Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

2008-2009 日本選手権 対 三洋電機ワイルドナイツ

2009.02.22

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 リコーブラックラムズは優勝候補を相手に勝ち続けている人たちの文化を見た。その事実を今後、活かしたい。

時間が経つにつれ雨脚が強まる大阪、近鉄花園ラグビー場のスタンドに、4132人が集った。2009年2月22日、日本選手権準決勝。当日に向け、トッド・ローデンHC曰く「いつもと違う1週間」を過ごしたトップチャレンジ1位のリコーは、前回王者で今季トップリーグ(TL)2位の三洋電機ワイルドナイツに思い通りのラグビーを展開され、敗れる。スコアは3対59。準決勝の得点、得点差の記録を作ってしまった。

"attitude"を旗印のひとつにしたチームは、シーズンを終えた。

先週。15日、TL5位NECグリーンロケッツとの選手権2回戦。ブレイクダウン(ボール争奪局面)の守備に焦点を絞り、24対23で勝つ。この影響か。砧グラウンドでの練習に、以前は滅多に現れなかった新聞記者も訪れるようになった。「ベスト4の実感はない。でも、周りが賑やかになりましたよね」と、HO滝澤佳之も言う。自身も試合後、いつも以上のメールを受け取った。

18日。集まったジャーナリストたちを前に、ローデンは言う。

「三洋は本当にすばらしいチーム。優勝候補だし、この前(NEC戦)のような(僅差で勝利する)すごいゲームか、60点差くらいでやられるか・・・。絶対に自信があるとは言わないが、みんなを信頼している」

当日への準備には変化があった。先発組にLO遠藤哲がトップイースト(TE)開幕以降、初めて加わる。ローデンHCに前半途中までの起用を示された。

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 ゲーム主将は、SH池田 渉が指名された。ここまで2試合連続で務めていた滝澤のポジションはFWの最前線だ。日本代表のNO8ホラニ・龍コリニアシら、強力FWを揃える三洋相手が相手に、「滝澤には自分のラグビーに集中して欲しい」と、指揮官は考えたのだ。

池田は奇しくも昨季まで敵チームに在籍していた。どうしても"因縁"を書きたがるメディアを前に、しかし、自分の言葉を発した。

――古巣に見返したい気持ちはありますか。

「特にそういう気持ちはないです。相手はみんな、よく知っているメンバー。教えられることを教えて、やれることをやって、勝利というより、試合が終わった後に納得できるか、ですね」

が、試合後の会見。こう口にせざるを得なかった。

「我々のスタンダードを出せなかった。その辺が悔やまれる」

キックオフ。リコーは前半4分にPGで先制点を挙げ、相手ランナーに守備網を破られてもFBスティーブン・ラーカムがカバーしたが、11分、勝ち越される。以降は三洋のペースに巻き込まれた。計9トライを喫す。

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 三洋はラグビーをトータルで考えた。飯島均監督は分析する。「リコーは(ブレイクダウンに)人が寄る(複数集まる)」と。NECがその「寄った」地点に勝負を仕掛けたのに対し、「寄った」一方でできる「空いているところ」を攻めた。

11分の得点はその例か。リコーの選手がブレイクダウン付近に集まるなか、SO入江順和が左に空いたスペースへキックパス。受け手のWTB三宅敬はタックラーを引きつけ、折り返す。最後はCTB霜村誠一がゴールラインに飛び込んだ。

三洋は16、28、34分にもトライラインを破る。38分にも、リコー陣ゴール前20メートル地点のラインアウトから、SH田中史朗がそのままボールを持ち出す。守備の「空いているところ」をすり抜け、ゴールエリア中央に飛び込んだ。

「三洋をリスペクトしすぎた」

リコー側の反省について、池田は言った。常勝集団のよる無言の圧力を、無意識のうちに受けていたという。ローデンHCも振り返る。「どんな時でも安定し、ベストの力を出す姿勢」という意が込められたキーワードを用いて、「今日は"attitude"が足りなかった」と。

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 三洋は、リコーの分析と同時に、「私たちのラグビーを完遂しようと確認した」と飯島監督は言う。具体的には、基本プレーを繰り返した。結果、見方によっては「下部リーグのチーム相手に敗れるか?」という危険もはらんでいた日本選手権準決勝で、CTB榎本淳平曰く「自分たちのラグビーを100%できた」。基本プレーを繰り返し、その時々の「空いているところを攻める」という自らのラグビーを、大舞台でもぶれずに通したのだ。後半も基本プレーを積み重ね、「空いているところ」を攻め落とす。3、6、20分とトライを決めた。

リコーは、残り時間20分前後から次々と選手を入れ替える。20分、CTBとFLを務めたジョエル・ウィルソンに替えてLO井上隆行を、23分、ラーカムに替えてWTB瓜生靖治をそれぞれ投入。ローデンHCは日本人だけの布陣を作った。

「主張したいことがあった。『選手全員をしっかり信頼している』と。最後の20分は(28分にトライを奪われたが)いい戦いができたと思います」

来季へ向けて。今季最終戦、リコーは大敗したが、収穫も得た。

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 TLを闘うために必要な課題をつかんだ。

――「日本選手権は選手のもの」と言っていた指揮官から見て、この試合で選手は何を学んだと思いますか。

答えのひとつに、ローデンHCは「やはり"attitude"がすべて」と挙げる。自分たちの力を出し切れず、逆に相手の思い通りになった敗けから再確認した。練習で積み重ねた成果を、疲弊しきった状態でも、大舞台でも表現しきることが大切、と。

その意味では、昇格を前に、TL上位陣との真剣勝負を2つ経験したことは大きい。そう、「場慣れ」も収穫だ。遠藤も語る。「『同じ人間だから(闘える)』というのを、実際にやって言うのとそうでないのとは違う。この経験は財産になる」。その経験をどう活かすかが鍵、と結んだ。

かねてから池田は言っていた。「リコーはTLでもトップシックスに入る力はある」と。その言葉を本当にするため、チームは日本選手権から得た収穫を踏まえ、来季は従来の2倍厳しい練習をするという――。

最後に。本来は何より自身のプレーについて考えていた滝澤の「収穫」は。

「応援してくれた人たちには感謝したいですね。何よりも力になりました。今まではあまり意識したことがなかったけど、NEC戦の後は、ホントにうれしかったっすからね」

(文 ・ 向 風見也)

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