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イベント・レポート

リコー将棋部 冬合宿 ’96

日時:1996年12月14日(土曜)〜15日(日曜)

場所:神奈川県津久井市「コミュニテイ津久井湖」

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp
コミュニテイ津久井湖
スイス式リーグ戦
夕食とキングダム
ペア将棋

コミュニテイ津久井湖

 師走の道はどこも混んでいると思い早めに家を出たけれど大はずれで、久しぶりに走る中央高速道路はがらがらだった。
 冬の朝日の中に燃える紅葉や山の陰影は、助手席にゴッホがいたらさぞ感動するのだろうと思った。
 ゴッホは高速で移動する景色なんて見たことがあったのだろうか? もっとも、走りながら隣のゴッホに、「ブン君ここだここ、ここで止めてくれ給え」などとわめかれては困るな、なんて一人でザードに話しかけたりした。
 切なく歌う坂井泉水の歌詞にはいつもながらしびれてしまう。
 中央高速は車窓から多摩川や外の景色が見えるのがいい。
 高尾山の紅葉を楽しみ、相模湖を眺めながらもあっという間についてしまった。
 コミュニテイ津久井湖は林に囲まれた5階建ての大きな建物だ。
 側の林の中で、大量の落ち葉の舞いと、鳥のさえずりに歓迎された。
 まるでぼたんゆきがぼたぼた落ちてくるときのように茶色の葉っぱがカサカサ音を立てながら次から次へと舞い下りてくる。
 もっとゆっくり落ちてくればいいのに、重力の法則にしたがってかなり速いスピードで落ちてくる。
 着地するとまた、カシャカシャ音がして面白い。

 4階の和室二部屋をリコー専用で使った。
 杉の宿では、他のチームの人たちと同じ空間を共有するので、雑然とするけれど、こうして専用で使う方がいい。
 また、対局中は禁煙にしてもらったのも有り難かった。
 佐々木さんによると禁煙だと田尻さんは香車一本弱くなるそうだけれど。
 最近はアマチュアの大会は禁煙が多いから練習によいのではなかろうか。

 交通の便が悪いせいか集まりが遅く、部会はスタートが少し遅れた。
 司会をする主将の谷川さんはおでこにガーゼを張っている。
 どうせ酔っぱらった電信柱が谷川さんに激突したのだろう。
 最近習い始めたという手話で「タニガワデス」とやってくれた。
 トップニュースは何といってもリコー将棋部に初めて女性部員が誕生するということだ。
 大森事業所の西川晶さんというひとで、合宿に来る予定だったが急遽都合がつかなくなったらしい。
 また、全国障害者将棋大会で椋木さんが優勝したこととホームページ立ち上げで谷川、小川、西田がみのり賞をもらったことが発表された。
 私もこの場を借りて、いつも読んで下さっている皆様にお礼を申し上げたい。
 何しろファン有ってのレポートだから。
 

スイス式リーグ戦

 やがて公式対局が始まる。
 Aクラスに屋敷七段・師範と鹿島のマドンナ林まゆみ女流初段と単騎突進のマドンナ早水千紗女流2級。
 Bクラスにライエルさん、しゃきしゃきのマドンナ小野三枝子さん、おしとやかのマドンナで86年度の女流アマ名人の是安真理子さん、なにわのマドンナ棚ちゃんこと富士通の棚田まゆみさん、火消しのマドンナで東芝電池の竹内幸代さんがはいる。
 Cクラスにはほほえみのマドンナ東大大学院の池上絵美子さん、ベレー帽のマドンナでキングダムを率いる加賀さやかさん。
 なんと七人のマドンナが参加するというリコー将棋部十大ニュースのトップを飾る珍事となった。
 ひとえに谷川さんの隠れた才能に敬服、そして感謝。
 この腕なら、リコーをやめても原宿の街角でタレントのスカウトをやってでも食べて行けることうけあいだ。

 公式対局は20分30秒ルールで、始まった。
 時計を置く台が無いのが不便だ。
 将棋でこんなに大勢来たのは初めてだという。
 宿も、お客様の声を聞けばだんだん改善されるだろう。
 ついでに言えば、宿の名前が長くて言いずらい。

 私はBクラスで、初戦はしゃきしゃきのマドンナ小野三枝子さんだ。
 フェアリープリンセスの1軍だ。
 背が高くスラリとしている。
 七人のマドンナのお姉さん格のようだ。
 私が公式戦で女性と対局するのは社団戦に次いで二度目だ。
 指しているうちに、敵の思うつぼにはまっているのが分かった。
 角交換して、いかにもすき有りだったので角を打ち込んだら、あっという間に追いつめられ召し取られてしまった。
 仕方がないから、駒損のまま、がりがり攻めていき、受け間違いのミスにつけ込んでやっと逆転できた。
 小野さんすいません、今日のつきまでもらってしまって。

