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イベント・レポート

第8回 社会人団体将棋リーグ戦 第2日

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp

●開催日 :97年7月13日(日曜日)

●開催場所:東京 田町 長谷工体育館




【いざ出陣】
 戻り梅雨で、三日連続の雨。
 数日前の35度というあえぐような暑さは何だったのか。趣味の世界、好きなこととはいえ、金属疲労ならぬ勤続疲労で朝起きるのが辛いこともある。おまけに雨でどうせメンツオーバーだから今日は行くのをやめようかとさえ思う。でも行くと言ったからには行かないとまずい。小市民的な義務感がパジャマを着替えさせる。

 バス停に行く途中で運悪くタクシーに出会ってしまう。とても誘惑に勝てる状態ではない。降りる直前にメーターがガチャッとあがって740円になった。財布の中は1万円と663円しかない。一万円札を出すと、こまかいのがないかという。これしかないというと、本当にお釣りがなかったのか、それでいいという。妙な気分だ。

 さいわい肌にまといつくべたっとした湿気も中央線と山手線の冷房でさっぱりとする。ホームに降りたのが定刻の10時に数分前だった。 しかし、いつもの階段がない。もっと後ろだったかと思いホームを歩く。
 しまった、何を寝ぼけているのだ。ここは浜松町ではないか、目的地は田町じゃないか。
 こんなぼけ頭で将棋が指せるのだろうか。ま、いっか、今日は応援と観戦だけにしよう。一軍は、今日三連勝すれば優勝に大きく近づくのだ。


【4部リーグ初戦】
 それでも小走りに急いでいくと、丁度メンバー表を書いているところだった。
 田中が「こら遅刻するな」と怒っている。見ると私でやっと七人だ。「雨で傘がなくって」とい言いかけるがなんか変でやめた。豪放磊落な田中は今日のためにしっかり体調を整えてきているらしい。
 事務局の人が「岡田さんという人から電話で足をけがして行けないという連絡が入った」という。
 そういえば一昨日、俺も夜中にこむらがえりで悶絶したんだ。「雨」より「けが」の方が気が利いている。今度からは足がつって遅くなったと言おう。

 初戦は、沖電気(2)だ。
 大将椋木、副将田中、以下ライエル、庭野、小林、吉中、西田と並ぶ。
 私は、若い人が相手だ。なかなかハンサムだ。30分、30秒だからゆっくり考えよう。なにしろ降りる駅を間違えるほど鈍い頭の日だから。後手番で、相手が4間に振ってきた。本当は、後手番でも急戦を目指したいのだが、羽生の頭脳をちらっと見た範囲では簡単ではなさそうなので、仕方なく居飛車穴グマを目指した。しかし穴グマも見よう見まねでやっているだけでしっかり覚えているわけではない。
 敵は銀冠から6筋をこじ開けて角が成ってきた。こちらは、2筋を突破して飛車が成り込んだ。その後の展開はすっかり忘れたけれど、どうやら勝ったことだけは覚えている。
 聞けば全員が勝ったという。なかなか良いじゃないか。


【1部リーグ1回戦】
 アマ名人戦の地区予選と重なってメンバーが手薄な一軍。
 大事なオール早稲田戦。今日も古作さんが来ている。3将で、南と対戦している。なんと学生の細川君が大将で菊田とやっている。
 あれ、佐々木が居ない。ざっと見ると、大将の菊田と七将の豊島の所以外は形勢がはっきり悪い。昨日のS研に来ていた瀬良、藤原も押されている。名田、小原も怪しい。佐々木は私と同じく「雨が…」のくちで、来たら始まっていたという。

 結果は2勝5敗と惨敗だ。

 何しろ古作さん入りで気合いが入ったメンバーだから谷川、野山、佐々木を外してはやむを得ないか。
 それでもかなりのメンツなのに残念だ。どこのチームも七人集めるのには苦労しているに違いない。ここがアマチュアの団体戦の良いところ。もっともこれはフェアリープリンセスでメンバー集めにいつも苦労している小野三枝子さんの受け売り。

