イベント・レポート

アマ竜王戦全国大会・自戦記&観戦記

年月日:2003年6月28日(土)〜6月29日(日)

リポータ:野山 知敬 

【連続で大阪代表に】

 アマ竜王戦。言うまでもなくアマ名人と並び称されるアマ棋界のビッグタイトルだ。昨年は数年ぶりに代表になったものの一日目最終局で敗退。だが、アマ名人、アマ竜王は私の一番ほしいタイトル。大阪大会は決勝で前川尚三さんに逆転勝ちで連続代表となることができた。もう一人の代表は木村秀利君だったが、彼と同じく5度目の代表。今年こそは。。の気合いでのぞんだのは言うまでもない。

【準備までの時間】

 さて、全国大会に出るとなるといやがおうにも研究せざるを得ない。ところが業務出張はもちろんのこと、リコー関係、正棋会関係等用事が相次ぎ、5月なかばからは1ヶ月で東京大阪間を6回ぐらい往復した。帰宅していてもなかなか時間がとれず、新幹線車中にて詰将棋をやったりするのが研究のメインとなってしまった。但し、全国大会1週間ぐらい前はなぜか時間に余裕ができ、一日中棋譜を並べて頭が飽和状態になったこともあった。人それぞれ研究方法は違うのだろうが、私の場合は研究会と、棋譜並べ、詰将棋がメインである。

【前夜祭】

 当日朝は休暇をとり、イチロ−のタイムリ−を見てから出発。昼食は梅田で「激辛豚骨ラーメン」を食べ、ピリピリの激辛を味わってから東京へ向かう。新幹線車中では出たての近代将棋を読み、懸賞詰将棋8題を詰ました。
 会場のチサンホテル浜松町でいきなり会ったのは鹿児島の上村君。彼は大阪にも長くいて、正棋会でもよく指したので懐かしい。次に会ったのは愛知の関口君。彼が学生時代(立命館大学)中村知義らと研究会をよくやった仲で十年ぶりぐらいの再会に話もはずむ。

 個人的には前夜祭は楽しみなのだが、酒は控えめにしようと思っている。私の場合、一人で自宅にいるときは全然飲まないし、冷蔵庫には牛乳とミネラルウオーターしか入っていないのだが、仲間が集まっての飲み会は大好きである。但し、そのような席の後では興奮が残っているせいかなかなか寝付けないし、また翌日の体調は良くない。私の席では遠藤正樹、山田敦幹、渡辺俊雄、都橋政司、森岡正幸氏らと歓談。地域を越えてこのようなつきあいがあること自体、かげがえのない私の財産だと思っている。

 会場を見渡すと矢内理絵子さんがいたので思わず「やっぴー!」と声をかける。あの大雪のリコー合宿、思い出すよね。。。
 羽生竜王とはかなり顔見知りになっていたが、このときは安藤耕平、北村公一と一緒にビールをつぎにいこうということになった。すると安藤さんが「写真をとろう!」と言いだし、3人がかわりばんこに竜王とツーショット。いやはや、はたから見たらなんてミーハーなおじさん達(^-^;;;;)って思われたろうなあ。。。どんな写真ができあがったんだろうか。。(見るのがコワイ ^o^;;;)

 今回は前夜祭にてくじびきする趣向。私の一局目の相手は開原元アマ名人と決まった。

【真夜中のできごと】

 夜12時ごろ目がさめる。廊下でゲラゲラ、ギャハハハ、いやあははは、なんともやかましい若者の声。なかなか収まりそうにないのでついにこの私も冷静になれず部屋のドアをあけて廊下を見る。

 するとそこにいたのは福島の竹内君、愛知の関口君、滋賀の金堂君。ああ、なんだ、君たちか。竹内君が仕事の関係で夜中に到着したので迎えに出て歓談していたらしい。かわいい後輩達だし、まあここはやんわりたしなめておこう。

 「こらあ、おまえら、うるさいやないけえ!何時やと思うとるんじゃあ!迷惑やっちゅうのがわからんのかい!はよ寝んかい、あほんだらあ、このボケエ!」。。。
 あ、いやいや(^-^;;;;;)ビールが少々入っていたとはいえ、そこまで厳しくは決して。。。言わなかったつもりですよ。。

 とはいえ翌日、彼ら三人が私を避けようとしていたように見えたのは気のせいだったと思うんだけど。。(^o^;;;;;)

【予選】

 1局目は開原氏と。角交換型銀冠矢倉に棒銀で攻め合いを選んだが、どうももようが悪いような感じ。

1図

 図以下▲5四歩△6四角▲6五飛△6三歩▲4六角△同角▲同歩△7四角▲7五飛△6七銀成▲同金△6四金。矢倉の形を乱されたのはやはり大きかった。その後も攻めあいとなったが届かず、暗雲立ちこめるスタートに。

