2001年8月11日〜14日: 剱岳



参加者:CL澤田・和田・甲谷・中谷



3月の総会で、夏の合宿は剱岳周辺での登攀と言うことが決まっていた。
夏山シーズンに入っていたが、私はなかなか山行できず、夏合宿が楽しみとなっていた。

8月11日(土)・晴れ

扇沢6:30=>室堂8:30, 8:50-> 別山乗越11:05, 11:30 -> 剱沢小屋12:00

前日は諸事情によりバラバラでの集合となり、6時に扇沢駅での待ち合わせとなった。
天気も良く、お盆休み初日と言うこともあって、トロリーバス乗場は始発に乗る登山客でかなり混雑していた。
トロリーバスの後ろには、登山客の荷物用のトラック2台が出ていて、バスの中にザックを持ち込まなくて済むのは、非常にありがたかった。
我々も何とか6時半の始発に乗ることができ、スタート地点の室堂を目指す。
室堂の天気は晴れ、別山乗越を登り切るまで暑くならなければ良いなぁと思いながらスタートする。
始発で来たせいか、登山道はそれほど混雑していない。
雷鳥沢を渡りきったところで一本立てる。
ここからは剱御前小屋のある別山乗越まで延々登りが続く。そこを登り切れば正面には剱岳の展望が開ける。気合を入れなおして登りに取り掛かる。

剱御前小屋では、「雪渓で冷やしたビールは如何ですか?」との誘いがあったが、30分も下れば今回のベースキャンプとなる剱沢小屋のテン場と言うこともあり、ぐっと我慢して先に進む。
12:00剱沢小屋到着。さっそく整地をし、テントの設営に入る。
外で昼食をし、荷物の整理に入った頃からポツポツと雨が降り出す。
明日雨が降った場合は登攀は難しいので停滞かなぁ.....


8月12日(日)・雨のち曇り、午後雷雨

剱沢小屋4:50 -> 平蔵のコル7:30 -> 南壁AU取付き8:00 -> 剱岳山頂10:35,11:15 -> 平蔵のコル -> 南壁AT取付き12:21 -> 剱岳山頂15:00, 15:15 -> 剱沢小屋18:00

夜中にかなり雨が降っていたが、今はポツポツ程度である。
3年前にここを登ろうと計画したが、雨で立山周遊で終わってしまった。
そもそもこのルートを知ったのは「山渓」の紀行を見て「ここなら頂上までのルートとして最高!」、そんな想いが続いていた。
やっと機会が再来、剱沢ベースから平蔵のコルまでは長い急登を行く。
最近皆に付いて行くのがきつい、つくづくそう思うようになったし、現実になってしまった。
雨が降ったりやんだりで、良いコンディションではないことも、体の動きの悪さに繋がっていそうだ。しかし一般ルートとしては、ここはきつい。小雨の中、やっと平蔵のコル。
剱は昨年の早月尾根以来、その前となると30数年前横浜蝸牛山岳会在籍以来で、なにか剱とは縁遠く全体像の認識が薄い。チンネ、八ツ峰、源次郎などを登ってはいるが、諳んじて地形が浮かんでこない。この機会に少し勉強しようと思った。

平蔵のコルからAUを眺める。
雨とガスで切れ切れだが、何とか判断できる。
すっきりした岩稜が頂上まで続いていそうだ。雨がしっかり降っているが、何とか登ることが出来るであろうと判断し、取付き迄ガラ場を慎重に下る。
「ここで一言、忍者のごとく滑るように、やさしく下ろう!!」

