event-0071

イベント・レポート

第9回 社会人将棋団体戦最終日(第4日)

   〜〜〜「実りの秋」というけれど……1軍残留、2軍陥落〜〜〜

月日:1998年10月25日(日)

場所:東京都港区長谷工体育館

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


 

【トレーナーだけじゃ寒そう】

 予報は、11月下旬なみの天気という。つい最近押入の整理箱から出したばかりのトレーナーを来て、外に出た。お日様も出ていなく案外寒いので、ジャンパーを取りに戻る。荻窪から田町へは、渋谷周りにするか東京周りにするかいつも迷う。新宿まで座れなければ、新宿で乗り換えようと思う。 

 田町から、長谷工へ向かって歩いていると、後ろから田中さんに声をかけられた。昨日は三愛会の囲碁大会だった。初段でAクラスに出て4位だったという。そろそろ還暦を迎えるのだろうが、社交ダンス・麻雀・囲碁・将棋と田中さんにだけは1週間が10日もあるかのようだ。それも日曜日が3日ほども。

 少しだけ張り合ってジャズの話を。

 

【阿佐ヶ谷ジャズストリート】

 中央線の荻窪から新宿方向に1駅行くと阿佐ヶ谷駅がある。ジャズで街おこしをと、「阿佐ヶ谷ジャズストリート」が催された。今年で4年目だという。

 中央線と直角に中杉通りという粋な並木道がある。何故か杉の木ではなく欅の木で、もちろんこっちの方がはるかに見栄えがよいのだが。

 23日(金)、24日(土)と中杉通りの26カ所で、演奏を楽しめる。土曜日は生憎の小雨模様だったが、普段の置いてきぼり挽回に、古女房と連れだって、午後から夜にかけてジャズに浸った。ここ2〜3年、休日の大半を将棋関連に明け暮れる古夫にあきれて、女房殿はこの頃ジャズダンスを習い始めたのだ。年寄りの冷や水にならなければよいが。

 

 神明宮という神社では、マーク・デイローズ・グループが、コンボやパーカッションにベース、二胡(胡弓)と尺八という変わった編成で、私達は傘をさしながらもうっそうとした大木の傍らの玉砂利の上で、神社に響く不思議な音に魅了されていた。

 

 夜は、「赤いトマト」という小さなイタリアレストランに50分も並んだ。ジョナサン・カッツ トリオが出るという。ぎゅうぎゅう詰めの中、トミー・キャンベルのドラム、安ヶ川大樹のベースにジョナサン・カッツのピアノと司会を楽しむ。カッツ作曲の「コンテイ−ニュアス」や、の曲のアレンジなどに酔わせてもらった。トミー・キャンベルはドラマーとして10指に入るとの紹介だったが、さすがに軽々と、そして楽しそうにリズムを刻んでいる。

 

【リコー3軍、初陣で健闘】

 今年初参加の3軍は、4部リーグ白で、ここまで5勝7敗の11位とまずまずの星。4日間を11人で戦い、むろん不戦敗は無しの健闘だ。メンバー的にここで5分なら上出来である。

 この日は都合でGM(ジェネラルマネージャー:タイトルだけは立派である)の伊藤が不参加、代理GMは竹中だ。伊藤不在が響いたか最終日は1勝2敗に終わったが、レベルの高い試合に参加できて、有意義だったと思う。

 

 竹中は、4部リーグを3つにするなら、一つを5部にしてできるだけ近いレベルで楽しんだ方がよかろうと言う意見だ。それもいい。そして新規参加チームをどこからスタートさせるかを検討すれば5部制の方がいいかもしれない。

  

【リコー2軍、残留にかける】

 3部リーグ赤の2軍は、ここまで6勝6敗で11位だ。入れ替え戦はごめんだと、みんな張り切っている。従って2軍GMの吉中の責任は重大だ。何しろ彼が決めた大将が勝てばチームは勝つのだから。

 

 初戦は「神風会」という現在5位のチームだ。大将には田中、副将椋木でのぞんだ。私は6将で、必勝の構えだ。後手番で、相横歩取りから、中原流の△4一玉と△8五飛の組合せで、格好だけは最新型のつもりだ。最近のテレビ対局でも誰かが指していた。

 隣の机では、東大パイナップルがやっている。強者どもに混じって神秘のマドンナの美しい姿もある。今日はエンジのスラックスで、ますます神秘だ。こんなに近くに勝利の女神がいるのだ、負けるはずがない。

 当然といえば当然だが、見るとやるとでは大違い。△6一の金が5一にも行けず、7二にもいかず、うろうろしていると、その隙を巧みにつかれて、飛車交換を無理矢理させられて、一方的なじり貧負けとなった。大将が負け、チームも3−4の負け。ああ、この責任は重い。GMが悪い、大将が悪い、ジャズストリートが悪い。

