イベント・レポート

第81回職域団体対抗戦

 〜〜〜リコー(1)2年ぶり8回目のS級優勝〜〜〜

日時:2001年9月30日(日)8:30時〜

場所:千代田区「日本武道館」

リポータ:西田 文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


【多様化のうねり】

 今にも雨がこぼれそうな秋の空、千鳥が淵を見ながら、武道館に三々五々人が集まってくる。たんたんと。
 将棋をやる気分じゃないなんていうほどへこんではいない。マンハッタンに聳えるワールドトレードセンターに飛び込む飛行機の映像は、心に大きな衝撃を与えたままだが、それでも風化しつつある。わずか3週間しか経っていないのに、目の前のあれやこれやが近づいては通り過ぎていく。
 「野球をやる気分じゃないよ。でも仕事だから仕方がない」、大リーガーの監督がテレビで言っていた。
 ヒトゲノムは同じゲノムを複製しながら、どんどん変化するゲノムも作っていく矛盾屋だ。人はどんどん多様化し、あちこちでいろんな警鐘をならしながら時の中を流れていく。
 武力による報復は根本的な解決にはならないと言うものの、今すぐどうすればいいのか、明快な解は得られない。
 そして、今まさに空爆が始まった。


【多様な日曜日】

 9月30日は、リコーのラグビーの試合もある。会社では応援に行こうという呼びかけがされている。一方、将棋の応援に行くような酔狂な人は居ない。同じ日、高橋尚子がベルリンのマラソンにでる。結果、宣言通りの新記録をうち立てているから驚く。そして、空爆開始の報と前後してシカゴのマラソンで、高橋尚子の記録が破られたという。
 将棋の人気は、羽生七冠ブームをピークに、下降線をたどっているような気がする。遠くチェスのチャンピオンがコンピュータに負かされたというニュースも影響していると思う。有限なゲームは必ず解が見つかるからだ。答えがあるとわかっているものは、真理を探究するものにとって、魅力が薄い。
 社会人チームのナンバーワンを決める職団戦は、新聞やテレビのネタにさえならない。こつこつと優勝を果たしてきているリコーの社内でさえ、認知度も低い。
 それでも、将棋は面白い。負けたときの悔しさは腹が立つが、勝ったときの優越感は滅多に味わえないものだ。多様化の日曜日に、武道館がいっぱいになるだけでも、大したものさ。


【リコー(1)S級優勝2年ぶり】

 今年の参加チーム数は、430。5年前の96年秋の第71回大会には608チームが参加していた。
 S級はリコー(1)が、野山知敬、瀬良司、菊田裕司、牧野正紀、山田洋次のメンバーで、見事に優勝した。わずか8チームで覇を競うS級は、全国代表クラスの強者揃い。その厳しい敵の中をリコー(1)は、予選リーグをすべて4勝1敗の3連勝と1位で抜け、決勝トーナメントでは準決勝毎日コミニュケーションズ(1)に4勝1敗、決勝はNEC(1)に3勝2敗と勝ち抜いた。
 今年は、全員気合いが充実していた。みんな頑張った。それにしても主将野山のまとめぶりが光る。将棋の団体戦の妙味がここにある。野山は1局ごとに、オーダーを組み替え、苦心の作戦を重ねた。メンバーは振られた役割に最大限応え、瀬良、菊田、山田と3人が5勝0敗の全勝をやってのけた。中でもプロ7人抜きをやりアマトップ3に数えられる瀬川晶司さんを予選リーグと決勝トーナメントで2度も当たり、2度とも倒した瀬良の剛碗が際だつ。瀬川さんも横歩取りの最新型で、新研究を繰り出して戦った。その研究と心意気を、大いに讃えたい。
 何よりも、5人の気合いの充実には、野山のアマ名人戦奮闘レポートが効いていると思う。山籠もりをし、将棋の研究と詰将棋に挑む男の姿は、感動を誘わずにはいない。


