2008-2009 春 オープン戦 対 マツダブルーズーマーズ

2008.07.11

外は雨が降っていた。

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 2008年6月28日、広島総合グラウンド。マツダブルーズーマーズ戦直後のロッカールームは、身体から湯気を立たせた選手たちに占拠されていた。

トッド・ローデンヘッドコーチ(HC)はその中心に立ち、「どれだけ勝ちたいかを本当に考えて欲しい」と、強い口調で言った。

スコアは35対21。確かにリコーが勝利した。しかし相手はトップリーグ未経験だ。ローデンHCは、選手が実力を最大限に発揮できていない印象を抱いていた。

連日のハードワークによる疲れは理解している。本当は、いくつか評価できるプレーも見つけられた。しかし「このチームはもっとできる可能性がある」からと、あえて厳しい言葉を投げかけたのだ。

「ミスがなければ85対14くらいの差があった。会社の仕事でこれだけミスをすれば、その仕事から外されてしまうはず。プライドを持って欲しい」

ひとしきり話し終えて、ひとり、外に出た。

試合前の1週間、チームはこれまで注力してきた個々のフィットネス向上に加え、組織プレーに取り組んでいたという。だからローデンHCは、複数の選手による連動性をこの試合で確かめたかった。

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「でも、あまり満足していません」

リコーは前半17分にHO滝澤佳之が先制トライを奪うも、37分、40分と立て続けに失点。特に後者は、敵陣22メートルエリアまで攻め込みながらのノックオンがきっかけとなっていた。スコアは7対14。

後半は、6分にCTB河野好光が自陣の22メートルエリアからキックチャージに来るマツダ守備網の間をするすると抜ける。ここからボールは左右に素早く散らされ、最後はチャンスのきっかけとなった河野がトライを決めた。ゴールも決まり同点。しかし、その後は攻め込みながらも、敵陣ゴール前でノックオンを連発する。勝ち越し点は、27分のペナルティートライ(マツダがゴール前で再三オフサイドを繰り返した)まで待たなければいけなかった。

ローデンHC曰く「22メートルエリアのなかで7回ボールを落としてしまった」という試合。32分のCTB池上真介によるトライで28対14として迎えた38分にも、22メートルエリアでパスをインターセプトされ、失点した。

終了間際にCTB金澤良が1トライを返すも、"もう少し得点できた""防げた失点もあった"という指揮官の思いは、覆らなかった。

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 大男には少々手狭な部屋から選手が出てきて、しばらく経ったころ。今季三洋電機ワイルドナイツから新加入、この試合で初めてリコーの背番号9を付けて先発出場を果たした32歳のSH池田渉は、試合をこう振り返った。

「勝ったにしても、もし10点差で勝ったら『50点差で勝てた』という反省ができないといけない。勝ったときにどう反省するか・・・」

ローデンHCもそこが言いたかったのでは、という口ぶりだった。さらに続ける。

「HCは『このチームはもっと強い』と言っていたけど、僕もそう思うんですよ。(移籍後間もない頃は)『みんないいものを持っているのに・・・』という印象。でも、一緒にやっていくなかで僕が(気づいたことを)口に出していって、練習への姿勢、グラウンド外のことであれば寮の使い方と、明らかに変化が見えた。変化って中にいると気づきにくいものだけど、このチームに関しては(内部にいながら変化が)目に見える」

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 そういえば、同じく移籍組でこの試合には参加していない瓜生靖治も「僕が口うるさく言ってきた甲斐があったかな。みんな練習でも積極的になったと思う」と言っていた。複数のチームに在籍した上での思いを発信し続けるなかで、こちらもポジティブな変化を感じ取れたという。

確かにマツダ戦では反省点ばかりが目立った。しかし春シーズン全体を見渡せば、収穫や成長の方が目立っていたことも事実だ。ローデンHCを中心に、道筋が明確になったことが何より大きい。

次戦は7月12日。相手は2006年度トップリーグ王者、強豪の東芝ブレイブルーパスだが、ローデンHCは相手のネームバリューを意に介さない。あくまで「我々のトライアル」と、考える。

マツダ戦の反省点を洗い直し、さらに戦術理解度を上げ、その到達点を試合でチェックするつもりだ。

(文 ・ 向 風見也)

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