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イベント・レポート

第22回 将棋の日

      主催:日本将棋連盟・東京都 後援:文化庁

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp

会場の雰囲気

指導対局

第一部

第二部

会場の雰囲気

 第22回将棋の日
 1996年11月14日(木曜日)
 場所:東京体育館

 まだ11月の真ん中なのに、天気予報の最高気温は昨日が14度、今日は10度という。急に寒くなって体調維持が難しい季節だ。
 ジャケットの下にセーターを着込んで外にでてみると昨日が急に寒かったせいか案外暖かい。もっとも、お天道様も真上に出ていてもう昼だ。

 会社に入ってワークホリック気味の20数年を過ごし、右肩上がりの時代が峠を越えて、私も有給休暇をとることにあまり抵抗はなくなってきた。
 それでも病気とかのっぴきならない用事のことが多い。今日のように楽しみのために休むのは珍しい。
 平日に将棋のイベントをやって人が集まるのだろうか、第一の興味はそこにある。
 又、なぜ平日に開催することにしたのか不思議でならない。子供や女性にも集まってもらいたいと思うから。

 ところがさすがに22回もやっているだけあって主催者の読みは、にわかレポーターの読みを遥かに上回っていた。
 12時開場ということだったので12時に東京体育館に行くと大勢が列を作っている。
 指導対局の申し込みは500名ということだったので楽勝だとたかをくくっていたらあっという間に抽選も終わってしまった。
 さすがに子供は少なかったけれど年齢層もかなり幅広く女性も追っかけギャルは勢揃いなのだろうか、まずまずのにぎわいだ。


指導対局

 指導対局は広い体育館のほぼ半分を使って二つの大きな長方形がセットされていて、その内側に男性棋士と女性棋士が交互に座る。
 男性棋士はほとんど立ったままで六人を、女性棋士は三人を相手にしている。
 対局している人の外側に三重四重の人垣が出来ている。
 多くのプロ棋士、女流プロをこんなに間近で見ることが出来、ラッキーな人は指導対局まで出来る。
 ちょっと前の秋の職団戦のレポートで「大人達の運動会」が出来ると良いなという夢を書いた。
 まさにそれに近いファン参加型のチョベリグなイベントだ。

 リコー将棋部師範の屋敷七段や師範格の中倉彰子女流二級もやっている。
 テレビのNHK杯の司会でおなじみの山田久美女流二段の顔も見える。
 風邪でも引いたのか彼女に顔をひっかかれたのか野獣こと泉正樹六段がマスクで指導している姿と、座っている女流が多い中で立ちっぱなしで軽快に元気良く指している碓井涼子女流初段の姿が印象的だった。

  我が同志徳増さんが中田宏樹六段を抽選で当てて、飛車落ちで挑戦していた。
 中盤まで指したところで時間が無くなって、判定ということになったが「こちらは銀だけですから負けですね」と中田六段が丁寧に言う。
 周りがうるさかったの「えっ?」と言って聞き直して理解した徳さんの嬉しそうな笑顔がよかった。
 まだまだの局面ではあるものの、と金を作りかなり優性を維持していて下手自信のあるところだ。
 中田六段の判定とコメントは他の対局者にも紳士的で気持ちのいいスマートさだ。

 アマチュアの大会でよく見かける若いハンサムガイが石川陽生五段に角落ちで挑戦している。
 下手側の左翼から端を破り、角が右翼の端に成り込んで圧勝していた。
 プロ棋士も六面指しのハンデの中であんなに強いアマがでてくると意表を突かれてしまうだろう。
 将棋の場合ハンデの付け方は課題の一つだと思う。駒落ちというのはどうも面白くない。

 このイベントを聞いたとき将棋部ではインターネットでリアルタイム報道をしようという案が出た。
 ところがウェブマスターの出張ということで今回は見送ることにした。ただ、レポーターとしては練習のため会場にパソコンを持ち込んでいる。
 デジタルカメラのDC−2Lは谷川さんが調達してくることになっている。

 この指導対局と平行して、来春から開局する“日将連ネット”のデモを淡路仁茂九段の解説で盛大に行われている。
 こちらも人気だ。整理券を出したりして観客の整理にも大分手慣れた感じだ。

 更に平行して10秒将棋のトーナメント1回戦と2回戦が間をおいて行われた。
 先崎学六段、森内俊之八段、佐藤康光八段といった人気棋士があっさり消えて、堀口一史座四段、鈴木大介四段、田村康介四段、久保利明五段が準決勝に進んだ。
 10秒将棋は超若手の独壇場のようだ。この優勝者を当てるクイズが今日のイベントの目玉の一つだ。
 100人に商品がでるらしい。徳さんと私は別々の人にかけてみた。

