イベント・レポート

アマ竜王戦敗戦記+観戦記

年月日:1999年6月26日(土)、27日(日)

場所:ホテル浦島

リポータ:野山 知敬 


<序奏>

 5/5に大阪代表となった。決勝の相手は全国大会常連の木村秀利君。大激戦だっただけにこの勝利はうれしかった。アマ竜王戦は3度目の代表だが、もう6−7年ぶりになる。

 全国大会当日は昼すぎの新幹線にて東京へ向かう。最近残業続きだったが忙しいほどけっこういい結果が出る。忙しいことを言い訳にしてはいけない。

 当日朝は月刊棋譜を4局、大山康晴全集を8局並べてきた。車中ではダニエルスティールの小説を読む。ちょっと雨模様の空。

<前夜祭>

 二上会長はじめご挨拶。今回は加藤一二三九段が審判長で、席上では十段戦のことを話されていた。

 さて、選手それぞれの挨拶がはじまる。私の1回戦の相手は北村公一氏。いわずもがなの強豪だ。私の挨拶は「普段、正棋会で指している将棋を指すだけです。」これは偽らざる心境である。ちょっと鬼ブロックかなと思ったが、まあ全国大会なのだから仕方がない。強豪と当たる方がむしろ面白いと思いながら、ぐっすり眠る。

<予選>

 1局目は先述のとおり北村公一氏と。氏とはいままで数局指しているがすべて氏の振飛車だったが、今回は相矢倉。私は自分の将棋を指すだけなので、後手番ながら7三銀。角交換からお互い銀をさばこうとするねじりあいとなったが、北村氏の攻めがややきれもようだったようだ。ふとまわりをみると宮田君が観戦にきている。こんなとき優勢な局面だとほっとする。まずは1勝。

 2局目は重田真人氏と。氏もレーティング選手権優勝の強豪である。過去、職団戦で2局あたり、1勝1敗。

 振り飛車党の氏は四間飛車穴熊。対して私はいつもの4四角戦法。中盤、氏に見落としがあり、あっさり飛車先を破れて優勢になったがその後の氏の追い込みはすごく、秒読みに入ってからは逆転したかと思ったがぎりぎり一手残っていた。

 これで予選通過。強豪を連破してのことだけに、これはいけると感じた。関西勢では辻清治さんも2−0で通過。GWのレーティング選手権での活躍といい、乗りに乗っている。くじびきでもラッキーくじをひき、戦わずして2日目にのこっておられた。

 予選3局目を見物していると谷川さん、豊岡さんが応援にきてくれた。これで試合後の楽しみも確定して万全の体制(のはずだった。。。)

<トーナメント>

 実は机の上に名札が置かれるまで対戦相手はわからない。私の相手は長崎の伊ケ崎博氏。彼とは九州で田尻研究会に参加したとき1局指しており、相矢倉で攻めつぶされている。それにしても強豪とばかり当たるもんだな、さすがに全国大会だなと思ったが私はむしろ面白くてたまらないという気持ちで指していた。

 局面はやはり相矢倉。中盤、馬で押さえ込みにかかったが、入城した王を角でにらまれて大変うけにくい。こわくても米長王でがんばるんだったかと後悔したが仕方がない。その後優勢な伊ケ崎さんに見落としがあり、一瞬逆転したかと思ったがそれもつかのま、相手王は寄らず、無念の1回戦負けとなった。

 感想戦ではどうも序盤で私が失敗しているようで、すでに少しずつさしにくい将棋だったようだ。ここで自戦記が終わってしまうとは・・・なんとも残念。

<一日目終了後>

 局後は谷川、豊岡、瀬良のメンバーで銀座へ。話題は多岐にわたり、企業秘密の話ばかりなのでここにはとても書けない。(なあんて、おおげさな)

 ともあれ、残念には違いないがこれですべてが終わったわけではない。何度も挑戦すればそのうちいい結果の出ることもあるだろう。それを信じてがんばろう。前向きに生きること、それが私の人生訓だ。

<二日目:ベスト16>

 ここからは観戦記になる。二日目に残った人たちはさすがと思わせる強豪ばかり。ベスト16の主な対戦をとりあげると・・・。

 早咲ー長岡戦は相がかり。序盤で時間を使いすぎた長岡さんが中盤で駒損して完敗。

 篠田ー辻戦はおふたりの定跡のような、升田式石田流の形で▲2四歩△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△2二飛とぶつける将棋。結局飛車交換となったが篠田さんが鋭い攻めを決めた。

 桐山ー伊ケ崎戦は相矢倉。棋風どおり受けに回った桐山さんだが粘り強く攻め続けた伊ケ崎さんが寄せきる。

<ベスト8>

 ベスト8は篠田正人ー遠藤正樹、林隆弘ー中田喜文、早咲誠和ー藤本壮太郎、伊ケ崎博ー松田雅泰の組み合わせ。

 篠田ー遠藤は相穴熊。と金を4枚も作った篠田さんが手厚い攻めで遠藤穴熊を葬る。

 林ー中田戦は角換わり。中田さんが指せるかと思えたが、終盤はわずかに足らず、惜敗。

 早咲ー藤本戦は相矢倉。藤本さんに相性の悪かった早咲さんだが角の丸得で圧勝。

 伊ヶ崎ー松田戦も相矢倉。伊ヶ崎さんの攻めが決まって圧勝。乗りに乗っている。本人も「準決勝のかべをここで越えたい」と意欲満々だった。

<準決勝>

 さて、いよいよ準決勝。緊張感が会場を包む中、安食女流や大庭美夏女流、馬場さやかさんや伊藤瑞穂さんなど女性の姿も多く、雰囲気を和らげていた。

 篠田ー林戦は篠田氏銀矢倉。序盤、林氏作戦勝ちに見えたが自重しすぎて篠田さんの反撃を許してしまった。最後は見事な寄せで締めくくる。

 早咲ー伊ヶ崎戦は相がかり。中盤の勝負どころで伊ヶ崎さんに大ポカがあり、あっけなく終了。

<決勝>

 泣いても笑ってもとにかくこれで今年のアマ竜王が決まるのだ。すでに両者はプロ竜王戦出場がこれで決まったわけだが、早咲さんは勝てば3人目の2連覇。篠田さんは勝てば初のアマ竜王とお互い大一番であることは言うまでもない。

 さて、将棋は早咲さん先手。横歩取りの注文をつけようとした篠田さんだが、早咲さんが角道を止め、銀矢倉となる。実はこの二人は2年前のレーティング選手権決勝でも当たっており、そのときと同じ戦形となったが、以前は早咲さんが勝っている。

 中盤まで同じようで若干違うような展開となったが桂損して銀をさばこうとした早咲さんの構想がやや無理で、手に乗ったまま入玉を果たした篠田さんが堂々の優勝。応援にきていた同じ東大OBの樋田さんが「篠田は入玉なんか狙うわけないよ」と言っていたが、ここは大事な一戦。しっかりと早咲さんを指し切りに導いた。

 そして、実は、実は、実は、なんと篠田さんは翌週に結婚式を控えているのであった。この優勝は二重のおめでた。世の中にはなんと幸せすぎる人もいるものなんですねえ。

ともあれ、最後の一言はこれしかない。「篠田さんおめでとう!」(了)

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