イベント・レポート

第53回全日本アマチュア将棋名人戦 全国大会

〜〜〜準アマ名人に田尻君、惜しかったね〜〜〜

年月日:1999年9月4日(土)〜6日(月)

場所:中央区東京ホテル浦島

主催:(社)日本将棋連盟

リポータ:西田 文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


第53回全日本アマチュア将棋名人戦 全国大会

〜〜〜準アマ名人に田尻君、惜しかったね〜〜〜

日時:99年9月4日(土)〜6日(月)

場所:中央区東京ホテル浦島

主催:(社)日本将棋連盟

【今年は二人】

 全国から予選を勝ち抜いた精鋭62人プラス前名人と支部名人の64人が、アマ名人の夢を描いて集う晴れの大会。ここへ来るまでが大変だ。ほぼ一県1名だが東京の3人、大阪・愛知・神奈川・埼玉・千葉・京都・兵庫の各2人は総人口が多いので妥当なところだろう。しかし北海道・青森・福島・静岡・岡山・広島の各2人はいかがなものかと思う。まあ、後援が全国地方新聞社ということでやむを得ないのだろう。

 今年のリコー勢は、神奈川県代表の山田洋次と前名人で招待の田尻隆司の二人だ。山田は3回目の出場で初優勝を狙う。田尻は9回目の出場で前人未踏の3回目の優勝がかかっている。

 年齢を見ると、82年生まれの岐阜県代表加藤幸男さんが最年少だ。たしかつい最近高校竜王をとったばかりだ。名簿では岩手代表の日野さんが27年生まれとなっているので、この方が最年長ということになる。

 将棋部の仲間にチェックしてもらったところ、この64人のなかに元奨励会の人が少なくとも13人はいるようだ。テレビの解説で森下8段がいっていたが、元奨励会員対学生強豪という図式が成り立つようだ。

【予選リーグ】

 初日は予選リーグが行われる。4人ずつ16組に分けて各組で2人通過2人失格という仕組みだ。つまり2勝すれば通過、2敗すれば失格ということになる。

 前夜祭での抽選の結果、山田は5組、田尻は11組という。とりあえず同士討ちは免れた。

【残酷なハプニング】

 9月4日の土曜日。ホームページへの取材と、二人の応援をかねてホテル浦島に出かけた。会場に着くと、ドアが閉まっていて、入ることができない。会場が狭いので7人位ずつ、時間交代だという。

 こんなことがあって良いものだろうか? 主催者の大会会長である二上さんにお伺いしたい。

 入れないなら入れないと、事前に告知を徹底すべきでしょう。

 当日になって、わざわざ出かけていって、挙げ句の果てに、入れないなんて、ひどいじゃないですか。

【1勝1敗】

 我慢して、順番を待ち、やっと中にはいることができた。





 山田は1勝して2戦目を戦っている。短パンにTシャツというラフな格好だ。相手は新潟代表の北村さんだ。相振りから敵の玉頭めがけて攻めているが、どうも一枚足りない感じだ。案の定、厳しい反撃にあって、負けてしまった。

 田尻は意外にも1敗を喫して2戦目を指している。相手は愛知代表の谷畑さんだ。会場に入ったときには、ほぼ田尻が勝勢だった。

 山田も田尻も1勝1敗となって、3戦目に予選通過をかけることとなった。この3戦目から、対局数が減るので入場規制が解けた。

【決勝トーナメント進出】

 予選リーグ3回戦は3時頃から始まった。山田は1局目に対戦した静岡代表の前川さんと。同じ人と2度当たるのはあまり面白くない。やはりアマ竜王戦でやっているように、隣のブロックの人と当てた方がいいと思う。

 山田は終盤読み間違いがあったようで、負けてしまった。

 田尻は支部名人で招待の元奨励会3段の小泉有明さんだ。田尻は急戦向かい飛車の陣立てだ。勢いよく左の桂馬が跳ね出して大決戦となった。小泉さんもじっくりと読み、見応えのある将棋となり最後は田尻が一手勝ちを収めた。





【決勝トーナメント】

 翌日は、体がいうことをきかないため、観戦はあきらめた。きけば、田尻が残っているという。すごい。

 因みに某インターネット道場に出没しているアマ強豪でこの大会に来ている人が、少なくとも六人もいるそうだ。ハンドルネームで出ているので確かなところは判らないけれど、かなり多くの人がインターネットを活用しているようだ。

 田尻も天草に居るので対局の機会が少ないが、インターネット道場で、ずいぶん調整ができたという。

 

【準決勝】

 これは、テレビの放映で急所だけ森下8段の解説で見ることができた。

 神奈川代表の瀬川晶司さん対宮城代表の加部康晴さん。居飛車穴熊の加部さんが馬を8八に引いたのが敗着で7七に引いておけば、加部さん有望だったという。

 田尻は東京代表の秋山太郎さんと。振り飛車の田尻が金を犠牲に飛車が成りこんだ手が思い切った手で、秋山さんの金と桂馬が遊び駒になって、金得というか金桂交換程度の差だと森下八段。結局、田尻が勝ち上がった。

【決勝戦】

 田尻・瀬川戦は森下八段の解説、中倉宏美女流1級の聞き手で今日NHKの教育放送で放映された。後手田尻が立石流の四間飛車。対して瀬川さんは玉頭を盛り上がって、面白い将棋になった。

 森下八段は10年くらい前にアマプロ王座戦で田尻と戦ったことがあるという。その頃は居飛車党だったと思うといっていた。

 聞き手の宏美さんは、以前田尻さんに教えてもらったことがあり、感想戦でも穏やかでとても優しい人だったという。

 初めは瀬川さんが指しやすかったが、辛抱して陣形を整えた田尻が形勢を盛り返し、そこで更に踏み込んでいれば優勢だっただろうという解説。

 森下八段は、二人の指し回しが緻密だと言い、アマの将棋が昔の小池重明さんのころは戦いになって力の強い方が勝つという時代から、緻密な計算の積み重ねに変わってきたという。

 終盤、玉頭の攻めが炸裂して、瀬川さんが田尻玉を見事にしとめてしまった。三度目の優勝はならなかったが、名人・準名人と二年連続の快挙はすごい。

(完:99年9月23日 記)

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