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イベント・レポート

’98年リコー冬合宿

   〜〜〜GOOD DAY〜〜〜

年月:98年12月5日〜6日

場所:箱根ホテル花月園

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


【単独行】

 朝、待ち合わせていた若者から電話。風邪で行けないという。せっかく水際まで連れていっても、水を飲ませることはできない。

 なにがしかのトリガーで少しでも興味を持ったのならば、若者は若者らしく、まず飛び込んで、自分の目で見、身体で感じて、それから評価をした方がいいのではないだろうか。自分の世界が広がるかもしれない大きなチャンスを、小さな不安やおそれから見送るのは悲しくないかい。

 

 環八も、東名も、空いている。気持ちのいい朝のドライブだ。「GOOD DAY」を歌う坂井泉水のかすれたシャウトが胸に浸みる。歌詞は難しいが、不適切な恋をあきらめようという歌なのだろうか。

 かすれた声に呼応するかのように、通り過ぎる景色は赤や黄色や茶色混じりながら全体としては、黒っぽく枯れている。秋から冬への輪切りの山並み。



【花月園】

 道の両側が広く開けた仙石原を突っ切り少し上ると、花月園があった。経済速度でゆっくり走ったのだが、2時間ほどで着いてしまった。

 ロビーに、大きな将棋盤と駒が置いてある。2階に行ってみると、王将戦や名人戦の対局写真が飾ってある。囲碁のタイトル戦の写真もある。



【部会】

 やがて、合宿委員の伊藤君や晶ちゃんがやってきて公式戦の対戦表を作り始める。

 

 1時過ぎに、野山主将の司会で部会が始まった。恒例の将棋部ニュースだ。

 なんといっても、1番は秋の職団戦S級での優勝だろう。瀬良、菊田、野山、谷川、山田とバランスのいいメンバーだ。

 2番は田尻隆司のアマ名人優勝。竜王戦での活躍を期待していたが、スケジュールの都合もあってか、ちょうど、この日(5日)に山崎4段に破れてしまった。しかし佐藤名人との角落ち戦はきっちり勝っている。

 3番は椋木陽一郎の障害者将棋大会優勝。全国の障害者の将棋愛好家が楽しみにしている大会だ。

 全日本選抜選手権には、山田洋次が出場し、そうそうたるアマ強豪をなぎ倒し見事3位になった。

 朝日アマ名人戦で田尻隆司、菊田裕司が地区代表の座を勝ち取った。来年3月の全国大会が楽しみになった。

 スカイパーフェクTVの「NO TIME将棋」に、リコーから谷川俊昭、菊田裕司が出場した。

 それぞれ、イベントレポートでもご紹介しているので、のぞいてもらえればお楽しみいただけると思う。



【公式戦:自戦記】

 レーテイング順にA、B、Cと3クラスに分かれて、20分、30秒のスイス式リーグ戦が始まる。ここのところ負けが込んでいる私は、Bクラスの下の方にいた。

 初戦は槙さん。職団戦が始まった頃から連続出場しているのが自慢の長老格だ。がりがりの穴熊党で、がっちり囲んで、むちゃくちゃ攻めるのが得意。パンチが決まると、強敵でもやっつけることがある。

 だから、私はいつも、早く仕掛けて穴熊にさせない。序盤からリードを奪い快調に攻め込んでいったが、ふと叱られた馬を大事にして引いてしまい、逆転されてしまった。

 がっくりだ。勝っていれば憧れの中倉彰子女流プロと対局できたものを。

 落ち込んだまま、おしとやかのマドンナ、是安さんとの対戦。確か2度目くらいだ。矢倉模様に進み、馬を作って優勢だと思っていたが、大局観が間違っていたようで、こてんぱんに打ちのめされた。おしとやかなのは顔と声だけで、将棋はじゃじゃ馬だ。

 

 勝ち星の上がらない樋口さんと3局目。お互いに、優勝を争っていてもおかしくないのに、という顔をして苦笑い。相横歩取りからがたがたになる。まったく将棋になっていない。

 

 名古屋から初参加の脇坂慶子さんと最終局。クリスタルペアの秘技藤井システムに持ち込む。左美濃に対して角の睨みが強く、ぐいぐいと追いつめて、初勝利。やはり、優秀な戦法なのだ。竜王戦で羽生四冠や谷川竜王を撃破したはずだ。

 もっとも、みんなが手ぐすね引いて対策を考えているので、どこまで進歩していくのだろうか。最近、行方五段の新工夫に破れたようだが、まだまだ発展途上の藤井システム、これからのプロの研究合戦が楽しみだ。



【公式戦:結果】

 表は、後で張り付けさせてもらうとして、A級は、菊田が屋敷師範を破って優勝した。

 前回の野山に続き金星、快挙だ。B級は憧れの中倉彰子女流が当然ながら優勝した。C級は鈴木さんがぶっちぎりの優勝。

 

 別冊宝島380号に「将棋王手飛車読本」というのがあり、屋敷伸之棋聖にドン・ヤマモト氏がインタビューしている記事も面白い。特に、将棋の勉強は一日一分ということに関して、手を変え品を変え肉薄する。しかし、そこは忍者流で、まんまとはぐらかしてしまう。

