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イベント・レポート

第50回 アマチュア名人戦(1996.9.6〜9.9)

リポータ:菊田裕司 e-mail : Kikuta.01.KEI@nts.ricoh.co.jp

 アマ名人戦は久しぶり! 天童も久しぶり!!

 9月6日金曜日。この日はアマ名人戦の前夜祭である。仕事は午前中で済ませて、天童へと向かった。9月6日の午後と9日は特別休暇を取ってある。

 新橋の乗り換えで山手線を逆に乗ってしまい、浜松町へ行ってしまう。気持ちがはやっていた、と言うよりは新幹線の時間が迫っていたので。このままモノレールに乗って飛行機で行ってしまおうかとふと思ったが、気を取り直していま来た道を戻る。何とか新幹線には間に合った。禁煙車両をめざして前に進むと2号車には樋田・嘉野のなじみの二人がいたが、あいさつをしてそのまま1号車へ。

 山形新幹線は初めて乗ったが、福島から急カーブして在来線に合流するところは何とも言えない違和感があった。その後も列車は新幹線とは思えないカーブや勾配そして踏切を進んでいく。終点の山形で降りるとほかにも参加者がたくさん乗っており、その他に取材で来ていた小島一宏さんもいた。みんなぞろぞろと天童まで行く。

 天童は3年ぶりで町の様子もだいぶ忘れてしまっていた。かなり多くの電柱に詰将棋が書かれてあったが、これは以前にはなかったと思う。皆で解きながら歩いていったが、最初はひとまとまりの集団だったのが、ホテルに着くころには一番後ろは見えないくらいになっていた。

 ホテルに入ると受付と抽選で、これが何とも言えず緊張する。
 私は佐賀の才田さんと同じブロックに入ってしまった。ほかの二人はまだ埋まっていないが、嫌なブロックになりそうだ。部屋に入ってくつろぐ。
 渡辺健弥さん、桐山さん、松本誠さんと同じ部屋で、大会の案内などを見る。今回は第50回の記念ということで、過去の写真や棋譜が、そして今までの全50回の出場者の名前が載っていてかなりこった作りだ。



 前夜祭。
 私はちょっと苦手なのだが山形名物の芋煮が出る。田尻さんとは久しぶり。ちなみに今回はリコー勢は私と熊本県代表の田尻さん、岩手県代表の藤原さんの三名で、藤原さんは何と田尻さんと同じブロックに入ってしまい、しかも一局目。
 何でも藤原さんは今年の年賀状で田尻さんに「全国大会で当たりたい」と書いていたそうで、早くもそれが実現した。
 私のブロックには早稲田の林君も入ってきてちょっとした鬼ブロックになってしまっていた。
 前夜祭のあと、田尻さん、藤原さん、小島さん、樋田さん、嘉野さんらと呑みに行った。翌日があるのに、ついつい呑み過ぎてしまった。



 大会初日。
 私の一戦目は奈良の長尾氏。相振り飛車から中盤うまく指し進めるものの決め手が見付からず、悪手を指してしまい、苦戦。ただ相手のミスにも助けられ何とか勝った。
 ちなみに今回の大会は初日に二勝通過、二敗失格の予選。二日目は本戦トーナメントの三回戦まで。初日、二日目は三局目で負けてもホテルの手配はしてくれることになっている。
 これは以前天童の全国大会で、三局目で負けた人が電車がなくて帰れず、ホテルもどこも一杯だったということがあったので改善されたものである。ともあれこれでこの日の宿泊権は確保。

 二局目は林君と。
 最近は私も自分より年下と当たることが多くなってきた。難しい将棋だったが何とか勝ち、予選通過。あとの時間は三局目を観戦したり、ぶらぶらして時を過ごした。

 結局予選は大きな波乱はなく、だいたい順当な結果となった。田尻さんは二連勝で通過。
 藤原さんは一局目田尻さんに負け、次は勝ったものの三局目で東京の小滝さんに破れ予選通過はならなかった。

 夕食はこの日も芋煮だった。温泉に入って寝ようとしていると、取材で来ていた大庭美夏さんや樋田さん、青柳さんといったところが乱入してきた。しかしこの日は健全に寝た。やはり正念場は二日目だ。



 二日目。
 初日は二日酔いに近かったが、今日は体調万全だ。
 一回戦は小滝さんと。私の振り飛車に対して地下鉄飛車。攻め急ぎから苦しくしたものの、相手のミスに助けられ最後はきっちり一手勝ち。
 田尻−樋田戦の感想戦では田尻さんの明るい笑い声が聞こえていたので勝ったのかと思ったのだがあとで確認すると負けていた。
 考えてみれば田尻さんは勝ったときはかえって控えめになるんだった。

 二回戦は宮城の加部さんと。
 私の四間飛車に対して玉頭位取り。急戦を仕掛けたがうまく行かず不利に。ただ相手にもミスがあり、逆転していたのだが、結局咎められず、その後は押し切られた。

 今回はかなり気合いが入っていただけにこれはショックだった。とくにこういう負け方はこたえる。
 最初は休みを取っていることだし、このレポートも書かなければならないので負けても最後まで見ていく予定だったのだが、とてもそんな気分ではなくなった。というわけでこのレポートは尻切れとんぼ。
 大体いつもそんなわけであちこちの全国大会に行ってもどこも観光する事なく終わってしまうのである。その日は山形に住む詰将棋作家でチェス・プロブレミストである山田嘉則さんの家に寄ってから、最終の新幹線で帰り、次の日は会社に出たのであった。

 あーあ。。。


【大会名称】
第50回記念全日本アマチュア将棋名人戦 全国大会予選
【対局者】
▲林 隆弘(静岡) × △菊田 裕司(神奈川)
【対局日】
1996年9月7日
【対局場所】
天童ホテル(天童市)
【解説】菊田裕司
▲2五歩(41手目)
意表の仕掛け。全く考えていなかった。
△2四飛(48手目)
苦心の受け。△5四歩は▲4四銀△6六歩▲3三銀成△同桂▲5五角がある。
▲8六歩(51手目)
▲3六歩△同歩▲3五歩△3七歩成▲2九飛△3八と▲3三歩成の方が嫌だった。
△6六角(56手目)
後の▲6五歩を与えて損だが、ほかに指す手がわからなかった。
△7三銀打(62手目)
長考後にやむなく打った銀だが、意外と良い手だったようだ。
△4六銀(66手目)
以下この銀が働いてきてはっきり良くなった。

【棋譜】

1 ▲7六歩 2 △3四歩 3 ▲4八銀 4 △4四歩
5 ▲4六歩 6 △4二飛 7 ▲4七銀 8 △6二玉
9 ▲5六銀 10 △7二玉 11 ▲4八飛 12 △8二玉
13 ▲6八玉 14 △7二銀 15 ▲7八玉 16 △3三角
17 ▲5八金右 18 △5二金左 19 ▲7七角 20 △3二銀
21 ▲8八玉 22 △4三銀 23 ▲9八香 24 △3五歩