Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

2008-2009 トップイースト11リーグ第5節 対 日本航空

2008.11.12

 先にトライを奪われたのは、リコーブラックラムズだった。が、伊藤鐘史主将 曰く「パニックはなかった」。

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 結局、昨季トップイースト(TE)9位の相手に、前半を24対10で折り返すも、トッド・ローデンHCはいつものように「スコアボードを見るな」。意に介さない。

2008年11月9日、リコーはTE第5戦で日本航空(JAL)と闘った。ゲームテーマは「衝突を支配する」。点数云々を気にする前に、事前の積み重ねとリンクするこのプランを誠実に遂行し、80分後、大勝とされる点差を刻む。場所は千葉県・市原臨海競技場、JALのホームグラウンドだった。

前節からこの日まで、ブランクが2週間あった。TE独特の変則的スケジュールだ。しかし、ローデンHCはそのなかでも、手綱を引き締めた。

秋のトレーニングテーマを「小さな積み重ねで大きな成果を生む」としている。 特に今回の試合に向けてはラグビーの原点、ぶつかり合いに関し、チームの注意点を統一した。ボールを味方に繋ぎやすい敵への当たり方、ラック周辺の敵を押し出すクリーンアウト。その積み重ねを「衝突を支配する」というテーマに結びつけた。

メンバー選考では右PR、背番号3に佐藤友重FWコーチを指名する。本人曰く「3年ぶり」の公式戦先発だ。負傷者の代役であるとともに、シーズン中はメンバーを「変わりすぎない程度に変えていきたい」という首脳陣の意を受けていた。 佐藤コーチはこの試合、フル出場した。

スティーブン・ラーカムも、今季2試合目の先発出場となる。ポジションは本来のSO、背番号10ではなくFB、背番号15だった。

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「彼は周りがよく見える。10番よりも後ろ(FB)の方が物事をコントロールできる。それに、相手はウチに対して(効率的に陣地を奪うべく)キックを多く使ってくる。ラーカムが(キック処理が多い)15番にいれば、10番よりもたくさんボールに触ることができる」

ローデンHCは起用法をこう説明し、今後も同様になる可能性が高いと示唆した。レギュラーの基準を「チームのために闘える人間」とする一方、各選手のコンディションを考慮した柔軟な組み替えも考えている。

これについては開幕前、伊藤も言っていた。

「誰が(どのポジションに)入ってもできるように。それがチームの総合力になる。年間を通して勝てるチームは、誰かが抜けても代わりの選手が最低限の役割はこなすじゃないですか。(リコーでも)そういうのが求められると思います」

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 試合当日、鉛色の空から予報外れの雨が落ちる。前半5分、リコーはラックサイドの守備網の隙間を突かれ、あっさりと先制された。

11分、SO河野好光の突破にラーカムが反応、追いすがるタックラーをスルスルと抜き、追いつく。しかし15分、すぐに逆転された。リコーの反則からJALがリスタートを図りながら、ボールを前に落とす。ボールを前に落とせば「ノックオン」の反則で、このシーンでも然りと、多くの選手は感じたが、笛は鳴らなかった。リコーは戸惑う間に自陣ゴールラインを越えられ、スコアは5対10に。

しかし、「衝突を支配する」を続けた。20分、27分とNO8ピーティー・フェレラがラックサイドに飛び込み、40分、WTB小吹祐介が相手守備の背後へと放たれた河野のキックに反応し、それぞれトライ。24対10で迎えたハーフタイム。ローデンHCは「あと5分あれば相手の気持ちは折れる。(チームが定めた)ルールを守りながら、スコアボードは気にせずやれば、結果はついてくる」と、選手を鼓舞した。

「JALが悪いというのではなく、前半(リコーは)悪条件でもよくプレーできていた。向かい風、あの天気のなかで4つのトライを取った。だから後半は何点差で勝つか、と」

指揮官の言葉通り、前半のボディーブローが後半に繋がった。

8分、肉弾戦からパスワークへの急展開で、最後は伊藤がゴールラインを割る。13分、閉塞状態からラーカムが、距離40メートルのドロップゴールを決める。24分、交代出場のWTB星野将利のランを起点に、LO相亮太が守備網を割る。 29分、河野が倒れながらも、ラーカムにラストパスを繋ぐ。34分、同じようなプレーを小吹、河野の連携で決める。36分、河野、小吹と左へ展開し、ラーカムがとどめを刺す――。

締めくくりはLO田沼広之だった。左よりのインゴールに入ったラーカムが、サポートに入った田沼へラストパス。飛び込んだ本人は試合後、ファンに喝采を浴びる。「お恥ずかしい」と振り返った。

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 ノーサイド。薄暗く雲で覆われたグラウンド。オレンジがかった電球色の電光掲示板には『65対10』が光った。

課題について。伊藤は「レフリーとのコミュニケーションかな」と苦笑する。たとえばブレイクダウン(ボール争奪局面)での圧倒を「無用な倒れ込み」と取られた。大勢に影響のないやりとりを「ラフプレー」とされ、トライを1本フイにしている。だから「(チームがレフリーの癖に)対応し、修正するまでの時間を減らす」ことが重要と考えたのだ。

ローデンHCは、大きな成果を生むための細部の積み重ねを、今後も続けるつもりだ。

「スペースの読み方を。今日は守備のいるところに攻撃していたから。守備ではスペーシング(選手間の距離)の取り方・・・」

いずれにせよHC、主将とも、春から夏にかけて築いた基礎のもと、細かな部分の反省点を挙げていた。

勝って反省する。スポーツにとって理想とされるサイクルを描き、リコーはTEのクライマックスに臨む。

(文 ・ 向 風見也)

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