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Science January 17, 2003, Vol.299


オーロラの電源はポインティングフラックス(Poynting Out the Aurora's Power Source)

地球のオーロラの電力供給源についてはほとんどわかってない。極観測衛星の観察から 、Keilingたち(p. 383)は、アルヴェーン波(Alfvan wave)とも呼ばれている電磁波による ポインティングフラックスが、電離層上部の高高度において、地表に近い方のオーロラに エネルギーを供給していることを示唆した。(Ej,hE)
The Global Morphology of Wave Poynting Flux: Powering the Aurora
   A. Keiling, J. R. Wygant, C. A. Cattell, F. S. Mozer, and C. T. Russell
p. 383-386.

より明るい光源(A Lighter Light Source)

超高輝度x線源は太陽の質量の何百倍から何千倍の質量をもつブラックホールによってエ ネルギーが供給されているということが推測されていた。 Kaaretたち(p. 365)は、X線 、光学的、電波波長での観測から、矮小不規則銀河(dwarf irregular galaxy)である NGC5408の超高輝度エネルギー源は、相対論的なジェットであることを示した。 光源がビ ーム状なので、そのエネルギー源は、もっと大きな質量であるというよりむしろ天体質量 ブラックホールである可能性がある。 それにもかかわらず、これらの結果は宇宙を構成 するブラックホール質量分布と量と同様に相対論的過程を説明する助けとなる。(hk)
Radio Emission from an Ultraluminous X-ray Source
   Philip Kaaret, Stephane Corbel, Andrea H. Prestwich, and Andreas Zezas
p. 365-367.

湿式電気スイッチ(A Wet Electrical Switch)

疎水性のような表面の特性変化は、光化学反応か、あるいは、pH か温度の変化によって 誘起された物質の再配列により、これまで達成されてきた。Lahann たち (p.371;Service によるニュース解説を参照のこと) は、表面の化学状態を変化させることなく、表面特性 を電気的に切り替えた。彼らは、自己組織化により、初期は低表面被覆率である単分子層 を作成した:ひとたび、電気刺激が加えられると、別の官能基を曝すように表面分子の立 体配置的な変化を引き起こし、表面の濡れ性を変化させる。(Wt)
CHEMICAL ENGINEERING:
Chemists Concoct Quick-Change Surface

   Robert F. Service
p. 321-323.
A Reversibly Switching Surface
   Joerg Lahann, Samir Mitragotri, Thanh-Nga Tran, Hiroki Kaido, Jagannathan Sundaram, Insung S. Choi, Saskia Hoffer, Gabor A. Somorjai, and Robert Langer
p. 371-374.

放射するフォトニック結晶(Radiating Photonic Crystals)

原子より小さな過程で放たれた高いエネルギー粒子を検知する方法のひとつは、それらの チェレンコフ放射を追跡することである。このチェレンコフ放射は、その粒子が光の速度 よりも速く媒質中を動く時に放射される。光速より速くなりうるのは、物質の屈折率によ って引き起こされる減速によるためである。Luo たち (p.368) は、周期的な屈折率変化 を有する構造のフォトニック結晶では、全く異なる挙動を見せるであろうことを示してい る。彼らの計算によると、粒子が閾値速度以下で運動している時でさえ放射は発生し、そ して、ある速度領域では、放射は、典型的な前進方向ではなく、後退方向へ発生しうるこ とが明らかにされている。(Wt)
Cerenkov Radiation in Photonic Crystals
   Chiyan Luo, Mihai Ibanescu, Steven G. Johnson, and J. D. Joannopoulos
p. 368-371.

地上を歩き回る(Getting Around on the Ground)

哺乳類と鳥類の歩行と走行のメカニズムに着目した2件の報告が寄せられている。原始哺 乳類の上恥骨の機能と、これに関連する腹腔筋肉は解剖学者には難問であった:有袋類の メスの袋があることは仮説が立てられたが、オスにも、そして他の非有袋類の原始哺乳類 にも存在することの説明が困難なことであった。Reilly と White (p. 400) は、有袋類 の上恥骨がスタンスフェーズ(立脚期)中に肢と体壁間に力を伝達する証拠を見つけた 。これらの結果は、原始哺乳類と他の有羊膜類(amniote)の機能的連続性を確立するもの であり、上恥骨は絶滅した脊椎動物の歩行を再構築する有用なツールになりうることが示 唆される。Dial (p. 402; および、Pennisiによるニュース記事参照)は、多くの地上性の 鳥の羽に関するデータから、前かがみの走行スタイルを想定した。走行する地表のテクス チャーを変化させた実験から、鳥類は傾斜した障害を乗り越えるために、羽に羽毛があろ うと無かろうと、羽をばたつかせながら後肢による牽引性走行の重要性を示した。上り坂 を走行する際、ばたつく羽によって体や脚に与えられた加速ベクトルは、レース車のスポ イラーとして作用し、空中への推進力となる代わりに牽引性増加に寄与する。これらの行 動から、羽毛のある獣脚竜恐竜(theropod dinosaur)の初期の羽の役割や、鳥類の飛行の 進化についての推察が可能になる。(Ej,hE)
Hypaxial Motor Patterns and the Function of Epipubic Bones in Primitive Mammals
    Stephen M. Reilly, Thomas D. White
p. 400-402.
Wing-Assisted Incline Running and the Evolution of Flight
    Kenneth P. Dial
p. 402-404.