 第二局目は佐々木猛さんで、禁煙効果で、優勢になりそのまま押し切ることができた。

 ふと洗面所に行くと廊下で竹内さんが防火用水の赤いバケツの水を灰皿にかけてる。
 この人の先祖は、深川か木場の「た」組の火消しの一族に違いない。
 私は先週から風邪に冒されて熱は出るは、鼻は止まらない、おまけに俗称「熱の花」といわれるウィルス性のヘルペスが鼻の下に出来てしまい見栄えは悪いし体調も冴えないし、折角マドンナが沢山いるのにろくな会話もできていない。

 それでも将棋は小野さんにもらったラッキーを頼りにヨタヨタしながら連勝し、三局目は樋口さんに当たった。
 横歩取りから生角を打たされておかしくしたかと思ったが、樋口さんに見落としがでて、一気に勝負がついてしまった。

 四局目は3連勝同士の決勝戦となりヨーロッパチャンピオンのライエルさんだ。
 振り飛車に対し、左銀が出ていき、いい勝負になったのに、途中で勝負手を見送ってしまい、その後いいところなく完敗してしまった。
 その勝負手は、B級の決勝戦を勉強にきていた庭野さんの指摘だった。
 △1八竜△1七馬となっているところへ、▲1九香(角がきいている)と打つのだ。
 それではっきり良いというわけではないけれど勝負するべきだった。
 悔やまれる。
 NHK朝連のふたりっ子の中で銀じいが森山に「最善手ではなく相手が間違う手をささなあかん」とか言ってたっけ。
 いずれにしろ、まだまだ私は強くなれるはずだ、何しろ知らないことが多いし、詰め将棋もほとんど解いたことがない。
 強くなるためにやることはいくらでもある。
 公文式詰め将棋とか、公文式ヒネリ飛車戦法などというのを出版したり、教室を開いたら、はやるのではないだろうか。

 B級三位は木村健二さんだ。
 マドンナ達は慎み深く、棚ちゃんと竹内さんが白丸を一つづつあげていた。
 吉中さんは公約通り棚ちゃんに報復したようだ。 人でなし!

 組み合わせの都合上、女性同士の対局を避けたりしたこともあってかなり厳しい結果になってしまったけれど、この程度のことに懲りず是非次回も参加して欲しい。
 四人とも、このクラスで戦える力があると思うし、今回の結果がレーテイングに反映されれば適正な場所で戦えるだろうし。

 C級は岡田君がぶっちぎりの四連勝で優勝、安宅さんが二位、宮崎さんが三位となった。
 二人のマドンナには少し手合いがきつかったかもしれない。
 今井さんが「俺の唯一の白星はこの人から貰ったよ」と嬉しそうにしていたからマドンナ効果は充分だろう。
 リコーの部員もレーテイングがかかっているから、必死に勝ちにいくので、いくら可愛いマドンナでも簡単には負けられないのだ。
 やはり、適正な手合いをつけるのがよいと思う。

 A級は屋敷師範が現れないまま、菊田さんが四連勝で優勝し、名田さんが二位、谷川さんが三位となった。
 さすがに林さんは五分の星をあげ、早水さんも一つ入れている。
 野山さんが、練習で早水さんと二回指して負けそうになったと言ってたから近いうちこのクラスでも優勝を争うようになるかもしれない。
 何しろ中学二年だという、末頼もしいマドンナだ。
 

夕食とキングダム

 夜はバーベキュー会場を素通りして奧の一室でリコー専用の食事となった。
 刺身に、鍋に、唐揚げ、そしてお弁当と豪華だ。
 我らが幹事の小林君と伊藤君はくるくるこまめに働きベストの人選だ。