 2局目は茨城の吉田氏。相矢倉で中央から動いて快勝。まずはほっと一息。
 この時点で回りを見渡すと木村秀利、金内辰明、鈴木英春といった剛の者が2連敗で予選落ちしていた。実は私も昨年のアマ名人戦で2連敗予選落ちを経験しており、その辛さはよく知っている。それにしてもアマ大会レベルの高さの証明か。。

 3局目は福岡の山口大志君。北村公一氏によると有望若手で、まだ高校生とのこと。
 図以下△3二銀▲2二飛成△2三飛▲3二竜△2九飛成▲4四角△7四歩▲5九金引△3七角▲4三歩。。。何が楽しくて棒銀ばかりやっているかというと、これみんな私のオリジナル定跡だから。面白くてやめられないのである。

2図

【トーナメント】

 「引け!」私は恥も外聞もなく、4つある不戦勝のラッキーくじを引こうと念力をかけた。あの早咲アマ名人・竜王でさえ不戦勝は大きいと言っている。だが、そのような運は私には無いらしい。一日目最後の相手は東京代表の宮原康一さんとなった。氏とは初対局。

 図は馬を作られたところだが歩得が大きいと思っていた。図から△2四歩▲同飛△6三金▲4六馬△3三角▲8八銀△8六歩▲7七桂。。。飛車角交換しても相手陣は低いので大変だったようだ。だが実際は飛車をとって△5二玉で指せていたようだがまごまごしているうちに飛車に逃げられ最後は大差負け。

3図

 あーーあ、これでアマ竜王戦5回連続の一日目敗退かよう。。なんとも情けない大阪代表である。関西が元気なところを見せてやりたかったのだが。。。

【打ち上げ】

 田尻が「今日は行きますよね」と念を押しに来る。勝ち残っていたら一人で部屋にこもるつもりだったが、この結果ではしゃあないなあ。リコー組+北村さん、兵庫の内藤さんも加わって駅前の焼鳥屋へ。K村氏からいろいろ(品の良い?^-^;;;)おもしろい話もあって大笑いしていたが、やっぱりふと現実に気付くとむなしいものだ。。。

【二日目】

 朝食をとったらすぐ帰るつもりでいた。一日目敗退しての観戦は辛すぎる。ところが朝食の場所で北村さん、渡辺前アマ竜王、伊藤大悟君、田尻らと談笑していたら1局ぐらいは見ようかという気になってきた。

【ベスト16】

 大熱戦だったのは山田敦幹ー山田洋次戦。洋次向飛車に敦幹氏裏芸の玉頭位取り。三転四転の好局だったが洋次敗れる。リコー現役(?)はここで消えたが、OB田尻が安定して残っている。

【ベスト8】

 田尻は大逆転で勝ち進んできた青柳元アマ竜王に、敗勢と思われた局面からあっという間に盛り返す。ふむ、これでベスト4か。将棋も手堅いし、安定しているなあ。このあたりで結局最後まで見ようかと決める。「おおい田尻、社団戦では大将で出ろよなあ。五将か六将にしてほしいなんて、だめだぜ!」

【準決勝】

 渡辺俊雄ー東野徹男戦は相矢倉。渡辺さんが途中で突然鼻血が出るというアクシデントがあったが東野さんの快勝。さすが元東大将棋部キャプテン。今回は美人の奥さんの応援も効いて、また内容も手厚い勝ち方で危なげなく、決勝まで一直線。

 田尻隆司ー伊藤大悟戦は田尻陽動振り飛車。なんでも指せるというのはうらやましいものだ。作戦勝ちから大さばきで快勝と思えたが激しい順を選んでしまって逆転。勢いのついた伊藤君は手堅くまとめあげた。こちらも安定している。

【決勝】

 アマ竜王二人が敗れ、決勝はいずれにせよ初竜王となる対決。相矢倉の攻め合いで始終難しく、面白い熱戦だった。一時は伊藤君勝勢と見られ、高校生アマ竜王かと控室はどよめいたが、東野さんが手厚く指して勝利をもぎとった。

 いつものことながら優勝者が決まる瞬間というものは感動的だ。まあ、選手の一人としてはちょっぴり悔しいということもあるけれど、この高レベルの中を勝ち抜いていくのは並大抵ではない。優勝の東野さんには惜しみない拍手を送りたい。

 さて、私自身も人の感心ばかりしていてはいけない。一日目終了時点では「引退かあ。。」とも思ったりしたが、代表になれるだけまだましか。また復活(?)めざしてがんばっていきたいものだ。

(了)


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