2013-2014 トップリーグ 1stステージ第2節 対 ヤマハ発動機ジュビロ

2013.09.10

トップリーグで勝ちきる難しさ、痛感させられるゲームに

「誰かがやるの、待ってるんじゃねえぞ!」

ウォーミングアップの最中、誰かが叫んだ。前節のコカ・コーラウエスト戦のディフェンスを修正すべく、自分たちを鼓舞する声だ。

夕刻に強い雨が降った鈴鹿スポーツガーデンだったが、19時の試合開始を前に止んだ。ほぼ無風。湿度は高いが涼しく、上々のコンディションだ。

第2節の相手はヤマハ発動機ジュビロ。トップリーグ復帰以降、リコーと順位は毎年近いが、セットプレーと試合運びの巧さに苦しめられ4年間で1勝3敗。勝利には80分を通じ、リコーのラグビーを貫く必要のある相手だと言えた。

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 ヤマハ発動機のキックオフで試合が始まる。直後、リコーのパントキックをうまく処理したヤマハ発動機が、カウンター気味にアタックを仕掛けゲインに成功する。このディフェンスでリコーがノットロールアウェイ。1分、ほぼ正面、22mラインを越えたあたりからヤマハ発動機がペナルティゴールに成功。0-3と先制する。

ここからリコーはヤマハ発動機のアタックに冷静に対応。ペナルティを出さず、逆に誘うことに成功しペースをつかむ。自陣のラックでヤマハ発動機がオーバーザトップ。タッチキックを蹴り、敵陣に侵入する。

12分、左中間15m付近のスクラムからNO.8マイケルブロード ハーストがボールを持ち出し、オープンサイドに走ったSH池田渉にパス。池田はとっさにライン裏にゴロキックを蹴る。これに反応したCTBタマティ エリソンがボールを拾い中央を縦に抜ける。右にフォローしたCTB河野好光にパスすると一直線に走りトライ。この試合のプレースキッカーを務めるFB高平拓弥がコンバージョンを決め7-3と逆転する。

リコーはさらに相手のペナルティに乗じて攻め込むと、グラウンドをワイドに使ったアタックで試合を優勢に進める。LOカウヘンガ桜エモシや、FL野口真寛が両サイドを力強くも鋭く突いていく。トライは奪えなかったが、20分に相手のハイタックルで敵陣15m付近ほぼ正面でペナルティを得ると、ゴールを決め10-3とした。

22分、相手のキックオフボールを確保しラックをつくると、その脇をSH池田が抜けてラインブレイク。ヤマハ発動機の最終ラインが目前に迫るとその頭を越えるキックを蹴り自ら拾いに走る。ボールはヤマハ発動機の手に渡ったが処理でミス。ノックオンでリコーのゴール間近のスクラムになった。

SH池田は相手のSHの開いていく動きを見極め、スクラムサイドのギャップを抜ける。そのままインゴールへ飛び込んでトライ。コンバージョンも決まり17-3とリードを広げた。

24分、リコーは自陣でキックをチャージされ、ボールがインゴールに転がるピンチを迎える。しかしこれはFB高平が素早く反応し間一髪でセーブ。さらに自陣浅めでアタックを受けたが、ディフェンスラインを素早く整え対応。前進を阻まれたヤマハ発動機が攻めあぐねる時間をつくった。

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 28分、リコーは自陣でヤマハ発動機ボールのラインアウトを迎えたが、相手のミスで列最後方のFL野口の手にボールが入る。野口は前方のスペースにキックを蹴る。LOロトアヘア ポヒヴァ大和がこれをチェイス。敵陣深くで相手BKを捕まえ、サポートした選手と共にタッチラインの外に押し出すビッグプレー。さらにリコーは一瞬の隙を突いてプレーを再開。右サイドから展開して、左サイドのWTB渡邊昌紀へボールを運ぶと、渡邊が快足を飛ばし突破。そのまま左中間に2戦連続のトライを決めた。コンバージョンも成功させ、24-3。リコーは思い切りのよさと相手のミスを突く姿勢で得点を重ねていく。

しかし、前半終盤はヤマハ発動機が意地を見せる。33分には連続攻撃からギャップを抜けて13番がトライ。前半終了間際の40分にはリコーが自陣からタッチを狙ったキックがタッチラインを割らずカウンターを浴びる。リコーにタックルミスが出てゲインを許すと、ゴール前で展開され右隅に2番がトライ。コンバージョンも成功し、前半は24-15で終えた。

最後に2トライを許したものの、前半40分でリコーのペナルティは1つと高い規律意識を見せた。

ペナルティゴールでスコア重ねられ、詰め寄られる

 そして課題の後半を迎える。開始直後、リコーは敵陣10mライン付近のラインアウトから展開。しかしパスが乱れたところにヤマハ発動機ディフェンスが襲いかかりノットリリースザボール。ペナルティキックでゴール前に攻め込まれた。

