Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

CTBマア・ノヌー選手インタビュー

2012.01.01

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 今年行われたラグビーワールドカップ2011で、悲願の2度目の優勝を果たしたニュージーランド代表。そのチームにあって中心選手として鮮烈な印象を残したCTBマア・ノヌーは、今シーズンリコーブラックラムズのメンバーとしてトップリーグでプレーをしています。彼がなぜ日本にやってきたのか、ブラックラムズの一員としてどんな思いを抱き闘っているのかを、元プレーヤーで現在は株式会社リコーの企業スポーツ推進部の一員としてチームをサポートする田沼広之同席のもと聞きました。

日本食はヘルシーなので大好きです。なじみのお店も

―― 日本での生活には慣れてきましたか?

ノヌー: 楽しんでいます。これはリコーに入ることを決めた大きな理由でもあるけど、チームには一緒に育ってきたベストフレンドがいるしね。ロイ・キニキニラウとはカレッジ(NZは16歳までが義務教育。その後半、もしくは終了後などに通うセカンダリースクールのこと)で、タマティ・エリソンとはハリケーンズ(スーパーラグビー)で一緒でした。近所に住んでいるのは心強いです。来日前にロイと話したら「環境はベストに近いよ」と言っていたので、安心できました。

―― 食事は口に合いますか?

ノヌー: 日本食は大好きです。この間は渋谷に行き、寿司とラーメンを食べました。両方とも好きです。寿司は職人さんがその場でつくってくれて……

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田沼: 本格的だね。日本には"回る寿司"もあるんだけどそれは知っている? あれも面白いよ。子供は喜ぶんじゃないかな。

ノヌー: はい、知っています。今度行ってみようと思います。日本の食事はヘルシーなところが気に入っています。
 この間は、近所の中華料理店にも行きました。言葉が通じなかったので通訳の松本さんに電話して、携帯越しに食べたいものを伝えてもらいました。そうしたらすぐに、"カラアゲチキン"をつくってくれました。その後もう一度いったら、覚えてくれたみたいで、通訳なしでも大丈夫でした。

―― 家族の方も食事を楽しめていますか?

ノヌー: NZに住んでいる両親はサモアで生まれ育ったのでサモアの料理を食べることが多いのですが、他の親族や妻や子供は僕と同じで、向こうにいたときから日本食が大好きでした。問題はないです。

田沼: マアと同じサモアがルーツの選手は、リコーでもたくさんプレーしていたよ。最近だとフィリポ・レビィ(サモア代表LO/リコーでは07-09にプレー)であるとか。ほかにも……(リコーに在籍した歴代サモア出身選手を次々に挙げる)

ノヌー: フィリポ・レビィも? そうだったんですか。たくさんいたんですね。

ジェイミー・ジョセフの「日本でキャリア積んでみては」が最初のきっかけ

―― ノヌー選手が日本に興味を持ったきっかけと、来日を決めた理由を改めて教えていただけますか。

ノヌー: 15年くらい前、当時ウェリントン・ライオンズ(NPC)のコーチをしていたジェイミー・ジョセフ(NZと日本で代表経験を持つLO/NO.8)が日本について話すのを聞いたのが、日本のラグビーを知ったきっかけです。彼とは親しくさせていただいていたのですが「日本でキャリアを積むのもいいのではないか」と言って、薦めてくれました。
 当時はまだ学生だったし、将来についてまだ決められずにいました。ラグビーをプロとしてやるのは夢だったけれど、それが叶うかは自分でもわからなかった。家を建てる仕事に就いたりするのかな、なんて気持ちもどこかにあったくらいで。

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 その後、1995年のラグビーワールドカップでのジョナ・ロムーのプレーを観たり、一方でウェリントンからタナ・ウマガ、クリスチャン・カレン(いずれもハリケーンズに在籍し、オールブラックスにも選出された選手)のようなスターが生まれていくのを目の当たりにして、彼らのようになりたいと思いました。NZでプロになるという目標は現実的なものになっていったんです。
 だから、ジェイミーに薦めてもらったタイミングで日本に行く決心はできませんでしたが、「いつか日本でラグビーをやってみたい」という思いは、常に心の中にありました。それは欧州や日本など、海外に出てプレーして帰って来たジェイミー以外のNZの選手も日本のラグビーやライフスタイルの魅力を話してくれるのをよく聞いていたからですね。
 だから今シーズン、日本でプレーするチャンスをいただき、すぐに決断することができました。

―― 日本のラグビーについて抱いていた印象について、もう少しくわしく聞かせてください。

ノヌー: コンペティティブ(競争的)。情熱があって、勝利のために必死にプレーする強い気持ちを感じます。できる限り努力し、ハードにやっている点で日本のラグビーは魅力的に映りました。

コンフォートゾーンから出て、ひたむきな日本のラグビーに学びたかった

―― 今回そうした環境でプレーすることに、どんな意味を置いているのですか?

