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イベント・レポート -0003-

第8回 アマチュア将棋団体日本選手権

月 日 :1996年1月27日
場 所 :東京渋谷区 千駄ヶ谷 将棋会館
リポータ:西田文太郎

レポート

 1月27日土曜日、13時。千駄ヶ谷の将棋連盟5階の「歩月」へ。
 普段は、プロの対局関係者以外入ることのできないフロアで、プロの棋士たちが泊まるための宿泊室もあった。

 社会人1位対学生1位の全日本選手権。今年はリコー対東大。
 持ち時間は90分、60秒。アマの大会では長い持ち時間でじっくり楽しめる。もっとも棋力が相当に無いと90分も考えていられない。

大会風景
大会風景

 大将の振りゴマでリコー奇数先手。
 リコーメンバーは、大将から谷川、菊田、野山、瀬良、藤森、佐々木、牧野。

 ところが、佐々木は対局が始まっても現れない。吉中と南の会話「初手7六歩が勝因か」などが聞こえる。後で聞くと、寒さのためにJRのポイント故障で、3時間も閉じこめられていたとか、お疲れさまでした。

 結果は、この不戦敗と野山が序盤の大優勢に楽観してか、逆転負け。後は皆勝ち。

 谷川の急戦矢倉の強引な勝ちは若々しい。 菊田は居飛車穴熊に対し四間飛車でじわじわと優勢になって寄り切り、安定している。 瀬良は陽動向かい飛車で優勢になったのも束の間、敵の巧妙な桂馬の早逃げと飛車の中段への浮きでおかしくなった。しかし寄せあいは一日の長できわどく勝った。 藤森は、相向かい飛車で馬を作られて不利、しかし勝負形に持ち込み鮮やかに逆転勝ち。 牧野は居飛車穴熊で勝ちきった。

 谷川は、往年の大山永世名人同様、将棋部広報の仕事で中座しながら勝っている。敵の大将もまさか中央から銀交換されたくらいで寄せられるとは思ってもいなかったろう。寄せが切れやしないかと不安だったが見事にからみついて、敵は矢倉の中に角が取り残されたまま落城。東大の大将は顔も耳も朱く染まって美男子が引き立っていたのに、中座に気合いが抜けたのか、読みそこないがあったのか。。。

 菊田は、スーツ姿も凛々しく居飛車穴熊をじっくり攻める。時折「ふー」とため息が聞こえるのは穴グマ疲れなのだろうか。敵の副将、あらゆる駒を玉の周りに投入するも及ばず最後は無念の投了。しかし終始ポーカーフェースで頑張った東大の副将も頼もしい。

 野山は、一人蚊帳の外。野球でも4番以外は全員ヒットなんてたまにあるじゃない。遠征組が不戦敗も入れて2敗とは意外。でも負けても新幹線の中でいらいらしているより指しただけまし。序盤がよすぎたのか、あれが私ならとっくにつぶされている。雁木に対し矢倉模様で2四歩から角切りを見せながら角を引き歩をのばして、敵は金と玉でかろうじて支えている。東大の三将は苦しくても我慢して、しっかり野山の狙いを受ける。見た目ほど差がなかったのかもしれない。終盤四歩の連打で飛車先を止め玉が中段に出て逆に野山玉にいつの間にか詰めろがかかっていた。

 瀬良は、感想戦で相変わらずの広く深い読みを披露、東大の4将も「えっ、それは読んでませんでした」の声。南指摘の8五(?四)飛車打ちは自分の歩の頭だけに盲点だが、瀬良も歩を打ってあるので受けが無く弱るところ。相手が決め手を逃したようで、そこから先はぎりぎり瀬良の勝ちか。

 藤森牧野は、途中から時間が切迫してきて見きれなくなった。病を押して駆けつけている吉中に藤森の勝ったことを聞いてリコーの勝ちを知った。

 最後に終わったのは牧野の所。指していても疲れるけど見ていても穴グマは消耗する。手数も時間もやはり長くかかる。勝つためには優秀な戦法なのだろう。戦前の予想はどちらが勝つにしても4対3かといっていたが、社会人の方が場慣れしているのと1局だけなので体力の差がつかないのが勝因か。私の目にはリコーの実力が上のように映ったが贔屓目だろうか。

 東大は、対局している人よりも強そうな顔をした若手たちが棋譜を採っていたからこれからもどんどん強くなりつづけるのだろう。このような若手には是非リコーにも入ってきてほしいもの。また、紅一点、ベージュのコートの若い美女が応援に来ていて羨ましい限り。最後まであのコートは着たままだったけれど、その中がどうなっているのか、神秘のベールは魅力を増す秘訣かもしれない。

 対局場は連盟の対局室なので雰囲気は申し分ないけれど、やや手狭で、観戦者が10人もはいると足の踏み場もなくなる。せめて倍くらいの広いところで、関係者以外の人も見れるようにすればこの大会も人気が出ると思う。さらに、大盤解説なども局後に対局者混じりで、今回ならば裏方に徹した南からしてくれれば有り難い。しかし今回は、勝者の自戦記がインターネットで見られるのでその解説に期待しよう。


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