2014-2015 トップリーグ 1stステージ 第1節 vs神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦

2014.08.26

「ピンチの後のチャンス」仕留めた前半

 ジャパンラグビートップリーグ2014-2015、リコーブラックラムズの開幕の地は京都。午後、何とか持ちこたえていた曇り空から雨が降り出し、試合開始時刻の19時にはピッチ上はかなりの水が溜まるコンディション。ウォーミングアップ中の選手が芝生を踏み込む度に白い水しぶきが上がり、走りにくそうなのがわかる。

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 試合は今シーズンSOを務めるコリン ボークのキックで始まる。蹴り返しからのラインアウトをキープすると、ハーフウェイライン付近でボールを受けたSH山本昌太が仕掛け突破。右サイドを走りゲインすると小さく前方に転がし、これをリコーが再度確保。22mラインの内側のポイントから左に展開すると、守る神戸製鋼にオフサイド。正面やや右、約15mの位置からFBピータースダニエルがPGに成功(2分)。リコーが3−0と先制する。

神戸製鋼の自陣からのアタックで攻め込まれたリコーは、ディフェンスの局面を迎える。これを守って押し戻すと、ハーフウェイラインを越えたあたりで神戸製鋼に反則。リコーは正面やや左の位置から50m近い距離のあるPGを狙う。これは惜しくも左にそれた(9分)。このあたりでやや雨の勢いが衰えた。

自陣に転がったキックの処理でリコーにノックオン(12分)。正面、22mライン上のスクラムを神戸製鋼が強く押し、対応したリコーに反則。神戸製鋼が22m内側、正面のPGを決めて3−3とする(13分)。

神戸製鋼はライン裏へのスクラムハーフのハイパントを上手く処理しゲイン。再びリコー陣内に攻め込む。守るリコーは、SOボークのタックルがやや遅れ、またしっかり相手選手をつかみにいっていなかったということでイエローカード。10分間の一時的退出を科される(17分)。神戸製鋼は22m内側、正面やや右のPGを決めて3−6とする(18分)。リコーはCTB小浜和己がSOに入り対応した。

FBピータースのキックオフで試合再開すると、蹴り返しにCTB山藤史也がチャージを決め闘志を見せる。さらに、LOロトアヘアポヒヴァ大和の突進への対応で神戸製鋼にノットロールアウェイ(20分)。10mライン手前と距離があったがリコーはPGを狙うがこれははずれる。

神戸製鋼はセットプレーでの優勢を生かしリコー陣内に攻め込む。しかしリコーは我慢強く守り、SOボークがピッチに戻る(27分)。

前半残り10分を切り、耐えてきたリコーが流れをつかむ。ハーフウェイライン上でスクラムを得ると、ディフェンスで飛び出した相手9番がオフサイド。ペナルティキックで敵陣に侵入し攻めると、守る神戸製鋼が反則を繰り返し7番が10分間の一時的退出を科される(35分)。

ゴールまで5m、左サイドの位置でリコーはスクラムを選択。神戸製鋼がFWを一人欠く状況を突いて押し込むとNO.8マウ ジョシュアがボールを拾い左中間を突進。タックルを受けながらも耐え、ディフェンスの隙間に身体をねじ込みグラウンディング。リコーがこの試合最初のトライを挙げて逆転する(36分)。CGも成功し10−6とした。

ホーン後、最後のプレーで神戸製鋼がハーフウェイライン付近からPGを狙ったがはずれ(41分)、前半が終了した。

続く相手ペース。ワンチャンス生かし逆転も、まさかの結末

 互いに選手交代なしで後半開始。自陣の浅めの位置のラックで、倒れた選手をつかんだリコーにホールディングの反則(4分)。神戸製鋼がPGを狙うがはずれる。

ハーフウェイライン付近からモールをドライブした神戸製鋼が一気に22mライン付近までゲイン。さらにボールをキープしライン裏にハイパントを蹴ると、この処理に手間取ったリコーがラックで反則(6分)。ゴール目前、左中間のスクラムを押した神戸製鋼はショートサイドを8番が突きトライ(9分)。角度のあるCGも決まり、10−13と再逆転する。リコーはこのトライの直後、SH山本に替えて中村正寿を送る。

