2009-2010 トップリーグ 対 近鉄ライナーズ

2009.12.03

 トップリーグ(TL)1ヵ月の休止期間"ウインドウマンス"明けの後半戦最初のゲーム、近鉄ライナーズ戦を2日後に控えた11月27日の午後。リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)は、東京世田谷のリコー総合グラウンドで最後の調整を繰り返していた。15時に始まったトレーニングは、多摩川の向こうに夕日が沈みきっても終わらない。ブレイクダウンからのアップテンポな攻撃やゴールライン間際でのディフェンスなど、シチュエーションを明確にイメージした実戦的な練習が続いていた。

「基本的には、これまでやってきたことを磨き上げる作業ですね。フィットネスやコンディションのトレーニングを中心に、試合を通じて集中力を持ってプレーして、自分たちのスタンダードを発揮するための準備をしてきました」
練習を終えたゲームキャプテン・SH池田渉は、この1ヵ月チームとしてやってきたことをそう説明する。

「僕たちの目標はあくまで日本選手権出場。明後日のゲームは順位の近い近鉄が相手だし、とても重要です。チームはいい雰囲気ですよ。今日は気持ちが前に出過ぎることによるミスも見かけたけど、やる気の表れでもあると思うし、まあしょうがないかなと」
トレーニングの手応えか、キャプテンの表情には自信がみなぎっていた。

翌日、チームは大阪へ移動した。

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 バックスタンド越しに見える、生駒山の紅葉が美しい近鉄花園ラグビー場。曇り空で肌寒いが、6500人を超える観衆が集ったスタンドには熱気が漂っていた。

14:00、CTB金澤良のキックで試合が始まった。リコーラグビー部は相手陣内に駆け込むと、アグレッシブに当たり前進を阻む。今日の試合への意気込みを強く感じるスタートだ。3分にオフサイドを取られると近鉄が大きくキック。ボールはリコーラグビー部陣内へ。22mライン付近左サイドのラインアウトから近鉄は攻撃を仕掛けるとゴール正面でラックを形成。そこからボールを展開すると右サイドを破って4分、トライを決める。コンバージョンも決まって0対7とリコーラグビー部は先制を許した。8分には再び22m付近左サイドのラインアウトからモールで押され、反則を取られる。近鉄は正面やや左の位置からペナルティゴールを狙うが外れた。

リコーラグビー部は、何度か攻め込まれはしたが試合の流れを相手に渡すことなく、落ち着いたプレーを繰り返した。12分、10mライン付近左サイドのスクラムからボールを素早く展開させるとFBスティーブン・ラーカム、SO河野好光、CTB金澤とつなぎ右サイドを突く。22mライン付近までゲインに成功した金澤は、ライン際に走り込んでいたWTB小吹祐介にパス。小吹はインゴール目掛けて俊足を飛ばし、右中間へトライ。今シーズン度々見せてきたリコーラグビー部のひとつの"型"をこの日も見せた。コンバージョンも決まって7対7の同点とする。

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 14分には、自陣右サイド22mライン付近でリコーラグビー部が反則。近鉄はペナルティゴールを狙うが外す。18分には近鉄が自陣22mライン付近からハーフウエイラインまでモールで押すなど、リコーラグビー部は相手FWの圧力に手を焼きながらもうまく逸らし、一進一退の攻防を続けた。

22分、リコーラグビー部が均衡を破る。敵陣右サイド10mライン付近のラックからSH池田はFBラーカムへボールを出す。ラーカムは相手を引きつけきってから右サイドに駆け込んだSO河野へパス。そのまま河野が抜けて右隅へトライ。コンバージョンは外れたが12対7とリコーラグビー部がリードを奪う。26分には10mライン正面の位置で得たペナルティでゴールに成功。15対7とした。

