2011-2012 トップリーグ 第1節 対 福岡サニックスブルース

2011.11.02

開幕前日も「いつも通り」。 地に足をつけて普段着通りに準備したリコー

 ジャパンラグビートップリーグ 2011-2012の開幕戦を翌日に控えた10月28日。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)のキャプテンズランは、「いつも通り」という言葉がふさわしい、明るくリラックスしたムードの中で行われた。

15時から1時間弱の練習のいつもとの違いをしいて探せば、初戦の相手福岡サニックスブルース(サニックス)のアタックを想定したディフェンスの確認を15分程行ったことぐらい。あとは22日に合流したジェームス・ハスケルの求めに選手たちが応じ、全体練習後にサインプレーの確認をしただけ。

「今日の練習はいい雰囲気でできたと思います。(あとはやるだけ?)そうですね」
山品博嗣監督の表情もやわらかく、やはり、いつものように全体練習後もグラウンドに残り、個別で練習を行う選手の様子を見守る。

この落ち着いた雰囲気に、昨シーズン終了時、日本を離れる前にスティーブン・ラーカムが残した言葉を思い出した。
「この3年間のチームの変化で、一番大きいのは『どんなプレーをしたら勝てるのか』という理解が進み、選手たちが自信を持ってプレーするようになったこと。ラグビーにおいての自信は、最も大切なもののひとつ」

「いつも通り」が、リコーが培ってきた自信。これに基づくものだったことは、翌日の本番の披露で明らかになった。

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 快晴の秩父宮ラグビー場に、サニックスのキックでボールが弧を描き、試合が始まる。リコー陣内になだれこんだサニックスは、持ち味の「全員でグラウンドを駆けめぐり、ボールを自在に回す」ラグビーをいきなりみせる。このアタックを受けに回りリコーは接点でプレッシャーをかけられず、サニックスにスムーズな球出しを許した。テンポよくボールを回し、ぐんぐんスピードを上げるサニックスが、縦横無尽にアタックを仕掛けてくる。

11分、22mラインの内側に入ると、正面から展開。左ウイングで勝負を仕掛けたかと思うと、13番がディフェンスをかわしながら内に向かって駆け込む。ゴール正面付近で1番にパスすると縦に抜けインゴールエリアへ。サニックスが先制のトライを決める。コンバージョンも成功し0対7。

リコーはFL金栄釱のジャッカルでターンオーバー。CTB山藤史也が右中間でラインブレイクを狙うと、タックルで持ち上げてしまったサニックスにペナルティ。SH池田渉が右サイドへ蹴り出し、リコーがラインアウトから攻撃。ボールをキープしながら攻撃を重ねサニックスゴールに迫る。

15分、CTB山藤が今度は左中間を鋭く突きゴール直前、5mラインまでゲインする。倒されたが、タックル後、のしかかったままどかなかったサニックスの選手にペナルティ。笛が吹かれると、すぐさまボールをタップしたLOカウヘンガ桜エモシが、ボールを左隅インゴールに運びトライ。角度のあるコンバージョンもFB河野好光が決めて7対7と同点に追いつく。

リコー怒濤の4連続トライ

 サニックスは再びリコー陣内に攻め込むが、序盤は少し混乱の見られたリコーのディフェンスも落ち着き、タックルもヒットし始める。

23分、リコー陣内でアタックを続けるサニックスがこぼしたボールをSOタマティ・エリソンが拾ってキック。ボールはタッチを割らず、サニックス15番がパントキックを蹴り返す。これをSH池田がキャッチし、ここからリコーがアタック。接点で優勢を保ちながら、素早く球出ししFB河野、FL柳川大樹、HO滝澤佳之、NO.8マイケル・ブロードハーストが右サイドで繰り返し突破を図り、ゲインラインを前進させていく。

サニックス陣内中央10mライン付近で、SH池田が左に走り込んだSOエリソンにパス。エリソンはステップを刻みディフェンダーをまとめて3人抜くと一気に加速する。中央から左中間に向かうランコースで一気に走り抜け、最後は追いすがるバックスを引きずりながらインゴールに手を伸ばす。勝ち越しのトライが決まり12対7。コンバージョンも成功し14対7とする。

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 28分、リコーは自陣のスクラムから、NO.8ブロードハーストがボールを出し、SH池田がランニングパスで、ラインを深めにとったバックスに展開する。スピードに乗った大外のWTBロイ・キニキニラウが右サイドタッチライン際でラインブレイクし、相手選手をハンドオフしながら一気にゲイン。22mライン付近で、その内側をフォローして走ったFB河野にボールを戻すパスで、最後尾のディフェンダーをかわすと河野が右中間へトライ。コンバージョンも決まり21対7とする。

36分、リコーは敵陣10mライン付近で得たペナルティでゴールを狙うがこれが左にそれる。ゴールライン手前でキャッチしたサニックスはタッチに蹴り出し、左サイドサニックス陣内10mライン付近でリコーがラインアウトを得る。

確実にキープし、リコーがアタック。パスに乱れも出たが素早い反応で処理しボールをキープする。粘り強く攻め、15回ほどフェイズを重ねるとついにWTB小松大祐が左サイドを瞬時に突破。

38分、その外を走ったLOカウヘンガがラストパスを受けると、インゴールエリアで回り込みゴール左にこの日2つ目のトライ。コンバージョンも決めて28対7。リコーがあっという間に4トライを重ね、ボーナスポイントを獲得。ホーンが鳴りハーフタイムに。