 アタックを見せたいリコーだったが、SOボークらが力強い突破を見せるも、フェイズが重ねられずボールを失う場面が続く。神戸製鋼はミスを突いて攻め、チャンスを重ねていく。飛び出した11番がFBピータースのキックをチャージ。ボールがインゴールに転がり、あわやトライという場面をつくる(12分)。その後は雨中の僅差の試合という状況で、互いに確実にエリアを獲ることを狙った蹴り合いが展開される。

神戸製鋼が13番の突破を起点に22mラインの内側でアタック(20分)。ゴールまであとわずかにまで迫るが、リコーはここも守る。HO森雄基に替えて滝澤佳之がピッチへ(21分)。
よく守っていたリコーだったが、ラックでホールディングの反則。ほぼ正面、約25mの位置から神戸製鋼がPGを決めて10−16と点差を広げた(24分)。

落ちない運動量とSH中村の素早い球出しが噛み合い、リコーがアタックを見せ始める。それでも神戸製鋼はキックをうまく使い、決定機を未然につぶし試合をコントロールしていく。リコーはWTB渡邊昌紀に替わり星野将利(28分)。

FBピータースが蹴り込んだキックを神戸製鋼が落とし、リコーは敵陣スクラムのチャンスを得る(33分)。10mライン付近からフェイズを重ね前進を図ると、HO滝澤がわずかな隙間を突破。前方に倒れそうになりながらも地面を這うようにしてもがき執念のドライブを見せる。22mライン付近でラックになった瞬間、SH中村が素早くボールをさばく。左中間でSOボークが突破を匂わせディフェンスを引きつけると、左サイドに走り込んだWTB小松大祐にパス。これを受けた小松が鋭く加速しインゴールに飛び込んだ(34分)。

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今シーズンから導入されたテレビマッチオフィシャル(TMO)で、タッチラインへの抵触やノックオンがなかったかなどの確認が行われたがトライが成立。リコーが15−16と1点差に迫る。

逆転を懸けたCGは、タッチライン間際のかなり難しい角度となったが、FBピータースが蹴ったキックは大きな弧を描く。ポストの間を高い位置で抜けると、雨の中声援を送り続けて来たスタンドのファンの歓声が巻き起こる。17−16とリコーが逆転する(36分)。

しかし、試合はまさかの結末を迎える。神戸製鋼のキックオフのリコーの蹴り返しがタッチを割る。神戸製鋼はラインアウトをキープするとリコー陣内をモールで前進。食い止めようとするリコーFWだったが、モールは強い推進力を保つ。ここでリコーがモールを崩すコラプシングの反則。正面やや左22mラインの手前の位置から相手12番がPG成功(38分)。17−19と、神戸製鋼が土壇場でリードを奪い返した。

残り1分半、リコーはラインアウトからの最後のアタックに全てを懸けたが、競り合いで反則を犯しボールを失う。ホーンが響く中、神戸製鋼がスクラムから確実にボールをタッチに蹴り出しノーサイドのホイッスル。粘り強さを見せ勝利をつかみかけたリコーだったが、わずかな差で開幕戦勝利を逃した。7点差以内の敗戦で得られるボーナス勝ち点1は獲得している。

「敵陣に入ってプレーするという基本ができなかった。いいキックでプレッシャーをかけられ下がってしまった」(WTB小松大祐)

神鳥裕之監督

 選手たちはやれるだけの力を出してくれました。細かい精度の部分であったりが、神戸製鋼さんとの差になった。次は土曜日が試合で、準備する日数が通常より少ないので、すぐに切り替えたい。


【以上共同記者会見にて】

絶対に勝つという思いで臨んだだけに、ただ悔しいですね。トライのタイミングなど、わずかな差でこういう結果になったので。それでもよくやってくれたと思います。セットプレーで劣勢に回りながら、トライの数では上回ったわけなので。今日は勝負どころの反則。
(ハーフタイムはどんな指示を?)スクラムのポジショニングやラインアウトの工夫点の確認などですね。
(新人選手、新しい顔ぶれの出場もあったが?)皆競争を通じチャンスをつかんだ選手。大川は今日の試合はいい経験になったはず。小浜は昨シーズンもあと一歩のところまできていました。着実に成長してくれています。中村は流れを変えて欲しくて入れました。ディフェンス、アタックのテンポアップなど強みを発揮してくれた。トライにつながる働きもしました。

