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イベント・レポート

第5回 全国高等専門学校将棋大会

月日:98年8月20日、21日

場所:静岡県 御殿場 国立中央青年の家

リポータ:谷川俊昭 e-mail : tanigawa@cspd.ricoh.co.jp

御殿場への小旅行

高等専門学校とは

高専将棋大会とは

開会式

団体戦(1)

指導将棋

ゲスト

団体戦(2)

個人戦

順当負け

これも青春

決勝戦

表彰式



御殿場への小旅行

 8月20日、今日は娘の7才の誕生日。でも残念ながら自宅でのお祝いはできない。御殿場に行くことになっているのだ。と言っても、御殿場工場ではない。
 私の住んでいる本厚木から御殿場までは、小田急のロマンスカーが何本か乗り入れている。8時4分発のあさぎり号に乗り込み、新聞を広げ、ミネラルウオータを飲む。約50分のちょっとした小旅行の気分である。御殿場駅からタクシーで約15分。目的地の国立中央青年の家に着いた。今回で審判長も3回目なので、慣れた足取りで会場の研修室に向かう。いつもの部屋に「第5回全国高等専門学校将棋大会」なるシートが貼ってある。ちょうど、開会式の真っ最中であった。

高等専門学校とは

 さて、ご存じの方も多いと思うが、順序として、まず、高等専門学校について簡単に説明しておこう。
 「高専」が略称であるが、中学卒業から短大終了の年齢までの5年制の学校である。よって16才から20才までの学生がほとんど。各県に1校程度、全部で60数校ということだ。学生数は各学年200名で計1000名程度。工学部系の学生が多いが、女子学生も2〜3割はいるらしい。

高専将棋大会とは

 高専将棋大会は文字どおり高専の学生のための将棋大会であるが、平成6年に秋田高専の米長教授(米長永世棋聖の長兄)の尽力で開催され、今回が5回目となっている。高校選手権等と違って地区予選もないが、年々レベルは上がってきている。各校持ち回りで主催され、今回は 。高等専門学校協会連合会と、静岡新聞社、SBS静岡放送の後援がついている。
 会場は基本的に御殿場の青年の家で行なわれ、家が比較的近いこともあって、私が例年、審判長としてお手伝いさせていただいているような訳である。

開会式

 私が会場に入った時は、開会式もほぼ終わり、私の挨拶だけが残っていた。
 前泊でなく、9時開始に間に会おうとすると少し苦しいのだ。見慣れた顧問の先生、見慣れた学生達の顔が見える。既に、対局を開始してしまっていたところもあったが、中断してもらって軽く挨拶。試合開始宣言でいよいよ二日間の大会は始まった。




団体戦(1)

 団体戦は前回優勝の奈良A、沼津Aをシードして30チームで行われた。
 各チーム3名で2勝した方が勝ち進む。本来、もっと多くのチームの参加希望があったようだが、進行の都合上、各校2チームに制限された。
 それでも決勝以外は25分切れ負けは厳しい。今日1日で多い人は9局も指さないといけない。選手が良い条件で指すことと、大会の円滑な運営は相反する命題だ。本当は秒読みもつけたいのだが・・・。
 順当に各校の第1チームが勝ち上がり、昼食までにベスト8が決まった。




指導将棋

 負けた選手から指導将棋を始める。5面指しである。立ってくるくると移動する。少しすると腰が痛くなってきた。日頃の運動不足のせいだが情けない(^^;;)。
 ともあれ、指導将棋の時の手合いは、「そちらが上手以外は何でもいいですよ(^^)」ということにしている。慣れない駒落ちで実力がかえって出ないことも多いからだ。
 とは言え、選手の平均棋力は初段強か。本当は二枚落ちでも下手がなかなか勝てない。事実、二日間で、約50局は指したが、平手、二枚落ちと約半々で、二枚落ちは2局しか負けなかった。勝負という意味では厳しい手合いでやってほしいとの顧問の先生の意見もあったが、なかなか難しいところだ。

ゲスト

 都合で遅れていたゲストがさわやかな水色のスーツに身を包んで登場した。女流学生名人の坂井仁美さん(立命館大学3年)だ。
 例年、ゲストは女流プロを招いていたが、今年は主催が岐阜高専ということで、同じ岐阜出身の坂井さんに声がかかったようだ。高校時代は、男子に混じって県の高校選手権で優勝したこともあるという。早速、学生達と4面指しをこなす。大したものである。聞けば、地元の自治体の将棋の催しなどで多面指しの経験は多いとか。
 閉会式のスピーチもなかなかのものだったし、色紙へのサインもこなし、そのうえお酒も強いときている。なかなかの才女と見た。
 本大会には残念ながら女子の参加はない。でも2、3割は女子学生ということなので、こちらの方への普及もお願いしたいところ・・・。




