第68弾:選手を支えるコーチ陣の横顔 5

Inside the RICOH BlackRams

2013.01.30

選手たちを日々サポートするコーチ陣。これまでのキャリアに関するエピソードはじめ、人となりなど、ファンの皆さんと普段あまり接する機会が少ないコーチ陣の横顔を紹介します。

引退するときに“やりきった”と思える練習をしてほしい(岡 誠ストレングスコーチ)

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 岡 誠ストレングスコーチは、2012年にリコーにやってくるまで、約10年の間、個人競技である格闘技や相撲、ゴルフ、競輪などで活躍するプロアスリートのパーソナルトレーナーを務めて来た。チームスポーツであるリコーブラックラムズのサポートは新しいチャレンジだ。
「1年を通じてラグビー部のサポートをするというのは初めてですので、とても新鮮です。メンバー53人が追う理想を共有できるということにとてもやりがいを感じます。個人でやっていると、自分の視点や考え方で物事を決めていくことになりますが、チームだと違った角度からの意見をもらえる、相談しながら選手にとってのベストを探っていけるのはいいものだな、と思いますね」

 高校時代は柔道に取り組み、コーチとしては格闘技の分野でも長く活躍していた。
「ラグビーは、走ってぶつかるので、間合いの部分は多少違うけれども、総合格闘技におけるセオリーが生かせる部分もあります。タックルのときの身体のポジションや体重の掛け方、身体のどこを押さえるか、などはコンタクトスポーツという意味では似ていると思います」

現在は、レギュラーメンバーのサポート、さらにケガなどで通常メニューに参加できない選手のリハビリ、またストレングストレーニングのサポートなどを担当している。

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これまで、第一線で活躍するプロアスリートのサポートをしてきた岡コーチ。彼にとってリコーの選手たちはこれまでよりも少し若い。なかでも社員選手を指導するのは初めての経験だ。
「トレーニングとは“選手のイメージするベストパフォーマンスを表現・体現するためのベストツール”です。トレーニングを始める前に、選手が求めているイメージを明確にすることが大事です。目標や、目指すものがはっきりしていないと、何となく身体が大きくなって、それだけで終わってしまう。だからコミュニケーションが大切です。コミュニケーションを通じてお互いの理解、納得はとても大切なことです。

 例えば身体を大きくしながら、スピードも保とうという目標があるとします。身体を動かす“エンジン”である筋肉をつけると、一度身体は重くなる。そこにスピードをつけるトレーニングをさらに加えることで以前のよりパワフルな動きが可能になる。事前にこの段階をしっかりと伝え、納得してもらう。そして目標である『身体を大きくしながら、スピードも保つ』へと向かわせる。そういうコミュニケーションがとれていないと、身体が大きくなって鈍った動きに驚いて戸惑い、トレーニングの効率を下げることもあるんです」

かつて岡コーチは、担当しているアスリートからこんな言葉をかけられた。
「岡さんに頼むのは、いつも一緒にいてくれるから」と。

とにかく選手のそばに居続ける。これは岡コーチのポリシーだ。
「僕は特別すごいトレーニング理論を持っているわけではありません。でも、ジムにはできる限り居るように努めています。選手にトレーニングの意味を納得してもらうための説明がいつでもできるように。トレーニングは選手がするものですが、コミュニケーションは相手がいなければできない。時には同じことをわざと何度も聞いたりしながら、深く納得してもらうように心がけています」

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 結果、選手たちとの距離も徐々に縮まってきた。
「アスリートは信頼しないと自分の弱みを話さない。実は昔ケガをした箇所があって、それが理想の動きを妨げていたとします。でも簡単にはそれを教えてくれないものなんですよ。でも、コミュニケーションが深まるうちに、そういう話を自らしてくれるようになります。それがわかれば、ケガを前提とした理想を一緒に追いかけられる」

岡コーチがジムで選手に寄り添う理由はもうひとつある。それは、「リコーには大勢のメンバーがいて、試合に出れない選手もいますが、それでも目標をはっきり決めて努力して、引退するときに“やりきった”って思うような練習をしてほしいと常々考えています。悔いを残さない、そのためのサポートはいくらでもしていきたい」

岡コーチは、シーズンオフとなった今日も、ジムに通い続ける選手たちを見守る。チーム全体を見るという役割を果たしながらも、その目線は飽くまで選手それぞれの理想。
岡さんの視線は常時、その実現に向かっている。

2012-2013シーズンのコラム「~Inside the RICOH Black Rams~」は、今回をもちまして最終回となります。
来シーズンの企画にご期待ください。 

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