 屋敷棋聖(当時)も、まじめに答えているのだろうが、言葉だけからはつかみ所がない。無頼漢というのだろうか、大きな生き方をめざしているようだ。この記事を勝手に解釈すれば、こんなふうになる。ファンの方はいろいろと聞きたいだろうが、俺の知ったこっちゃない、第一言葉で説明なんかできやしない。俺の生き様を見たければ将棋を見てくれと。

 私はテレビでの羽生・屋敷戦とか、週間将棋の藤井・屋敷戦などを見ている程度だが、一日一分でできる芸当とは思えない。いつでもどこでも頭の中でテーマの局面が浮かんでは消えしているのだろうと思う。

 今年の順位戦は出足で転んでしまったが、我慢して走り続け今はトップになっている。今年こそは、このチャンスをものにしてくれると思う。

 私は人のことを心配するよりも自分の気力を上げることに注力しなければならない。負けてばかりでは、イベントレポートが書けなくなってしまう。



【蟹と戯れる】

 夕食は、六つのテーブルに分かれて、てんでんに座る。刺身に、鍋、そして大きな蟹がたっぷり。蟹の身を食べるのに、皆悪戦苦闘している。仲居さんに教えてもらってからはだいぶ楽にとれるようになった。手足の長いライエルが、長い蟹の手足を持て余している姿が滑稽だ。





 

 全部で41人と少なめで、やや寂しい。女性も微酔亭の和風美人ママさんの笠井さんも初参加してくれて6人いるがもっともっときてほしい。

 もしこのレポートを見ている方で、少しでもリコー将棋部にふれてみようと思うならメールでもなんでも声をかけてみてほしい。リコー関連の人はもちろん、ホームページを見てくれたと言うだけの方も。

 今のところ、老若男女を問わず、来るものは(あまり)拒まず、去る者は(あまり)追わずというのが部の姿勢だ。

 そうそう、ちょっと矢内さんに似ている写真のあなた、将棋部に遊びに来てみませんか?







【リレー将棋】

 食事や風呂が一段落した頃から3人一組で、一人3手づつのリレー将棋が始まる。私は、菊田、晶ちゃんとチームを組む。トーナメント1回戦の相手は林まゆみ女流、室井、徳増チームだ。





 林さんは関西からN山さんを捨て(念のため、冗談です)、単身東京に居を構え、将棋の上達に励んでいる。鹿島杯で優勝した後、最近やや不調のようだが、復活したときには爆発する力を秘めていそうだ。

 我がチームは秘手端歩付きも底をつき、さすがマイペースの晶ちゃんも指す手に困っていた。途中、香車の上に飛車を引いた手が室井さんの意表をついて竜のただ取りの局面になったが、優しい晶ちゃんはただの竜なんかいらねえぜと、ほかの手を指してしまった。まあいっか。将棋は自由なんだから。

 それに、菊田自己新記録更新中の連続1回戦負けにも貢献したわけだし。そろそろ我が部にも記録室などがほしいもの。冬合宿では公式戦の年間最多対局や、最多勝利など、盛大に表彰してはどうだろうか。

 

 結局優勝は、藤原チーム準優勝が林まゆみチームとなった。3位には、優勝確実と見られた小林・伊藤のゴールデンお笑いコンビ、4位には中倉彰子チームがはいった。



【マルチルーム】

 ビリヤード、硫黄温泉、酒盛りなど将棋の他にも楽しみがたくさんある。マルチルームに顔を出してみると、ちゃんとイチメンツできている。私は、麻雀もやめて久しい。二十歳前後の頃はいろんなことに手を出していたが、歳をとるにつれてたばこもやめた。囲碁もやめた。

 見ていて馬鹿を言っているのも楽しいが、そばで見られるのも打ちにくかろうと、将棋に戻った。

 脇坂さんと何局か指した。感想戦でも負けず嫌いで、何度も負かされた。じっと考えているときは、口をきゅっと結び、びくりともしない。金太郎さんは、こんな感じの顔だったのではないかと思ってしまったので、金時さんのマドンナ。

 庭野さんは彰子さんと指している。この前のニューヨークでの竜王戦の聞き手は上手だった。しばらく見ないうちに、聞き手としての腕は大ゴマ一枚うまくなっている。



【朝の雲海】

 朝、ホテルから芦ノ湖の方を見ると、上空は晴れているのに、下の方が白い雲で覆われているのにびっくりした。ふと横の方を見ると雪の富士が…

 対局場に行くと、最長老の樋口さんと槙さんが徹夜で対峙していてまたびっくり。

 ホテルは親切で、タイトル戦の盤と駒を持ってきて見せてくれた。この駒と盤が一流のプロの芸を刻んでいるのかとおそれおおい気がする。やはりよい駒を使えば強くなりそうだ。

 我々の対局場は椅子席で、楽でよかった。部屋もツインでいつもの大部屋に比べ遙かに眠りやすい。

 食事も、温泉もなかなか良かったし、料金も最初のアナウンスより安くなっていたし、私は満足だった。合宿委員の方や自主的に手伝っていた方、有り難うございました。



【オプショナルツアー】

 将棋部フォーラムに、せっかく箱根に行くんだから観光とか企画したらという提案があった。今回は、テスト的に、自主ツアーが7人ほどで行われた。桃源台で、芦ノ湖を眺め、大涌谷で、硫黄の煙をたしなみ、温泉卵を食して帰った。

 そしてY中さんの隠れたツアコンの才能に目を見張った。

完(記:98年12月19日)

 


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