流れが変わったのは30分。FLピーティー・フェレラが反則の繰り返しで一時的退出を受け、近鉄が攻めたてる。リコーラグビー部は自陣22mラインの内側でディフェンスに追われた。インゴールエリアでボールを処理する場面もあったが、冷静にがまん強く相手の猛攻をしのぎきる。「集中力を維持してリコーラグビー部のスタンダードを見せたい」。試合を前にゲームキャプテン池田が掲げたテーマを、リコーラグビー部は見事に体現していた。

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 後半が始まると、リコーラグビー部は相手の反則に乗じ敵陣に攻め込む。

9分、22m手前でスクラムサイドをSO河野が突破、ゴロキックを放つがこれが相手に当たって跳ね返り、ボールはリコーラグビー部のライン裏に転がる。カウンターを浴びかけたが、オフサイドの判定が下り事なきを得た。左中間30m付近からリコーラグビー部はペナルティゴールを狙うがこれは外れた。

15分、自陣中央付近でのラックのこぼれ球が近鉄側に転がると、SH池田がすかさずキック。小さく浮かせたボールを自らキャッチするとそのまま50mを独走。ポスト左脇に飛び込みトライ。コンバージョンも決まり22対7とする。

その後は再び互いに持ち味を発揮し攻撃を仕掛けていく。キックは最小限にとどめ、ボールを回して攻め合う攻防にスタンドの応援が沸き立つ。

28分、リコーラグビー部が自陣左サイド20m付近で反則。近鉄は素早いリスタートでラインを突破し5番がゴール中央にトライ。コンバージョンも決めて22対14と差を縮めた。

31分、リコーラグビー部は敵陣右サイド22mライン手前で得たペナルティでゴールを狙うも外す。続く33分には左サイドほぼ同距離で再びペナルティを得ると、もう一度ゴールを狙い今度は成功。貴重な追加点を得て25対14とリードを広げる。

あきらめることなく攻める近鉄は、22mエリアに侵入すると36分、左中間のラックから展開。粘り強くボールをつなぎ、最後は途中出場の22番(FB)が右隅へトライして25対19に。決まれば1トライで逆転する点差となる大事なコンバージョンにスタンドは静まりかえったが、左へと大きく逸れた。

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 残り3分。いまだ1トライ1ゴールでひっくり返る6点差。近鉄はさらに攻め込み、リコーラグビー部は前半のラスト10分同様、集中力を切らさず持ち前のディフェンスを繰り返す。数十秒がなかなか経過しない感覚にとらわれたが、ゴール前でラック戦が続き、40分経過を告げるホーン。近鉄はラストワンプレーにかけたが、ここでレフェリーが大きくジェスチャー。近鉄にオーバー・ザ・トップの反則。SH池田がボールを外に大きく蹴り出すと同時にホイッスルが花園ラグビー場に響きわたりノーサイド。終盤の試練を耐えきった選手たちは空に向かって何度も大きく手を突き上げた。

 試合後、この日のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたゲームキャプテン・SH池田は言う。
「今日は、厳しい試合になることはわかっていました。でもコンディションには自信があったので、勝利を確信していました。ディフェンス、特にラックではハードに当たっていけていたので、ハートの部分で全員が同じ方向を向けていたなと」

見応えある終盤の攻防では、勝利に対する自信に加え、22m付近のやや角度のある位置からペナルティゴールを2度狙う(1本目は失敗、2本目は成功)など、冷静に戦況を見つめていた様子もうかがえ、結果的にはその判断が僅差での勝利を引き寄せた。まさに、キャプテン池田ここに在りと思わせるゲームだった。
しかし、キャプテンの自信に満ちた言葉は、信頼に足りうる仲間の存在があったから。一丸となったリコーラグビー部は、TL後半戦の残り5試合でチームスローガン"TAFU"を形にしてみせようと全力を傾ける。

次戦は12月5日(土曜日)13:00から会場を北九州市立本城陸上競技場に移してのコカ・コーラウエストレッドスパークス戦。リコーラグビー部にとっては、今シーズンのTLでは初の九州でのゲーム。日本選手権出場という目標に向けて突き進む、リコーラグビー部全員の想いと勢いを九州でも発揮して欲しい。

(文 ・ HP運営担当)

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