【リコー8チームの奮戦】

 リコーは(2)から(7)までと、東京リコーが、参加している。いくら野山のレポートが素晴らしくても、凡夫にはあまり効き目はないようだ。
 リコー(2)以下は、前回の成績で、クラスが振られる。今回は東京リコーがAのほか、A(2)、B(3)、D(5)、E(4),E(7)、F(6)に散らばっている。メンバーはその時点のレーテイング順に割り付けるので、順番とクラスが必ずしも一致しない。
 東京リコーは藤森、名田、太田、星出、高橋の5人で、過去最高のベスト4となった。次回は優勝を誓っている。
 (2)はA級で、谷川、坂下、藤原、宮田、岡田。3回戦敗退のベスト16。ここのところ社団戦で好調だった岡田が力を出し切れなかったようだ。もっとも、3回戦では谷川俊昭対樋田栄正のビッグ対決が実現した。
 (3)はB級。椋木、桑山、吉中、小林、庭野で、1回戦敗退の後、慰安戦を勝ち抜き4回戦まで進んだ。いわゆる裏街道で、賞品稼ぎ。桑山が5勝0敗と実力を見せつけた。この辺が社内レーテイングの泣き所なのだ。
 (5)はD級、竹島、宮崎、平田、飯島、西田のメンバーで、2回戦敗退、指導対局コースとなった。
 (4)はE級。伊藤、田中、樋口、槙、土肥、1回戦は死んだ振りをして、慰安戦を勝ち抜き、慰安戦優勝している。伊藤が5連勝と星をのばした。
 (7)もE級。須田、竹中、安宅、鈴木、近江。2回戦敗退。
 (6)は、F級。豊岡、宇田津、矢口、神山。慰安戦の3回戦まで進んだ。
 今回は、各チームともそこそこの成績を残した。

【祝勝会】

 表彰式、社会人ナンバーワンチームの優勝を成し遂げた5人の男のさわやかな顔があった。野山、瀬良、牧野、菊田、洋次、誇り高き男達。強いものの集まりが勝って当たり前という時代は去った。拮抗した実力の敵の中で、個人の力とチームの気合いとが融合してはじめて団体戦の勝利がある。野山の苦心、牧野のファイト、瀬良の大魔神ぶり、菊田と洋次の5連勝。感動的なシーンを沢山見せてもらった。素晴らしかった。

 飯田橋の近くまで、強い雨にうたれて、かなり濡れたが、みんな心浮き浮きだった。おなじ飲み屋にプロセス資材のメンバーと、NECのメンバーが居た。闘い終われば、皆将棋の虫。

 来春の日本選手権は春優勝、秋ベスト4のジュポン化粧品がでることになる。春予選リーグを抜けられなかったリコーはもう一年辛抱しなくてはならない。しかし、今日の団結力が有れば、来年こそは春、秋優勝ができる。

 それにしても、マドンナの居ない秋の夜は長い。


【リコー(1)結果】

予選一回戦 日本レストランシステム 4-1
 山田○−×長沼
 野山○−×木村秀利
 牧野×−○石井豊
 菊田○−×堀井淳之
 瀬良○−×秋山太郎

予選二回戦 NEC 4-1
 牧野×−○山本圭一
 瀬良○−×瀬川晶司
 野山○−×加藤徹
 菊田○−×林隆弘
 山田○−×辻清治

予選三回戦 プロセス資材 4-1
 野山×−○遠藤正樹
 牧野○−×青野功
 山田○−×石田宏
 瀬良○−×小林庸俊
 菊田○−×河上良彦

準決勝 毎日コミュニケーションズ 4-1
 瀬良○−×佐藤歩
 牧野×−○古作登
 菊田○−×上地隆蔵
 山田○−×水沢桂介
 野山○−×下村龍正

決勝 NEC 3-2
 牧野×−○長岡俊勝
 菊田○−×辻清治
 瀬良○−×瀬川晶司
 山田○−×林隆弘
 野山×−○山本圭一

個人別成績
 野山 3-2
 瀬良 5-0
 牧野 1-4
 菊田 5-0
 山田 5-0


 (完:記01年10月8日)


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