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2009年秋 職団戦記

年月日:2009年11月3日(火・祝)

場所:東京体育館

レポーター:武田 俊平

【日本選手権に向けて】

 前回春はNECに準決勝で負け、3位におわったリコー(1)チーム。
 春・秋の総合成績で決める日本選手権出場のためには今回優勝が絶対でかつ春優勝の日本レストランシステム(以下日レスと記載)が3位以下という条件であった。
 リコー(1)チームは前回同様に山田、細川、馬上、伊藤、武田のメンバーで優勝に向かって挑んだ。その戦いをレポートしたい。
(以下一部敬称略)

【予選1回戦 ジュポン化粧品3−2(偶数先)】

 細川 ○―× 嘉野
 武田 ○―× 渡辺健
 山田 ×―○ 渡辺徳
 伊藤 ○―× 桐山
 馬上 ×―○ 鈴木

 予選ブロックは抽選の結果ジュポン化粧品、日レス、富士フィルムグラフィックスという組み合わせになった。
 オーダーは予想していたものと外れてしまった。大将戦は相振り飛車になり第1図。飛車、角だけの攻めなのでつながるかどうか。

 (第1図以下の指し手)
 △6五歩 ▲同歩 △6六歩 ▲同角 △同角 ▲同金 △3三角 ▲6八飛
 △6六角 ▲同飛 △5五金 ▲6八飛 △7六飛 ▲7七角(第2図)

 ここから細川が巧みに攻めをつなぐ。
 (第2図以下の指し手)
 △5六歩 ▲同歩 △同金 ▲2三角 △5七金 ▲7八角成 △6六歩 ▲4六銀
 △6八金 ▲同玉 △4九飛 ▲3九歩 △5八歩 ▲6九金 △同飛成 ▲同玉
 △6七金 ▲8七馬 △7七飛成 ▲同桂 △6八角(第3図)まで細川の勝ち

 長くなってしまったが綺麗な寄せだったので紹介した。金取りを放置して△5六歩が決め手だと思う。先手も馬を作ってうまく粘るが△5八歩がまさに一歩千金であった。
 副将戦は私先手で▲7六歩△3四歩▲6六歩△4四歩▲6五歩という出だしから四間飛車対位取りの戦型に。難しいところもあったが玉型の差を活かして何とか勝ち切った。
 三将戦は山田得意の△3三角戦法から右玉の構えに。渡辺徳氏が工夫した駒組みで銀冠を構築。この将棋は山田がまったく力を出せず渡辺徳氏の完勝だった。
 四将は伊藤得意の矢倉▲3五歩戦法。ぜひ棋譜を紹介したかったが本人が覚えておらず。中盤までは伊藤も大変な形勢だったが、相手が間違えてそこからは差を広げたといった内容であった。
 五将は馬上の一手損角換わりに鈴木氏が棒銀。馬上は研究会で似た将棋を指したらしいがその時嫌な変化と思った順を指されたようだ。大変な局面もあったらしいが結果は負け。
 初戦は何とか3−2勝ちでいいスタートを切ることができた。

【予選2回戦 日レス4−1(偶数先)】

 馬上 ○―× 城間
 武田 ○―× 野島
 山田 ○―× 山下
 伊藤 ×―○ 鰐渕
 細川 ○―× 木村

 日レスは前回から城間氏、山下氏の奨励会経験者が入社し、ぐっと層が厚くなった印象を受ける。日本選手権出場のためにもここは何とか勝ちたいところだ。
 四将戦は鰐渕氏の石田流に伊藤の棒金。巧みに捌かれ棒金が空振りになり以下はどうしようもなく負け。
 副将戦は野島氏得意の「野島システム」を受けてみようと思ったのが第4図。

 ▲6七金右△2二角▲3二飛成△同金▲6五歩に△5一金がよくある展開だが・・
 (第4図以下の指し手)
 ▲2四歩 △同歩 ▲3四飛 △4二飛 ▲6五歩 △3二金 ▲3八飛 △3五歩
 ▲6七金右 △4三金 ▲9六歩 △2五歩(第5図)

 ▲2四歩から▲3四飛が教えてもらった手である。△2二角に▲2四飛を用意している。本譜の△4二飛は研究にはなかったのだが手損なら先手もやれるということなのか。
 しかし▲9六歩が緩手。当然▲6六銀として攻めないといけなかった。△2五歩で焦る展開となり苦戦となった。数手後の第6図。