古代アリ農場の害虫(Ancient Ant Farm Pests)

アリとアリ微生物の共生関係には、少なくとも4つの多様なグループが含まれており、そ の中には、アリ、アリに培養される菌類、これら菌類品種の特殊化した病原体、抗菌物質 を産生する糸状菌がある。この内の2つの共生生物種であるアリと菌類品種は5000万年以 上も共に進化を続けてきた。Currie たち(p. 386; Pennisiによるニュース記事も参照)は 、病原体の相互作用も同様に古く、アリが最初に菌類を作物化したときから共生関係に組 み入れられたものと思われる。これはまるで1つの生物に特異に寄生した3種の双利共生 生物の三国間軍事競争を見ているようだ。(Ej,hE)
EVOLUTIONARY BIOLOGY:
On Ant Farm, a Threesome Coevolves

   Elizabeth Pennisi
p. 325.
Ancient Tripartite Coevolution in the Attine Ant-Microbe Symbiosis
   Cameron R. Currie, Bess Wong, Alison E. Stuart, Ted R. Schultz, Stephen A. Rehner, Ulrich G. Mueller, Gi-Ho Sung, Joseph W. Spatafora, and Neil A. Straus
p. 386-388.

石が届く距離(A Stone's Throw )

高山や極地方にあるストーンサークルや線状模様の起源については議論が多かった。土壌 の繰り返し凍結・解凍が石の選別に関係していることは明らかだが、以前のモデルでは特 別の場合については説明できたが、観察される広範囲の形態の説明は出来なかった 。Kessler とWerner (p. 380; Mannによる展望記事、および表紙参照)は、この構成に関 わる多くの側面を説明できる数値モデルを示し、色々な因子の中でから、勾配の大きさの 範囲、石の大きさ、石の集中度合い、によって、その結果が異なるパターンを示すかを捕ら えることに成功した。これらのモデルは、岩石を並べて層別する物理プロセスと、それか ら、列やパターンに沿って動かす物理プロセスの交互作用に基づいている。(Ej,hE)
GEOMORPHOLOGY:
On Patterned Ground

   Daniel Mann
p. 354-355.
Self-Organization of Sorted Patterned Ground
   M. A. Kessler and B. T. Werner
p. 380-383.

ネコとネズミ(Cat and Mouse )

寄生生物はその複雑な生活環(life cycle)を大きく変化させるような急速な進化をするこ とが可能で、その結果宿主の範囲にも劇的な影響がでる。Su たち(p. 414; Volkman と Hartlによる展望記事参照)は、普遍的に存在する寄生生物であるトキソプラズマ (Toxoplasma gondii)についての長く放置された問題である、個体数の異常な構造につい て解を示した。現在の、トキソプラズマの主要3クローン系列は、比較的最近、経口感染 能力を獲得したことと関連があること、また、これによって、人間を含む多くの宿主に急 速に広がった。(Ej,hE)
PARASITOLOGY:
A Game of Cat and Mouth

   Sarah K. Volkman and Daniel L. Hartl
p. 353-354.
Recent Expansion of Toxoplasma Through Enhanced Oral Transmission
   C. Su, D. Evans, R. H. Cole, J. C. Kissinger, J. W. Ajioka, and L. D. Sibley
p. 414-416.