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ノヌー: 僕にとって、2007年のラグビーワールドカップに出られなかったことが大きな転機になっています。それまでの5年間、オールブラックスに選ばれてはいたけれど、テストマッチに出場する機会は少なく、出場も途中からが多かった。キャップ数も18にとどまっていました。いつも最初から試合に出ることができる選手になりたいと思っていました。それなのに代表から落選してしまった。ショックでした。自分は今の環境に向いていないのではないかと、ラグビーリーグでプレーすることも考えました。
 でも、落選は自分を見つめなおす機会になりました。「自分はどうしてラグビーをやっているのか」。そんなところまで立ち返りながら、トッププレーヤーと自分は何が違うのか、理由を考えたんです。たどりついた答えは「彼らは得たいと思うもののために、何かを犠牲にしている」ということでした。
 田沼さんは36歳までトップリーグでプレーしていたと聞いています。そのために、ラグビー以外で我慢したものもありますよね。

田沼: そうだね。あるよ。

ノヌー: きっと、ケガをしないために身体のコンディションを整え続けることはもちろん、試合中もベーシックなことをしっかり心がけていたと思います。メンタルも磨き続けたはずです。何かを我慢しながらね。そうでなければ、長くプレーヤーであり続けることはできないはずです。
 2007年までの自分は「ハードにプレーすれば、ご褒美として遊んでもいい」という甘えがあった。もちろん、グラウンドではハードにプレーしていました。でもグラウンドの外では、"有名人"として誘われるパーティーを楽しんでばかりいました。
 でも、トッププレーヤーはグラウンド内、外、どちらでもハードにやっている。グラウンドの中だけ頑張ろうとしても、大事なときにタックルミスが出たり、パスするべきときにパスをしない判断をしてしまったり、細かいところで差が出てしまうんです。ディシプリン(規律)にも問題があって、よくイエローカードももらっていましたし。
 そうした生活を改めた結果、2008年からの4年間は、素晴らしいものになりました。W杯のメンバーに選ばれ、コンスタントに試合に出場し、優勝まで経験できました。ここまで来られるとは思ってもみなかった。

―― ラグビーに対し、グラウンド外も含めてハードに、ストイックであろうとすることが成功を引き寄せた。情熱や競争心を感じるという日本でプレーするのは、そのあたりと関係がありそうですね。

ノヌー: 日本は大好きです。でも、ずっとNZでプレーしてきた僕にとっては、なじみ深いコンフォートゾーンの外側の環境であることは間違いありません。心地よい環境から離れ、ひたむきにプレーする日本のラグビーチームの一員となってプレーすることから今の自分が学ぶべきことは多くあると考えたんです。
 それに、さっきも話したけれど、日本に行きたいとずっと思っていたし、さらには昔からの仲間が在籍しているリコーからの誘いという偶然までありました。このチャンスを逃してはいけないと思いました。

田沼: 逆に、リコーの選手に自分から学んでほしい、吸収してほしいと思う部分はある?

ノヌー: プレーでの読みの部分とか、いつパスするか、走るか、そういう判断でしょうか。そこはオールブラックスのレベルでやっていたので、選手が知っているものとはまた別のものを見せることはできると思います。
 それから、「選手全員が世界で一番強かったり、足が速かったりしないといけないわけではない」という考え方も伝えたい。今の自分の個性を発揮し、チームに貢献しようとする姿勢が大切なので。

子供たちにはハッピーになってほしいから、サインはできる限りしたい

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―― スタジアムではいつも大勢のファンに囲まれていますね。

ノヌー: NZではいつも厳重にエスコートされていて、ファンと触れ合う機会はあまりないんです。だから楽しんでいますよ。特に子供たちがたくさん来てくれるのがうれしい。自分が子供の頃を思い出すと、オールブラックスの選手は憧れだったけど、テレビで観るだけで一度も会ったことがなかった。会えたらうれしかったと思うんです。だから、日本の子供たちがハッピーになってくれるなら、できる限りサインもしたいと思っています。

―― 最後に、ノヌー選手のこれからのラグビー人生の目標、計画があれば教えて下さい。

ノヌー: 今は何よりもリコーブラックラムズのためのプレー。個人の目標のためにプレーするつもりは一切ありません。そういう気持ちだったら日本に来ていない。
 先のことはあまり考えていません。計画することはできますが、その通りに物事が進まないことはよくあるし、予定とは違ったことに取り組み始めることもあります。「道が開いたところに進路をとる」というタイプなので。ただ、それでも長くラグビーを続けたいとは思います。

―― 田沼さん、太く長い現役生活を送った先輩としてアドバイスがあれば。ノヌー選手は29歳ですから、36歳まで続けるにはあと7年。

田沼: マアなら7年なんて余裕だよ。自分は大きなケガをせずに来られたのが幸運だった。手術したこともなかったので。多分そこは彼も同じだと思うんですよ。

―― 丈夫に生んでくださったご両親に感謝、ということなのでしょうか。

ノヌー: 両親は大切にしています。ラグビーが忙しくてなかなか一緒にいられないけれど、海外旅行を楽しんでもらったり、サモアに帰郷したいと言えば、いつでも帰れるように手配しているんです。

―― 素晴らしいですね。トップリーグも佳境に入っていきますが、さらなる活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

(文 ・ HP運用担当)

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リコーブラックラムズ マア・ノヌー選手 twitterアカウント
@maavelous (http://twitter.com/#!/maavelous)

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