Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

2009-2010 網走合宿総括レポート

2009.08.21

「網走ですか? とても気に入っていますよ。でも、最近少し暑いですね。どうなっているのかな? ブラックのジャージだと(熱を吸収するから)大変です(笑)」

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 恒例の夏合宿を北海道・網走市で行なうリコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を率いるトッド・ローデンヘッドコーチ(HC)は、笑顔で話した。合宿も終盤を迎えた11日のことである。困難にあっても、そうでなくとも、明るく前向きな言葉を発するローデンHCではあるが、この日はいっそうフランクだ。チームの充実を感じているのだろうか。

「かなりハードなトレーニングを課しました。去年よりもきついと思うんですが、選手のフィットネスレベルは上がっており、耐えられるようになっています。みんなポジティブにこなしていますよ」

合宿は順調に進んだようである。

8月1日~12日まで、延べ12日間の夏合宿は2部構成で行なわれた。1日から5日までがトレーニング、5日から12日はゲームにフォーカスした練習が中心となった。

「正直きつかったです」
「高校のときの夏合宿を思い出しました」
「練習して、戻って食事して、すぐ出発。ラグビーしてるなあって」

選手からそんな声が多く聞こえてきたのが前半のトレーニング中心の期間。なかでも早朝、午前、午後と3度練習するいわゆる「3部練」が実施された日は、なかなか過酷だったようだ。

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 早朝の練習は7時から。だが、グラウンドのある網走トレーニングフィールドまでは徒歩で移動する。宿舎からは40分から50分を要するため、出発は朝6時。当然起床は5時台となる。そこで1時間ほど練習し、宿舎へ戻って朝食。10時にはグラウンドに舞い戻り、再び練習。昼食の後は、15時から午後の練習が始まり17時過ぎまで続く。宿舎に戻ると、夕食後にはミーティングが待っている。まさに"朝から晩まで""ラグビー漬け"である。

1日に到着、2、3日がこの「3部練」、4日が早朝練習を除いた「2部練」、5日は再び「3部練」。6日がオフ、7日は翌日の試合に備えてやや軽めだったというが、合宿の序盤、選手は相当にタフさを求められた。

また、この期間には韓国延世大学、昨季トップリーグ(TL)8位のトヨタ自動車ヴェルブリッツとの合同練習も行なわれた。

「でも、疲れてても、やれるチームになってきましたよね」
と、クラブキャプテンのWTB小吹祐介。春からのトレーニングで鍛え上げたフィットネス、それをベースに芽生えつつある選手個々の自信が、厳しい練習が続いても好ましい"Attitude"を保ち、チームにネガティブな空気が生まれる気配はなかったという。

確かに、前述した選手たちの感想には必ず、「でも、充実してました」という言葉と、満足感溢れる頼もしい表情がセットになっていた。

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 8日は15時から、コカ・コーラウエストレッドスパークスとの練習試合が行なわれた。約1ヵ月ぶりとなる試合にリコーラグビー部は12対21で敗れ苦汁を飲んだ。チームのリーダーたちはこう振り返る。

「自分たちのペースで試合をコントロールできず、その状況をうまく修正できなかった」(LO田沼広之)
「試合への気持ちの持っていきかたに失敗していたと思う」(WTB小吹)
「ゲームから離れていた影響が大きい」(SH池田渉)

久々であり、またトレーニング中心の合宿前半を終えたばかりの試合。コンディション的には難しい条件とはいえ、今季TLで競い合う相手とのゲームでの敗戦は痛かった。しかし、この試合は12日間にわたる合宿のアクセントになったようである。

「その日の夜に行なわれた全体ミーティングは通常のものだったんですけど、その後、ポジションごとのミーティングが選手主導で自然と始まりました。コミュニケーションの取り方や、この陣地ではこういったことをやっていこうというプレーの確認とか。具体的な話をしました。修正のきっかけになったと思う」(SH池田)

 合宿後半の9日、10日は、戦術理解や試合を意識した練習が始まった。

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「実際に身体を動かして、頭と身体の両方で戦術を理解する練習」(SH池田)は、春から継続して取り組んできた戦術を、より深くチームに浸透させることを目指したもの。今季のリコーラグビー部は新メンバーも多く、戦術理解は選手間でかなり差があったが、ここにきてだいぶその差は縮まってきたという。
チーム内の戦術理解のレベルの統一が進んできたことを受け、次段階への取り組みも見られた。
「(TLの)13試合、ずっと同じメンバーで闘えることはまずない。誰が出場していても同じパフォーマンスが発揮できるようにしないといけない。このメンバーだったらできるけど、このメンバーではできないというプレーを無くしていこうと。いろいろな選手の組み合わせを試しながら、選手ごとのスキルや身長の違いに合わせて周囲が調整する力をつける応用段階に入っている」(LO田沼)
単なる戦術理解の先にある、本質的な――リーグ戦を勝ち抜いていくのに必要な――チーム力。これを高め、「ここ数年のリコーラグビー部の課題」(LO田沼)だという試合によるパフォーマンスの波を小さくしていく。TL開幕に向け臨戦態勢に入ったことを感じさせる取り組みだ。

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 戦術理解の深まりについては、11日の横河武蔵野戦と、12日のNTTコミュニケーションズ戦でも明らかに感じ取れた。試合結果(50対14、47対12でともに勝利)は言うに及ばず、グラウンドから聞こえてくる声とその内容にもよく表れていた。
一時期は一定のポジションの選手が、全体に対し声をかけてチームを盛り上げていく、という状況が多かったが、この2試合ではポジションを問わず、グラウンドのあらゆるエリアから声が飛んでいた。その内容も、自分の位置から感知した情報をチーム全体へ伝えるものだったり、さらにはそれに基づいた提案を行うものだった。単なる"景気づけ"ではない。
「選手がそれぞれ『今やるべきこと』がわかってるから、そうなっているんだと思う。今はこうだったから、次はこういうトライをしてみようとか、そういうことをいろいろな選手が話すようになっていますよね」(SH池田)
「トッドもよく言うんだけど、ただ頑張るのではなく、どう頑張るかが大事。しっかり肩を合わせてタックルしようとか、タックルしてブレイクダウンができたときに2人目は早く相手とのスペースを奪おうとか、その時々で必要な具体的な頑張り方がみんなイメージできている。それが声になっている」(FL後藤慶悟)
これらの試合についてローデンHCは、「合宿後半のこの時期としては、フィットネスもあってよかった。でもまだ実行レベルという点ではもう少しいけるかな」と、一定の評価をしながら、目下の最大のテーマである、備わったフィットネスを試合での戦術・テーマに沿ったプレーに活かせているかどうか=実行レベルについては、さらに高い目標を課す。

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「でも、こういう場所に来て練習するというのは、集中できていいですね。砧に戻って、ここでやってきたことを形にしていきます。コンディショニングは引き続き行なっていきますが、併せて戦略的なことも強化していき、実行レベルを高めていきます」(ローデンHC)
今回の合宿の満足度は「75点」とのこと。チームの現在地点については未だ「10のうちの5ぐらい」と表現する、TLの厳しさを念頭に置く指揮官の評価手法を考えれば、まずまずの点数といっていいのかもしれない。
9月5日、17時。残暑。迫る夕闇――。秩父宮で幕を開けるリコーラグビー部の挑戦の時が近づいてきている。しかし、臆することはまったくない。準備は着々と進んでいる。
北の大地に似つかわしくない、鋭い日差しに日焼けしたメンバーたちの表情を見れば、それは一目瞭然であるはずだ。

(文 ・ HP運営担当)

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