Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

神鳥裕之新監督インタビュー

2013.05.24

2013-14シーズン、リコーブラックラムズの監督に神鳥裕之前チームマネージャーが就任しました。神鳥新監督は、明治大学からリコーに入社。2006年まで11シーズンにわたりFWとしてプレー。引退後は選手の採用担当やチームマネージャーなどを歴任してきました。同じ明大出身の山品博嗣前監督から引き継いだチームをいかに成長させ、今季より新制度を導入するトップリーグを戦っていこうとしているのか? その方向性について聞きました。

「10位であった事実」を真摯に受けとめる

―― 就任おめでとうございます。打診を受けたとき、どんなお気持ちでしたか?

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神鳥: 実は即答できず、少し考える時間が必要でした。引退後、ラグビーの世界から少し距離を置いていた事もあり、自分の中で決断するまではいろいろと考えました。

―― コーチングスタッフは、レオン・ホールデンヘッドコーチ(HC)以下、昨シーズンと同じ面々が担当するというのは決まっていたんですよね?

神鳥: はい。監督だけが変わったという状況で、自分がチームを立て直していく効果を生めるのだろうか、という不安はありました。それについては、就任しチームが動き出した3月から、ホールデンHCらと約1ヵ月かけてじっくりと話をしました。

―― どんなことを話しあわれたのですか?

神鳥: まず私からは「10位であった事実」を真摯に受けとめてほしいとコーチに頼みました。それから昨シーズンやってきたラグビーについて、悪かった部分、良かった部分を分析し、考え方を共有しました。具体的には、良かったのはセットプレーですね。トップリーグの中でも良い数字が出ていましたし、そこは強みとして持っていけるだろうと。問題点はやはり反則の多さなどです。
それを済ませ、今後目指していく自分たちのラグビーのスタイルの話をしていきました。

―― FWコーチに田沼広之前アドバイザー、BKコーチに武川正敏さんが就任し、バイスキャプテンにNO.8の野口真寛が加わりました。

神鳥: そのあたりは僕の意向です。昨シーズンまでは山品前監督がバックス出身だったということもあり、ロブ・ホードリーBKコーチと一緒にユニットを見ることもできたんです。FW出身の僕が監督になると、その部分が手薄になる。そこでロブをサポートできるコーチとして武川コーチに来てもらいました。
野口はムードメーカーというか。グラウンド内外でもチームの中心にいるような人間で人を惹きつける力があります。大学でも主将として日本一を経験している。そうした人材をリーダーとして更に成長できる機会を作ることがチームにとってもプラスになると率直な思いとしてありました。

―― 選手たちの話を聞く機会はありましたか?

神鳥: 3月にチームビルディングを主な目的とした合宿を行いました。そこで選手やスタッフから、昨シーズンの思いを、本音として聞くことができました。僕からは、チームが成功するために、“誰”ではなく、『自分』は何ができるのかというマインドでベクトルを自分に向け取り組んでほしいと伝えました。選手からも悔しさを自分自身にぶつけ、自分を変えようとしてくれている様子がみれたのは良かったと思っています。
今シーズンは、今まで以上にチーム内の“競争力”を高めて行きたいと思っています。昨シーズンから始まった早朝練習も、今年は選抜メンバーではなく社員選手は全員で取り組みました。チームとしてのコミュニケーションを密にして、一体感をつくりだしていく努力も続けて行きたいと思っています。
チームの各セクションには優れたコーチやリーダーがいるので、僕がするべき一番大事な仕事は、コミュニケーションを通じて、チーム全員が同じ方向を向くよう促していくことだと思っています。

選手の判断領域を広げ、個々が考えるラグビー

 ―― 前監督時代のキーワードは「スピードラグビー」。リアクションの速さなども含めたプレーの全体のスピードで相手を上回っていこうというテーマがありました。

神鳥: 山品前監督が2年かけてつくりあげてきたベースは、しっかりと引き継ぎたいというのが僕の意思です。判断のスピードや動き出しのスピードを重要視していくのは変わりません。
変化をつけたいと思っているのは、選手個々の判断領域の部分です。これをもう少し広げたい。選手たち自身が考えてラグビーをできるような戦術を取り入れていこうと考えています。

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―― “決まりごと”は減るのでしょうか。

神鳥: 減るというよりも、「柔軟になった」というイメージです。昨シーズン、例えばアタックでは攻める方向や攻め方がしっかり決められていました。相手の状況を意識する事よりも、自分たちのスタイルをよりシンプルに徹底して取り組める良さもありましたが、一方で、行き詰まった場面で機転が利かないという問題にも直面していたと考えています。今シーズンは選手が自分たちの判断で、チョイスできるような戦術は増えると思います。

―― また、昨シーズンは、11月の休止期間・ウィンドウマンスを境に、チームは調子を落としました。休止直前には勢いを感じるゲームもあっただけに「なぜなのだろう?」と思っているファンの方々も多いと思うのですが。

