Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

相・小吹・池上各選手インタビュー

2009.02.02

 リコーブラックラムズのトッド・ローデンHCは、2月7日に開幕、チームが挑戦する日本選手権への抱負を聞かれた。
「日本選手権は選手のもの。この時間を使って"attitude"をさらに学んでほしい」

 シーズンの準備段階からこのキーワードを常々口にし、合言葉としている。選手が成長曲線を駆け上がる源にした。

 言葉の意味を簡単に言えば、「どんな状況でも全力で立ち向かう姿勢」か。しかし、そもそもが抽象的な単語だ。「これは何ぞや」への解答は人それぞれで、同じ人でも時期やその場の気分により違う答えを出しうる。

 ゆえに指揮官の「学んで」という言葉から、こんな暗示も読み取れるのだ。

 選手権は"attitude"の定義を考え直す機会にもなる――。

 闘いを前に、指揮官も「成長した」と頷く3選手がそれぞれの足跡と、彼らが2009年1月時点で思う「"attitude"とは?」を語る。

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 相亮太にとって、ここまでは通過点に過ぎない。トップリーグ(TL)昇格を賭けたチャレンジシリーズを終えて3日後、「シーズンをスタートする前から『日本選手権2回戦でTL(のチーム)と当たって勝ちたい』と、目標にしてきた」と言う。

 チームのTL降格から約5ヶ月後。今季就任のローデンHCによる発案で、働き場を本来のFLやNO8といったFW第3列からLOに移動させた。

 戸惑いながらも、指揮官は「自分を必要としてくれてそのポジションに」コンバートしたと理解する。日本代表42キャップの田沼広之をはじめ、同じ位置にいる実績十分の面々から助言を受けながら、徐々に慣れていった。

 結果、「ラグビーに関する世界観は広がった」。例えばスクラムからBKへボールが渡る瞬間。第3列はすぐにその場を離れ、ボールの動きをひたすら追いかけるが、LOは目の前のスクラムをまず押し切る必要がある。ゆえに顔を上げれば、直前まで激突していた相手選手の顔が見えた。楕円球がないところでも、試合は動いていた。

 相は今季、チームメイトの変化にも頼もしさを覚えた。「練習、生活で、ベストを尽くそうという気持ちを感じる」。シーズン終盤の試合直前、メンバー外の選手がロッカールーム付近で、出場選手に対し拍手と喝采を浴びせる姿に感動を覚えた。「(試合に出られず)悔しい気持ちもあるだろうけど、ああしてくれること自体が嬉しい」。自分がその立場になっても同様に応援できると、素直に思える。

「変わったのはあくまで選手」と考えるが、きっかけは新首脳陣だとも頷く。教員免許取得のために大学へ通い、将来は指導者を目指す27歳にとって、特にローデンHCは「いいお手本」だ。

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――"attitude"とは?

 答えは、指揮官の最も印象に残る言葉に集約されているという。

「『できるかできないかじゃなく、本気でやろうとしているか』。試合、練習とかでタックルミスがあっても、トッドはとやかく言わない。そいつが本気でタックルしようとしているかを見る」

 ちなみに日本選手権でTLのチームに視線を向けるのは、決して自分のためだけではない。

「『TEだから勝てた』『(TLに)上がってもまた同じ位置(降格圏)』と思う人はいる。『変わった』ってところを日本選手権で見せたいね。会社の人とか、選手の家族とか、降格したつらさを味わった人に・・・」

 今季、チームに何より浸透したという周囲への思慮を自分の胸にも秘め、決戦の時を待つ。

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 相は「今年のBKは凄くカッコいい」と賞賛するが、そのひとりに同期の小吹祐介がいる。以前から不動のFBだったが、さらに今季は「身体を作った。コンタクト(接触プレー)は今までで一番がんばってきたポイント」と言う。

 社会人同士の試合を重ねるなかで強さ、激しさ、泥臭さの重要性に気づき、さらに今季、ローデンHCにその点を重視された。「(痛いとされるプレーは)元々嫌いだったけど、今は好きと言うか、面白みを感じる。トッドもそういうところをすごく評価してくれるし」。プレーに対する指揮官の視点を、大きなモチベーションにした。

「見えない部分も評価してくれる。いいプレーもだけど、『いいプレーに繋がったプレー』も。(相手がボールを蹴ってくる前に)人がどれだけ帰ってくるか、帰ってきたことによって、どれだけ前に出られたか、とか。(トライシーンから)かなり前のフェーズ(局面)までフォーカスしてくれる」

 首脳陣のチーム作りに触れることで、ラグビーにおける精神論の価値も再認識する。試合の直前には多彩な映像を見せられることで、士気を高めた自分がいた。また、ビジュアルと同時にキーワードも重視されることも見逃していない。

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――"attitude"とは?

