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2007年度社団戦始まる

年月日:2007年6月24日(日)

場所:港区「東京都立産業貿易センター浜松町館」

レポーター:西田 文太郎

【小振りなあじさいが白く咲いて】

 日曜日なのに、都心の駅は人混みだ。さすがに平日よりは少ないが、駅構内に人はあふれている。ただ、服装はラフで、色とりどりで楽しいし、足取りも緩やかだ。構内に反射するざわざわする騒音が人声に満ちている。平日には騒音の中に人声はあまり聞き取れない。
 白いイヤホンの耳からは懐かしいZARDの歌声が響いている。何度聴いてもしびれる。「負けないで」のような応援歌も良いが、絶唱が好きだ。それから時々あるお茶目な歌詞も楽しい。それにしても、僕は歌覚えが悪い。タイトルと中身が一致しないし、満足に通して覚えている歌もない。
 梅雨入りしてから、天気は気分を変えたようで晴れた日が続いた。しかし今日は、曇っている。午後には雨が来る予報だ。紫や白のあじさいがきれいに咲いている。黄色やオレンジのマリーゴールドもきれいだ。いろんな花が咲き乱れ、夏は目に嬉しい。

【会場へ】

 社団戦は、いったい2年休んだのか、3年休んだのか、それさえ記憶は、はっきりしない。ちょっとした病を得て、ゆるゆる治療をしている内に、将棋を指すのは面倒になっていた。幸いもう病気の方は、問題ないようだ。突然亡くなったZARDの歌声に背中を押されるように、浜松町までやってきた。
 駅から会場まで海に向かって歩く。同じ方向に歩く人が多い。ふと後ろから声をかけられる。振り向くとSTだった。「首の具合が悪いの?」と聞かれる。確かに首がうまく回らない。一昨日からで、昨日は湿布を貼っていたので、もう大丈夫と思っていた。しかしそうではなかった。
 会場は、大勢の人でごった返している。1000人近くはいるだろう。女流プロのNさんがいた。少し話す。見た目やつれ気味だが、美しい。
 将棋は、礼に始まって礼に終わると言う。しかし、何故だろう?
 アマチュアでは顔見知った人と出会っても会釈さえしない人が多い。シャイということもある、社交下手ということもあろう。取るに足らないやつと見ているのかもしれない。いずれ礼に始まるという言葉とはほど遠い。もっとも対局中などはそれどころではない。
 集団が醸し出す、クラーイ雰囲気は梅雨空のようだ。将棋からだいぶ離れていたが、こういう空気は変わっていない。むしろ暗くなっているかもしれない。
 社団戦の開会に当たって、主催者の東京将棋連盟の挨拶、そして東京将棋連盟が中立の立場でバックアップするという、連盟から独立した女流棋士会からの挨拶があった。

【1局目 お情けの○】

 対局が始まった。我がチームは3部リーグなのでお気楽モードだ。
 1局目、後手番となった。三間に振った。相手の小ミスがあって、石田に組めた。とはいっても相手は居飛穴に組めたのだからこっちは苦労する。
 ごそごそ小競り合いをしていたが、慎重に指したら、押し込まれて苦しくなった。それでも粘っていたら、相手の時間が切れてしまった。30分、30秒なのだが、聞こえなかったようだ。僕も全くわからなかった。局面は桂香を先に取られて不利だった。
 チームは3勝4敗で惜しい敗戦となった。