攻撃されるサメ(Sharks Attacked)

大きな捕食性種の集団の急激な減少は過去20年間起きてきたが、特にサメは北西大西洋に おいて著しい。長期間の漁業記録データを利用して、Baumたち(p. 389)は、いくつかのサ メの種類において、その個体数が以前の1/4以下に減少したことを示し、大洋における食物 網にもっと大きな変化が起きる前触れかもしれないことを示した。この傾向を止めるため には現状の海洋資源保存量では不十分であり、漁業資源をもっと強くコントロールととも に、より大きな資源貯蔵を確立することが唯一の資源絶滅を救う方法となるであろう 。(Ej,hE)
Collapse and Conservation of Shark Populations in the Northwest Atlantic
   Julia K. Baum, Ransom A. Myers, Daniel G. Kehler, Boris Worm, Shelton J. Harley, and Penny A. Doherty
p. 389-392.

経路のぶれ(Blurring of the Pathways)

点滅する光によって、物が動くように見える場合があるが、従来これは視覚系の「場所 」を判断する経路によって処理されるためだと考えれてきた。機能磁気共鳴画像の解析で 、Zhuoたち(p. 417)は、従来の考えとは異なり、長時間の見かけ運動は、「何」を判断す る経路の要素である前側頭葉を主に活性化するためであることを示した。この結果による と、長時間の見かけ運動は、脳の形状(form)認知系が関与しているらしいこと、広く知ら れているような図形(figural)特徴による認知はほとんど影響がないこと、を示唆してい る。ここで、形状特徴とは、連結性、穴の有無、サイズ、方向性などの外形形状などを示 し、図形特徴とは、白黒、正方形か台形か、丸か四角かなどのパターンの違いを示す 。(Ej,hE)
Contributions of the Visual Ventral Pathway to Long-Range Apparent Motion
   Yan Zhuo, Tian Gang Zhou, Heng Yi Rao, Jiong Jiong Wang, Ming Meng, Ming Chen, Cheng Zhou, and Lin Chen
p. 417-420.

タンニン合成(Tannin Synthesis)

食品の風味、ヒトの健康、そしてウシの消化に寄与する濃縮したタンニン類を合成するの が、生化学的経路と酵素のいずれなのか、は長い間存在した謎であった。Xieたち(p. 396;BartelとMatsudaによる展望記事を参照)は異種の代謝プロファイリングアプローチ を使用して、シロイヌナズナ(Arabidopsis)およびウマゴヤシ(Medicago)植物の BANYULS酵素がアントシアニジン還元酵素として機能し、その酵素がアントシアニジン類 をフラバン-3-オール類に変換し、それがついで濃縮したタンニン類を作り出すポリマ ー化プロセスにおいて建築用ブロックのようにして機能することを確認している。(NF)
PLANT BIOLOGY:
Seeing Red

   Bonnie Bartel and Seiichi P. T. Matsuda
p. 352-353.
Role of Anthocyanidin Reductase, Encoded by BANYULS in Plant Flavonoid Biosynthesis
   De-Yu Xie, Shashi B. Sharma, Nancy L. Paiva, Daneel Ferreira, and Richard A. Dixon
p. 396-399.

母体付着の形成(Forming a Maternal Attachment)

哺乳動物の生殖のあいだの胚着床のプロセスには、胚と子宮のあいだでのシグナル伝達が 関与する。Genbacevたち(p. 405;FazleabasとKimによる展望記事を参照)は、血流から 白血球を捕捉する際に機能するセレクチン付着システムが、胚着床のあいだにも機能して いることを報告する。母体側ではセレクチンオリゴ糖リガンドが子宮上皮内で発現され 、そして胎児側では栄養膜細胞がL-セレクチン受容体を発現する。マウスおよびヒトモデ ルの両方において、この受容体-リガンドのペアが、成功した子宮接着を媒介することが 示される。(NF)
DEVELOPMENT:
What Makes an Embryo Stick?

   Asgerally T. Fazleabas and J. Julie Kim
p. 355-356.
Trophoblast L-Selectin-Mediated Adhesion at the Maternal-Fetal Interface
   Olga D. Genbacev, Akraporn Prakobphol, Russell A. Foulk, Ana R. Krtolica, Dusko Ilic, Mark S. Singer, Zhi-Qiang Yang, Laura L. Kiessling, Steven D. Rosen, and Susan J. Fisher
p. 405-408.

真中に噛みつく(Biting in the Middle)

プロテアソームは円筒状の分子機械で、多様な細胞基質のタンパク分解を促進する。この 構造は分子レベルでよく理解されており、基質はその末端から切断のために円筒状に紡が れると推測されていた。Liuたち(p. 408)は、試験管内でプロテアソームがタンパク質内 部の部位を切断できるだけでなく、円環状の基質さえも切断できることを見つけた 。(Ej,hE)
Endoproteolytic Activity of the Proteasome
   Chang-Wei Liu, Michael J. Corboy, George N. DeMartino, and Philip J. Thomas
p. 408-411.