神鳥: この期間の使い方は本当に難しい。それぞれ皆に意見がある。それはどれもがチームが勝つために考えたアイデアなので、どれが正しいかとは一概には言えない。
ただ、僕としては現時点で10位のチームであるということを認識して方針を考えたい。調整的な視点も大事だけれども、それを優先するあまりチームとしてトレーニングが不足する状況は避けたい。チャレンジャーであるという意識を持って、ハードなトレーニングを課すことも大事だと思っています。その結果、チーム内で競争も生まれ、台頭する若手も出てくるはずなので。
そこは僕自身の基本的なビジョンとして、コーチングスタッフには伝えています。彼らも豊富な経験から、状況に応じ、さまざまな意見を出してくれると思います。その都度意見をぶつけ合いながら、チームとしての具体的な方針を決めていくことになると思います。
挑戦者の意識が大事だとは強調してはいますが、選手たちは昨シーズントップリーグ2位の東芝に勝つという結果も残しています。東芝にも勝てるチームであるという実績や選手の潜在能力は僕も本当に信じている部分です。求めているマインドチェンジは、その力を「常に出し続ける」チームになる為にどうすればよいかを考える事だと思っています。

―― 現役時代と現在で、トップリーグのラグビーに変化は感じますか?

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神鳥: 原則の部分は今も昔も変わってはいないと思います。特に身体をぶつけ一対一の勝負に勝つのが大事であるといったところは。

ただスキルやフィットネスが、ポジション関係なく求められるレベルが上がっているのは感じますね。チームでも、どちらかというとボールタッチの機会が少ないPRやLOの選手にもパスやキャッチという能力を求めていくことになると思います。トレーニングでも、ロングパスやそのキャッチのスキル向上を目的としたメニューを取り入れているので、選手はもちろん、ファンの方々も観ていて楽しいラグビーが披露できるはずです。

―― それからトップリーグの制度が、8チームによるリーグ戦を2度行う2プール2ステージ制に変わります。準備の面でこれまでと変化はありますか?

神鳥: 8チームによるリーグ戦では、これまで以上に勝ち点1の差が大きな影響力を持つと思っています。ボーナスポイントを意識して、4トライを取る試合、4トライを与えない試合を増やすというのが大事になると思います。
また、最初のステージで4位以内に入らなければ、後半のステージは下位のプールに入ることになります。その時点で8位より上の順位は望めなくなる。「序盤を駆け抜け、1stステージで4位以内に入る」ことはチームのターゲットになるでしょうね。

―― 終盤戦を見据え、徐々にコンディションを上げていく、というような戦い方では上位進出は厳しいということですね。

神鳥: はい。4~6月の練習のスケジュールを大きく変えるという考えは特にはありませんが、毎年夏に行っている北海道・網走合宿の前に、フィットネス・フィジカル向上を目的とした別の合宿を行うプランを考えてはいます。それが実現した場合は、網走ではゲームも含めた実戦形式を中心とした合宿になると思っています。

チャンピオンになれるチームにふさわしいマインドを

―― グラウンド外で、選手たちに求めていることなどはありますか?

神鳥: 監督として選手と接するようになって、ラグビーにかける思いや意識の高さを改めて感じました。トップリーガーとして、アスリートとして、一流を目指そうという姿勢は本当に素晴らしい。ただ、ラグビー以外の部分での規律意識は、トレーニングや自己管理の徹底度と比べると少し見劣りするように映りました。それは変えてほしいと伝えています。
小さなことではあるんです。例えばミーティングへの集合が少しルーズだったりする。それをコーチ陣も含めて予定時刻にミーティングが始められるようにするとかですよね。一見ラグビーとは遠いように見えるところでも、しっかり取り組もうと選手たちには口を酸っぱく伝え続けています。

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 リコーには、戦術や戦略、トレーニング技術などは世界レベルのものを導入できる状況があります。でも、それをグラウンドでプレーとして昇華させるには、選手たちのマインドも一流のものでないとだめだと思うんです。チームをチャンピオンに導く優れた戦術をとりいれても、チャンピオンにふさわしいマインドを持った選手がいなければ、チームは成功しないと思います。
そういう意識について突き詰めて行くと、ラグビー部のあり方、僕たちがリコーのラグビー部として活動することが、価値をつくりだしていけるかというテーマに行き着く。今回の始動にあたっては、そういうテーマについても皆で話しあい整理しました。普及活動や社会貢献がベースにある企業スポーツとしてのラグビー部の存在価値について考え、確認しあえたことも、意味のある取り組みだったと思います。


神鳥: リコーの中では“TAFU(※)”という言葉が使われ続けてきました。僕はこの言葉をもう一度しっかり前面に出していきたいと思っています。
トップリーグを戦う以上目指すのは優勝です。もちろんそれは最終的なものであって、現実的にはターゲットを一つ一つクリアしていくことになるわけですが、この10位のチームが優勝というすごく大きな目標に向かっていくためには、“TAFU”という言葉はよく合っているんじゃないかと。ベテラン、若手を問わず競争を促す環境づくり、トレーニングの強度のアップ、目標に対するこだわりなどを含めて、今年はタフにやりたいと思っています。
継続すべき部分は継続し、変わるべき部分は変わっていきます。そんなリコーを今シーズンもよろしくお願いいたします。

―― 今日はありがとうございました。

※“TAFU”とは
・TEAM(チームのために)
・AGGRESSION(攻撃的に)
・FAITH(信頼しあい)
・UNITY(結束する)
4つのキーワードの頭文字T・A・F・Uと、“Tough”(頑強さ・タフ)をかけたリコーブラックラムズのスローガン。

(文 ・ HP運用担当)

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