【2局目 手合い違いの●】

 2局目、またも後手。角道を開けあった後、3手目に敵は飛車先の歩をつかないで、銀をあがってきた。あまり深く考えないで棒銀風に行ったら、右玉の理想型を築かれてしまった。敵の角道がびしっと通ったまま、飛先を継ぎ歩してきた。そして、桂に跳ねられて、それからは、どうしようもなかった。
 知らないと痛い目に遭う典型だ。こういう変則的な戦法を覚えるのは、面倒で時間がかかる。自分でそっち側を持って実戦を積まないと感覚がつかめないからだ。しかし、ネットで対局してもなかなか思う型にはならないものだ。
 しかし、それぞれの型の急所を知らないと何度やっても勝てない。急所を知っていても勝つのは大変なのに。こういうのを片っ端からつぶしていかないと勝てない。
 何のために将棋を復活しようとしているのか。定年後の楽しみのためか。ぼけ防止のためか。限られた時間を何に使うのか迷いながら、迷路を進む。上の階に行くと、漫画だろうか「三都物語」のコスチュームを楽しんでいる集団が居る。不思議な世界だ。
 チームは午前で一人帰り、午後から来る予定のMが来られなくなったため、苦しい展開となった。

【3局目 勝とうとする心の●】

 3局目はまたも後手番で右四間にこられた。飛先の歩を切って、横歩も取ったら、角が出てきて、飛車を捕獲しようとする。序盤なので角との交換ならいいやと思い、応じる。読み筋ではないのが問題だが。
 お互いに大駒の打ち込みに警戒しながら指すので、あまり進展しないけれど、態勢が整った敵から銀交換をしてきた。そのあとこっちは馬を作ってかなりうまくいっていたが、龍を取りに行ったのがあまり良くなかったようだ。チェスクロックの時間もずいぶん離れていて有利だったが、2度も押し忘れて、接近されてしまった。
 最後は、向こうもミスをしたので、おとなしく飛車を打っておけば、まだ勝機はあったと思う。しかしつい焦って勝ちに行ってしまいその上間違えてしまう。30秒を読む練習によいチャンスなのに、つい10秒くらいで指してしまう。
 将棋は、深手を負わせるような手よりも、相手に手を渡すくらいの指し手の方が、反撃が弱いので有効なことが多い。強い敵に深手を負わせた場合は、仕留めなければ必ず負かされるのだ。だから、勝とう勝とうと思ってはいけない。「勝つと思うな」という歌は真理をついているのかもしれない。羽生さんのように、中盤以降は盤上没我で、常に最善手の指し手を考えることが良いのだと思う。しかし口で言うのと実際とは全く違うのだ。

【4局目 見落としの●】

 4局目は、またも後手番だったが、比較的対局の多い対四間飛車だ。それでもこういうときは変わったことをやりたくなる。5五角と中央に飛び出してみる。こういう手があることは知っているが深く研究はしていない。
 向こうもあまり経験がないようで、かなりうまくいった。しかし、攻防の角を打たれたときに自陣の危機に気が付かないで負けてしまった。これは対局を2年も休んでいたので、筋が頭の中で見えていなかったためだ。かなり復調してきた。といっても、元々がたいしたことがないのだが。
 チームも4連敗と重いスタートとなった。しかし、まだ始まったばかりなので、次から頑張ればいい。
 1日に4局指したのは、去年の冬合宿を挟んで2年以上間が空いている。頭がじんじんする。心地よいくたびれだ。ワインレッドが頭をよぎる。あまり将棋の研究や実戦に時間をかけないで、あまり人生を深く考えないで、しばらくポチポチやってみようと思う。そのために、とある小さな決心をする。

【竹芝の海にZARDの冥福を祈る】

 ここにくると、どうしてもZARDを想い出す。ボーカルの坂井泉水が亡くなった。彼女の念願の初回コンサートは、この辺の桟橋から出発した船でやったのだった。
 それは600人限定と言うことで観られなかったが、その次の全国ツアーは見に行けた。ステージの奥の方で唱っていて派手さはないが、やはり生は良い。ときどき間違えるのだが、それも愛嬌だ。出だしをアカペラで唱い上げる「もっと近くで君の横顔見ていたい」や、「あなたを思うだけで・・・」は、大好きだ。
 事故死もショックだったが、癌で闘病をしていたことはもっとショックだった。本田美奈子も同じくらいの寿命だった。もう一人私が尊敬するダンサーのMMさんも同じくらいの若さで一昨年亡くなった。自分にとって素敵な女性が短い命を燃焼し尽くした。安らかに眠ることを祈るばかりである。


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