 △4五同銀▲3三角成△同桂▲4三歩ぐらいでは攻めが細く駄目だったと思ったが、本譜は△同金だったため▲3四歩から▲4五飛の筋で攻めがつながり以下は玉の堅さが活きる展開となって勝った。
 大将戦は馬上の一手損角換わりの注文に城間氏が拒否したため馬上得意の3手角の展開となったのが第7図。

 (第7図以下の指し手)
 △6五歩 ▲4六歩 △6六歩 ▲同銀 △6五歩 ▲7七銀 △5七角成 ▲同飛
 △2八角 ▲5九飛 △3七角成(第8図)

 先手に▲4六歩〜▲4五歩とされる前に△6五歩と仕掛けたのが好判断。第8図ははっきり優勢である。
 数手後の第9図の△8六歩がまさに筋中の筋。飛、桂が働く展開となり馬上が快勝した。

 五将戦は相居飛車の力戦型。苦戦の局面から細川が粘って逆転するが間違え木村氏勝勢の局面になった。もう指す手がないと思ったらひとつ飛車を寄って王手。歩を打ったら実はそれが二歩!細川執念の勝利である。
 三将戦は相振り模様から山田が△2四角と牽制したために山下氏が居飛車にして手得を主張する将棋となった。
 第10図は中盤の局面である。先手の▲3七銀が遊んでいるが2筋を交換できたのも大きくやや自信のない形勢か。ここで銀を活用しようと▲4八銀としたが、△3五歩が好手だった。

 ▲3五同角に△3一角▲6八角△1三角で2筋の歩を払える展開となった。先手も▲3七桂〜▲2五桂としたいが、△同桂〜△3四銀と飛角両取りとなるのが△3五歩と突いた効果である。
 戻って▲4八銀では▲1六歩〜▲1七桂の狙いなら先手良しだったのではないか。以下は優位を拡大し第11図の△6七歩成が決め手に近く山田が多少もたついたものの勝ち切った。

 日レス戦は望外の4−1勝ちで終わり、2連勝で予選通過を確定させた。
 予選3回戦は順位1位をかけた戦いになる。

【予選3回戦 富士フィルムグラフィックス3−2(奇数先)】

 伊藤 ×―○ 遠藤
 武田 ○―× 青野
 馬上 ○―× 河上
 山田 ○―× 石田
 細川 ×―○ 北川

 予選3回戦は前回A級優勝でS級復帰を果たした富士フィルムグラフィックス。前回対戦した際は2−3で負けただけにリベンジをしたいところだ。
 遠藤氏に誰を当てるか昼食休憩の時メンバーで話したが、日レス戦で負けた伊藤をあえてぶつけることにして勝って調子を上げさせることを狙ったが果たして。
 その大将戦は遠藤氏の中飛車穴熊に伊藤の居飛穴の相穴熊に。中盤の攻防を紹介したかったが伊藤が棋譜を覚えていないため(苦笑)省略である。遠藤氏の攻め、伊藤の受けが続いたが相穴熊では攻めているほうが有利としたもので経験値の差が出た感じであった。
 副将戦は青野氏と初対戦で楽しみであった。青野氏の筋違い角に学生時代やっていた対策をやってみたのが第12図。

 △6五歩の仕掛けを見せて▲5六歩と突かせるのが狙いである。本譜は▲5六歩と突いてから先手が▲3八玉と寄ってしまったため△5七角から馬を作り1本を取った。
 その後青野氏が力を出し難しい形勢になってきた。第13図は6筋が受からないが△3六歩が決め手に近かった。▲同歩なら△3七歩のたたきが厳しい。
 以下終盤もたついたものの勝ちきることができた。

 三将戦は馬上の角換わり志向に河上氏が拒否したため、矢倉模様から3手角の将棋になった。

 今▲4六歩と打ったところだが▲4八飛と回っているのに歩を打つようでは作戦負けのように見える。
 その後も苦戦が続いたが相手のミスもあり、最終盤勝ちになったのが第15図。

 (第15図以下の指し手)
 ▲2二金 △同玉 ▲2一と △1二玉 ▲2二と △同玉 ▲4四角 △3三桂
 ▲同角成 △同玉 ▲4五桂 △4二玉 ▲5三歩成以下馬上の勝ち

