、古河のNHKコンビ。





 じゃんけんで、大庭姉妹が先手という。先手の3間飛車美濃囲いに中倉姉妹は居飛車穴熊に進む。ふと見ると、妹の宏美ちゃんが姉姫の方にふわっと寄り添う姿が仲の良い姉妹を感じさせる。

 大庭姉妹も、おそろいの袴姿で、なかなかりりしくて、いいかんじ。ただ、こちら側からは背中しか見えないので、表情はわからない。

 早めの▲4五歩の仕掛けからばたばたと手が進み、穴熊の桂馬が飛び出す展開で、中盤戦に突入。彰子女流が盤上の駒をつかんで動かそうと手が空中に浮いた瞬間、司会者の声がして、解説を谷川、高群のママさんコンビにタッチ。

 急所に引いた後手の馬を飛車と差し違えて先手が有利に攻めている。必死にしのぐ中倉姉妹。しかし、端を絡めた攻撃は切れそうもなく、いつどんな形で投げるかが注目の的になる。最後、何度か目と目を見交わす中倉姉妹、一度だけ王手をかけて、二人で仲良く投了した。

 インタビューで宏美ちゃんが「後で裏に呼び出されるかも…」と笑う。

 

【トークショー】

 「必見! 女流棋士の裏話」というコーナー、ゲストの渡辺徹がこない。急遽お客としてきていただけの囲碁の武宮九段が舞台に引っぱり出される。宇宙流として有名な豪放で闊達な独特の囲碁が私は大好きだ。

 普段どんなことをやっているのかといった質問に、壇上の女流棋士蛸島、山下、森安、船戸、和、小百合、明日香、安食、藤田といったメンバーが応えている。

 そこへ、渋滞で遅れたという渡辺徹が登場し、「遅れてすいません」「でぶですいません」と挨拶して会場がどっと沸いた。

 棋士で素敵な人一人を上げよというお題になる。マイクを使い慣れている人たちはさすがによく声が通るが、なれていない人は、つい声が小さくなって聞き取りにくい。

 

【立食パーテイ】

 今回は入場料が高かったせいか、食事は豪華に並んでいる。私のテーブルには早水千紗ちゃんがきてくれた。今度、高校二年になるというが、ずいぶんしっかりした感じになっている。時々リコー将棋部の合宿にも来てくれるので、話したこともあるのだが、たまに見ると、この時期の成長の早さにめをみはらされる。

 大学にも行きたいという。そうだね、それも一局だよね。頑張って、別の世界を知るのもいいと思う。女流棋士の世界を、外からも眺めながら、自分の幅を広げるといいよね。女流棋士は、あまり食べないようにいわれていたようだが、こちらだけ食べるのもしらけるので、一緒に食べて貰いながら話していた。書道と、ピアノを習っているという。

 早水さんから「何故ホームページに、書いているのですか?」と聞かれ、口ではいい加減に答えていたが、脳の別な部分は長考に入った。初めはホームページを少しでも面白くしたいということで、レポートしているだけだったが、このごろは、何故書いて居るんだろう。時々、面白いと言ってくれる人に出会うからかもしれない。また、小さな出来事で拾った感動を伝えたいということもある。時間がないときは苦しいけれど、書いているときは楽しい。少しずつでも工夫したりして、少しでも面白いものにしていきたいと思う。

 

【女流バンド】

 とこうしているうちに、バンドが始まるという。あわてて食べかけのメロンを一気に口に押し込んで、急いで前の方に行く。しかし既に、一番いい場所には到達できない。それでも一番前に陣取って、ライブを楽しむ。

 彰子姫の「本日は私たちのコンサートのお越しくださってどうも有り難うございます」という挨拶で、爆笑を誘い、ミニコンサートがはじまった。

 全員、黒のバンツスーツで、ビートルズナンバーをやるという。ボーカルの彰子姫が「ヘイジュー」と歌い出し、バンドが始まった。いいじゃない、やるじゃない。ギターが小百合ちゃん、バックコーラスもやっている。船戸さんはシンセサイザーでヘッドマイクが「小室さんぽい」と彰子姫。

 ベースの宏美ちゃんは高校時代にバンドをやっていたというだけあって、さすがに場慣れしている風で、一番さまになっていて、笑顔に余裕がある。ベースを奏でる姿もリズミカルで楽しそうだ。

 「ヘイジュード」が終わり、万雷の拍手。彰子姫は「一曲終わってほっとしました」とやや余裕が出てきた様子。会場から、バンドの名前はという声が飛ぶと、すかさず彰子姫は「団子四姉妹です」と笑わせる。

 「結成一〜二ヶ月で初コンサート、そして即解散ということで、残念ながらついに最後の曲になりました」とのたまうと、爆笑が起き、やがて「レットイットビー」がはじまった。ボーカルもバンドも、コーラスもわずか一ヶ月の練習で、かなりまとまっていい仕上がりだ。





 おわると、当然ながらアンコールの声が飛ぶ。時間がなくて、レパートリーがこの二曲だけということで「惜しまれながら解散」ということで、演奏もお開き、パーテイーもお開きということになった。

 このバンドも、解散などしないで、バンド名も決めて長く活動してほしい。

 

完(記:99年3月21日)


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