サニックスの激しい追い上げ受けるも、冷静さ保つ

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 後半もリコーの闘志・気迫が上まわりペースが続く。LOカウヘンガの縦の突破などでサニックス陣内に侵入し何度もチャンスをつくった。もう一歩のところまで詰めるが、トライに至らない。そうこうしているうちに試合の流れはサニックスに移る。後半3分、3選手を一度に交代し、さらに流れを手中にしたサニックスが攻勢に出る。リコーも10分にFL金に替えて覺來弦を送る。

11分、サニックス陣内10mライン付近で攻めあぐねるリコーからジャッカルでボールを奪ったサニックス。ショートサイドに展開し、15番にライン裏へのグラバーキックを許し、これがリコー選手の足に当たり跳ね返る。ボールをダイレクトで蹴り返し、これが今度は狙い通りライン裏へ。15番がボールに自ら追いつくとすばやくとって走る。ゴール手前で内をフォローした10番にパスを通し、中央にトライ。WTB小松とFL柳川が追いつき、ゴールライン上でグラウンディング阻止を試みたが惜しくも届かず。コンバージョンも決まり28対14。リコーはこのタイミングでHO滝澤と森 雄基が交代。

16分、勢いづくサニックスはリコーの自陣からのキックがダイレクトタッチとなるミスで陣地を稼ぐと、鋭いアタックを繰り返し22mラインの内側へ。そして右サイドを15番が個人技で突破し、右中間にトライ。コンバージョンも決まり28対21。

リコーはFB河野と小吹祐介が交代。サニックスはさらに攻勢をかけ、個人技を生かした外国人選手が突破を繰り返す。

24分、サニックスは15番が自陣からカウンターアタック。これを起点に、12番がリコーディフェンスのギャップを縫って走りゲインラインを突破。外をフォローしていた1番にパスし、走り抜いて右隅にトライ。コンバージョンは外れたが28対26と2点差に迫った。

リコーはNO.8ブロードハーストに替えてジェームス・ハスケル、PR長江有祐に替えて柴田和宏を投入する。

2点差に迫られたが、終始冷静さを失わず。備わった、ここぞの「勝負強さ」。

 もつれた残り15分をリコーは冷静に闘った。LOカウヘンガ、SOエリソンらのゲインで敵陣に侵入すると、左中間22mラインを越えたあたりのラックでサニックスが倒れ込みのペナルティ。リコーはCTB金澤良がゴールを慎重に決め29分に待望の追加点。31対26とする。

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 31分にリコーの今シーズンの成長がみられた。LOカウヘンガのゲインで右中間10mライン付近まで進むと、即展開し、左サイドをWTB小松が突きポイントをつくる。FL柳川が左中間を縦に抜けさらに前進し、SH池田から、SOエリソンにパスを通す。エリソンはギャップをまっすぐ縦に抜け、インゴールエリアに一直線。手を伸ばしグラウンディング。エリソンは天を指差しトライをアピールし、直後、レフェリーがトライの笛を吹いた。コンバージョンは外れたが、リコーは欲しかったトライをあげ36対26とリードを10点に拡げた。

リコーは残り5分を切ったあたりから、フォワードがラックを形成。マイボールをキープし、ゲームをコントロールする。ペナルティが許されない状況だったが冷静にマイボールを保ってホーン。SH池田がボールを拾ってタッチライン外にキックし、ノーサイド。

リコーはトップリーグ2011-2012開幕戦を36対26で快勝。苦しみながらも勝ちきり、ボーナスポイント1を加算。勝ち点5を獲得した。マンオブザマッチは縦の突進を繰り返し2つのトライを挙げたLOカウヘンガ桜エモシが選ばれた。

「キックの使い方がよくなかった。もう少し試合を切りながらプレーするべきでした。ブレイクダウンでもう少しプレッシャーをかけられたら、ワイドワイドなアタックに対し、いいディフェンスができたと思います。それでも『ペナルティを出さずにチャンスを待つ』『サニックスが持ち味を出してきても落ち着いてディフェンスする』というテーマについては実行できたと思います」
山品監督は試合後の記者会見で「フィットネスに自信を持つ相手が望む展開にしてしまったこと」「ボールを回してくる相手に、その自由度を下げるプレッシャーをかけられなかったこと」を課題としてあげた。一方、身体を張ったディフェンスそのものについては評価した。

終盤、キャプテンのHO滝澤が退き、追い上げられピンチを迎えるという状況が生まれた。そこから持ち直した姿には昨シーズンからのチームの成長を感じた。

バイスキャプテンの河野が状況を話す。
「流れが悪くなると、個人個人が言いたいこと言い出すんですよ。だから『次にやることだけを決めてそこに集中しよう』と試合前に決めました。滝澤さんが退いた直後にはそれを確認しました。その後は、僕も抜けたので、ちょっと状況はわからないんですけど」

パニックにならなかったこと以外にも、手応えを感じる部分はあったという。
「最後、ボールをキープして時間を使うのも事前に練習していたんですが、フォワードが反則せずにうまくやってくれました。チームの成長はいろいろなところで感じます。特に、ディシプリン(規律)のような個人の意識の変化によって変わるような部分ですね。これまで口酸っぱく言われ続けてきたことが、チーム全体が変わるレベルに達してきたんだと思う」

次節は11月5日(土)12時からの秩父宮開幕3連戦の第2戦、ヤマハ発動機ジュビロ戦。互いに新監督が率い、初戦に大勝し勢いのあるチーム。昨シーズン最終節・花園で、終盤もつれクロスゲームを演じたのも記憶に新しい。激戦は必至。トップ4への挑戦権を得るための第一関門として勝たないといけない相手だ。普段着通り、リコーの「スピードラグビー」で、さらなる選手個々の成長に期待したい。

(文 ・ HP運営担当)

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