 

 昼食をはさんで3日目まで6位の「一歩」戦。定跡通り下位の敗者の私が抜け番で、熱心に応援する。しかし、敵には勝利の女神らしきブラックのマドンナがついているではないか。まずい、今日のリコーは紅一点のマドンナを欠いているのだ。

 下位の方は優勢に進めているが大将、副将、三将が苦しい。結果は、またも3−4の負けだ。もはや入れ替え戦はさけられないだろう。それでも、一つでも順位を上げておくにこしたことはない。

 

 最終戦は3日目まで7位の「都立大学八雲」が相手だ。私は、今度こそは勝たなくてはと思い、勝利の女神を捜す。近くの通路に、なにわのマドンナ我が女王様がいた。ピンクのシャツの後ろえりをずっこけさせて、なにやら今日は色っぽいではないか。

 そんなことはどうでもいい、7将なのでここを勝たなくてはならない。向こうが先手なので、慎重に時計を押す。一分経ち、二分が過ぎる。「ムムム、武蔵臆したか!」

 実は、不戦勝。GM苦心の大将は、椋木が座っている。頑張れ、後三つ勝てば良いんだ。しかし、世の中は、思うように行かないことが多いもの。

 

【二軍入れ替え戦も大将神話が生きていた】

 4部リーグとの入れ替え戦に出る羽目になった。相手は「北千住猛爆隊」という恐ろしげなところだ。しかも、大将はスポーツ刈りの額にはちまきをして、太い腕を組み、おっかない顔をしている。

 私は初戦敗北の責任をとり、応援にまわる。猛爆隊もなかなか手強いようだ。そこらじゅうで序盤そうそう不利になっている。「あー」という奇声が上がった。副将の田中さんだ。相横歩取りだろうか、守りの金が浮いているのをうっかり放置して桂馬を取ってと金を作ったら、飛車成りの王手で金を一枚とられたのだ。冷静に見れば金・桂交換で、敵玉の側にと金ができているので、投げるほどではないが、受けに銀を使わされて、勝つのは大変だ。

 結局2−5で、陥落してしまった。驚くなかれ、今年は入れ替え戦もカウントした合計16戦のうちで、15戦が、大将が勝てばチームが勝ち、大将が負けるとチームも負けるという偉大な記録を残したのだ。2軍は、大将神話が3年間通算でも9割5分以上という信じがたいことが起きている。

 

 吉中の記憶に依れば、この5年間3部と4部を行ったり来たりで、4年連続入れ替え戦に出場しているらしい。来年は、少し鍛え直してぶっちぎりで、昇級し、せめて3部と2部の入れ替え戦常連になりたいものだ。

 

【リコー1軍、何とかしなくっちゃ】

 三日目まで、3勝6敗の8位と、入れ替え戦出場濃厚な1軍。百戦錬磨のエース達といえども、この状況では力が入らないようで、最終日も、オール稲棋会にもオール東大にも敗れてしまった。9位で、入れ替え戦へ。

 音OKACHIが相手で、さすがにこれは気合いが入って、全勝した。もっとも、約1名は相手の時計が切れるという怪しげな勝ち方だったようだが。

 

 社団戦の参加チームの成り立ちは、大きく3種類に分類できる。企業チーム、将棋道場・同好会チーム、大学・高校/OB・現役チーム。企業チームは全体では約35%だが、1軍では企業チームが3チームしかいない。その中で企業チームのプロセス資材が見事に逆転優勝をしている。とりわけ、遠藤さんの全勝というのはすごい。

 

 今年は初日に、いずれも3−4で、3連敗したのが痛かった。優勝のチャンスが遠のいて、力が出し切れなかったようだ。ただ、かつて無敵を誇ったリコーもこのところ主力の退社などでやや層が薄くなってきているかもしれない。企業人としては、転勤、出張、病気などやむを得ないこともたくさんあるのだけれど。

 

 リコーでは、今年は色んな事情から、S研は1回しか開かれなかった。何か挽回の手を打たないと、強いリコーの伝統が過去のものになってしまう。折角強豪が集まっているのに、それぞれ研究するしかないのだろうか。

 

 即戦力として期待したくとも、リコーOBで、リコー将棋部の田尻も豊島も、南の果て北の果てと社団戦に呼ぶにはあまりにも遠すぎる。近場の強豪藤森・坂下に帰ってきてもらうときが来たようだ。

 何しろ、将棋は勝たなきゃ面白くないのだ。ベテラン谷川の復活や、新人山田洋次の活躍など、明るい材料も多い。1軍だけでなく、2軍も3軍も強くなろう。私もバタンキューから脱して、毎日詰将棋でもやらなくっちゃ。

 

(完:記98年10月31日) 


Copyright (C) 1999-2003 Ricoh Co.,Ltd. All Rights Reserved.