WTB小松大祐キャプテン

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 両チームともミスはあったと思います。ただ神戸製鋼さんはここぞという場面でしっかりスコアしていた。こちらはそういう場面でミスをしてしまった。今日のコンディションの影響もありますが、自分たちの実行力をもっと高めないとトライまでは持っていけないのかもしれない。
ただ後半はテンポのいいアタックができている場面もあった。それは自分たちがやるべきラグビーだと思うので、次戦は切り替えて、ああいった形を目指していきたい。
(相手の想定以上だった部分は?)セットプレーの質の高さは想像していた通り。うまく対応できた場面もあったけれど、ピンチのときに我慢しきれなかったとも思っています。あとはSHからのキックがうまく機能していたこと。カバーでボールをこぼしすぎて相手にチャンスを与えてしまった。(水の溜まった)グラウンドにボールをあまりつけないようにしないといけなかったんですが。カバーリングについてはコミュニケーションミスもありました。
(後半の頭から、少し停滞して見えた)敵陣に入ってプレーするという自分たちのラグビーの基本ができなかった。相手にはいいキッカーもいて、プレッシャーをかけられてどんどん下がってしまったと思います。後半はそれを感じました。
(トライにおいてはどんな状態だったのか)ディフェンスがタイトだったので、外にはスペースがあった。でもボールをもらえていなかったので「長めのパスを」と要求し、読み通りのパスが来た感じです。

【以上共同記者会見にて】

ディフェンスの部分は落ち着き出したら機能していたと思います。試合の入りからあれができるようにしたい。
アタックは敵陣中盤でボールを失うことが多かった。あそこでボールをキープできないと外を使うこともできないので、それは課題。中盤でどんなプレーをするかのオプションをもっと増やし、どれでもいけるようにしていきたい。後半のトライはその部分がうまくいったケース。今日の試合では唯一に近かったので、もっとああいうラグビーをもっとしたい。
でも今日について言えば、エリアを確実に獲り試合をうまくコントロールするという基本もできていなかったので、そこをもっと意識しないといけない。後半の最初、トライやPGでスコアされたのもそことつながってくるので。
(次戦に向けてのテーマは?)ディフェンスから流れをつくって、テンポよくボールを外に出したい。グラウンドを広く使って。セットプレーもすごく悪かったとは思っていない。修正すべきところを修正したい。

PR藤原丈宏

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 最後のラインアウト、モールを組まれて崩してしまってペナルティを獲られたのが悔しい。

(試合全体を通じては?)まだまだですね。もっといけた。でも、後半徐々に(スクラムが)組めるようになっていたのは収穫だったと思います。でも、勝って修正していかなければ。セットプレーの安定はPRからだと意識してやっていきます。

PR大川創太郎(トップリーグ初出場)

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 厳しい試合でした。勝ちきれなかったので、もっと練習しないといけない。セットプレーは、前半だんだんよくなってきていたので、ハーフタイムにはこの調子でいこうと声を掛け合っていました。公式戦はセレクションも兼ねた練習試合とは違う。相手選手のフィジカルの強さなどにそれを感じました。

SH中村正寿(トップリーグ初出場)

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(逆転された場面での初出場だったが)いつも通りやることを考えていたので、そういうことは気になりませんでした。最初の数本のパスでミスが出てしまったのは経験不足が出たかもしれない。
(今シーズンはチャンスをつかんでいる。手応えは?)「やるべきことをやる」という気持ちだけ。これまではそれができていなかったので。

CTB小浜和己(トップリーグ初先発出場)

 もっと前にプレッシャーをかけたかったけど、待ってしまった。

(コーチからの言葉は、ディフェンス面についてが多かった?)前に出てラインスピード上げていこうと。雨の影響もありましたが、ミスの多い試合だったので、次戦はそれを減らしたい。でも、これだけミスしても2点差だったことをポジティブにとらえるくらいで、これからに備えていきたい。

(文 ・ HP運営担当)

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