 他に、「衛星デジタル放送」が囲碁・将棋チャンネルの宣伝コーナーをオープンしていたし、セタや任天堂の将棋ゲーム機やソフトが出ていた。

 3時になってテレビの収録が始まった。12月23日放映という。
 将棋一筋と紹介されたやや太めのデイレクター氏が注意事項の説明をし、ついで観客に拍手の練習をして貰う。
 司会はNHKの村上アナウンサーとさわやかな空色のツーピースに着替えた高橋和女流初段。
 この時点で3500人の入場者がいるとの主催者発表だ。その後も増え続け最終的には5000人近くになったのではないか。アマ強豪のツーショットもちらほら見受けられる。
 こちらは「仕事はどうしたの?」とのろけ合う徳さんとのお互い侘びしいツーショット。


第一部

 第一部は10秒将棋だ。
 準決勝第一局は堀口四段対鈴木四段。
 会場の中央の床に巨大な将棋盤が作られている。駒も巨大で、王将は立てると神吉宏充六段より背が高い。
 壇上で対局し、その横で大盤解説をする。そして巨大将棋盤で観客に見せるという派手な趣向だ。
 しかも秒読みはトーナメントで敗退した中川六段や深浦五段、森内八段がつとめる豪華さだ。
 解説は三浦棋聖、谷川九段などがつとめる。
 俄カメラマンの谷川さんはスタッフバッジをもらって大盤解説のかぶり付きまで行ってホームページ用の写真をパチパチ撮りまくっていた。
 今度の写真は乞うご期待。更に俄カメラマンの奮戦記もそのうち出るかも。

 "将棋の日"と白字が背中に浮かぶ紺のジャージを着た奨励会員10数人が二人一組で駒を動かす。
 初めはすいすい動かし帰ってくるとにこにこして余裕だった。
 しかし角交換したり、飛車が遠くに成り込んだりすると、駒を片づける組、駒を運ぶ組、更に次の手を動かす組と紺のジャージが入り乱れる。
 観客からも、もつれる駒や交錯する紺のジャージに笑いがこぼれる。
 奨励会員の運動会のようだ。因みに対局者には5秒以内では指さないように要請されていたそうだ。
 1局終わる頃には紺のジャージはくたくたになっていた。
 結果は12月のテレビでのお楽しみと言うことにしたい。クイズは準決勝第1局で徳さんが脱落し、第2局で私も外れてしまった。

 第一部が終わったところで着物姿のあでやかな歌手の長山洋子が3曲ほど演歌を披露していた。
 その後しばし休憩となり、ロビーというか通路では新宿の「ザ・将棋」のマドンナがビラを配っていた。


第二部

 5時過ぎから始まった第二部は次の一手名人戦。
 10秒将棋で運を取っておいたから今度は当てるぞー」。
 谷川さんの奥様とお嬢さんで幼稚園の年中さんになった愛ちゃんと、谷川さんと小川さんと七人で挑む。

 対局するのは羽生六冠王と中原永世十段。
 先ほどの巨大将棋盤の両端に雛壇がおかれ座布団と脇息とマイクとモニターテレビがある。
 そこにそれぞれ羽生六冠と中原永世十段が巨大な将棋盤を挟んで遠く向かい合って座り指し手を言う趣向だ。
 駒操作は紺のジャージ。解説は米長九段、聞き手は清水女流四冠王だ。
 次の一手の候補手を出すメンバーは三浦棋聖、谷川九段、佐藤八段、田中九段、X10秒将棋チャンピオン、Y10秒将棋準チャンプ、蛸島女流五段に山田女流二段。

 後手の羽生六冠が四間飛車に振ったところで1回目の次の一手。
 玉を移動するか5筋の歩を突くかしかないところだが、ここで我ら七人は私と谷川奥様だけになった。
 少し進んで羽生六冠の手番、玉を7一におさめるか9四歩と穴グマを牽制するか。早くも私一人になってしまった。
 また直ぐに羽生六冠の手番、5四歩が山田女流2段の候補手、1二香が佐藤八段の候補手。その他もあるところ。私はここで外してしまった。
 もう一回持ちこたえればフロアに降りて赤、青、黄のシートの上に立てたのに残念。
 中原永世十段が4五歩から仕掛けて▲3五歩△同歩などと進んで▲4六銀と進出し面白い展開となった。

 この後は、12月23日(祝)のテレビ(NHK教育テレビ 10:30〜13:00)をお楽しみにということにしよう。
 この1局を見て聞いて次の一手を考えて、一流同士の世代間の将棋観の差を僅かながら感じることが出来たのが面白い収穫だった。
 新しいうねりが来たら過去の成功体験を吹っ切って新たな道を探していかなければならないということを感じた。

 クイズは全部はずれたけれど楽しい一日だった。
 運営の方と奨励会の皆さんご苦労様でした、楽しかったよ。
 帰りがけ、先崎六段が「あそこのXXへいこうよ、うん、何人でも良いよ」といっているのが聞こえた。
 運のいい人は、たんとご馳走になっているだろう。


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