 近くに「海よりも深あい訳」があって禁酒している加賀さんがいた。
 きっとお酒を飲むとストリーキングをする癖があるので、一回目は禁酒したというのがその深あい訳だろうと邪推している。
 キングダムのことを聞いた。
 会員は80人で、主にプロの対局やイベントをチェックしている。
 「月下の棋士」という漫画を読んで、作中人物の誰かのモデルになった升田幸三のことを父上から聞いてファンになったという。
 そして何か将棋界のお役に立ちたいと思い「将棋界」のファンクラブを作ろうと思い立ったという。
 何も知らずに「追っかけギャル」とばかり思いこんでいた私が恥ずかしい。
 この心意気と行動力には驚嘆と尊敬。
 将棋好きなものにとって嬉しくも有り難いキングダムなのだ。
 しかも80人を束ねている。
 華奢な体の何処にエネルギーが潜んでいるのか、イラストの仕事をやりながら土・日はキングダムに捧げているのだ。
 機関誌の「TIARA」4号を貰った。
 「何でもアタック特集号」で、盛り沢山な記事にイラストや漫画がついていて面白い。
 その漫画に登場する菊田さんの顔が異常に美男子なのが引っかかるけれど。
 これを機会にアマのイベントにもたまには顔を出して欲しい。
 もちろんリコーの合宿は最優先で。
 そして、今回の冬合宿もイラスト付きで書いてくれるようなので、楽しみだ。

 夕方から八人目の八重歯のマドンナがかけつけてくれた。
 明るくって楽しい人だ。
 週刊将棋などで、松本恵という名前の記事があったらそれは彼女なのだ。
 最近号では無記名で「清水女流名人と1万人対決」の記事や(恵)で「マジシャン将棋大会」を書いていた。
 取材は記事ばかりでなく写真も、ばしばし取るのだ。
 この合宿も記事になると思うので、乞うご期待だ。

 食後はそれぞれ相手を見つけて申し合いをしている人、4人一組のゲームをしている人、風呂にいく人、将棋のイベントのビデオを見ている人。
 清水女流名人と幕張のスタジオでトークしている谷川さんのしゃべりは結構評判がいい。
 将棋は早水さんと竹内さんが一番手直りで指し、どんどん上手の駒が減っていき8枚で止まったらしい。
 その後棚田さんと早水さんの早指しが面白い。
 美濃に囲う棚ちゃんの桂頭へ歩が伸びる。
 「ねえ、あんた、さっきからそこばかしきてへん」「ええ、あたし単騎突進するのが好きなんです」。
 漫才のような会話が延々と続く。
 それをほほえみのマドンナと火消しのマドンナと私が見ている。
 しゃきしゃきのマドンナから「もう寝なきゃ駄目よ」と中学生の早水さんに声がかかる。
 でも、若いって素晴らしい。 眠くないのだ。
 

ペア将棋

 二日目は、部会で昨日の表彰式の後、「将棋部の今年の十大ニュース」を発表している。
 そして、お待ちかねのペア将棋だ。
 組み合わせは毎回変わるが個人で勝ち星の多い人を表彰する。

 私は初戦アナウレシや嬉し、棚ちゃんとペアになった。
 相手はしゃきしゃきのマドンナと池田君ペア。
 打ち合わせは綿密に盤上は大胆に、飛・角4枚取ったら金を4枚玉の周りに打たれて手こずった。
 しかし息のあったペアリングで圧勝してしまった。
 もしかしたらこの呼吸の良さは最強ペアかもしれない。

 二回戦は私と高田さん、相手はベレー冒のマドンナの加賀さんと牧野さん。
 加賀さんは一手指す毎に牧野さんの顔を見て不安そうにしている。
 途中は混沌として負けそうになったけれど、ちょっとしたミスをついて銀をぽろっと取ってしまった。
 加賀さんごめんごめん。

 三回戦は全勝つぶしの強手にあって、2連勝の私と伊藤君が屋敷・小林ペアに当てられてしまった。
 しかし勇敢に振り飛車から仕掛けて猛攻をした。
 少し足りなかったけど、伊藤君も私も二日目から登場した屋敷先生に教わって満足だった。(^_^) 

 結局ペア将棋で、3連勝したのなにわのマドンナ棚田さんとゆうべ菊田さんに勝った(もちろん練習で)とご機嫌の庭野さんの二人だった。
 女性の数が少ないけれど谷川さんの工夫で、みんな1回はマドンナとペアを組めたので楽しめた。
 将棋には違いないのだけれど、別のゲームのような気がした。

 多くのマドンナの参加を得て、各クラスにマドンナがいて楽しい対局ができたし、ペア将棋も大成功だった。
 ペア将棋の組み合わせで見せた谷川さんの手際の良さには拍手を、きてくれたマドンナ達には握手を、できれば熱い抱擁を。(^^;;)
 それよりも白星をあげれば良かったって?う〜ん。

 将棋部員は同じリコーの中でも普段はめったに会わないから、人が人に出会える喜びを合宿では味わえる。
 更に、新しい出会いも味わえて素晴らしい冬の合宿だった。

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