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 このピンチは相手のノックオンで逃れたが、直後キックカウンターで再び攻め込まれる。自陣左中間でディフェンスにあたるが、ラックサイドを突いたランナーを止めに行く飛び出しがわずかに早くオフサイド。7分、正面やや右、15m付近からペナルティゴールを決められて24-18。13分には粘り強いディフェンスでノックオンを誘ったが、マイボールスクラムでコラプシング。再び15m付近からペナルティゴールを決められ24-21。

リコーは前に出る姿勢を確認しあう声を掛け合うが、1回のペナルティを確実なキックでスコアにつなげられ、なかなかペースがつかめない。14分、SO徳永亮に替わりピータースダニエルがピッチへ。河野がSOに、ピータースがCTBに入った。

直後の15分、キックオフボールの争奪戦で、ヤマハ発動機がオブストラクション。リコーも敵陣浅めの位置からペナルティゴールを狙うがはずれた。17分にFL野口に替わり赤堀龍秀。赤堀はLOに、ロトアヘアがFLに入った。

20分、自陣スクラムでリコーが再びコラプシング。ヤマハ発動機が武器のスクラムで力を発揮する場面が増えだした。左中間22mライン付近からのペナルティゴールが決まり、ついに24-24。前半に築いた9点差を、ペナルティゴール3本で追いつかれる形に。

この後リコーは、ようやくアタックの形をつくる。22分、キックオフボールを左サイドのタッチライン際で獲得すると、右に展開しWTB星野将利がゲインする。そこから戻し右中間のLO赤堀にボールが渡るが、これを止めにいったヤマハ発動機にオフサイド。リコーは右中間10m付近からのペナルティゴールに成功。27-24と勝ち越した。
23分にPR藤原丈宏に替わり高橋英明が、NO.8ブロードハーストに替わりコリン ボークがピッチへ。

25分、リコーが自陣5m付近でホールディングを犯すとヤマハ発動機はまたもゴールを狙う。正面やや左の位置だったが、これははずれた。30分にCTBエリソンに替わりリキ フルーティがピッチへ。

ヤマハ発動機はラックでの反則が絶えず、リコーはこれに助けられたが、直後のラインアウトなどでミスが出て、チャンスにつなげられない。しかしなんとか敵陣に入るとキックを蹴り込み、相手のボールキャリアをディフェンスで追い込んでいく。すると33分、ヤマハ発動機は自陣22mライン付近のラックでオーバーザトップ。ほぼ正面のペナルティゴールを決めたリコーは30-24と点差を広げた。

主導権を失いつつも、リードを守り迎えた最終盤

 残り時間は7分、このまま試合が終わることはなかった。

直後のキックオフボールの処理でリコーにノックオン。自陣浅めのスクラムはヤマハ発動機に押され、またもやコラプシング。後半初めてトライを狙う姿勢を見せたヤマハ発動機は、ゴール前にタッチキックを蹴り、左サイドのラインアウトから攻める。

36分、ボールを回し近場を突くと12番が左中間に飛び込む。アシスタントレフリーへの確認が行われ、トライを認めるホイッスル。これで30-29。

逆転のかかったコンバージョンを蹴る15番に、リコーは激しくプレッシャーをかける。だが左サイドから高く上がったボールはコントロールされバーを越える。2点を追加され30-31。ヤマハ発動機が逆転した。

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 残り時間は約2分。キックオフボールはヤマハ発動機が獲得。これを奪い返せないままホーンが鳴り、タッチに蹴り出されノーサイド。メインスタンド、バックスタンド双方からの大きな声援を受け戦い続けたリコーだったが、最後に逆転を許す歯がゆい敗戦。また7点差以内の敗戦で得られるボーナスポイントは獲ったが、4トライのボーナスポイントは逃した。

「最後の最後で勝ちきるチームにならねば。金曜日もチャレンジする」(神鳥裕之監督)

神鳥裕之監督

「アウェーの試合に、たくさんの方々に応援に来ていただき感謝しています。勝ちきれなかった先週の試合の内容を修正して臨もうと準備してきました。それが前半リードを奪いながら、後半ヤマハさんに粘り強い攻撃に最終的に逆転されてしまった。
悔しいけれど、これが実力だと思うしかないです。先週と比べれば幾分レベルが上がってきたという手ごたえはあります。でもやっぱり最後に勝ちきれない。それは今のチームの弱さだと思います。
ここを勝ちきれないと、トップリーグで上に上がっていけない。それを痛感しています。選手たちはよくやってくれている。チーム全体の課題として、選手だけじゃなくて、自分も含めて、最後の最後で勝ちきるチームになっていかなければいけない。金曜日(キヤノンイーグルス戦)はいいチャレンジにします」

