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イベント・レポート

第11回 全国障害者将棋大会

   〜〜〜あの笑顔が勇気をくれる〜〜〜

月日:1998年10月4日(日)

場所:東京都障害者福祉会館(港区)

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


 

【赤い羽根】

 朝8時過ぎ、いい天気だ。昨日よりも、もっと秋晴れ。身も心もさわやかな年に一度のボランテイアデー。

 荻窪の駅前にはボーイスカウトの少年達だろう、赤い羽根の募金をしている。彼らもボランテイアだろう。

 

【全国障害者将棋大会実行委員会】

 私がはじめてこの大会に関わったのが一昨年の大会。何故か朝日新聞の資金援助が打ち切られ、大会の開催が危ぶまれていた。アマレンの西村さんや、東将連の今西さん、フェアリープリンセスの仁科さん、リコーの谷川さん達が何とか開催させようと努力していた。

 私は事情も立場も理解しないまま、大会の申し込み受付窓口を引き受けていた。アマレンが、前回の出場者名簿の人に案内状を出す。申し込み票を私宛に送る。私はアマレンにパスする。アマレンから参加証を送るという動きだ。

 一昨年のことは、本イベントレポートにアップした。去年は、受付窓口はやったが、当日は職団戦と重なって荷物運びだけ手伝った。晶ちゃんと南さんが当日は手伝ってくれた。これは晶ちゃんが本イベントレポートのデビュー作で披露している。

 今年は栢沼明さんが代表につき、運営メンバーも、充実してきた。何しろ、「障害者自身の手による」将棋大会なのだ。

 

【全国から118人参加】

 北は岩手から南は九州まで、全国から将棋愛好家が集まってきた。申し込みされた方で不参加になった方も10%ほどいる。やはり障害者の方は健康の維持がとても大変なのだ。自己申告の棋力によって3部に分かれて競う。

 司会も実行委員の手で行われる。リコー手話サークルの藤村さんが壇上の端にきりりとたち、歯切れ良く、堂々と、笑顔いっぱいに、手話通訳をする。中山さん、酒寄さん、宮澤さんの4人が来てくれた。開会と閉会は一堂に会するが、試合は、2カ所に分かれて行われる。

 来賓の挨拶で、谷川さんも一言激励を述べる。スカイパーフェクTVが、「ノータイム将棋」という番組のために谷川さんを追っている。

 

【晶ちゃんの笑顔】

 晶ちゃんは、障害者の対局に付き添って、すぐに誰とでも仲良くなってしまう。女神に付き添われた人も、対局相手になった人も、幸運だ。「なにい、56歩?いいよ」「あちゃあ、あんなことされたよ」得意のおしゃべり将棋で、周りが一段と明るく華やかになる。晶ちゃんが、棋譜の読み上げができるので、障害者の方もやりやすそうだ。

 なかには、蚊の鳴くような声でしか棋譜を伝えられない人もいる。また指し手をいうのに、ずいぶん苦労して腹の底から絞り出すようにして言う人もいる。

 

【棋譜読み上げ】

 私も、棋譜読み上げをやった。目の見えない若いAさんに、相手の指し手を読であげるのだ。目の不自由な人はみんな自分の将棋盤と駒をもっている。升目に「障子の桟」がついている。なかには、読み上げやすいように、符号を升目に書いている人もいる。

 そして、駒の端に、釘が打ってある。あの僅かな感触で、金や銀を区別するのだ。そして、時々、盤面全体を全部の指で探る。ずいぶん大きなハンデだ。飛車が向かい合って駒がぶつかり、「危ない」と思った瞬間に、飛車をす抜きされてしまった。

 しまったという表情を隠さずに、Aさんは頑張った。守りの金を攻めに使ったりして何とか一矢むくいんとするが、さすがに追いつかなかった。

 一昨年一部の決勝までいった目の見えないFさんも、今年は出だし2連敗と調子を落としている。佐藤康光名人の目隠し将棋多面指しは、テレビで見たが鮮やかだった。あそこまで強くなれば、ハンデを克服できるのかも知れないけれど。

 

【指導対局】

 所司六段、谷川女流三段、宇治女流初段に混じって谷川俊昭アマ六段も指導対局をやっている。皆さん、色紙を用意して、上手を打ち破るのを待っている。谷川女流三段は「これはただの嚇しの手だったの、ごめんなさい」などとやっている。

 

【ボランテイアって何だろう】

 「イミダス‘96」によれば、「自発性、非営利性、公共性、社会開発性の理念に集約される」とある。日本でも、85年頃からボランテイア活動が注目されだして、30%以上の人がボランテイアを経験しているという。

 本当に、そんなにいるんだろうか。

 身近なところでの原点は、電車やバスで、お年寄りや体の不自由な人に席を譲るという素朴なことだと思う。めったにこういう光景は見かけない。私自身も、くたびれ果てて座っているときに、なかなか席を立つことができない。

 まして今は不況のまっただ中、自分の暮らしを守るだけで汲々としている人が多いだろう。競争社会のぎすぎすした日常のなかで、なかなかボランテイアは難しいと思う。もっと行政なり実力ある組織なりが担うべきことが多いのではないだろうか。

 アマチュアの将棋大会は、ほとんどなにがしかの組織の恩恵を受けている。何故よりによって、障害者だけが自分たちの手で運営しなくてはならないのだろうか。

 

【一部優勝椋木さん】

 やはり椋木さんが勝った。体調は万全ではなかったようだが、指し手は安定していた。居飛車党で、寄せも鋭い。昨年は職団戦に出たので、こちらには出られなかったが、一昨年に続いて2度目の優勝だ。おめでとう。

 参加者の皆さん、来年こそは頑張って。

 (<遡蒜僚∧孑塢沌⊂(完:98年10月18日 記)

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