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イベント・レポート

96年度 秋の四社将棋対抗戦(1996.10.5)

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp

96年10月5日(土曜日)、丸の内の新丸ビル日立会議室。(リコーは敬称略)

 丸の内のオフィスビル街にビジネスマンとして憧れを抱くのは我々団塊の世代迄かもしれないけれど、何となく丸の内にオフィスがあるのが格好良く思える。
 新丸ビルは名前とは裏腹にクラシックな館である。エレベーターもゆっくり昇るし、階段や壁の鄙びた感じと匂いががアンテイークで、鉄で囲われた二重窓は頑丈そうである。秋風が涼しいその八階の窓からは、薄日の漏れる中に煉瓦作りの東京駅が横に長くどっしりと見え、新幹線や、緑の山手線、ブルーの京浜東北線、オレンジの中央線などがひっきりなしに動いている。道路沿いにある水銀灯の上には鳩が座ったり飛んだりして遊んでいる。その下の歩道をラフな格好をした数人の西洋人が歩いている、皇居見物なのだろう。

 富士通、日立、東芝、リコーの四社将棋対抗戦は、持ち回りで今回は日立が幹事役。
 各チーム九人制で、この日は時計の都合で、上位6人目までが20分、30秒、7人目以降は30分切れ負けとなった。
 リコーは前回の記録的惨敗の屈辱ををはらすために11人を集め数では圧倒的に優位に立った。他社の中には九人揃っていないところもある。谷川主将の本日の方針は、最低一人二局は指すということだった。



 第一局は対日立戦。
 リコーは大将に若手有望株の岡田、以下瀬良、南、牧野、浜下、谷川、西田、斉藤、豊岡と並べた。
 リコー奇数先番で試合開始。岡田は先手四間飛車穴グマにし、日立の大将徳竹さんは△5七銀左△7三銀と急戦調で振り飛車を封じ込める。最後は敵陣に打った角を金で仕留められて残念ながら投了。

 私は相矢倉から勝率6割といわれている、▲3七銀戦法にしたものの、その後の指し方を知らず勝手読みから香車をただで取られ、手筋の△8六桂を食らって攻められっぱなしのさえない負け。しかしリコーは副将から6将までがキャプテンの作戦通りきっちり勝ってトータル5対4の勝ちとなった。



 第二局は対富士通戦。
 瀬良、南、岡田、斉藤、豊岡、吉中、今井、牧野、谷川と並べる。初め二人相手が居なかったが途中で一人参加して八人となった。リコー奇数先。
 注目はなんと言っても女性アマ将棋界の超強豪棚田真由美さん、5月に行われた第28期女流アマ名人戦で早稲田の新星真壁栄理子さんと決勝を争い、惜しくも準優勝となったニュースは記憶に新しい。
 今日はブルージーンに紺のジャケットで登場、キュートな魅力をふりまいている。
 四十人ほどの将棋好きの男性の中に混じって紅一点、どう隠してもうら若き女性の華やかさは隠しきれない。リコーの中から対戦の栄誉を引き当てたのは、先の夏合宿で藤森ジュニアの右四間飛車を老獪に(^^;;)凌いだ吉中勝則、6将戦。

 やや緊張気味の吉中は、棚田さんの四間飛車を見て、一度やってみたかったというアマ名人戦の決勝でテレビ放映された早咲囲いを目指す。
 丁度穴グマの香車と玉が逆さまになっている形で、振り飛車からの急戦対策として将棋部メールを賑わしていたものだ。
 棚田さんは、着手が早く棋譜をとる手が追いつかない。4枚美濃から▲4六角と出て飛車のこびんを狙う。飛車交換の後、吉中は桂馬とと金で攻めるのに対し、棚田さんは3筋に香車を打ち、飛車も攻防に打ち力をためる。棚田さんは、指で小刻みにリズムを取って読むところや相手をキュッキュッと睨むところが羽生六冠王によく似ている。
 時折低く「ふうーん」ともらす吐息が桃色で棋譜を取る手が危うくなる。吉中の攻めが一休みしたところで早咲囲いの3筋、2筋に猛攻が始まった。123手目の▲2五桂跳ねが3三の地点に一挙に香、飛車、桂と三枚が効く決め手となって鮮やかに早咲囲いを粉砕した。
 男性としては女性に負けるのは悔しいけれど、対戦できる嬉しさもあり、将棋を指す女性が増えてきて欲しいと切に思う。そしてやがては女性だから特別ということではなく、男も女も一緒に将棋を戦い楽しめるようになれば素晴らしいゲームになるだろう。是非皆様の周りの女性に将棋を教えましょう。

 結局、対富士通戦は南、牧野、谷川の3勝6敗となった。



 第三局は対東芝戦。
 谷川、瀬良、南、牧野、浜下、吉中、西田、今井、豊岡と並ぶ。リコー偶数先。私は7将戦で、先手水野さんは四間飛車立石流を目指してきた。飛車先を伸ばしてこないので、△6四銀と7五の歩をとりにでた。角交換から、怪しげな飛車角交換をして△5五角と王手香取りに打てて指しやすくなった。終盤ぬるい手がでて逆転したかとはっとしたが受けの金打ちで微かに残っていたようで何とか勝ちきることが出来た。

 チームは瀬良、南、牧野、吉中、西田、豊岡が勝ちで6対3で勝。総合では2勝1分けの富士通が一位、2勝1敗のリコーが二位となった。



 リコーでは南が3連勝と相変わらず強いところを見せてくれた。キャプテン谷川も扇子を新調してこのところ好調だし、瀬良も道場対抗戦で優勝し調子が上向きの様子、菊田、藤原はアマ名人戦で県代表になったし、牧野も4社対抗初の3連勝に準県代表と好調なので来週の武道館では是非S級での優勝を勝ち取って欲しい。とすると、キーを握るのは社団戦で調整中の野山、佐々木でしょうか。

 また私にとっての新たなマドンナ、キュートな棚田真由美さんは惜しくも3連勝は逃したものの2勝1敗と好成績だった。棚田さんもこれからもどんどん強くなるだろうから、あまり強くならない内に一度で良いから勝っておきたいもの。もう無理かもしれないけれど。新たなマドンナ棚田さんの活躍もインターネットから期待します。


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