 そういえばプロの団体戦って聞かない。誰か作らないかな。地域対抗団体戦などどうだろう。

 迂闊にも今まで気が付かなかったけれど、「近代将棋」の新社長の中野さんが三部リーグにでていた。前回の記録を見ると、プラス40点だから、4連勝したのかもしれない。やっぱり学生時代に鍛えた人達は強い。レーテイングも私より100点以上、上にいる。


【4部リーグ2回戦】
 お昼のお弁当はうなぎだ。銀の袋のたれを出すとあらぬ方向に飛んでしまう。全く冴えない日だ。
 長谷工体育館は広いので、500人も集めた大会が出来るのは有り難い。唯一の問題はトイレの行列だ。確か昨年は、もう一つのトイレも開放してくれたこともあったけれど、今は一つしかないから並ぶ一手だ。フェアリープリンセスの仁科さんが、女性トイレを開放してくれて、「私が見ているからどうぞ」といってくれる。遠慮なくご厚意に甘え、憧れの女性トイレで用を足す。

 食後の相手はNTTチーム。初戦とは6将と7将を入れ替えた。
 私は、またも後手番で四間飛車に対して、居飛車穴グマにした。今度の人はほぼ私と同じくらいの年輩でお釈迦様のような顔をしている。
 角を転換して敵玉を睨むラインに入ったら、すっと▲1八玉とかわされた。よほど△1四歩と突こうと思ったが、穴グマの玉頭だけにやりにくい。あとで小林にきくとあそこは行くべきだという。
 四筋に旨くと金をつくられて、なすすべもなく寄せられてしまった。チームは、不思議に4勝3敗で勝っている。今期は、どうもチームの勝ちに貢献していない。
 聞けば、田中は自分の玉に王手がかかっているのにあらぬ手を指し相手に「王手ですよ、いいですよ」と情けを受けて必敗の将棋をひっくり返したという。


【1部リーグ2回戦】
 2回戦は、蒲田将棋クラブ。
 ここも3人メンバーが抜けたけれど、なんと代わりの3人がまた強い人だという。何しろこちら側に座って欲しい藤森さんが七将ででんとしているほどの層の厚さだ。小原と佐々木が入れかわり、健闘している。
 ほどなく商品を手にした牧野がやってきた。アマ名人戦の神奈川大会でベスト16で敗れたらしい。また来年頑張ろう。そしてこちらの勝ち星は佐々木と藤原の二つだけ。う〜む、苦しくなってきた。
 フェアリープリンセスの1軍は4部リーグ紅で、初日に1勝、今日は2勝している。女性だけのチームで既に3勝とは大健闘だ。
 会場にも女性の姿が少しづつ増えている。 


【4部リーグ3回戦】
 日建チーム相手で、小林、庭野が順番を変える。
 私は、またも後手番となったが、今度は相手の四間飛車に対し穴グマを捨てて急戦にした。飛車も角も交換して7七の桂とりに歩を打ったら、同銀ととらずに▲7二飛と打ってきた。色々迷ったあげく桂をとり、敵の自陣竜に手こずったが馬を引きつけて寄せきることが出来た。
 チームは6勝1敗と好調。


【4部リーグ4回戦】
 最後は都立大駒音チーム。
 私の相手は若くて重量級の人だ。またも後手番、相居飛車。敵は何か勘違いをしたらしく7七の地点にいる角が金銀に囲まれて、身動きできず△7六歩で角の丸得であっさり勝ってしまった。
 チームは6勝1敗と、今日は四連勝。山は次回だ、新規参加の三チームが快調に白星を重ねているので、次回の勝ち星が昇級に直結する。
 個人では、椋木、ライエル、小林が四連勝と突っ走っている。


【1部リーグ3回戦】
 名田が不調だと言って帰ってしまった。このクラスは誰が勝っても誰が負けても不思議ではない。牧野が入ってNEC戦。さす がにこれは6勝1敗と勝って通算4勝2敗とし、次回以降に優勝の望みを残した。蒲田は6連勝と全勝街道をまっしぐらだ。

 体育館から外にでると雨は上がっている。大ぼけの出だしにしては3勝1敗は上出来の日曜日ということになった。帰りの中央線、背の高い目鼻のくっきりしたGパンにオレンジのブラウスをラフに着た美人が、疲れた瞼に元気をくれた。

(記:97年7月13日、リコーは敬称略)

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