Black Rams - RICOH RUGBY FOOTBALL TEAM -

2008-2009 春 オープン戦 対 九州電力キューデンヴォルテクス

2008.06.01

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 リコーブラックラムズ(リコー)の2008-09シーズン初戦の相手は、あのチームだった。

九州電力キューデンヴォルテクス(九州電力)。1月26日、トップリーグ第12節でリコーが降格争いを演じた相手だ。この試合の結果が、現在の両者の立場を作っている。

リコー主将の伊藤鐘史はあれから1ヵ月強が経った3月7日以来、自身のブログのプロフィール画像をその日の写真にしている。『見るたびにやる気が沸々とわいてきますしね』と。

再戦を3日後に控えた5月29日、「(降格したままでは)次の人に引き継ぐこともできない」と、今季も自分の意志で主将を担う伊藤は、その対戦相手について話題が及んだ際、笑った。

「最近、思い出しました。つとめてそう(意識しないように)しているのかもしれないですけど」

相手を意識するよりも、自分たちの春からの足跡を確かめる意味合いを強く持っていた。

6月1日、鹿児島県の鴨池陸上競技場で行われた一戦のスコアは14対42。リコーは敗れた。

試合のテーマは運動量と激しさだった。伊藤曰く「言い訳のできんシーズン」の初頭、リコーは昨季の課題のひとつで、まもなく来日予定のトッド・ローデン新ヘッドコーチ(HC)の要求であるフィットネス強化に注力していた。

毎週土曜日の1500メートル走や3000メートル走の測定に、グラウンドを目いっぱいに使用して走り回る、退社後の通常練習――。昨季はルーキーながらレギュラーを獲得、今季はさらに力強い攻撃を志す小松大祐も、昨季より厳しい練習かと問われれば、間髪入れずに「はい」。選手の多くが、社会人になって以来もっとも厳しい練習と感じていた。

それに伴い、選手たちのフィットネス数値はぐんぐんと上がる。「数字に表れるものなんですね」。チームの寮の壁に貼られた数値のグラフを見ては、伊藤はこう呟いたことがあった。

真夏のような、うだるような猛暑のなか行われた試合。汗ですべるボールの扱いに苦しんでか、立ち上がりは両者ともミスが重なり停滞していた。しかし、徐々にリコーがペースを掴んでいった。

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 前半16分に九州電力SO齊藤玄樹にトライを許したが、その後は有機的に走り回った。一人が飛び出したら味方が周囲から深いサポートをする好循環が生まれ、前半28分のトライに繋がった。

自陣22メートルエリアのスクラムからパスを回し、突破を図ったリコーは、一気にハーフウェイラインを越える。そこで形成されたラックからボールは素早く右へ展開され、最後はCTB池上真介が相手守備ラインを突破、まもなくゴールラインを駆け抜けた。

続く31分も池上のトライだった。こちらもハーフウェイライン付近でのラックから、今度は左にいたSO河野好光が大きなペネトレイト、池上がフリーでサポートする形だった。

昨季まではWTB、今季からは本来のCTB一本で勝負を賭ける池上は、試合後こう振り返る。

「(試合前から)走りまくろう、積極的に攻めようと言っていた。(前半は)それが出来て、前に出てチャンスを作ることができたと思います。(トライの場面は)向こうの守備が全然揃っていなくて、回ってくればトライという感じ」

相手の守備ライン形成よりも先に攻撃を仕掛けられた。チーム全体が"動けている"証しだった。しかし、わずか数分のハーフタイムを経て形成は逆転した。

「最初の10分、頑張ろう!」。後半のグラウンドに立つ直前、伊藤はチームメイトにこう発破をかけていたが、後半立ち上がりのチャンスをミスで潰し、逆に失点を許す。

前半にもトライを決めた齊藤が、リコー守備陣の隙間を突いて、同点としたのだ。さらに九州電力は後半21分にもゴール前に侵入し、最後はCTB山口雄一が左中間インゴールを駆け抜け、逆転。その後もリコーは後半25分、33分、35分とトライを献上した。

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「キューデン(九州電力)は足が止まっている」が、前半終了時点でリコーが感じた印象だった。しかし後半の九州電力は俄然、動きを活性化させていた。

ハーフタイム、九州電力が何がしかの修正を施したのか、それとも、後半のリコーに変化が起こったのか――。

試合後、こう水を向けられた伊藤は「逆に、見ていてどう思われました?」と言葉を返しつつ、天を仰いだ。

「ゆっくりビデオを見てみないとわからないですね・・・。何より自分が全然走れていない。チームのことは言えない。まぁ、言わなきゃいけないんですけど」

一方、後半はボールが回る機会が減った池上は、腰にアイシングを施しながらこう振り返った。

「(後半から)向こうの守備が接点にしっかり絡んできて、ボールを出すのを遅らせてきた」

つまり、九州電力はリコーの素早い展開を遅らせ、数的優位を作ってから守備に臨んだ。そこにキックも織り交ぜて前進を図り、終始リコー陣内でプレーしていた。

この試合や春季の練習で指揮を執った山品博嗣BKコーチは言う。

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「(練習の成果で)走るためのフィットネスは上がったけど、コンタクトフィットネス、ボールを継続するフィットネスはまだ。(フィットネスに注視した反面)ラグビーそのものはほとんどやっていないから・・・」

試合前からある程度わかっていたことが、最も不幸な形で現れてしまったのだ。

今後は、さらにフィットネスを上げ、6月4日に来日予定の新HCのもと本格的なチームトレーニングが施される。

「来週は、コーチ陣を含めてメンバーがそろう。ポジティブに頑張っていきます」

伊藤はこう言葉を結び、7日のクボタスピアーズ戦に照準を合わせんとした。

(文 ・ 向 風見也)

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