 秒読みの中うまく詰ました。△3三桂で△1二玉も▲2一角以下詰む。どの変化も読み切っていたようだ。
 四将戦は相振り模様。相手の無理攻めをいなして山田快勝の一局であった。
 五将戦は細川が角交換振り飛車から穴熊(レグスペ)を試したらしいがあまりうまくいかず粘るものの最後は負け。ぎりぎり3−2で勝つことができた。
 予選は3連勝で通過。日レスもジュポンとの決戦を制し2位通過。反対のブロックはNECとリコー(2)が通過した。
 準決勝はリコー(2)との同士討ちになった。

【準決勝 リコー(2)4−1(偶数先)】

 細川 ○―× 谷川
 武田 ○―× 牧野
 馬上 ○―× 桑山
 伊藤 ×−○ 山内
 山田洋 ○―× 山田浩

 オーダーはリコー(1)がバランス良く配置、リコー(2)は年齢順だろうか。
 大将戦は細川得意の右玉に対し谷川が桂頭を狙って自陣角を放ったところ。
 このままでは▲3五歩から潰されるがさすが「とっておきの右玉」の本を執筆するだけあってここから自陣角を咎めにいく。

 (第16図以下の指し手)
 △5四銀右▲3五歩 △4五歩 ▲同歩 △5五角 ▲1八飛 △6五歩 ▲同歩
 △同銀  ▲5六銀 △同銀  ▲同角 △7五歩(第17図)

 △5四銀右と出て▲3五歩に△4五歩がこの形の常用手段とのこと。
 △5五角によって先手の飛車の働きが悪くなったのが痛い。以下もうまく攻めて細川が快勝した。
 副将戦は私の石田流に牧野が角交換からバランスを重視した構えで第18図。

 (第18図以下の指し手)
 △4六歩 ▲同歩 △6九角 ▲8八金 △2五角成 ▲5九金 △3五歩 ▲7八金
 △3六歩 ▲同歩 △同馬  ▲5七銀 △3五馬 ▲6八金寄(第19図)

 △4六歩から△6九角と馬を作って後手が良さそうに見えるが一歩損の攻めだけに長引けば歩得が活きるのではないかと対局中は考えていた。△4六歩ではじっと△3五歩もあったかもしれない。
 第19図は△7二飛も気にしていた。▲8六飛には△8二飛で千日手狙いである。本譜は△6二馬とじっくりこられたので長い中盤となったのが第20図。

 ここから▲7四歩△同歩▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲6五歩と戦機をつかみ、以下勝ちきることができた。
 三将戦は馬上の一手損角換わりに桑山の早繰り銀となり第21図。

 プロの実戦でもよくある局面で▲7九玉や▲2四歩が一般的だが桑山は▲3四歩。
 以下△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛に△2五歩で馬上が良くなった。飛車を取ってからは馬上が素早く寄せ快勝した。前局でNECの加藤徹さんに快勝した桑山だったが本局は力が出なかったか。
 四将戦は伊藤の矢倉に山内が急戦矢倉といった戦型であったが、うまくまとめた山内が制勝した。伊藤はこれで3連敗。ちょっと心配だ。
 五将戦の「山田」対決は相振り飛車から洋次主将がうまくまとめて勝ち切った。
 リコー(2)戦は4−1で決勝進出することができた。もう一方はNECが日レスに勝ち。
 つまり決勝勝ったほうが日本選手権も決まるという大一番となったのだ。

【決勝戦 NEC2−3】

 馬上 ×―○ 加藤徹
 伊藤 ○―× 宮原
 山田 ×―○ 清水上
 武田 ×―○ 加藤幸
 細川 ○―× 林

 オーダーには直前までかなり悩んだ。最初に終わったのが大将戦。前回職団戦で加藤徹氏の四間飛車に完敗した馬上が今回は相振り飛車から穴熊に囲ったのが第22図。

 今、3四の飛車を引いたところだが△5五歩と△4四銀のバランスが悪くかなりの作戦負けである。
 先手が▲6六角〜▲7七桂の攻撃形が見えているのに対し後手の攻撃形はしばらく時間がかかってしまう。以下端から攻められ第23図。