「どんな時も逃げ場を作らない。100%で。練習でも、試合でも・・・」と答えたところでふと、言葉を選び直す。

「『attitudeイコールこういうことだ!』って、文章で表せない。だから(意味を)自分たちで考えるじゃないですか。(ローデンHCは)そういうところが上手いんですよね」

 つまり、ローデンHCは意図的に選手の頭を使わせているのではと思い、自分たちがいい意味で「術中にはまっている」状況に感嘆するのだ。日本選手権への抱負を聞かれた指揮官の「"attitude"を学んでほしい」という発言についても、「難しいんですよ、あの人の言っていること」と笑った。

「学んでほしい、か・・・。"attitude"は、奥が深いんじゃないですか? だから、答えは出ていないです」

 向こう1試合を軽視せずに戦い抜くことで、少しずつ「答え」が見えてきそうだ。

 同じ状況も、割り切り方ひとつで違う世界に映る。25歳の池上真介はそう実感した。

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 希望ポジションはCTB。各メディアに『学生史上最強』と謳われた2005年度早稲田大学在籍時の、不動の定位置だ。が、翌年のリコー入社以降、池上はおもにWTBを任される。当時のチーム戦術などを理解、納得して取り組んではいた。とはいえ胸の内には、割り切れぬ感情も抱いていたという。

 今季就任のローデンHCにその意思を伝えるも、結局叶わず。ただその過程で、明確な意図説明があった。今後CTBへの挑戦に必要な技術などを具体的に示され、それを身につけるための個人練習のアドバイスも添えられた。

 秋、山品博嗣BKコーチが至近距離から投げ込むテニスボールに反応し、掴むトレーニングをした。指揮官がCTBに求める、正確なハンドリング技術を養いたかった。

 WTBの定位置を掴むための課題にも集中する。こちらも首脳陣に明示されていた。苦手なキックの蹴り合いの練習を、練習前に必ず行う。「ミス、しないかな」と、かつて試合中に抱いていた不安はなくなった。

「トッド(ローデンHC)は一人ひとりのことを考えてくれていて、納得のいく話をしてくれる」

 下支えに対話があったから、決定に対して割り切れたのだ。

 チーム全体を見渡せば、指揮官が打ち出すわかりやすい方針のもと、団結している様子を体感する。

 選手権出場を決めたホンダヒート戦の後半34分。FBスティーブン・ラーカムのトライの起点は池上のタックルだった。カウンターをしかける相手WTBに低く刺さり、横たわるボールをラーカムが奪い去ったのだ。一見、池上個人のプレーが注目されがちだが、本人は「内側を小松(大祐・CTB)に埋めてもらっていて、自分の選択肢は少なかった」。チームで守ったことを強調した。

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 フィールドの15人が一体となって動けていると感じ、その旗印にあるキーワードについても、徐々に理解を深めていった。

――"attitude"とは?

「気合いとか、そんな感じのニュアンスです。ラグビーは気持ちだと改めて思いましたね。高校のコーチとかが『気合いだ!』って言うのを聞いても、僕らは『何だ、根性論じゃん』と言い訳をしがち。でも世界のトップレベルで教えていたコーチが『気合いだ!』と・・・」

 今のチームでは、まずは綿密なコミュニケーションが図られ、スキルや戦術など、徹底された理論を落とし込まれる。最後の一押しに "attitude"という言葉を添えられる。だから「やっぱり、根性論って確かなんだ」と思うのだ。

 精魂を込めた理詰めの動きを見せる場面は、訪れるか。

 来る日本選手権。リコーは1回戦、帝京大学と相対する。

 選手の視線はどうしても、TL上位陣と対戦する2回戦以降に集まるが、小吹は警鐘を鳴らす。「みんなTLとやりたい気持ちが強いだろうから、そこに頭が行き過ぎないようにしたい」と。油断大敵、という意か。

 帝京は夏に一度、砧グラウンドに足を向けている。成長過程にあったリコーと合同練習をし、スクラムなどでは優勢だったという。

 11月1日、ここ数年"常勝"と称されていた早稲田と対戦、スクラムで何度もターンオーバーを奪う。18対7で勝利、相手が更新し続けていた関東大学ラグビー対抗戦Aの連勝を53で止めた。

 相は帝京と対峙した時間を振り返り「スクラムが強いFWだった。ナメてるわけじゃない」と強調。池上も知人の多いTLチームとの対戦に「自分たちを試せる」と意気込む一方、その前提として「1回戦は何が何でも勝たなきゃいけない」ことを頭に入れている。

 2月7日、12時。秩父宮ラグビー場。

 まずは学生トップクラスの破壊力を誇る集団に"attitude"を見せつける。同時に指揮官の弁を借りれば、さらに"attitude"を学び直す。

(文 ・ 向 風見也)

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