団体戦(2)

 団体戦は順当に奈良Aと秋田Aの戦いとなった。顧問の勢田先生と米長先生が心配そうに見守る中、対局が進んでいく。顧問の先生が熱心で、1人強い学生がいて引っ張っていくとチームは強くなるようだ。
 結局、秋田高専が2―1でこの戦いを制し、2年ぶり2回目の優勝を果たした。

個人戦

 休む間もなく個人戦である。もっとも、対戦は昨日の前夜祭のうちに決まっており、黒板に掲示してある。4人リーグで2勝通過、2敗失格のリーグ戦である。今日はこれでベスト64が決まる。一校から10名以上参加しているところもあり、同士討ちになってしまったところもあったが、まあ仕方ないか。
 さて、トラブルもなく、今日の仕事もぼちぼち終わりかとホッとしていると、一人の若者が声をかけてきた。

順当負け

 個人戦は全員参加なので、もう指導将棋はいいと思っていたのだが、実は3人シードがいた。そのうちの一人、秋田高専団体優勝の立役者、武田俊平君である。彼はこの大会の昨年の覇者でもある。

 「谷川さん、一局教えて下さい」

 教わるのはこっちだと思ったが、受けない訳にはいかない。早速20分30秒で対局開始だ。彼の得意の振飛車穴熊に6六角戦法で立ち向かったが、無残な敗戦となった。これだけならまだしも、武田君に、これも予選シードの田村純也君(八戸高専)との対局をリクエストされてしまう。振飛車から何となく不利になり、クソ粘りで何とか勝負にしたが、最後に間違えて負け。
 まあ、順当負けというべきでしょうか・・・。

これも青春

 二日目の私はやや二日酔い気味。午前の指導将棋を軽く流して、昼食を軽くすませ、すぐ側のロビーへ、ちょうどTVは横浜vs明徳義塾を映していた。
 松坂君が17回を投げ切り、PLを振り切った翌日の準決勝である。ちょうど8回裏、横浜の攻撃でランナーが二人出ているが得点は0−6。大会も気になるので時々TVを見たりしていたのだが、なぜかTVを見る度に点差が縮まっていった。
 甲子園は全国中継され、新聞でも大騒ぎされるが、目立たないけれど、ここ御殿場でも若者達が熱い戦いを繰り広げていた。そう、これも青春。

決勝戦

 決勝は予想通り、私に勝った(からという訳ではないが)田村君と武田君の対戦となった。
 田村君は5年なので、これが最後の初優勝のチャンスである。
 武田君が勝てば、4年目にして3回目の偉業となる。青森と秋田ということで、学校も近く、ライバル意識は強いのではないだろうか?
 なぜか、隣の研修室から「もののけ姫」が聞こえる(コーラス部の合宿だろうか?)不思議な雰囲気の中、対局は行なわれた。




 武田君得意の四間飛車穴熊を警戒したと思われた田村君の右四間飛車だったが、結局この将棋、相穴熊になってしまう。
 じれた武田君が仕掛けるが、角銀両取りを軽視していた。この後、田村君が竜と角を竜で牽制したのがうまい手。苦しくなった武田君、端攻めで勝負に出るが、逆用した田村君が秒読みの中、見事な寄せを見せ、初の栄冠に輝いた。これで借りを一つ返して、対戦成績は田村君の4勝5敗。感想戦ではさすがに嬉しそうだった。

表彰式

 あれだけ一杯だった会場も、表彰式ともなると人数がまばらだ。遠方から来ている学校も多い上、「青春18キップ」なども使っているので、帰るのも大変なのだ。
 4位までを表彰。表彰を受ける選手達の顔はみな輝いている。
 個人戦優勝の田村君は来年は秋田高専専攻科に進学するという。武田君とは同じ仲間になる訳で、高専大会には出られないとは思うが、更に腕を磨いて、大学将棋では大暴れするのではないか。








 トップだけでなく、チーム全体のレベルアップと、これを機会にメール等で各高専の交流が更に図られることを願って帰途に着いた。
(98/9/3記)
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