 この△8五桂は焦りからの自爆だったと思う。以下▲8六角△5六歩▲9八飛と先手の飛角が急所に入ってしまった。ここは△1三桂とか手を渡すとかして我慢するべきであっただろう。
 副将戦は宮原氏のゴキゲン中飛車に伊藤の居飛穴の戦型となり第24図。△4五銀の筋はたまにみかけるが個人的にはあまりうまくいかない気がする。
 ここで▲4六歩が当然ながら好手。以下△5七歩成から△5六歩と銀の取り合いとなったが居飛車を持ちたい気がする。

 数手進み宮原氏が強襲をかけたのが第25図。

 (第25図以下の指し手)
 △5七銀 ▲7九角 △6九銀 ▲7七金 △4六銀成 ▲同角 
 △5九飛成▲6五歩 △同歩  ▲6三歩(第26図)

 △5七銀からは△6九銀は必至の反撃だが第26図となってみると飛車は成ったものの、6九銀が重い形だ。後手としてはもっと穏やかな流れにするべきだったと思う。
 最終盤の第27図で▲9九玉が決め手で桂馬を渡すと▲7四桂が生じるので適当な受けがない。宮原氏に連敗中の伊藤であったがここ一番でしっかりと勝ちきった。

 五将戦は早稲田OB対決。OB対決と言えば副将と三将がどちらか逆であれば明治対決、早稲田対決、立命対決(2つ)が出来上がるところであった。
 細川の右玉を警戒し林氏が駒組みをするが細川が棒銀で咎めにいったのが第28図。

 通常の変化と違い▲7八玉型が響いていることがお分かりいただけると思う。
 林氏は▲3五歩と仕掛けたが構わず△9五歩が厳しい。以下細川がペースを掴む。
 以下駒の取り合いとなったが第29図の△6四角が決め手。▲1八飛に△9七角成が詰めろでは勝負あった。以下林氏が粘るものの駒得から手堅く寄せた細川が勝った。
 これで2−1だがあと1勝が遠かった。

 四将戦の立命対決は同じ千葉県在住ということもあり最近よく大会で当たっている。社団戦で勝っていることもあり自信を持って挑んだが。その将棋は序盤でいろいろ迷ったあげく四間飛車銀冠対居飛車穴熊の戦型になったのが第30図。

 後手番なら千日手を狙ったりできるかもしれないが先手番としてはかなり不本意な形で作戦負けである。
 以下、先手番ということもあり強引に手を作っていったが明らかに無理筋で第31図は桂損確定である。

 以下暴れるが冷静に対処され完敗。日本選手権をかけた戦いでこんなひどい内容でチームに大変申し訳なかった。今年はアマ名といい本当に勝負弱い一年であった。
 2−2で迎えた三将戦は相振り飛車の戦いに。清水上氏に相性の悪い山田であったが本局はうまく指し第32図は作戦勝ちに見える。

 清水上氏は▲5四歩△同歩▲4五銀と動くが△5五銀▲5七角に△4六歩(第33図)が好手。

 ▲4六同歩と取らせることで▲3五角を消しながら、4七に将来歩を叩ける空間を作っている。その後もうまく指し第34図。

 ここで△3八角成▲同飛△1七桂成▲同香△1六歩なら山田が快勝に終わっていたであろう。
 本譜は△7六角成と8五の桂馬を取りにいったが、ここから清水上氏も力を出し▲3三角から局面が混戦となっていき迎えた第35図。

 ここで△7三同玉が逆転負けの要因となった一着で、△7三同金ならまだ優勢が続いていたと思う。
 以下延々と一進一退の攻防が続いたが、穴熊の深さを活かした清水上氏が最後は鮮やかな寄せで勝ち切った。途中までうまく指せていただけに山田としては残念な1局となってしまった。

【来期に向けて】

 こうして前回に続きNECに負け準優勝という結果になってしまった。個々に苦手な相手がいるとか苦手な戦型があるといったところも原因なのかもしれない。社会人であるから個々がうまく時間を作って克服していくしかないであろう。
 大会終了後は恒例の打ち上げに。近くにあまり居酒屋が少ないためにNECチームとかぶってしまったが仕方がない。NECチームが盛り上がっているのがよく分かりかなり悔しさを感じた。
 この悔しさを春の職団戦でぶつけられるように精進していきたい。常勝リコーチームを作るためにも。(完)


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