Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

2008-2009 トップイースト11リーグ第10節 対 三菱重工相模原ダイナボアーズ

2008.12.29

 2008年最後のチームファンクションが12月27日、砧のクラブハウスで始まった。

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 リコーブラックラムズのトッド・ローデンHCは、部屋に集まる選手の前に立つ。

「今日は落ち込んでいる人もいると思う。それでもしっかり顔を上げ、これからもっとよくなろうという意識で臨んでください」

この日行われた三菱重工相模原ダイナボアーズ(重工)戦の振り返りに、この言葉を選んだ。トップイースト(TE)を通してかなりの収穫を得られたが、それを締めくくる第10戦に対しては、はっきり言って不満足だった。

TE1位を決定しての最終戦、チームのモチベーションは「リーグ戦全勝」、その一点だ。控え選手主体の『ホワイトチーム』による練習試合で良いパフォーマンスを見せた選手や、ローデンHC曰くTEで途中出場を続けていて「もっとプレーをする時間を与えたかった」という選手が中心として、スターターに選ばれていた。

これまでの試合、スタンドで声を張りあげていたNO8末永敬一郎は「やっとチャンスをもらえた」と、ベンチ入りを果たしながら出番のない時もあったルーキーFL相紘二も「ずっとスタートで出たいという気持ちがあった。とにかく身体を張って頑張ろう」と勢い込んで、試合前の1週間を過ごした。

ゲームキャプテン(主将)に選ばれたLO田沼広之も感じていた。すべてが決まった後の最終戦こそが、本当のチーム力が問われる、と。そのなかで「(個々の)モチベーションについてはまったく心配していない」と、これまで出場時間が短かった選手らの奮起を信じていた。

が、立ち上がりに先制点を奪われた。自陣、SO河野好光のキックをチャージされ、それが失点に繋がったのだ。スコアは0対7。前半5分、その河野のペナルティーゴール(PG)で3対7とするも18分、守備網の穴を突かれて3対12に。23分にFB小吹祐介のトライ、32分と36分に河野のPGで14対12とするも、39分、キックオフから重工に縦横無尽の展開を許し、14対17とひっくり返された。

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 ハーフタイム直前にCTB小松大祐が相手のタックラーをかわして21対17と、何とかリードを保ってロッカールームに戻るも、そこではローデンHCの怒号が待っていた。ある選手曰く、「今シーズン最大の怒り」。本人はこう述懐した。

「yes! リコーのプレーができていないと感じたから。守備の面で、いつもと同じハートでプレーできていなかった。初先発の選手が多く、緊張していたのかもしれない・・・。ところで私が怒っていたと、誰から聞いたのですか?」

時折、インタビュアーに逆質問を繰り出し出方を伺わんとする。周囲から「人をよく観察している」と評される指揮官の一面を覗かせていた。

後半は、立ち上がりからリコーが攻めに転じて、1分に相、5分に末永が、それぞれインゴールに飛び込んだ。35対17。が、10、12分と点差をを詰められる。35対29。27分からは交互にトライを重ねる展開で、リコーは勝利するも、49対41と、今季TEで最も多い失点を喫す。

ローデンHCがハーフタイムに感じた思いは、覆らなかった。チームファンクションでは前向きな言葉を発していたが、その実はいかに。

無論、「いつもと違うメンバーだったからしょうがない」という言い訳は、誰もが否定した。ここ数試合は機能した守備のシステムが破綻したことについても、「チームとしてやっていることは一緒だったから(メンバー変更が理由ではない)」と、末永も言う。田沼曰く「一人ひとりの判断ミス」、小松曰く「(試合中の)コミュニケーション(が足りなかった)」ことだけが、苦戦の理由とされた。

スタンドから戦況を見つめていた伊藤鐘史主将も思った。「もっとやれるはず」と。

 TEを通しての収穫は数多くあった。

たとえば夏から掲げられたキーワード、"atttiude"の浸透。常に全力で闘い続けろ、どんな状況でも自分たちの積み重ねによる成果を表現し続けろ。これら重要な、しかし抽象的な指針を、指揮官はひとつの英単語に込めて、常に口にしていた。

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 結果、選手たちが試合を振り返る時にはこの基準とし、普段の生活、たとえば移動のバスに乗り遅れそうな選手を急かす時まで、「"atttiude"見せろよ!」と言うようになった。ある選手は冗談を交えて「"atttiude"は最大の言い訳。(コーチ陣に)その言葉を出されたら、選手は何も言えなくなる」と笑ったが、裏を返せば、「出されたら何も言えなくなる」という絶対的な教条がチームの核となったとも言える。こと団体競技で勝利を目指すうえでは、ひとつのセオリーを押さえたと言える。

指揮官も言う。

「正しい"attitude"で臨めば何でもできる。選手たちも、そこは今以上に自信を持っていい」

また、今季はTEに降格したことにより、はじめてリーグ全体をリードする立場、すなわち「優勝候補」としてシーズンを過ごした。周囲からは「全勝、大勝も当然」といった声もあったなか、精神面での揺らぎを最小限に抑えられたことに、伊藤は特に満足していた。

「絶対勝たなきゃいけないプレッシャーなか、選手たちはベースを確立できた。周りのチームはみなリコー戦にピークを合わせてきていた。そんななか、相手に左右されず自分たちのラグビー(ができたかどうか)を意識していたのがよかったのかも知れません」

逆に、今後の課題は。指揮官の言葉を借りれば、「実行の安定感」か。

どのような状況でも――重工戦のように、大幅に選手が入れ替わった試合でも――同じクオリティの試合ができることをローデンHCは志向し、"attitude"という言葉にも込めている。浸透しているスローガンを、より深いところに染み込ませることが、年明け以降のテーマになる。

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 チームファンクションは、終わりを迎えた。指揮官は先を見据え、こう話す。

「今の時期、すべての試合が大事な試合になる。トップリーグ(TL)が近づいてきた。あと2歩、頑張っていきましょう。ここでリラックスして負けてしまうには、ここまで頑張りすぎたと思う」

2009年最初の公式戦は、TL昇格をかけたチャレンジシリーズだ。1月17日にトップキュウシュウ1位のマツダブルーズーマーズ、25日にトップウエスト1位のホンダヒートと相対す。

伊藤曰く「まずはマツダを倒すことを考えます」。チームテーマに基づいた課題を解消しつつ、目の前の一戦一戦と対峙していく。

(文 ・ 向 風見也)

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