ゲームキャプテン・FL野口真寛

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「前半の中盤以降、それから後半の立ち上がりからリコーのラグビーができなかったということ。反則を重ねてしまって、ペナルティゴールから失点を重ねてしまったこと。それに尽きると思います。必ず修正して次に向かいたいと思います。
(後半、スクラムで押されるようになったように見えたが、圧力が変わったようには感じたか?)それは感じていないです」

PR長江有祐

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「前半はリコーらしさを出せた場面がありました。自分のスクラムも悪くはなかった。(前半の)疲れてきた時間帯、それから後半はスタートから流れをもっていかれてしまいました。後半は自分のスクラムもよくなかった。(ディフェンスでは集中力を感じたが?)そう思います。ただ、ディフェンスに回る局面は、僕らのミスから始まっていたことが多かった。それはよくなかった。
あとトライ1つでボーナスポイントが獲れる状況だったのに獲りきれなかったのも残念です。やりたいラグビーがやれている時間帯とやれていない時間帯がある。次は勝たないとあとがない。できるだけはやくリカバリーして備えたい。結果を出したいです。」

LOカウヘンガ桜エモシ

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「後半、アタックする時間をあまりつくれなかったのが残念。次のキヤノン戦は気持ちを切り替えて戦う。楽しい試合にする」

FL森谷和博(トップリーグ初出場)

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「勝ちたかったです。緊張するほうではないので、ヤマハを想定してこの1週間練習してきたことを、その通りにやろうと。(ヤマハはイメージ通り?)はい。驚いて対処に困るような部分はありませんでした。最後の最後でマイボールをキープできれば。セットプレー、特にスクラムで反則を獲られたり、ターンオーバーされたりしたけれど、そこが改善できれば、違う結果が出ていたと思います。“たられば”ですが。
今日はコーチから『コミュニケーションをとってFWを引っ張れ』と言われていたので、意識的に声をたくさん掛けるようにしました。タックルミスはいくつかあったけれど、自分のいいところも出せたかなとは思います」

SH池田渉

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「キックでゴールを狙うところ、トライを獲りにいくところ、その判断をキッカーとゲームキャプテンに任せきりにしてしまった。もう少し自分から相談に乗ってもよかったかもしれない。
課題は後半。何が悪いってわけじゃない。自分たちも気を抜いているわけではないんですが、もう一度フラットな、0-0の状態から入るんだっていう。それを口にはしているけれど実行力がともなっていない。そういう試合を2試合続けてしまった。
でも、本当に弱いチームだったら、こういう試合で勝ち点も獲れないぐらいの点差をつけられて負ける。(相手にペースを渡しながらも)食らいついているというところは成長だと思います。
1人ひとりのタックルは去年より良くなっていると思う。でも横とのリンクがうまくいかないケースがたまにある。80分間ずっと自分たちのペースで試合をするのは無理。うまくいかない時間に、自分たちのペースを取り戻すプレーができるか。特にディフェンスでいいプレーすることは大事。チームが乗っていけるんです。
グラウンドに立つ23人の実行力次第だと思います。春から厳しい練習をしてきて、自分たちのディフェンスは自信を持っていいレベルにある。ただ、全選手がそれを信じきれていないことが、試合結果のわずかな差として表れている気がします。次は自分たちの力を出したいと思います」

WTB渡邊昌紀

「やっぱり後半が課題だと率直に思います。相手のペースに合わせてしまって、押されてしまう。ボーナスポイントも獲れるところで落としてしまったのも残念です。でも、今日のことを言っていてもしょうがない。切り替えていきます」

 計ったかのように1点差で上回られ、ノーサイドを迎えたこの日の試合。第1節のコカ・コーラウエスト戦と同じ展開の試合だったのは間違いないが、随所で選手たちの修正への思いが伝わってきたのも事実だ。

後半、押されながらも、ディフェンスラインのセットをひたすら繰り返し、ギャップを抜けたかと思われたランナーのジャージに手を伸ばし、間一髪で止めていくプレーには、うまくいかない中でも必死にあがく選手たちの思いが見てとれた。結果は厳しいものとなったが、情熱は伝わってきた。

第3節キヤノンイーグルス戦は9月13日(金)19時から、秩父宮ラグビー場に戻って行われる。東芝ブレイブルーパス、パナソニックワイルドナイツを相手に好ゲームを続けている相手に、リコーはどんなチャレンジを見せるのか。はやくも1stステージの山場と言える試合がやってきた。


(文 ・ HP運営担当)

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