落ち着かないモレーンの上で準備を開始。「しまったブタッパナを忘れた」こう言うことが有ってはならない。大反省。そして畳2畳程のテラスへ。
中谷・甲谷、澤田・和田のオーダーで登攀開始。凹角は3級程度というが、濡れていていやらしそうだ。中谷が登り、甲谷、そして澤田が登る。
さあ、いよいよ久々の本番のクライミングだ。壁と一体、慎重に登り出す。
快調に1ピッチ登ると、すでに甲谷さんが2ピッチ目のリッジを登り始めている。
澤田・和田もつるべで、私がトップになり進む。易しいとは言え緊張しながらザイルを伸ばす。
一般道の登山者の声が聞こえるのでへまは出来ない。「よしよし」気分が乗ってきたぞ、3ピッチ目は澤田が厳しい態勢で乗り越し高度を稼ぐ。
ドキ、大音響と同時に「落ク…!!」 甲谷、私はそれに身をすくめる。
見事な落石に「今、岩を登っているのだ」と言う実感が沸く。
4・5ピッチ目は快適なリッジだ、ますます調子が出てきた。
頂上へ続くガラ場が見えてくると終局が近づく。4人テラスでのんびりするゆとりも出てきた。
最後はガラ場を各自思い思いの感慨を秘め頂上へ行く。そこは大勢の登山者が寛いでいる。
全員揃って握手を交わす。
この瞬間がたまらない。今の私の立場であればこの位のグレードで丁度良いのかもしれない、十分堪能出来た。
甲谷・和田はこれで十分、ところが中谷・澤田は計画通り更にもう一本ATを登ると言い、先に下り出す。
私たちは頂上の空気をたっぷり吸うためにのんびりと過ごす。
目的を達成した後の時間は本当に充足感で一杯だ。もう少し天気が良ければ山座同定ができ、あの谷この谷の確定が出来るのに残念。
彼らは又平蔵谷を下って行く。元気、意欲満々、軟弱な私はゆっくり下りる。
道すがら、トリカブト、ヨツバシオガマ、アオノツガザクラ、シングルマの綿毛…
知っている限りの高山植物の写真を撮りながら下山する(記:和田)。

今日は午後から雷雨と言っていたので、もう1本行ったら帰りは雷雨にあってしまいそうだなぁ... でも折角だからもう1本登りたいし... もう1本登ることになった中谷・澤田パーティーは、雨の心配をしながら先ほど下った平蔵谷をAT取付きへと向う。AUの取付きはテラスがあってわかり易かったが、ATの取付き点はわかり難く、雪渓から入って何とかピンを見つけることができた。
しかしこの先は、手の届く真上に1本ピンを見つけることができたものの、その先が全く読めない状況であった。左手上の方にピンがあることから、とりあえずそのルートを取ることにし、中谷さんが登りだすが、ピンまで行ったものの、どうやらルートでは無いとのことで、スタート地点へ下降する。カラビナ1枚残置...
「わからない時は、セオリー通り取付き点から真上だよ!」と言うことから、仕切りなおしで中谷さんが登りだすと、1段登ったところでピンが見つかり一安心となる。
それにしても先ほど登ったAUとは異なり、壁の傾斜がきつい。まあ途中から源次郎尾根と合流してしまうので、直線距離が短い分仕方が無いのだろう。
2ピッチ目が核心部の凹角〜左のリッジとなる。直登は苦しそうなので、ルート通り左にトラバースすると更に左手にピンを見つけることができたが、どうやら行き詰まって懸垂下降を行った支点のようである。ここからは直登と決め、中谷さんに直登すると告げて、ザイルを張り目にしてもらう。
「トラバースして来ているので、ここで落ちたら随分落ちるぞ!」と思いながら、慎重に細かいホールドを拾っての登りとなった。
トラバースした為にザイルの流れが悪いこともあって、中谷さんには申し訳ないと思いながら、20mくらいの地点に良さそうなピンを見つけ、1ピッチ切らせてもらうこととした。
ここから先は、ルートファインディングし易く、順調にやっつけることが出来た。
踏み後らしきものも現れるようになり、どうやら源次郎尾根に入ったのだなぁと感じた頃、それまでパラパラ程度だった雨が、一気に降り出してしまった。核心部を抜けているので心配はないが、早く山頂まで抜けきらなければと足早に、しかし慎重に山頂へと向う。

山頂到着が3時を過ぎていたので、先ほどとは打って変わって嘘のような静けさである。
しかし雨も降ってきているのでゆっくりはしていられない。天気予報では雷雨と言っていたので、雷が来る前に下山できれば良いのだが....
15:15 山頂を後に一般ルートを下り出す。先ほど渋滞だった蟹の横這いも、今は誰もいない。我々は一目散に剱沢のテン場を目指し下山するが、天気の変化は早く、前剱の登り返しに差し掛かる頃、どしゃ降り状態になり、雷も鳴り出してしまった。登山道は雨水で沢のようである。
前剱を越え、剱山荘まで下りて来た頃、雨は小降りとなってきた。後は剱沢を越え、剱沢小屋までの登りである。
18:00 テン場到着。先に帰った和田・甲谷組が、暖かい食べ物を作って待っていてくれた。