偏った欠陥拡散(Biased Defect Diffusion )

TiO2のような遷移金属の酸化物の多くの驚くべき性質は、表面の酸素欠陥部 位に起因している。Schaubたち(p. 377; およびCampbellによる展望記事参照)は、この物 質の(119)表面の欠陥拡散を調べ、この欠陥拡散は吸着したO2によって仲介さ れていることを見つけた。1つの酸素原子は欠陥を埋めるが、もう1つの酸素は格子に結 合する。その結果、欠陥は整然と動くのではなく、動き回ることになる。(Ej,hE)
SURFACE SCIENCE:
Enhanced: Waltzing with O2

   Charles T. Campbell
p. 357.
Oxygen-Mediated Diffusion of Oxygen Vacancies on the TiO2(110) Surface
   Renald Schaub, Erik Wahlström, Anders Rønnau, Erik Lægsgaard, Ivan Stensgaard, and Flemming Besenbacher
p. 377-379.

パワーステアリング(Power Steering )

リチウムタンタルのような非線形光学材料は、急激にレーザーパルスを結晶表面に与える と表面波(フォノン分極波)を発生し、光速に比べて無視できないほどの速度で伝播する 。Feurer たち(p. 374)はレーダー技術における位相差配列(phased array)に似た手法を 利用し、テラヘルツ波の方向制御と焦点化を低周波で実現した。いくつかのフェムト秒の 励起点が、パルス鮮鋭化法で試料に焦点化され、干渉を利用して複雑な波面を形成した 。このような手法はテラヘルツの信号処理分野で有用であることがわかるであろう 。(Ej,hE)
Spatiotemporal Coherent Control of Lattice Vibrational Waves
   T. Feurer, Joshua C. Vaughan, and Keith A. Nelson
p. 374-377.

植物細胞の間の交流(Traffic Between Plant Cells)

植物細胞は、細胞を結合する原形質連絡という特定化したチャネルを通して細胞質の中身 を交換する。この原形質連絡中の交流の制御は、輸送するもののサイズとものが何である 蚊によって行われる。Leeたち(p. 392)は、原形質連絡を通るタンパク質との相互作用を 弁別する成分としてNCAPP1というタバコ植物のタンパク質を同定した。NCAPP1の欠失変異 は、原形質連絡の交流を破壊し、葉と花の正常な発生にも影響した。NCAPP1は、小胞体に 局在化しているが、小胞体は原形質連絡に結合し、荷物を運ぶかもしれない。(An)
Selective Trafficking of Non-Cell-Autonomous Proteins Mediated by NtNCAPP1
   Jung-Youn Lee, Byung-Chun Yoo, Maria R. Rojas, Natalia Gomez-Ospina, L. Andrew Staehelin, and William J. Lucas
p. 392-396.

反応性抗原決の二重のノックアウト(A Double Knockout of Reactive Epitopes)

移植のための適切なヒトの器官の不足は、ブタから人間への異物移植の興味を深めた。し かし、ブタ細胞におけるα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼは、拒絶反応を引き起 こすα-1,3Gal抗原決定基を合成する。この遺伝子の2つのコピーの一つをノックアウトす ること既に報告されているが、拒絶反応を誘起しないブタ細胞を生成する比較的簡単かつ 迅速な方法が必要である。Phelps(p 411)は、ヘテロ接合性α-1,3Gal線維芽細胞から、抗 原決定基を持つ細胞を殺す細菌性毒素(クロストリジウム(C. difficile)からの毒素A)に よって遺伝子を完全に欠失した細胞を選択した。このように選択した細胞に基づいてクロ ーニングを3回に行ったことによって、4匹の健康な二重のノックアウト雌性子ブタを得た が、子ブタは細胞表面に反応性抗原決定基を欠いていた。この不活性化は、点変異の結果 であった。(An)
Production of alpha 1,3-Galactosyltransferase-Deficient Pigs
   Carol J. Phelps, Chihiro Koike, Todd D. Vaught, Jeremy Boone, Kevin D. Wells, Shu-Hung Chen, Suyapa Ball, Susan M. Specht, Irina A. Polejaeva, Jeff A. Monahan, Pete M. Jobst, Sugandha B. Sharma, Ashley E. Lamborn, Amy S. Garst, Marilyn Moore, Anthony J. Demetris, William A. Rudert, Rita Bottino, Suzanne Bertera, Massimo Trucco, Thomas E. Starzl, Yifan Dai, and David L. Ayares
p. 411-414.

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