8月13日(月)・晴れ

剱沢小屋6:55 -> 長次郎谷8:00 -> 八ツ峰W峰(右上ルート)取付10:30 -> 終了点13:45, 14:10 ->長次郎谷16:45 -> 剱沢小屋17:45
(和田・甲谷組:剱沢小屋 -> 別山乗越 -> 室堂 => 扇沢)

今回の合宿は、各々夏休み後半の都合があり、個々に下山日程が異なる。和田・甲谷組は本日下山、残った我々は八ツ峰W峰・劒稜会ルートの登攀が予定されていた。
昨日2本登ったこともあり、早起ちで八ツ峰へ向うことは諦め、下山組と一緒の起床となった。
6:55 遅目の出発となった。天気は良い、今日は1本しか登らないので、早めに帰って来れるかなぁと思いながら剱沢を下って行く。しばらくすると雪渓が現れる。中谷さんは雪渓の上を快調に下って行ってしまうが、私は昨日の疲れもあって足取りが重い。
長次郎谷との出合いでアイゼンを履き、長次郎谷を登り出す。天気は良いが足取りは重い。坪足で登る中谷さんからはどんどん離されて行く。
長次郎谷が開け、目の前に熊の岩が見えて来る。あと少しで八ツ峰4峰の取付きである。

やっとのことで4峰に到着したものの、劒稜会ルートは取付き点で2パーティー待ち、おまけに登攀中のパーティーも渋滞のようで進んでいない。これではいつになっても頂上に着けないのではないだろうか?
その為当初計画していた劒稜会ルートを諦め、RCCルートを登ることになった。現在登っているパーティーは1パーティーだけであり、これなら渋滞はないだろうとの予測でのルート変更であった。
「下から見ていると、前パーティーは聊か右に寄りすぎていないか?」と、中谷さんと話しながら登攀が開始された。
RCCルートの取付きは、劒稜会ルートの取付きから更にルンゼを入ったところからであるが、取付き点のピンを見付けることができず、上の方のピンが見えていることから、スラブ状のところを登り、とりあえず確保支点が得られるところで1ピッチ切ることにした。
ここから暫くブッシュの下を右にトラバースするようにピンが続いていた。トラバースが終るとピン3本からなる立派な支点が現れた。前のパーティーがルートを抜けきっていない為、一旦ここでピッチを切ることとなった。
ピンは右へ右へと続いている。前パーティーもそのルートをとっている。RCCルートはブッシュを越えた辺りで直上するようにも思えるが、ルートが確認できない。
その為我々も右側へ進むルートをとることとなったが、その結果「右上ルート」に入り込んでしまうと言うことには、全く気が付いていなかった。
縦に走る岩層に沿って1ピッチ進むと、ブッシュのあるバンドに出た。
ここを越え、右へ進むと凹角右側にフェースが現れた。どうやらこれを登ると頂上直下の稜線のようであり、この辺りになってRCCルートを外れてしまったことに気が付く。

このフェースは、下から見ているとホームゲレンデの広沢寺と大差無いように思え、そのまま突っ込んでしまったが、今一つホールドが無く、かなり苦戦しながら左側にトラバースして凹角際に出て、上部フェースを登りきることができた。これで本当にV級なのだろうか?
天気も良く、暫くは完登の余韻に浸っていたが、これから長次郎谷に下降し、更に剱沢を延々登り返すことを考えると、あまりゆっくりできないことから、早々に切り上げて帰路につく。


8月14日(火)・晴れ

剱沢小屋7:15 -> 別山8:15 -> 立山10:00 -> 黒四駅14:45 =>扇沢
(澤田:剱沢小屋7:15 -> 別山乗越8:00 -> 室堂9:30 => 扇沢)

2日間の登攀を終え、今日は下山日。天気も上々である。
私は帰りも群馬経由で帰京する為、別山乗越の手前の分岐で中谷さんと別れ、室堂へと向う。本来は今日一日歩いてから帰る予定であったが、家庭の事情により後ろ髪引かれる思いであった。
1H弱で別山乗越到着。今朝はまだ時間が早いのか?「雪渓で冷やしたビールは如何ですか?」と言う小屋の売り子の声は聞こえない。
登って来る人が増える前に雷鳥沢まで下りたいと思っていた為、一息入れてすぐに下り出す。
約1Hで雷鳥沢、9:30には室堂に到着し、今回の山行が終了した。


記録:澤田・和田

写真:甲谷



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